きみの不在を花で埋める











『ああああああああ暇じゃ暇じゃ暇過ぎじゃああああああ』

そう高い声を上げた彼女に、またですかと声を出す。

「いい加減仕事をしてください。カランコエ様。」
『ぬう〜〜〜!!お主はお主で想い人に会えた
と思えばサラッと置き去りにされて
すねとるのか!こっっの泣き虫サワアよ!!』
「す、なっ!ち、違います!!私は貴方のことをですね!!」

此処は華樹の下。

赤い髪の毛を持ったメルの姿をした者が宙に浮かび胡坐をかいている。
その隣に来て言うサワアに、よせと止めたのは破壊神だ。

『…ヘレスか、久しいな。』
「ええ、貴方に会えるのを心待ちにしておりました。」
「…面識があるのですか?」
『嗚呼、女子会以来じゃったか?』
「ほんの少し外で話した時は驚いた。
わらわの真似をする可愛らしい子だと思っておったので。」
『あ〜じゃが一応中では練習しとったぞ?』

ピクリと止まるヘレスに、今度見るか?
と言われて対価は?と聞くヘレス。
流石にこの華樹を務める神に、対価が無いとはいいがたい。

『そうじゃの〜〜今度そやつを借りるくらいかの。』
「幾らでも貸してやろう」
「なっヘレス様!?」
「華神らが仕事を手伝ってくれる今、
其処迄仕事がないのでな。」

修行はというも、加護天使らが務めても問題ないとのこと。

まぁ天使らの休息をも兼ねたこのシステムで、
それは気にしない方がいいというもの。

『ま、それなら良いか。今度クスも呼ぶ予定じゃし。』
「クスお姉様もですか?」
『嗚呼、こいつは居らんがな。』

そうカランコエが胸にそっと手を当てる。
カタバミは何処にも咲いていないのが、ソレを知らしめる。

『…ま、奴のことじゃ。どうせまた咲き誇ってくる。』

そうして何度も咲かしたのだから。

『その間は一応仮にも華樹神の我が務めるというものよ!!』
「ま、仕事の感じ的にはメルの方が圧倒的に良い感じするけどね。」
『………』
「ごきげんよう、アルトリア様」
「ごきげんよう、サワア様そしてヘレス様。」

にげようとする彼女をサッと捕まえ仕事をさせに行くアルトに
悲鳴と言うか雄たけびが上がる。


「全く、彼らにまで嗅ぎつかれてどうするんですか。」

そう言われ、ざわりとカランコエがカタバミに変化する。

『…でも、私コレ力無いに等しい。』
「ま、だから様子見って下したんです。」

大体私が華樹神官なんて恐れ多いんですよ?
だっ、だってえ……

『アルトリアなら、その、一緒が、安心するなって…その』
「………カランコエ様に代わって」
『え?え?でも』
「いいから!!!」

そう言われて、すっと白髪が赤髪へと戻り、カランコエがまた咲き誇る。

『…お主相変わらずその泣き姿どうにかならんのか。』
「もう救急車欲しい救急車」
『AED蘇生はご自分で出来るじゃろうに…』

というか、メルを半強制的に戻して
定期的に摂取するようにやっては
傷付いてを繰り返すお主もお主よの。

『さっきもみたじゃろうが、一応生きてはおる。』

そう周りにはメルは魂自体は生きておるが
精神はもう戻るにも時間がかかり過ぎると告げた。
それでも見たいと会わせてくれと言う者も最初は居た。

だが、そうして、あの者が増えるのは、我も酷だった。

『先生の様な方が居るのは一人だけでよい。
魔女を望んだのも、メルが先生を望んだに等しいのじゃ。』
「カランコエ様…」
『帰らぬ者、カランコエじゃぞ?何故我が外に出されたのか全くもう。』
「そういえば、メルってどんな願いを?」
『…言わん。』

