なぁなぁ、天使よ。聞いているだろう?2



「そう言えばお前どうして天使を好きで居るんだ?」

そう聞いて来たのは書庫で一緒に作業をしている同僚にもなった言語魚さんだ。都結はよいしょと言って中央に浮いていた机の上に整理したい本を置き終えた処だ。此処は広い。古い書物をも綺麗に直すというのも仕事の内だ。古びたものを取っては定期的に直している。勿論都結の気を使用して。

『ん?まぁそうだなぁ〜初めては流石に。』
「その感じ、まさか大神官あいつじゃないのか!」

面白そうな話に食い付いたと来た魚に、嫌そうな顔をする都結。仕事中でもあるし、下世話な話にもなることだ。だがこうなったらずっと聞いてくる。白旗を上げた都結は誰にも言うなよとだけ忠告した後吐き捨てるように言う。この仕事は単純作業な為、世間話をしていた方が効率の良い作業になる程のものだった。

『本当は最初ウイスさん好きだったんだよね。』
「ほーーー意外だな」
『そう?逆に誰がタイプだと思ってたの。』
「第二の天使かなと」
『ふはっ、そらそうだね!だってウイスさんの次に惚れたのサワアさんだし!』
「そうだったのか?!」
『そうだよ?私が描いた話あるでしょう?』
「嗚呼、頭おかしい話だろ。」
『言いたいことは分かるけどね????』

流石に同僚に頭がおかしい判定されるのもクるものがある。辛い意味で、だ。

「あの続きは書かないのか?他の話にも出ているキャラなんだから思い入れがあるんだろう?」
『案外実は書いてるんだよ。』
「あ?」
『ほら題名読んでごらん?』
「ああ?”いつか終わるその日まで”、”時が止まる向こうの世界”、”秘密の鍵を差し込んで”、”たとえばの異界”、”観測者の手のひら”くらいか?だが出してないに近いのもあるだろうに。」
『あ〜その順番違うんだよな〜〜ほらほら変えてごらん。ヒントは”並び替え”だよ。』
「お前それほぼ答えだろ…」



そう言った魚が止まる。ニコリと微笑んだ都結の目が怖い。ふわりと髪色が変化する。緑色の髪色が青い色に変化した。

『この話は全て元の色がある。いつか終わるその日までは春の時間。青い夏を思い起こし、冬を抱えながらも春を知ろうとする時間。いつか終わるその日まではあくまでも「冬」に生き延びた人間の時間。時が止まる向こうの世界はその時間が止まったというもの。春に留まる。じゃあ夏は?一体何処に、「夏」は生きてる?』

エフェメラルは当初「緑髪色の緑目の神様」であったのだ。それが色々転じ「青髪色の青目の天使と人間の狭間」に位置している。エフェメラル自体の名前は春。一瞬しか咲かない春にしか生きれない花の意味を使っているのだ。が、青と言えば夏というイメージが強い。では?


エフェメラルが居た時間が春に来たその時。動くとでも言うのだろうか?


「…お前、この理を統べるつもりか?」
『いやいや。私なんぞがこんな広い世界を統べれる訳がない。』
「……場合によっては消されるとかの話じゃ済まされないぞ?」
『ご安心を。其処ら辺は”徹底”しているんでね。』

何時か終わるその日まで。観測者の手のひらには、秘密の鍵が仕込まれていて。
その鍵を差し込んだその瞬間、向こうの世界は時が止まる。此処はー


「この場所までもが”物語の渦中”に位置すると。」


ニヤリと笑ったお子の顔が恐ろしい…全く、恐れ入るばかりだ。



『そうだよねぇ?』
















エフェメラル?




















