滑らかな決意
『ねぇ〜〜〜ウイスさぁん。愚痴聞いて〜〜〜?』
「おや、珍しい。なんでしょう?」
私にと言いますか、貴方からと言いますか。
そうクスから交代したウイスさんに対して声を掛けた。
現在は昼食終わりの昼下がり。
もうお昼寝グッバイしたいくらいの
素晴らしいくらいに眠たくないお目目で
机につっぷしたままメルはウイスに声を掛けた。
こんな状態をコルンに見せればきっと
下品なことは慎んで頂けるよう。等と注意をするだろう。
ウイスはクスクスと内心笑いつつ、彼女の愚痴を聞く姿勢を取った。
『女子会したいんだけどさ〜〜〜メンバーが困ってる。』
「すみません、メルさん。私女子会というものを存じあげておりませんのですが…」
『あっえっそう、なの。そうなの、か。』
「ええ。主に女子会、とはどのようなもので?」
『主に?あ〜〜一応、性別上は女性が集まって何かをすることかな?
食事会とか、夜を明かしながらお喋りして寝転がったりとか。』
「ほぉ〜?それは面白そうなことですねえ?して、しないのですか?」
『したいけどしない〜〜〜』
「おやおや、それは最早愚痴ですらないのでは?」
クスクスと笑うウイスに、嗚呼そうじゃんと言ったメルがつられて笑った。
したいのに出来ないから〜だとか、したいけど人が集まらない〜だとか
そういうものなら愚痴を吐くと言うのも分かるのだが。
それ以前の問題に、メルは笑って身体を起こした。
「ですがどうしてそれを私に?」
『ウイスさん一応性別上は男性だから。』
「ああ。そもそも呼ぶ気すらないと。」
『いや、そういう訳ではないんだけどさ…』
「お姉様方にご相談はなされないので?」
『したら本気になるでしょうが。だからある意味愚痴なんだよ。』
「おやおや、ソレは失礼。ですが普通にやってのけて見せると思いますよ?」
それこそ貴方は第二の破壊神と仲が宜しいではないですか。
嗚呼そこはもう枠入ってる。
嗚呼既に入れてらっしゃるんですね…。
「女子会、というのは二人だけでは成し得ないことなのですか?」
『そうだねぇ〜〜?大体4人から8人くらいじゃない?』
物によるけど。
『本当はフェルとかぶち込んでいきたいんだけど、
向こうに連れてった以上こっちにホイホイと
戻してくるのもちょっと違うんだよね。』
「そうなんですか?彼女達は喜んで来てくれると思いますが。」
『だとしてもだよ。一応設定上は向こうに位置しているからね。』
余りこっちに戻る様に考えさせると後が辛くなるというもの。
最終的には彼女らもこっちに戻すだろうが。
まぁそれはそれ。もっと先になる話というものだ。
そもそも私の状態が余り宜しくないのだから致し方がない。
この感じでいけば、早くても彼女らを迎え入れるのは
白い世界をなんとか乗りこなした先かなと踏んではいるが。
それも確証というものなど何一つないというものだ。
『あっでも確かにウイスさん女子会に入れても面白そう。』
「いや、丁重にお断りさせて頂きたいと思いますよ。」
『ええ、なんでえ。』
「では逆に聞きますが、メルさんはお兄様達が居る中に
ご自身一人で乗り込める勇気がおありで?」
『ある。』
「それが例え、貴方のお話を咲かせていたとしても?」
あっ、それは……ちょっと。
そういうことですよ。
「それにお姉様達の敵に回るなどと言った行為は避けたいので。」
『そうかなぁ。ウイスさんのお化粧話とか絶対盛り上がると思うのに。』
「そうですか?」
『うん。綺麗に出来てる。ほんと女の私が言うんだもん。』
「おやおや、それはまぁ、お褒め頂きありがとうございます。」