そう言う約束じゃからの。

ちらりとメルの部屋の中に置かれていた絵を見る。
これ綺麗ですよねとアルトが言う。

「向こうの図書の奥に大元があるんです。
前にメルが一心不乱に書き殴ったって。」

みますと言われてみるとも言わずについていく。





『…これが』

それは、絵画の中に人が背中をみせたもの。
絵画の中に、絵画が描かれ、
その中に綺麗な花畑の姿が見える。

嬉しそうに笑う子供の顔は、クレヨンで書き殴られ
隣の子の髪色が塗られていないのだ。
それはまるで、赤にも黒にも、白にもさせたいと言いたそうで。

背中を見せた者が、ただ、絵画にもたれかかっているのが、悲しそうに見える。

「綺麗ですよね。嬉しそうに笑ってるのメルかなって」
『…じゃろうな。こういうところが確かに中にもある。』
「…そうなんですか。」
『嗚呼、綺麗で、もっと、残酷なんじゃ。』

その記憶を、額装に閉じ込めた彼女。

綺麗な状態を、黒髪の女性が縋りついている。

その中に居るのは、綺麗な白髪の子供で。

『完成された綺麗な額縁に、
ずっと其処に縋り続けて離れるのじゃ。』
「…今も?」
『いや、今は…それすらも、出来ぬ。』

ブンと音を立てて立体的に作り出す。

其処には花畑の中で
ゆっくりと寝息を続ける子がいた。

その近くには、ちらりと此方を見たプラティアが
少し嫌そうな顔をして手をしっしと
外に向かって振っている。

明らかに「こっちみんな」と言いたそうな
感じ、というかそうなのだろうなとは思った。

『このように、全く目覚めん。
まぁ強いて言うなら、サワアが帰った後なら
何故かすぐに目覚めるくらいじゃな。』
「え、不思議だね。いなくなったら出てくるの?」
『ああ、恐ろしいくらいタイミングが悪くてな。
ちょっと気になって寝るまでの時間を測ってみたが、
どうもまぁ1分44秒という短さでじゃな。』
「いや秒数直して104て、天使の秒単位で秒寝しなくても……」

其処迄して、一体なにがしたいのやら。

『ま、一応この通り、中に居るには居る。
此処から消えたら、も〜〜う我々とて流石に手が出せん。
プラティアが暴れないのも、我が制しておるからじゃが…』
「もしメルが本当にいなくなったら?」
『……時期によるじゃろうが、意識喪失じゃろうな。』

彼女の中は、とても居心地がいいそうだ。

『居心地が良すぎる場所は毒になる。
現に元々我もプラティア並みの狼じゃった。』
「おおかみて」
『こう穏やかになったのも、
こやつが変な願いばかりを出すからじゃ。』

