この世の条理よ秘密の故意
ガチャリとドアを開ける。此方に居ましたかなんて声が聞こえた。このノリを前にも描いた気がする。振り返るとコニックさんだった。あの時のコニックさんではなさそうだ。…いっそのこと私も
『なんか渡すか』
「で、コレですか。」
『そ。可愛くない?』
「いや可愛さを追求されることよりもですね…」
全員招集だから何事かと考えていたのも杞憂だったことに殆どの天使がため息を吐いた。エフェメラルらに居る処は色付きのリボンだったので、都結から花の栞を貰って何をと困惑している。それぞれにそれぞれの花が封されていた。この場合だとどこぞの栞保持者と一致するかと考えるが、向こうは鍵をモチーフにして渡しているのだそう。先日もう一度こっそり皆で会って話をしていた。
因みに他の子は指輪だったり足にチョーカーのようなものを付けさせているのだとかなんとか。そっちでも良かったが、こっちはやはり本の栞がしっくりきた。読書は確かにするものはするので、有難く貰ってはおくとしよう。
「と言いますか、あの都結様おひとつお尋ねしたいことが」
『何』
「髪色どうなされたのですか。」
『嗚呼イメチェン的な位置でいいですよ。それにこの色しっくり来ていて、駄目ですか?』
「嗚呼いや、貴方がそれなら別に構いませんが…」
オレンジ色に近い黄色の髪色を灯しており、メイドの衣装もカラーがえんじ色へ変化していた。バツやカチューシャの色はそのままで、強いて言うならカチューシャの色と同じ色。毛先を取ったマルカリータが言う。
「毛先は白色なのですますね?」
『ん。可愛い?』
「ええ、とってもお似合いですますよ。」
輪ゴムは黒色に統一している。以前は茶色やら黄色で色が迷っていたのに、だ。それは
ーコルン、余り言い過ぎると泣き出すぞ?
「…それはこの私を泣かしたいという意思表示ですか?」
「コルンさん?何か仰られましたか?」
「いいえ。都結さ…いえ、お母様。その様な結び方では痛みやすいですよ。」
ー俺だっていつかは引退くらいするさ。嗚呼でも心残りがあるとしたらアイツくらいか。
ー都結さんですか?
ーいいや
「(アイティ)」
あの幼子。白い髪色を灯して言っていた。大きくなったらお狐さんみたいな白と黄色の髪に染めるんだ!って。そんなことを言うものだから、じゃあとリキールは頭をガシガシと乱暴に撫でて言ったのだ。
ー俺が死んだ時はお前に加護をくれてやろう!!
ーほんと!じゃあでも…
ー…傍に居る。お前が死にゆくその時まで、だ。それなら寂しくないだろう?
嬉しそうに髪をクルクルと回して話す都結に、櫛を梳いていくコルンが想い耽る。彼が死ぬなんてあり得ないと心の何処かで感じていたが、こうして面とみると辛いものがある。
「何寝ぼけたことを言ってんだ。俺は此処にいるだろうが。」
「っ、リキールさ」
ばっと振り返るも、誰もいない。居るのはただ兄妹たちそれだけで。
夢幻を見た?この私が?あのような破壊神などに心を奪われて?
