優しく笑って翼を与えて4


笑う形が分からなくなった。

なので制限を、いや


『”禁事項第82条延命措置における精神の仮死状態を実行致します”』


濃度3に上限を開放。生物としての知識を放出し、自身の性格に限りなく似通った発言に切り替えます。精度2、3、5、13…


「都結」
『…なあに?』

名前を呼ばれたから振り返った。其処には何時か出会っていた貴方が居た。黒髪の男性だ。元カレにもなるだろう。今では。そう、今では、だ。無理しなくていいよと言ってくれる優しい彼。彼は私の祖先の私の魂が一番最初に生きていた時間の神様みたいな人の生まれ変わりだったらしい。

ソレを知った今では、何も考えられない。


「無理しなくていいよ」
『…貴方と生きる為ならば、無理も一つだよ。』
「僕には、背負させてくれやしない?」


嗚呼、なんて酷い聞き方をするんだろうか?

そんなわけがない。本当は背負わせて、貴方の重い物も私が背負ってあげたいと心の底から感じている。これは人間だ。「ありふれた人間」が発言している行為その者なんだから、それは嘘じゃないと言い切りたいというのに。喉の奥がカラカラに乾いて声に出してくれやしない。いや違う。


私が話したくないだけだ。それを喉の渇きのせいにしたがっている

ただ、それだけのことだ。

嗚呼、そう、ただ、それだけなのだ。



『ごめん、』
「…そっか。」
『…』
「…」
『……あのさ』
「なに?」


そう尋ねてくれた声色は、とても穏やかだった。こっちを向いてくれる音がした。風を切る音だ。がさりと服が擦れた音がしたから、きっとこっちを向いて見てくれていることだと思う。それでも私は弱くて、







『”ううん、何でもないよ”』





それでも私は、言える訳もなかった。

だって貴方はその日

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『(続きなんて何もない言葉を取り繕うもの程、無駄な時間はないと思っていたのにな)』

ピーひょろろ、なんて鳶か鷹か分からない音を聞きながら、足を止め椅子に座り込んでしまう。現在の場所は意外にも中庭の一部に置かれている椅子である。先日クカテルが大工の技術も目ん玉飛びだしそうな程の手際を見せてくれたもので。私は今その椅子に座らせて貰えている。なんなら座らないのに何故作ろうかと考えた意味が分かりません。なんて言われかねない話だった。私もそう思った。

そう、今迄は、そう思っていたのだ。

『(不思議なものだ…意外と全て繋がっているとは思いもよらない)』

後ろに伸ばしていた身体を横に倒してしまう。この椅子は長いのだ。隣に人が座れる程の長さではあるが、私からしたら軽いソファーにも感じられる程広々としていた。まぁサワアさん達が座れるように、なんてお願いをしたからである。え?彼とだけの椅子ではないのかって?いやいや、広ければいいってものでもないが、特定の人を座らせる椅子はそんな多くなくて良いと思う。

たった一つだけ、その場にありさえすればいい。

そう、それだけで、もう充分だと思ってしまったのだ。

それが全ての答えだ。

風がぶわりと吹き上がった。立ったままなら、きっとスカートが捲れあがっていたことだろう。程々に強く、軽い布製品ならばすぐに吹き飛ばされていたことだろう。髪の毛もきっと纏めていなかったら顔面が大事故になっていたのだろうが、お生憎様私は器用に三つ編みをしていたのでそんな大事故は回避出来ている。

まぁ一部纏めていないので軽い事故は起きているのだがな。この場合の事故というのは、普通に髪が顔面に垂れかかっているだけの話である。普通に日本語を間違えないでと言われたって仕方がない。ジョークの範疇だと思って言っているのだ。許せよ。此畜生。物語の私の書いている時間を楽しみを奪うんじゃあないよ。