近付いてよくよくみると、本当に綺麗なのだ。
アニメや漫画でも良く見ていたが、実物だとまた違う。
神聖な何かとはいいがたいとはいえども、
さらっと気軽に触れる者ではないことは確か。
其処は割と分かっていたのだが、
予想以上にマイペースなのがちょっと意外だったりもする。
周りに揺らされてどうこう、
というのは無い彼のメンタルはこの化粧からなのかもしれない。
それ程綺麗に整った化粧を施しているのだ。
一ミリたりとも間違っていないその唇の口紅を見て思う。
メルさんはしないのですか?お化粧。
いや〜したんだけどさ。
『なんかサワアに怒られちゃって。二度としちゃ駄目って
肩に手を置いて頼み込まれちゃったもんで。』
「……ほぉ?それはそれは。」
『ん?どうかしたの?ウイスさん。』
「いえいえ、なんでもありませんよ〜?」
あのお兄様が其処迄頼み込むとは、正直余程だったのだろう。
恐らく誰にも見られたくない程には綺麗に仕上がった。
こんな姿を見たら皆が欲しがるに違いないと。
「ほんと、どれ程愛されているのやら。」
『ん〜〜〜??』
「ふふ、すいません。ただの独り言ですよ〜。」
ニコリと微笑んだウイスは紅茶に手を付けた。
メルが作ったスコーンとやらがとても口に合って良いと褒めてやれば
ほんとう?と嬉しそうに目を輝かせて笑ってみせる。
そうやって、誰も彼もに笑顔を振りまいて、本性を隠し続けてきたのだろう。
本当の時間に、戻れるように。綺麗に着飾って、額縁の裏にでも忍び込ませて。
「本当は額縁の中に願いを隠していたのでは?」
『ウイスさん?何を急に。』
「貴方はとても賢いお方ですから。」
『私は後にも先にもサワアと花冠を交換するだけだよ〜』
「果たしてそうでしょうかねぇ?」
『それに今更な話でしょう?』
そうでしょうか。そう言い切るウイスに、メルの目線が変わる。
嗚呼ほら、そうやって目を逸らして誘導をなさる。
本当はそうじゃないよ。こっちだったんだよ。
そうして見せる物すら、偽物だろうに。
それに気付かない様に、完璧に着飾る。
ひとつの嘘だけでなく、全てに嘘を付けて。そしてソレが本当になってしまう。
その現実に、どれ程嘆いてどれ程辛い思いをしてきたのだろうか。
サワアと同じ月日を、一人その背中に背負って
自分の身体を抱きしめてやるしか出来ない彼女が痛々しい。
もう、過ぎたこと?違うだろう。
貴方が華樹神で在る限り、いや貴方があのお方のお子である魂である限りは。
どうあがいたって本性をさらけ出すことなど出来ないというものか。
そうしたら、本当に消えて居なくなってしまいそうで怖いから。
だから愚痴として本音を紛れ込ませて吐いているというものだろう。
「例え過ぎていなくても。貴方は一人ではないのですよ?」
『…どうして皆そうやって私を守ってくれるの?』
「おや、皆さんからお聞きになられているのでは?」
『そりゃそうだけど……』
「ふむ、不安。といいますか、自分の価値的にはそれ程ではないと。」
こくりと頷くメルの目は、何時もより不安げに揺れている。
縮こまる彼女の肩に、こっちが本性なのだろうなとウイスは少し考えた。
彼女は自分達が困ったり悲しんだりすることを酷く恐れている。
それは今まで培った時間が物を言っているのだろう。
別に本当のことを喋って欲しい、という訳ではない。
ただ貴方が普通に、この場所で笑って居続けることが良いと思ったから。
外に出たければ無理矢理外に出ても良いのだろうに。それをしない。
だってそうしたら、皆が悲しんでしまうだろうとわかり切っているから。