『まぁそうだよね。だって私も”生きている”者の内なんだから』

って、ね!やっほ〜!皆のアイドル、エフェメラルDA・Z☆
痛い痛い本当に痛いって。

『なにやってんだよ本当に馬鹿じゃないのか。あっ違うごめん天使か。』
『阿呆人間と天使の狭間に位置してる子だって。うちらの中では一番強いんだぞアイツあんな顔して風貌していても。』
『待って?割と酷くない???待って本当に酷くない?????』

煩い煩いと敵わない。はいはいと都結が手を叩くまでもなかった。浮遊している子の姿が眩しくてみえない。



『自演はおしまい。お姉さん方きちんと席につきんしゃ〜い。』

嗚呼私も私で面倒なことしてるごめんねと言っておりてきた子。同じ身長なのに顔が見えない。狐の面を被っていた。余りその姿で居て欲しくない。白いローブの下はどうやら紺色のワンピース姿らしい。かなり丈が短いが、それ大丈夫なのだろうか?

『っというか貴方達…!』
「はい、では自己紹介を。春に見紛うその最中、愛した時は額縁に。いつか終わるその日までを担当していましたヴァイス・ミア・エフェメラルことメルですメルだよメルちゃんだー!担当はサワア&コルン様です。」
『待って!?!?!?』

本当に待って欲しいのに、こいつらマジで言う事聞かない。まぁもうお手上げした方がいいのかもしれない。

「続きましてが春を忘れたその末路、愛した時は留めた場所。時が止まる向こうの世界を担当している向水都結さんです〜わ〜都結ちゃんだ〜ぱちぱちぱち〜〜〜〜」
『マジでなんか唐突なラジオ番組始まっちゃったよ。どうしようこのノリ突いて行けない。』
「漢字の間違いが良い感じになってそうで草生える。」

そう都結の自己紹介をした子は緑髪の子だ。左右の横髪を三つ編みでカチューシャの様に作り、余った横髪で前に三つ編みを作って垂れ流していた子。他の髪は後ろに一つ団子にして纏め上げていた。華神で似たような子がいたが、ほぼその子と言っても大差ないだろう。強いて違うとすれば髪飾り程度だ。花丸のピンが可愛らしい。衣装もまた違う。華神らはひらひらとストレートな服ではあったが、彼女の衣服はまた別だ。

彼女の名前は星野ほしの未付葉みつは。カード名「ミーネ・アインマール・オルフ〈もう一度私の音楽を〉」という名前がついている。

あらすじとしては、父親の部屋にある地下の書庫にあった本が余りにも可愛すぎて、勢い無理矢理強行突破で本を開いてしまった処から物語が始まる。勢いと行動力だけは自慢出来るが、最近頑張って抑えていた反動が来た等と供述しており、このまま厄災をもたらす栞を回収しにいく話だ。ノクシアという栞が散らばった為に捕らえるということで「ノクシアコード」という名前を持っている。

各宇宙に散らばった為、現実世界からDB世界に。書庫に自分の部屋に図書館に。様々な場所のページに入り、飛んで封印して回収する羽目になった、とんでもストーリーの主人公。因みに余談だが最近カフェオレの濃い味が飲めるようになったらしい。


「そんなこと言ってちゃんと出来てるじゃん。都結ちゃんまじえらすんぎ〜」
「こ〜ら、調子に乗ってると罰当たり喰らいますよ。お姉さんとこ栞でしょう?栞さんらに叩かれますよ。」
「そういう君は?」
「私は観測者なので…そもそも余りでないと言いますか、何と言いますか。」

エフェメラルは青い髪色を左右に二つずつ三つ編みをして前に出している。後ろの髪はそのまま放置されているが、都結は逆で後ろの髪を二つおさげに纏めている。違いがあるとしたら幾つかあるが、都結の場合は本来赤いカチューシャを付けているし、左側には黒いバツ印が二つ付けられている。エフェメラルはカチューシャ自体もない。が、互いにアホ毛が時折主張してくるところ、姉妹ではと考えられなくもなくて。

都結に関してはメイドだ。紺色と白のドレス姿な彼女と違いエフェメラルはほぼ大神官の衣服を身に纏って生活をしている。本来はもう少し綺麗な衣装を着飾っていたのだが、あの衣装は最近卒業した、というか向こうの衣装自体が正装なだけで通常の衣装ではないのだそう。