なんて誰に問いかけているのかすら分からない話を考えつつ、都結は大きなため息とも感じれる息を吸って吐いた。そよそよと未だそよ風が吹いている。


『(静かだなあ)』


あれから。

様々な人達が飛びだして、大事な人を守れたのか、と言われたら。答えは今この場にあるというも同然だ。




あれから私は一つの刃を自身に突き刺した。



誰かが「っ、この、馬鹿者が…!!!」と吐き捨てるように叫んだ音が上からしたのを今でも覚えている。勿論私だって馬鹿だなぁと思った。でも自分の胸に突き刺すことが、きっと一番のENDへ導いてくれることだろうと信じたからだし、実際そうなっているので無問題だと思って良いと思うくらいだ。

まぁ誰が小一時間いや小年時間とも言えばいい程の時間説教を言われたとしても、きっと私は言うことを聞かない自信すら持ち合わせているくらいの自信はある。私は良い切る子ではないと私自身自負しているくらいなのだが、そんな私が言い切ってるんだから余程だと思ってくれて構わないと思う。うん。

そしてその人間らは文字通り砂となって溶けてしまい、脅威は消え去っている。本当に?とも思えたが、一応念の為に色々調べていけば、どうやら向こうの世界で一つの魔法をかけてくれていたことが判明した。

以前都結と大神官がドイツへ旅立つ前に立ち寄ったパーキングエリアで視聴しただろう映画を覚えているだろうか?予告編ではあるし、都結は当時トイレへと席を外しており、全ては知り得ていない。というかほぼ直感でこんな映画あるんだろうな程度しかない記憶を持っているに過ぎない程度で。そんな映画が、その日公開したらしい。



そして来たる時が来たのだ。



ー選んで下さい。数多もの人間らよ。今この画面をご覧になられる言語を知り得る者達よ。

突如背景が濁り、その機械音に多くの人がどよめいたらしく、SNSではTOPに「”語りかけ”」がランクインされたらしい。因みに他はドラゴンボールやらなんやらの単語ばかりだったそうだ。

ー彼の者達が良い導きになるように。三つの選択肢を掲示します。これは必ず決まりきった決断になるでしょう。決して間違いはないのです。

ーだって彼らも我々人間らも。誰もが彼女等の幸を願い止まずに選んだ末路なのですから。

その問いかけに、「さ、お選びなさい」と言えば表示画面が切り替わる。靄の中から浮かび上がった文字以外の選択肢は、上から赤と青と黄色の三つで、その横に表示されている言葉に、等々SNSが一時的に落ちた話も今ではいい話になっているらしい。




1胸に突き刺す
2手に突き刺す
3彼に突き刺す



もう突き刺す以外の選択肢は、選択肢はないんですか…!!!!なんて悲鳴も上がったくらいだ。普通にコレを見ていたら私だってきっとそう思うし、口頭でも言っていることだろうし、なんだったらSNSに呟いていることだろう。まぁその時サーバー自体落ちているので打つこと処か最早次の画面すら開けず固まっている状態を眺め見ることしか出来なさそうではあるがな。

本当に選べると話題になり「これドラゴンボールで誰か願ってない…?」なんて話も上がったくらいだった。だってテレビ画面に子供が触れたことで光ったらしいのだ。そして表示は某青い鳥が黒い別表記に変わっているSNSサイトよろしくの選択開示みたいな画面へと切り替わっていたのだそう。

パーセンテージはコロコロと変わって、時間が進めば終わりの合図が出た。


そう、都結自身が選んだのではない。


向こう側にいた人間全員が、都結の手を動かしたも同然な奇数事情が裏で巻き起こっていたのだ。


ー選択は全てが正しいものだろう。だってそれは貴方が選んだ最高値であるのだから。


そんな言葉の後、都結は自身の胸を突き刺した。馬鹿者がと言われている中、SNSが復活したことで別枠に「通信障害をも誰か願い事をしていたのでは・・?」なんて話も後日巻き起こったくらいらしい。そして、その選択肢は事実正しかった。





実は都結が死んで生まれ変わった時、あの日心臓の位置を別へ移動していたのが判明したのだ。

お陰様で敵は隙を見せてしまい、天使らの命をも忘れたアゲートが敵の胸に突き刺し消し炭へと変えてやったのだ。まぁ砂と言っても表現はどうだっていいのだけれども。どっちも消えて無くなったという表現に対しては同意義だと思っている。其処が重要ではないのだ。