だから彼女は外に出ない。出る素振りもしない。手を下した。
その手を、彼女の想いを、踏みにじったのは一体何方だというのだろうか。
「そうですねぇ…確かに、我々天使は本来破壊神に仕える者。
こんなところで道草を食っている暇があれば
お仕えするのが道理でしょうが。」
でも、そうしないというのは貴方が心配だから。
ただそれだけではないのです。
『…そう、なの。』
「ええ、そうでなければあのコルンお兄様も手を出さないですよ。
全く、お兄様方に認められる程あるというものを…貴方は分かっていない。」
彼等は自分が言うのも難だが、プライドが高い上に
下界やそこら辺の面倒事に首を突っ込んでいくタイプではない。
寧ろ程よい距離を保って話を流していく方であってですね。
ただ貴方がルトラール様のお子だからとか、
ただ大神官様からご命令があったからとか、
そういう簡単に考えられる感情や命令で
皆が動かされているだけだと思わないで頂きたい。
何処までも青々と澄み渡ったその感情をつかい、
その力を気に華に変え、そして命を散らせまいと
猛威に変えて世界の基盤ごとをひっくり返せる人。
そんな人が、何処にでもいる人と一緒に等出来るわけがない。
「本来気は其処迄澄み渡っているわけがないのです。」
『ウイスさんはソレを知って?』
「まぁ、気付いたと言いますか、人間でいう処の勘が物を言った。というべきでしょうね。
正直生半可な気持ちだったのですよ。手を出さなかったら絶対後悔する。ってね。」
天使がそんなことを考えるとは、
本当に修行が足りないというもの。
自分を叩き直そうかと思っていたが、
話を聞くにかなりのファインプレーだったようで。
「他の者達に似せ、肌に泥を塗って
周りに溶け込めるその力も勿論含めての、ですよ。」
『…ううん。そんなにこれって凄いの?』
「そりゃあもう。其処迄綺麗に変えてしまえば、
本当になんにでもなれる…いえ、戻れない処まで来ているのです。」
だから、皆して貴方のソレを守ろうと必死になっているというもの。
貴方はもう、この場所から出ていけば
全てが崩壊するくらいには
必要不可欠になっているというのに。
今でも、貴方は自分が居なくなった方が良いのではと時々考えてしまうのだ。
そんなことないというのに、それでも、
その空を見て手を今にも伸ばそうかと迷っている。
迷わないと、言い切っていても。その目は身体は嘘をついている。
「誰も怒りませんし、誰も言いませんよ。もしも仰られたらきっと皆さんその方を問い詰めるかもしれま…嗚呼だから嫌なんですか?」
『う』
「っふふふ、本当に、人間とは程遠いお人なのに。貴方はそれでも人間と言い切られる。」
本当は人間ってもっともーーっと、ずる賢くて怖い種族なのですよ?
そう言うウイスに、分かってるとメルは言うが、ウイスは何も分かっていないと言い切った。
「貴方が生きていたのはあくまでも貴方が主体の時間のみ。
我々天使は破壊神にお仕えするというのもありますが、
元人間をサポートして見守って来た者達です。」
『えっと、その…視点が違うから、言いたいことを理解出来てない、って?』
「その通りですよ。貴方も見守る側に徹した時、どうなるのやら…嗚呼それもさせたくないと言い切るお方は何名も居られるでしょうが。」
『え?え?え?え?』
「ふふふふ、例え濁らせたとしても、元が良ければ変わらないものですよ。メルさん。」
誤魔化したって、そうはいかない。
「根を下ろすのを後悔しないと言い切れないからしない。華樹が育たないのはソレでは?」
その感情が、全てを言うのでは?