「あれも着なきゃいけないんだけどね〜流石にごちゃごちゃし過ぎていて困ってるんですよ。」
「まぁ立場が立場でしょうし。」
「でもお子大分大きくなったでしょう?」
「言うて成長したり縮んだり怖い限りなんですけれどもね私ほんとに。気が狂いそうになる。何あれ天使の呪いか何かか?」
「だそうだけどお姉さん処は?」
『ひゃい!?!?!?』

がしゃんと音を立ててしまう。こんな時に仕事なんてやってられる訳もない。彼女らと茶会をし始めるしかなかったというか、あれよあれよとしていけば、だ。まさかの茶会が目の前に…である。あのこのケーキ諸々何処産ですかね。とりあえずエフェメラルは作ってないだけマシか。

紺色の衣装を着飾っていた子に声を掛けられる。驚きの余り紅茶をまけてしまった。嗚呼仕方がないと言って紅茶を綺麗に吸い取っていく。ティッシュが綺麗に吸い取れば何処かへ消えて居なくなる。手品かな????

「元ある場所に戻っただけのことですよ。処で自己紹介続けますね。」
『えあはいどうぞご自由に???』
「秋を知り得たその手には、希望を抱いて眠りに誘う。観測者の手のひらには、を担当している灼渡しゃくとう未炉みろさんだよ。」

そう言った未付葉みつはに対しぺこりとお辞儀をした女性が此方を見てくれる。紺色の髪色を頭の左右に纏め上げている女性だ。耳後ろから流れる横髪を触ってクルクルとしている。少し出して来たら耳後ろで三つ編みなんて出来そうな長さにも見えたのだが、それにしては全体的に髪の毛が短いようにも見えた。後ろの髪が肩下程度で留まっているのだ。

気になったので聞いた未付葉みつはを見て彼女が説明してくれる。どうも段差にして髪を切っているらしい。詳細は尚省くのだそう…マジか。色々あったんだな?お前も。

「どうも。灼渡しゃくとうです。よろしくお願いします。」
『あっ、ど、どもです…。』
「わ〜ビビるくらいに真逆〜」
「何処がよ何処が。驚くくらいに似てるでしょうが。」
「案外気自体は逆だと思うけどなぁ。」

そう言われたので二人して試しに気を出してみれば、だ。

未付葉の言った通り、大きく周りをふわりと水が流れるように動く透明な力を持つ都結とは違い、未炉の方は小さくも確かに其処に一点燃え続ける炎のような気を維持していた。じっと、ずっと見続けていたら手を伸ばして掴みたくなる程に。其処にじっと燃え続けている。まるで

『綺麗な炎みたい』
「ありがとう、そう言って頂けると私も嬉しいです。私此処でしか気を出したことないし。」
「え」
「正確には流れとして出せるんだけど、敵に嗚呼出したことあるかも。」
「焦ったーーーマジで焦ったーーーー」
『皆さん滅茶苦茶仲良しさんですけど、皆さん同志でお話をしたことが?』
「「「いいや?今会った」」」
『いまあった』

どうも初対面に強いキャラばかりなのだそう。苦笑いで笑う都結に、髪と言われる。手を付ける都結に指を鳴らすエフェメラル。それに都結の髪色が変化したではないか。薄いオレンジ色の、そうそれは

「ふふっまるでお狐さんみたいね。彼女の色みたい。」
『(りきーるさま)』

彼は元気だろうか。落ち込む都結に、一人の狐面の子が無理もないでしょと端的に言う。

「今の状態リキールが引退した直後だろうし。」
『え?どうしてそれを』
「元々髪色はその力を灯す。ねぇ、都結。」

寂しいままで燻っていたら、彼も泣いてしまうわよ?