「…都結さん」
『んー?どうした?』
「貴方力の使い方、彼に教わりましたよね。」
『さ?』
”なんのことだか”
そう言った声が、妙に何時しか言った彼に似すぎていた。だから吐き捨てるように言ってしまう。彼女の髪を乱暴に掴み、後ろに引いて言うのだ。
「其方で彼女のことを御守り頂けるとあらばこのコルン、天使業務冥利に尽きるというもの。」
「こ、コルンさん?なにを」
「精々その中でも鍛錬を怠らないことですね」
リキール様
この私が初めて頭を下げられる唯一の神よ。
そう言えば、都結の顔も変わる。嗚呼と低い声が後ろに倒れ掛かる。片手をコルンの耳元に触れ言う。こんなことは都結に教えていなかったはずだ。アイティが来た頃。まだ都結としてではなく、幼きアイティとして遊んでいた時だ。リキールの毛並みを整えたいと言ってリキールからしたら左ばかりを練習された挙句、右ばかりがおろそかになり、そこばかり梳き直す癖が出来てしまっていた。
気になったコルンが時々毛並みを整えてやっていた。それの要領で、彼に言う時は耳元を触り言うのだ。
『”善処する”』
「っ、っくくくくく、」
『っふふふふふふ』
「何々何々」
急にクツクツと笑い出した都結とコルンに、周りもざわつく。
「それくらいでしたら九つ程に髪を纏めて差し上げましょうか?」
『”やめろ泣くぞこいつが”』
「別に泣かせて置いたらいいじゃないですか。害はないでしょうし、それに嫌なら貴方が慰めて差し上げればいい。」
『”おい馬鹿やめろふざけるのも大概だろう。それと
「売ってくれた方が寧ろ嬉しいんですがねぇ。」
だっていつぞやの日と同じみたいではないか。以前のように。
「あの頃に戻ったみたいで。私は嬉しくなるというのに。」
『っ』
頭をそっと撫でてしまう。白い髪の毛に黄色いペンキをぶちまけた時は流石のリキールの毛も逆立ったし、コルンも大きな声を上げて驚いてしまったものだ。流石の驚きに泣き叫ぶアイティ。勿論その後大神官に三人揃って怒られた怒られた。正座が辛く、間に入って座り反省をするアイティがゴソゴソと動くものだから、場の空気も和む。
「…まさか、貴方リキール様なのですか?」
「え?いやそんなま、さか」
『”…やめろ、こっちは黄色黄色の花に囲まれて滅入ってるんだ”』
「ほぉ?具体的にはどのような形をなさられているのでしょう?」
『”あ?黄色い果実のような”』
「では、フォックスフェイスと呼ばれるではないでしょうか?秋に黄色い果実が実る植物です。」
「ですが確かあの花はやさ」
そう、野菜なのだが、有毒があり食することは出来ない。その為観賞用として持ち込まれる。フォックスフェイスの名称は、果実の形自体が狐の顔に似ていることからではある。ただ形は果実からではあるが、個体もそれぞれ。別名カナリアナスとも呼ばれており、枝に付く黄色い果実が、まるでカナリアが枝にとまっているように見えることが由来となっている。本来は低木に分類されるフォックスフェイスであるが、寒さに弱い為日本では一年草として扱われている。
フォックスフェイスの花言葉は、「私の想い」、「偽り」、「真実」、「私はあなたを欺きません」
容姿までを偽り、その身を守らせようとは…なんと愛情深いことをしてくれるというのだろうか。この魂は、この神は。死して尚も、傍に居させてくれるとは。
「どれ程の恩を返してくれることやら。」
『”安心しろアイツが寝ている時くらいしか動いてやるつもりはないよ”』
「寧ろそれ以外でしたらこの場で躾し直すまでのことです。」
『”こんな可愛らしい子をか?”』
「お父様とてお許しになられることでしょうし。」
それに嗚呼、貴方が其処に残られてくれるとならば、外に出て行った彼女等も安心してくれることでしょう。
ーあのね!あいてぃね、おおきくなったらね!
「貴方もまんざらではなさそうですが?」
『”っは!…ま、ぼちぼち、ではあるがな?”』
ーどうしておじぎするの?
ー敬意を払うのですよ。
ーけいいをはらう
ーいや、そう言う意味ではないし、そもそもお前に尻尾はないよ。
ーじゃあ髪の毛でなんとかする。
ー意味が解らん。
『”誰だこんな奴に育て上げた奴は”』
「どう考えても貴方でしょうが」
『”はっ、どう考えても俺だけじゃあないと思うがなぁ?”』
「なんです、私のせいとでも仰るのですか?そんなことを仰る為だけに彼女の身体を借りているならば今すぐ彼女と交代なさって下さい。」
『”そんなこと言い出すと子として化け出て来るぞ”』
「それを言うなら化けではないでしょうし、後そうなった時困るのは貴方の方ですからね????」
『”はっ言ってろ。だがこの色を消し去ればきっと泣いて恨まれてしまうぞ?だってこいつは言った。金色の色を
ーきつねさんみたいにとってもつよくていいこになるの!!!