お願い、神様。

『…我は、お主の、
願いが欲しいというのに。』

お前の欲望が、手が、欲しかったというのに。

「カランコエ…」
『ま、旅なんぞ、暫くごめんじゃ。』

お主の居ない、こんな世界で。

『我は旅をしたって、
辿り着く終着点など、
何処にもないのじゃから。』

「…いつ、目覚めるの?」
『分からん。もうこの際
天使の時間に目覚めたら
奇跡だと思うた方がいい。』

プラティアとの闘いの頻度もかなり短かった。
その為、回復も綺麗にした状態ですらなかった。

一応ウイス達を創り出した家の中での力も。
あの気ですら、我が出したというもの。

おかげ様で我が、ウイス達全員に
自らコンタクトを取り、許可を取り、
彼女と合わせたりとか裏で色々と
紐を10本20本引いていたというのに。

その力も、ぱあじゃ。

『ただ、その場所なら。目覚めそうで。』

彼女の望んだその額縁の様な状態になれば。
きっと出てきてくれると思ったのだ。

コンコンと鳴る音にどうぞと声が上がる。
ギイと音を立てて入ってきたのは

「あら」
『お主らどうしたんじゃ、えらく早いが』
「ラムーシ様から行って来いと許可を頂きまして。」
「私が先程コンタクトを取り、呼んできたのです。」

クスと先程まで居たサワアだった。
御用と聞きましてというクスに、
言われてますよとアルトに催促される。

『あ〜〜今じゃないんじゃよのぉ〜〜〜〜』
「?」
『まぁ、試しにやってみるか。
滅茶苦茶怒られそうなんじゃが。』
「何の話です?」
「まぁまぁ」

クノフィリスそう言われて呼ばれてくれば。

「はぁ〜?子供に戻るクスリ???」
『頼む!この通りじゃ!!!』
「…出来んくはないが、
成功というか、言えこの場で。」
『…実は』

はぁと更に声が上がる。

「出来るには出来るが…」
「えらいショック療法を思いつきますね?」

じゃろうなあとカランコエがから笑いする。

此処はメルが勉強をしていた図書室の円卓。

その中に、真正面をカランコエとして
左からアルト、クノフィリス、
アペトス、エカルム、ライラ、
アンダルシア、クス、サワア
以上の9人が円卓に座っている。

『いや〜〜メルの考え的に逆を突いて
額縁の中と同じ状態を作れば
戻ってくるとおもうんじゃが。』

「仮にそれが出来たとして、
我々が戻った時ショック死しません?」

「在り得るな。下手したら
願いが叶ったと思って死にかねん。」

そう言ったのはサワア、
そしてアンダルシアだ。

「回復の状態にもよるが、
あの状態を何度も起こしたんだ。
並大抵の回復量は見込めないのは確かなハズ。」

「ここら辺の本をちょちょいと見ましたが、全て駄目ですね。
僕の能力を知っているのか、ダミーにしか入らせません。」

本の中に入れるというエカルムも駄目だと首を横に振る。

「継承を出来たとしても、
本人の拒絶を確認するに無理でしょう。
あくまでも継承は
互いの了承を得た後に成り立つもの。
片方が拒絶している時点で不可能。」

『じゃろうなぁ〜〜〜〜〜〜は〜〜〜〜〜〜〜』

「逆に何故メル様を戻させようとしているんですか?」

『ん〜多分無いとは思うが、
プラティアを入れたことにより、
今現在、弱くなったメルの方が
消失しないか不安なんじゃよ。』

「なっ!?!?!」

「それを早く言わんか!!!!」


嫌だからああと頭を円卓に潰すカランコエに、仮にと声を上げる。


『我がプラティアを無理にはじくとする。
そうなればメルとの契約が切れるすると
どうなると思う?』
「えっ、戻ってくる?」
『違う!その逆じゃ!この場合は
契約不成立により、メルの精神が此処から乱れる。』
「絶望!!!!!」

ダンと手を円卓に叩きつけるアルトに、
まぁまぁと宥めるカランコエ。

「…勘違いさせればいけるだろこれ。」
「ん?」
『…ライラ、止めとけ。』
「いや一度騙せば、メルそいつ。二度目いけるだろ。」
『い〜や。メルこやつは賢い上にそういう直感系は範疇内じゃ。』
「だから物理的に行動を。」