未だに双葉から育たないソレ。理が手を出したというのに、育たないのはメルが必死に止めているから。
成長したら戻れないから。戻らなくて良いと笑っていても、心は上手くいかないというもの。
今まで捨ててきたというその感情、触れない様に見ない様に暴走しない様に。
ただ迷惑をかけない為だけに、その己が発した信号すらもかき消して生き続けた者が。
現在周りのことを気にせずに、前を向こうとがむしゃらに藻掻き続けている。
その手を取って手取り足取り教えることだって出来るのだが、それは敢えて皆しない。
其処迄したら本当に人形と変わらないから。そうしたいわけではないのだ。
貴方の意志で、貴方の心と共に。ずっとこの地で穏やかに暮らし続けていきたいと思うもの。
「貴方はお優しいと同時にとても厳しいお方ですからねぇ。」
『私が?生ぬるいとかじゃなくて』
「ぶっ……わかって、いや、失礼。」
一瞬むせそうになったのを堪えて咳払いするウイス。
本当にこの人と言ったら、なんというかまぁ。
「ほ〜んと、お兄様方も苦労なされているんですねぇ〜〜〜。」
『?????』
「いえ、此方の話しですよ〜。そんなことよりも、メルさん?」
『はいはい。』
「この地は一体どういう仕組みなのでしょうか。」
『と、いいますと?』
「ビルス様らと話をして気付いたのですが、悟空さんらを連れた時ですよ。
あの空間も勿論、此処は特にです。」
嘘が付けない場所。
そう言うウイスに、メルの手が止まる。
コーヒーカップに入れたカフェオレを見つめてから
そっと手に取った動きはぎこちない。
「この場所は華樹の力を入れて回していると聞いています。
それにしては華樹自体がないに等しいというもの。
一体どうやってここを管理しているのでしょうか?」
『…私の気を直接この場所一体に溶け込ませてるだけ。』
「果たしてそれだけ?」
『というと?』
「気を使って創造をするのは確かに出来ます。
ですがそれはあくまでも一瞬だけのこと。」
常時ソレを使って、気が狂わないのですか。
そう言うウイスに、メルはしないよおと答える。
『既に狂っているものを狂わないでとどうして言い切れようか。』
「狂いたくないから狂った様に見せかけているとも気付かれてない。
なぁんて、どうして言い切れるのでしょうか?」
『おやおや〜〜〜ばれちゃったかーーー』
「おほほほほ、余り私を見くびらないで頂けますかねぇ?」
『はーーー。仕方がないなぁ、一応開示するけど、止めろとかなしだよ?』
「ええ。」
実はとメルが笑って軽くこたえる。
『私の生きていた時間の私を殺し続けてその感情を波にして周りに反映させているだけ。』
「……えっと、もう一度仰って頂けますか?」
今とんでもないことをサラッと良いのけられた気がするが。
『いやだから、現在進行形で自分の感情を定期的に殺して
その痛みや苦痛から解放されていく状態を揺さぶらせてから
広範囲に広げて維持をさせているってだけだってば。』
「…えーーっと、つまり、貴方は今もあの様なことをなさって?」
そういうのはメルが目をぎらつかせてウイスらの前で自分をさくっと殺したことだ。
余りに衝撃的だったためか、鮮明に思い出せる。
それにそうだよとメルはサラッと言うのだ。
『架施が変わった状態なので、そこそこの痛みが継続してきてるから困ってるんだけどねぇ。』
「…ちなみに此処を保つのには気が必要不可欠で、お間違いないのですよね?」
『別にそうだけど…嗚呼いや駄目。駄目だって。』
「なりません。流石にそうならば我々天使らも貴方に渡せる気はあります。」
寧ろこっちはアンダルシア様から任されているというもの。
一応メンタルはぱっと見大丈夫そうだが、こういう子は触れないと分からないと聞く。
でも敢えてウイスは距離を取って触れられない位置で身を置き続ける。
それはメルが警戒しないようにというのが一番だった。
だが、それとこれとは話が違う。警戒されても別にいい。命の危険もあるというものだ。
「確かに貴方達華樹神様らは感情の波を使って気を増幅させ、コントロールをしつつ力を変換させて攻撃します。
そのコントロールは非常に優れたモノで大変すばらしいとは思いますが。」
『が?』
「一つ間違えればその気に押し潰されて消えて無くなってしまう危険極まりない行為そのものです。
正直申し上げますと、貴方に気を扱わせることを極力避けているのはそういうこと。」
えっそうなの。確かにそう言えば、コルン様と一緒に組手とか練習する時気を使う話は一度たりとも聞いたことがない。
「そりゃあそうでしょうねぇ。一歩間違えれば消える状態で使わせる訳もありませんし。
それを貴方は気付かせない状態でまんまとこの場所を維持し続けていたということです。」
『…あ、待って。これ説教案件では?』
「そうですね。なんなら貴方の今一番会いたくないであろうお方が来ていらっしゃいますし。」
『待って今物凄く振り返りたくない。』
「別に振り返らなくて構いませんよ?」
このままお話しすることですし。
そう言うお師匠様のお声にひぇっと声が出た。心臓まで縮まった気分だ。大丈夫?心臓存在してる?