そしたら
『”そしたら
「…流石に其処迄言われたら降参するしかないでしょうが。」
『”っくくくく、言ってろ。”』
「本当にリキールさんなのですか?」
『”今はな。ほら此処が焦げ茶色程に染まっているだろう?これがあるか無いかが俺かコイツの見極めだ。暫く世話になる。”』
「本当に乗り移っているのですか。」
『”まぁな。一応約束だったから”』
ーほぉ?この俺様を選ぶとは、お前も見る目があるものだな。
『”(そうでなくともお前はこの俺様よりもずっとずっと強い子であるというのに)”』
それでも強くて優しく、良い子だと言って尊敬し、親しんでくれる。赤く身を染め上げ帰宅した時。恐ろしくなるかと見せつける為にも帰ったとしても。彼女はいつも通りに何気なく対応してくれた。その心は酷く怯えていたのを手が物語っていたとしても。その敬意に評し、期待には応えてやるのだ。
アイティは生きていた。都結の中で、小さな種になっても粉々に砕かれていたとしても、その欠片が遠くに飛ばされていただけであり、戻って来てくれていたのだ。その小さな光が、この身に導いてくれた。小さな手が白いこの空間で意志を持ってくれている。
あいてぃ
「…全く、あの天使共の素っ頓狂な顔を見たか!傑作だったぞ!」
『あーはいはい。分かった分かった。』
お前なぁ!!!
「この俺様が態々出向いてやってるんだ。ちっとは尊敬の意思をみせなんだその絶妙に嫌そうな顔は」
『リキール様如きに私の精神を見られるのはちょっとーーー』
「ないないお」
「百歩譲って
『なんでかな????????』
現在はアレから時間が経過した所。あの後都結は意識を失った。というのも、だ。リキールが出た事での気が混雑し、調整をコルンらがしてやったのだ。その間アイティに色々と都結とリキールは教えて貰った。まさかのアイティがこの世界での腹心であったとは一体誰が想像つくことだろうか。
そう、アイティが腹心なのだ。
誰の?
いや全王様の、だ。
不思議な縁もあるものだ、と都結はため息を吐いた。此処は自分の世界だ。白い空間。何処までも白く、最果てなんて見えない程に白い世界。都結はため息を吐いた。何度でも言えるし、本日これで二度目でもない。
『(存外自分自体に力が無かった方だとは…)』
力を使えているのは過半数でアイティの方だ。それとリキール。流石に力量と来たら、女性体というのと後は身長差で多少の動きが難しいらしい。一応リキールも戦闘出来る様、週に二度程度でカリキュラムを入れられていた。その間都結らは自由時間になっている。まさか精神世界でも仕事脳になるとは一体誰が想像し得たことだろうか?あれこれ最終回なんだよな???
『はぁ』
「そんなにため息を吐いていると幸せが逃げるぞ。」
『あれ!?リキール様?!』
「今日はアイティの時間だ。」
基本的に午後のみ戦闘訓練時間を設けているが、その中でも毎週月曜日と水曜日が都結の戦闘訓練時間。リキールは火曜日と金曜日のみだ。アイティは木曜日だけではあるが、時折土日何処かに入ったりもする。それは天使らの様子見次第、と言った処だ。予定が空いて居たら面倒をみてやる程度。ではあったのだが…
『なんか最近逆にした方が良い気がしてきて』
「嗚呼それは気にしなくていいだろ。だってお前が核なんだし。」
『え?』
「気付いてなかったのか…?お前の感情に左右され、俺達は自我を此処まで維持出来てるんだ。」
五体満足なのも奇跡に近いとさえ言い切ったリキール。アイティは確かに幼い状態だから仕方がないと言えば仕方がないだろうが…。
「それに、何も力こそが全てではない。」
『破壊神がそれ言う…?』
「謙遜でも貶しでもない。お前が救った天使らはお前だからと言ってくれることだろう。」
『アイティとして会っていたとしても?』
「それは」
『…リトも嬉しそうだった。』
きっとアイティとして彼女が成長して育っていけばいいそうしてそうしたら?私が生き延びた時間は一体どうなるというのだろうか?この時間をいっそのこと止め
「都結」
『』
「…それはいけない。」
踏み込ませてくれやしない。彼女はさせてくれたのに。此処は余りにも明るすぎるのかもしれない。あの額縁の中に、なんてもう生きていけれやしないと分かっていても。それでも私は今も尚、待ち望んで居続けている。こんな自分を何故か嫌いになれなくて。きっと彼らが好きで居てくれるのを分かっているから、嫌いになんてなれやしないのだ。彼等の好きを私は汚したくなんてないのだから。
そう、彼らが。
彼が。