「先に言っておくが、
子供に直したとしても
その二人の演技も難しいだろ。」

むっとするクスが出来ますよと言う。
だが「嗚呼無理じゃな」と言い出した
カランコエが否定した。

『お主ら全員、メルの中に入ったことがないから分からんじゃろうが、
こいつの中の精神はかなり精密で、且つ面倒極まりない処じゃ。』

記憶の廻廊者なら、話も分かるが…。
と、ちらり違う方向を見た。

『メルはあのプラティアを騙すために
作ったと言っても過言ではない
完璧な偽造の人形じゃ。』

その精神は例えるなら心臓に似せた心臓そのものに近く、
美味いカレー屋のカレーを真似た偽物のカレー
と言っても美味しくて食えるくらい。

要は似すぎていて本物と言っても
納得するレベルの状態なのだ。

強いて言うなら顕微鏡レベルで探し出して
一つ違う処を見つけるかどうかくらいの完璧さ。

それ程の精密に創られた状態を騙す、
ということは、同じ状態を作るということ。

『こやつはそういう精密さに関しては長けておる。
逆にこやつの様になれば、まぁ怒る。
そうなれば今度は我々の命にかかわる。我は反対じゃ。』

「どうせ次って言うと電車ごっこあたりでしょ。」

『むりじゃ!!!流石にこの歳で電車ごっこ
ルンルンとか無理なんじゃ!!!!!』

「お、お前も大変だ、な?」

半泣きどころか全泣き、ギャン泣きレベルの
カランコエに、周りも半笑いで宥める。

「ちなみに、その中で弱い者が淘汰される時間は?」

『…昔、本当に昔、お主らと別れた
すぐくらいなら、3日も持たんかったが。』

「みっ!?」

『言っておるかは知らんが、
我を殺すためにとんでもない人を殺しておるからな。
嗚呼言っても自分自身のじゃ。
痛みや苦痛、精神的な感情面の痛みなどなどを。』

「…うわあ」

『無論薬など抜きでじゃ。
毎日誰かに見られながらも
ずっとソレばかりを考える。』


どうすれば自分が嫌か。
どうすれば痛くなるか。
どうしたらその痛みは緩和されるか。


痛覚を無くせば、その先には行けるが、
あくまでも痛みは限界を知らせる警告。

それを越えたらどうなるかなんて、想像がつく。

『痛みから消して、次は記憶の改ざん。
とはいっても正確なのは額縁に入れる。
そういうことで記憶の廻廊も額縁が採用された。
まぁ、流石にアレには驚いたがな。』

人形にしたら流石に精神も苦痛であるもの。
ならば一つ一つの場を設けたということ。

『額縁に入れた後は地獄』
「地獄?」
『とりあえず足か?
動けないのもいいが、手を好むのお。
……どこぞの誰かさんが調教したおかげか?』

そうぎょろりと下を見るのに、
なぜかぎょっとした感覚を感じる周り。
恐らくプラティアの悲鳴なのだろう。

『胸やら首やら殺して痛みを殺しながら修正を繰り返す。
一応言っておくが、これほぼ0番目は毎日の様に行う。
廻廊が始まればきついときのみ行っていたが、
ほぼ毎回会っているじゃろうな。』
「一番きつかった時とか無かったのか?」
『…正直言うと、3番目辺りがきつかったが。』

ちらりとサワアの方を見る
ヘレスの事を言っているのだろう。

「ミラ様の事ですか?」

『嗚呼、アレは流石に我も堪えた。
ヘレスが知っているかは知らんが、
堕ちるミラを庇って自分を殺し続けておったからな。』

「っな」

『幾ら自分の身体を痛めつけても大丈夫とは言っても
流石にやり過ぎると後に反映されかねんからの。
それ以降はこっぴどく叱ってからしとらん。』



『此間の様になって、
反動で寝てしまうのが
嫌で殺し続けていたというのが
彼女の罪というところだが。』

「そんなことしてたのあの子」

『回復などさせるつもりが鼻から無かったからの。
寧ろ出てきた者全員殺して笑っておったので
我は11番目になってかなり警戒したんじゃよ。』


一番身体の自由が効くような状態だから。
それ即ち、メルが殺人に傾く可能性だってなくない話。


「なるほど、メルのその「人」にしか
目がない状態だからよかったものの、
もしも自分の願いに変われば
恨み、人殺しになっていたとでも?」

『そうなればもう目も当てれん。
恐らくプラティアを越えた面倒は起きるだろうな。』
「うわあ、メルが純粋でほんとよかった。」

そう周りが頷くのに、まぁまぁとカランコエが言う。


『もしそうなれば我が何か練っておった。
メルはああ見えて賢いからのお。
我の様に分けたのはメルが一つ
力を持ったら狂うと判断したのじゃろう。』

人間は欲張りで、持てばもっとと欲しがる生き物。
それを知って、メルはすぐに自分以上のものを手放した。

「…先生って人が賢いって言ってたけど、
あの人の言う通りだと思う。」
「アルト…」
「あの環境に耐えれなかっただけであって、
メルは環境に対応するために姿を形を変え続けた。」
『…今回はどうしていいか分からんのじゃろう。
0番目に戻ってきたに近しい状態だからのお。』