「全く、何を話し込んでいるかと思えば…とんでもないことをしていたのですねぇ?」
『ひえ』
「ウイスさんでかしましたよ。後は我々がご指導しますので。」
「おほほほほ、それはそれは。お褒め頂きありがとうございます。」
席を立つ彼に、待ってとメルも席を立つが、
後ろから腕を掴まれて引っ張られ
先に行くどころか後ろに倒れ込むように落ちていく身体を
軽々と膝の上に置かされて座ってしまう。
あれ、何時の間に席にお座りになられていたのですかねぇ?
「おや〜まあまぁ可愛らしいことになられて。」
「見世物ではありませんよ。」
「ふふ、良いではないですか。赤らめちゃって可愛らしいのに。」
「ウイスさん…??」
「お礼とあれば、ね?」
「はぁ……わかりました。許しましょう。」
そう言うコルンに、礼を言うウイス。隣にというか、前にというか。
椅子を持ってきて座る彼に手を伸ばすが全く届かない。
なんなら届かないことに嬉しいのか、いや顔を見て嬉しそうな気もする。
『〜〜〜!?!?!?!』
「おほほほほほほ!!!可愛らしいですねぇ〜〜〜!!!」
半泣き状態じゃないですか。
いや誰のせいだと。
「どう考えても貴方のせいでしょう。一体、どういう仕組みで、此処を管理なさっておいでで?」
『うぐっ、あ、あの〜〜こ、こるん、様?』
「なんでしょう。」
『出来ればこの腕から解放させて頂けると話しやすいのですが…』
「なりません。別にこのままでも話せるでしょう?何の不都合があるというのです。」
『うぐ…いや、そ、それは、その』
「当てて差し上げましょうか?こうやってされると
誤魔化しが効き辛くなるということでしょう。」
感情を巧みに操作し、気を変換して周囲に溶け込ませた物を
ずっと同じ波で変えている貴方ならば。
この地が歪んで、その正体がバレてしまったら、と
内心ずっとずっと、ひやひやしている。違いますか?
そう言う彼に、ううと掴まれている腕に手を置いて
少し股を良い位置に動かして止める。
本当に尋問されだしたら溜まったもんじゃない。見世物じゃないんだよ。
先に白状した方が無難だなと思ったメルは、観念して白旗を上げた。
『ううその通りというか、なんというか。
仕組みを詳しくは教えられないけど、大まかなことは説明出来る。』
「詳しくおしえられない。それは単純に
貴方の言語能力に問題があるから、ということで?」
その通りです。
『気を操ってこう攻撃する仕組みはわかりますよね?』
「ええ。何を今更そんな初歩的な話を。」
『華を持つ者は願いを追い求める者達。
それは気を手のひらに頭で想像して描いたものを作る
本来の創造とは異なります。』
「ほう」
『ううん、というか矛先が違うと言えばいいのか。
華は願いの場所かその先に創造を作る者達。
その為手元に作り出す場所が違うというか。』
「…辿り着く地点の距離が違う、ということでしょうか?」
そう答えたウイスにそうそれと声を出して指を指す。
メルは変わらず片手はコルンの腕にそっと置いているのが
出来れば外して欲しいという淡い期待が見え隠れしていて
また可愛らしいのだが、そんなことは気付かないのだろうな。
『願いに縋り、その意志を束ねて力を使うんだけど、逆に言えば束ねなければ力が使えないと言うことになる。』
「ええ、そう、ですね?」
『では力が使えないというのは一体どういう処を持って使えないというのですかね。』
「…と、いうと?」
『力が使えないというのは、ある目標に対して効力を成さないと言う意味なのか、
そもそもの力自体が存在しないという状態か。』
「つまり、貴方が使っているのは効力を成さない様に見せかけたまやかし等と言うのですか?」
おお、そっちに行くのは流石と言うべきか。
『大分近い。まやかし、というよりかはある一点は見つけていて、其処に辿り着くなんだろう、こう周りを広げるみたいな』
「嗚呼〜何となく言いたいことが分かりました。