思い出しただけでも笑みが零れ落ちる。案外簡単なことで悩んでいたのかもしれない。
『ありがとリキール様。』
「これくらいどうってことない。そんなことよりもう仕事か?」
『うん、多分そろそろギャン泣きして帰ってくる頃合いだろうから。後の世話宜しくね。』
「嗚呼、任された。」
そう言っては目を閉じて地面に落ちるように意識を飛ばして目を醒ませば、だ。世界は元通りになる。其処迄と言った彼の凛とした声に腕が誰に触れていたのかを知る。紅色の深い色、ウイスだったのか。交替されましたかなんて大神官から言われたらええとしか答えるしかない。
『秒でギャン泣きしそうだった予感がしましたので。お小言はお聞きします。』
「言うほどのことはしてませんよ。まぁ強いて上げるならば”もう少し考えたことを素直に実行してみなさい”と言った処ですね。」
『うぐっ』
「貴方がダメージ喰らってどうするんですか。」
ジトリ見られても笑うしかない。こればかりは笑う。修復作業もまだまだ沢山しなければいけないし、小説や絵も沢山描いて纏めておかねばならない。彼女らが生きていた時間を管理する。それが私の今生きる場所であり、そして
『(私が生きたい時間なのだから)』
嗚呼本当に此処にある。存在するとは気持ちが良いものだと思う。そう言えばとウイスが尋ねる。
「お父様、以前お母様からお借りした物語で観測者の件をご存知でしょうか?」
「観測、ですか?いえ、聞いたこともありませんね。」
「おやこれは失礼しました。てっきり一番にお話しなさられていたとばかり…」
『何も全部スピリトに言う事でもないからね〜』
「単に伝え忘れているだけだと思っていましたが。」
貴方の中も随分と騒がしくなっているようですし。
嗚呼一応外に出そうと思えば出せなくもないかと。
「アゲートさんが先日一時的ではあるも一日程度であれば空に出来ると仰られておりました。これを機にお二人で何処かお出かけしてきては?」
『お言葉非常に有難い処だけれども』
「流石に家でゆっくりしておきますよ。」
「おやそうですか…それは残念。」
美味しそうなカップケーキを見つけたんですが。しかも久方ぶりにあの惑星で。
マジ!?
これ。
「そうホイホイと釣られない。本当に惑星が地球かどうかの確認も出来ていないでしょう?」
『あ。』
「っほほほほ、流石に騙されませんか。」
「精進あるのみではありますがね。ではウイスさん彼を呼んで頂けないでしょうか?どうせ其方に寝泊まりなさられているんでしょう?」
「おっと、バレていましたか。」
「いえいえ。書類整理が随分苦手そうにお見受けしていただけですので。」
「バレバレではないですか。」
そう笑ったウイスと大神官に都結もクスクスと笑ってしまう。では後日また、と言ってウイスがぺこりとお辞儀をしてから部屋を出る。暫くして大神官が声を掛けて来てくれた。休日はどうされます?と聞いたらそりゃあもう決まりきっていた言葉であって。
「おや、この期に及んでそんな言葉を貴方が言うとは。」
『え〜じゃあスピリトしたいことあるの?』
「そりゃあ勿論。」
『じゃあいっせーのーでで言ってみる?』
「お。間違えたらどうなさいます?」
『コルンにでも突撃しちゃおうぜ。リキール様込み込みで。』
「ふはっなんですかそれ。現破壊神が泣きっ面みますよ?」
『いいじゃん、やらせておけば。多少の圧も灸になるでしょうよ。』
貴方も悪いですね〜そう言った後、だ。都結がいくよ〜?とニヤリ笑うものだから、ええと大神官もニヤリと笑みを浮かべる。釣られてしまっては仕方がない。その罠に嵌まってしまうことにしよう。
『それじゃあ行くよ?』
「いっせー?」
『のーで!』
大きく息を吸って、たった一言を重ねてしまう。音はピッタリハマると何を言っていたのか分からなくなってしまう。互いにきょとんと眼をぱちくりと合わせた後は、だ。二人してひとしきり笑って、ご褒美を頂くことにした。手を繋いで、今度こそ。
…ねぇ神様。この世の何処かに居るんでしょう?
居たら答えて教えてよ。
私を知っているならば”相対”図案は頭の中。
全部抱きしめ狡いよソレは。僕だけ知ってる君のコール。
夜間飛行のカーテンコール。残響響いたそれは夢幻のようで。
我の話をよく聞いて。目覚めはもうすぐ、すぐそこだと。でも少し疲れて寝てしまう。
貴方の隣で子守歌を。
優しく笑って翼を与えて。
だから神様お願いだから一人にしないで。
残り時間はたったの7秒。カーテンコールはくれてやる。
だから私の望みを叶えておくれや。
なぁなぁ、天使よ、我が神よ。
この世の条理よ秘密の
『(”恋よ”)』