アゲートはエフェメラルらよりも先に動いた。「…お前達はアイツの子も同然で、アイツ同然とも言える者達。血に等濡らしたくない。」そう言って剣を振り払ったらしい。血は何故かこびりついていて、暫くしたら砂に溶け消えてなくなったのだそう。

その後は元の場所に戻ってきて、無事呪われていたローズやらシトリン等も目を醒ました。本当に操られていただけらしく、皆無事に今この惑星の何処かで暮らしているのだ。そう、この惑星はもう一人ぼっちではなくなった。


あれから更に時が進み、彼らも別の場所で純正のと言ったら言い方は悪いが、この惑星での人間を別宇宙から発見したらしい。

正確には散りばめられていた宝石と共鳴をさせていたら繋がったのだそう。ソレを使って意外にもローズが筆頭に出て多くの人間をこの地に戻してくれていた。何を今更と思うだろうが、今では彼も立派な国王である。そう、国王。


『(意外なこともあるもんだな)』


まさか数話でとんでもない展開に〜なんてよくある話でもあるが、まさかこの物語も例外ではなかったなんて知る由もない。そもそも別世界とリンクしている、なんてアニメやマンガじゃあるまいし”あり得る訳がないだろうが”なんて思っていたくらいだ。そう、その気持ちが今回の軌跡をもたらしたことを。私は後にサワアさんから教えて貰えたのだ。

何故か?まぁ色々あったのだ。其処ら辺の話は後日談改めて別の世界で見て貰えたら幸いである。



『(君の世界を感じ得ながらこの時間を過ごせる日が来るとは)』



更に月日は進み、春は遠に過ぎ去り、季節は何度も周ったある日のことだった。今では人口約六万人と結構な賑わいになって来て居る今日この頃。やっと見つけたと声が聞こえて目を開けた。こんな日はうたた寝しているに限るではないか。



「も〜都結ったら探したんだよ!?」
『…誰だったっけ』
「ぬあーーーー!!ミーティアだよみーーーてぃあ!!!!」

そう言った彼女に、嗚呼と言ったが正直忘れている都結にはわかり切っている。本当に都結自体人の名前を覚えるのが苦手なのだ。それは分かっていたが、此処までもかと言える程である。逆に何故全天使を覚えきれたのか些か不可解な点が脳裏を過るが、まぁ気にしては負けなきもするもの。愛かな。なんて誰かがほざいていたが、割と的を得た話な気がしなくもない。

「今日は式典の儀式でしょ!?何寝ぼけたこと言ってるの!もう皆到着してきてるんだよ!?」
『んあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
「…マジでそうだった見たいな顔していて私は本当に貴方の将来が不安でしかないよ。」

一言で言い切ったくらいには、彼女は心配してくれているのがひしひしと伝わって来た気がする。まぁ適当に思っているのだから、きっと伝わってすらしてない方が大正解な気がするけど。

よいしょ、っと言って都結は椅子から起き上がった。一気に起き上がったら血圧でふらつきやすく、最悪転倒で怪我するよ。なんて言葉が脳裏を過ったが、きっと気のせいだと思いたいものだ。世界が一瞬切り替わったのも。白く透き通った髪色ではなく黒い色だったことも。全ては私の記憶がもたらす「誤作動」だと思いたいもので。

『いこっか』

そう言って私は歩いた。式典が終われば、またこの庭園に戻って昼寝を堪能することにしよう。



そうその時は、出来れば天使ら皆を纏めてなんて。


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式典には軽く白いドレス姿に身を包み出席していた。天使らも含めているが、どうやら正式な衣装はあの砂時計を想像させる衣服なのであって。いつも通りの服装になんだか安心感が強く出て息を吐いた音が響いた。嗚呼そんなつもりはなかったのに。何人かの目が視線が感じられる。

「(何か面白いことでもありましたか?)」

なんてテレパシーでウイスさんが声を掛けて来てくれた。優しいなぁと思いつつ何でもないよと答えてしまう。勿論テレパシーとやらで、だ。一応見様見真似で先日やったら大層喜んでくれたので、その感覚を思い出しながらにはなるが。そつなくこなせるようになれたらいいなとは思いつつも、都結はそれとなく会話を続けてしまう。