そう言った言葉にばっと振り返るも、其処には誰もいやしない。だが…

『…はい!』
「っふふ」
「いい返事も聞けたし〜?」
「ん?」
「お姉さんの自己紹介。聞いてないんですけれども?」

そうこてんと頭を横に倒して聞く未付葉に笑った子が手を横に振った。合図を取らずとて背後に入っていたエフェメラルが掴み、それいけと未付葉が勢いよく紐を引っ張ったエフェメラルと同時に仮面を外した時だった。


「そこまで」


その言葉に全員が大神官様と声を上げた。

「とんでもない気を察知して来てみれば、何してるんですか何を。」
「何って会合。」
「何処のどうしてそういうことになるんですって話をしてるんですよ。後私はこの世界の大神官ですからね?エフェメラル様。」
「えへっ☆」
「…ああ貴方もでしたねそう言えば。」

待ってこの世界の大神官様酷くない?!?!?!?
呆れてものが言えないんですよ呆れて。

「全く、すみません。」
「いえいえ、貴方も苦労しますね?サワアさん。」
「いーえ、割と楽しいので言うほど苦労する程でも、ですよ?」
「っくくく、それは良かったですね?ですが黙ってみていられないからと言ってIFの世界に潜り込むとはいけませんねぇ?」

今度からきちんとお話を通して頂ければ此方も手を下さずにすみますので。
はぁい

「がんばりまーす」
「よろしい。」

御迎えも他に来られましたね。そう上を見上げれば、だ。コニックやモヒイト、コルンの姿が見えて来たではないか。

「コニックさん!」
「皆さん探されておられましたよ。」
「お兄さんが御迎え?」
「おや、コルンさんの方が宜しかったですか?」

ちらりとモヒイトがコルンの方を向くすれば良いと紺色の髪色を横に振ってこたえた。そっと服を掴み帰ると端的に言うだけで留まる子に、はいはいと息を吐きながら答えてやるしかない。抱き上げふわりと浮かび上がる。それに続き、コニックもまた未付葉を抱き上げ違う方向の空へと浮かび上がった。

だっ〜〜こ〜〜〜と言って両手を広げるエフェメラルに、深いため息を吐いたサワア。嫌なら私がと言って抱き上げだしたのでちょ、おろっこれ!!と怒り出すサワア。ドタバタしてはすぐに首根っこを掴んでそのまま抱き上げて空へ飛びあがる。「ではこれで」そう言ってすぐに消え去った。気付けば他の子達もいない。

目の前にいる仮面を外した子一人と、

『…っあの』

喉が渇いて仕方がない黒い髪の女性の顔を見つめることが出来ない。

『その…』
「なんですか?お尋ねなら端的に」
「こら」
『…貴方は一体何者なんですか?』
「ふーむ…人間ってことだけは確か…えっ確かだよね?えっえっ待って待って待って待って確かだよね!??!?!」
「そうですから頼みますので慌てふためかないで下さい。場所を弁えろと言ったでしょうが。」
「阿呆」
「言われ足りないと。」

そうノリツッコミが入るのに、クスクスと笑い出して来てしまう。嗚呼申し訳ない。なんだかホッとしたのだ。まるで「いつも通り」だと思えてしまって仕方がなくて。だから見れてしまった。見惚れたというのはこういうことを言うのだろうか?




「よかった、元気になれて。」



『(ーーーそれは一体何方の言葉だろうか?)』


貴方に与えてやりたい言葉ではなかろうか?なぁ、


『ね、この世界の辿り着く末路は一体何処だと思いますか?』
「…それは”変えられないだろう真実”?それとも」
『”貴方の知るべき現実”の方です。』

凛と座り言った都結に対し、がしがしと頭を掻きむしった後、彼女はため息を吐いた。



「全ては知ったその日に答えがあった。…私が言えることはこれまでよ。」

さ、帰るわよ、コルン。
御意。

軽く肩に手を置く彼女に、抱いていかれないのですか?と都結が聞く。野暮だったかと両手で口を抑えたも時すでに遅し。ではあるが、ふっとコルンが笑って返す。

「彼女は私の手に有り余るのでね。抱き上げたくとも許してくれやしないのですよ。」
「あープライド高いっていうこと?」
「貴方はそれ以上発言を控えて頂けると私が非常に助かります。」
「命無いみたいな人間体の癖に?」
「一先ず黙るって言葉知ってますかね????」

貴方先日辞書引いて
あーあーはーやくかーえってーみーたいーーー
嗚呼煩い煩い分かりましたから!!!

そう言って綺麗に消えて居なくなってしまった。今度こそ大神官と二人きり、である。気が付けば言語魚は居なくなっていた。










泡沫の白昼夢


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