貴方の気は人間らが扱う様な体の一部分から放つ気功破とは似て異なるもの。
範囲攻撃と言えばまだ似ていますが、それすらも違うのですね。」
『そうです!!!!天才!!!!』
そうガッツポーズを出すメルに、ではとコルンが問う。
「それは一点に集中している、つまり中央となる核があり、その範囲を包み込んでいるということでしょうか?」
『近いけど違うと言うべきか。そっちはまだしたことがない。』
「では出来ないかどうかは検証していないから分からないと。」
そういうこと。
「その核は気として取り残していると?」
『ううん、ソレが悟られると普通にそこぶち壊せばわかるじゃないですか。』
「まぁそこから範囲を広げていればそうですね。」
「…待って下さい、メルさん?まさか、貴方」
『そう!悟られないなら全部の範囲を同じ均一で維持し続ければいいんじゃね!ってなちゃって〜!!』
なんか出来ちゃった!!!
出来ちゃったじゃないでしょうが!!!
「どう考えてもこっちの方に力が行き届き過ぎて成長が出来ていないのではないですか!!!!」
「そりゃああれ程の速度にもなろうものですねぇ〜にしても良く出来ていますよ。」
我々ですら気付かなかったというのに。
本当何処までも恐ろしいお方。
嬉しそうに笑って居るメルだが、その質は恐ろしいというもので。
『自分の力で均一にしているから、人から貰った気を扱えるかどうかすらしたこと無いといいますかなんといいますか〜〜〜』
「……貴方に気を扱わせるのはまだまだ早すぎるというものです。」
ただでさえ護身術も教えたくはなかったというのに。
おや、やはりそうだったのですねぇ〜。
「コルンお兄様のことですし、どうせメルさんを我々が守ればそれでいいとだけで終わらせる予定だと思っていましたので。」
「流石に気付きますか。その通りですよ。貴方が本気を出して我々を守るなんてことは今後一切しなくていいことですからね。」
『うう、でもさ?もしも、とかあるじゃないですか。』
「なら何故あの時攻撃出来なかったのですか?」
うう。
「その件もあって猶の事、ですよ。貴方の欠点は判断の遅さです。
正確には遅いだけでなくその自己肯定感の低すぎる故に決断が更に遅れを増しているところ。」
「そうなれば気をコントロールしている間に押し潰されちゃいますしねぇ〜〜。」
『そんなデカい気を使ってるのですか皆。』
「我々抑えていますし。」
ひえ。こわいよお。
ふふふ。
『って言うか天使らって気の量からして誰が一番強いというか量を持ってるの?』
「ふむ、それは測ったことが無いのでお答え出来ませんといいますかですね。」
「普通に考えたらサワアお兄様かクスお姉様なんでしょうが、メルさんはどう思われます?」
『ん〜〜意外と量自体ってなったらコルン様かなぁって。』
「ほぉ?それは何故?」
『私が素でいいひとだなって思った人大体強いから。』
「おやおや、直感ですか。」
クスクスと笑うウイスとコルンにメルはきょろきょろと二人を見ては首を傾げる。
「確かに、お父様とじゃれつく姿といい、ルトラール様達といい、
お強いお方の元では元気に振る舞われておられますねえ。」
『む!でも元々コルン様のことは距離とってたんだよ?』
「今では此処まで懐いておられるのに?」
『うううううう』
「っくくく、逆に何故私を避けておいでで?」
『えっ単純に身長高くて怖かったので。』
まさかの物理的なイメージからである。
あと目が物を言っていた。普通に精査されている感じがして怖かったので。
そう言うメルに強ち間違っていないことをしていたのを
コルンは気付かれていたのかと少し反省する。
「まぁきちんと測っていないので、私がと言うのは分かりませんが。
ぱっと見で行けばコントロールと言った点ではサワアお兄様が、
引き出しの多さからしたらモヒイトさんが得意しょうね。」
『へ〜〜!マルちゃんとかは?』
「まっ……マルカリータさんのことです?