『(思いの外吐いた音が早かったのと、音が鳴ってしまっただけですよ。)』
「(気を付けて下さいよ?今式中なんですから。)」
「(これ、そんな話は後になさって下さい。)」

なんてコルン様からのお小言で周りがクスクスと笑い出す。ナッと声が上がるコルンに、大神官が忠告を入れたら黙ってしまうが、睨みが来て笑ったのはマルカリータと都結だった。こればかりは許して欲しいと思う。ミュートギリギリラインで楽しんだのだから。




それから小一時間に渡り、色んな良いお話を聞き終え、行事は終了した。その後は各々で解散となるが、どうせならと家に招き入れる話が盛り上がる。何名かの天使らは破壊神や界王神と一緒に各宇宙へ帰るらしい。用事を思い出したと言って続々と居なくなる彼等。帰ってドアを開ける頃には、気付けば私独りだけになっていた。

もの悲しさがないわけでもない。あれ程賑やかだった場所からまた戻ってきた感じが少々嫌になるのは、人間として当然の感情だと思えるくらいだ。都結はドレスから着替え、何時もの衣服になる。三つ編みも綺麗にしていたのだが、解いて緩い状態へ変えてしまう。


これは正常だ。そう、これは正常な行為なのだ。


『(喋らなくなった)』


人が居なければ猶のことである。あの小さなワンルームが恋しくなる程に。私の話は此処で終わりを遂げてしまうのだろうか?嗚呼、それも良いのかもしれない。なんて思ってもいないことを、私はまた並べ立てて、そうしてまた













「その地に足を降ろし、再起動を繰り返す、か。」

実に良い感情を持っているね。なんて声が聞こえたので、つい条件反射で振り返ってしまった。新たな敵かと思っていたが、何処か風貌が違う気がした。ほぉ?と声が聞こえる。かなり男性にしては、高いような声色な気がしなくもないが。

「よく気付いたね。いや勘づいたとでも言うべきか。」
『っなたは…』
「ふふっ、どう呼んでくれても構わないよ。」

それが君の答えで僕の名前であるのだから。

そうニコリ微笑んだ彼は、かなり紳士な衣服を身に纏っていた。ローブの様に広がる上着を肩にかけているが、中の衣服はほぼスーツみたいなものであった。男性は髪を巻き上げていたが、前髪が少々乱雑に前へ出ている。後はほぼ後ろにハーフアップしているが、その金色の髪よりも目の黄緑色に光る目が、目から離れることを許してはくれなかった。

身体が動かないのではない。動かしたくないのが恐ろしさを際立たせてくる。

「っくくく、実に面白い子だね。まぁ此処まで来たらもう全てを話したって良いくらいだけれども…まぁこのままが一番の良い薬になりそうだから放置をした方がいいか。」
『あのお兄さん全部口になさられておられますですますが?』
「っははは、君も日本語とやらが如何せん不自由なのでは?」

おっと、日本語をお知りとは。都結の目の色が変わる。それに対し、彼の目も変わっていく。ニヤリと笑う彼の目は笑っていなかった。勿論此方も同じ様に、である。

『…何用で?』
「…本当に気分で立ち寄った者でね。後君が随分と寂しそうにしていたから。」
『何一つとて寂しく等無いのに?』
「嘘つき。神の住まう場所ですら嘘を並べる子なのかい?」

近付いて頬に触れた彼が言う。


「悪い子だね」


なんて言うものだからええと答えてやれば目を丸くしてくる。


『私は悪い子なのだよ』


だからこんなことも考える。


そう思った都結の左右背後からは、色とりどりの衣服色に身を纏う子達が飛びだして来たではないか。


それには目を丸め、距離を取り、そのまま王宮の外に逃げようとするが、綺麗に道を塞いでしまう。


『さ、如何なさいますか?』



天国か、地獄か。




それとも煉獄、か。

どれかをお選び下さいませ。

その選択は、非常に最善な選択になることでしょう。







泡沫の白昼夢


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