そうですね、彼女ときちんとした組手などは
行ったことがないのでわかりませんが、
恐らく、クスお姉様の方に戦い方は似ている
気がしなくもありませんが…。」
「クスお姉様が戦われる等あったのですか?」
「ええ。前に何度か大神官様に言われて
面倒を見て貰った頃がありましてね。」
エフェメラル様の動きも割と彼女に似た所があるんですよ。
へ〜〜〜!!
「組手を昔されていたとお聞きしていますし、
似か寄るのもまた不思議ではありませんのでね。」
『そりゃあまぁ、そうか。瞬発力とかは?』
「誰がとは言い切れませんが、
強いて言うならコニックさん辺り、でしょうか?
…いやあの子はどちらかと言えば
計算で動く方なので鋭さの違い、か?」
そう困った様に考えるコルンに、
良くみていたんだなあとメルは凄く不思議に思う。
案外天使も人間じみた所があるもんだ、な?
ん?待てよ?
『ルトラール様に似た…???』
「おや、今更ですか?
私やお兄様お姉様達も貴方と貴方の御父上である
ルトラール様からの癖が染みついて困ってるんですよ。」
本来人間じみたこういう性格はないんですがねぇ。
天使らしさと言えばウイスさんや
モヒイトさんが一番と言えば一番でしょう。
そう言い切るコルンに、そうなのかとメルは驚く。
「我々は特に貴方達と面識がありませんからね。」
華樹神として、廻廊を辿っていたとしても、だ。
それはエフェメラルとしての面識はないというもの。
まぁ、5番目は少々外しての話にはなるが。
「話を戻しますが、貴方の気はどうやって使っているのですか?」
『え?嗚呼こうやって薄い膜みたいなのと、水面に水滴をぽたぽた落とす様にしてる感じ。』
「…ちなみにその水面は気そのものでお間違いないですよね?」
そうだよとメルはニコリと微笑む。
はぁーと二人してため息が聞こえて、
メルはきょろきょろと周りを見た。
「お兄様、そういう訳で、でしてね?」
「…そうですね、気の扱い方は伝授して置いた方が良いかもしれません。」
『え?え?え?え?』
「貴方の体内に、定期的ではありますが気をお渡ししていたのがまさかこんなところに使われていたとは…通りで全く成長の兆しすら見えない訳ですね。」
『あのお兄さんさらっととんでもないこと言ってません?』
「え?気付いていらっしゃらなかったのですか。」
えっ???
「理、つまり華樹神となり私が付き人となる以上は
それなりの魂からでの契約が必要不可欠になるというものです。
お兄様はまだしも私達は今瀬がほぼ初めての者。」
『ええと、つまり?』
「つまり契りを交わし、交流を深めるには気を互いに渡しながら魂に刷り込ませ続けなければならないというもの。」
「それで契約が終わると?」
「そんなわけがありますか。他にも色々とやらねばならないことが山の様にあるのです。」
これはあくまでも、道筋を見せているだけのものだと言うコルンに、メルはふと考えたことを考えない様に首を横に振った。こんな真昼間から盛るなんて私は絶対にしたくないというものだ。
思い出して膣がキュンと動いてしまうのを隠すために身体を動かしたが、どうやらそれは難しかったらしい。
「ではウイスさん、私がこの子の面倒をみますので。」
「…嗚呼成程そういうことでしたら。」
『えっ?え?ウイスさん帰っちゃうの?』
「ええ、ベジータさん達の組手も見なければいけませんので。」
そう言い聞かせる様にメルに触れて言うウイスにヘルプミーと声を出す彼女に
吹き出す様に笑ったウイスが今度こそ頭を撫でてすいませんと謝ってから帰っていったのだ。