サワア達がいる状態というのが、原因でもある。

ふーむと唸った彼女の声に続きコンコンとノックが入る。
入ってきた人間と言えば。

『おお』
「失礼します」
「ウイス様にビルス様それにその方は…?」
『お前ら本当に仕事が早すぎないか?』
「いやいや、君の中の子には借りが多いからね。」
「エフェメラル様のご容体は?」

言っておった話がどんどんと進んでいる…。
そう頭がついていっていなさそうな彼女に
カミカゼがそっとお茶を入れてきた。

いや、お前何時から居った。何時から。

『駄目じゃ。こんな感じ。』

そういってカランコエは指を中央にピッと指す。
それにアルトに見せていた映像の様な形が浮上する。
青と白の点線が景色だけを映している。

花の中にゆっくりと息をして蹲り眠り続ける彼女。
それを近くで胡坐をかいてじっと見つめている
天使であった、完成された魔女の姿。

『呼吸共に心臓も動いておる。』
「分離しているのですか?」
『大昔にな。』
「それならこのまま3人に離れたらいいんじゃないのか?」
『そりゃ無理な話じゃ。』

そう後ろに背もたれるカランコエがないないと手を横に振った。

『彼女が創った我との力はかなりの面倒極まりない厄介なもの。
試しにサワア。お主ちょっと手をかせ。』
「は、はぁ。こうですか?」
『そのまま魂を探してみよ。』

普通はそのまま見ても見れるというもので、
ウイス達も全員彼女の中に魂が3つ確認できていた。

そう、確認できていた。

「……っ!!!」
「どうしたんですか?お兄様」
「ないじゃないですか」
『これがこやつの考えたダミー。』
「魂は3つじゃないのか。」
「2つしかないです。」

分裂も何もない。メルという存在が、何処にも見当たらない。
その言葉に全員が驚き席を立ちそうになる。

「どういう仕組みなんですか。神をも騙すこの仕組み。」
『簡単じゃ。元々魂は1つしかない。』
「意味が分かりません。」
『鏡うつしみたいなもんじゃ。』
「中で鏡を作って外側には同じように映しているとでも?」
『現にお主ら全員騙せておったし、それにちゃんと持てるからな。』

パっと出した白く綺麗な魂にぎょっとする。
早く戻せと言われてすっと戻したので安心するが、
身体を操作しながら魂をぽんぽんお手玉の様に出してなど出来ない。

何なら肉体に魂は一つしかいきれないのだから。

『所謂多重人格という状態が我とメルの状態じゃ。
その為外に肉体を持てばメルが拒絶反応を起こし、身体が先に死ぬ。』
「なるほど、だから外には出れないと。」
『出れないというか、出ると我も困る。』
「というと?」
『我は力を持つ者じゃが、維持は出来ん。』

無限に湧き上がる力はカランコエが司り、
その力を使って様々な力に変換しているのはメルだそうで。

『全く同じ形を創って動かしたりも出来る。』

こんな風にと、前にウイスを使っていたのもあり、
一応実物と同じように隣に立たせる、が。

「おや」
『我はコレに関しては下手くそでな。秒も持たん。』
「メルはこれが得意なの?」
『恐らく本物と同じにできる上に、
数日以上は保たせれるじゃろうな。』
「そんな違うのか。」
『今現在恐ろしい量の力が出てきてしまうので、
それを全部華樹に明け渡し続けておる。』

だが、これも厄介なことで。

「多すぎると逆に枯れてしまうのですよ。」
「華樹がですか?」
「ええ」
『栄養過多って処じゃろうな。
その為それ以外の気を保管するというのも
課題になっても〜〜〜〜〜〜〜〜
全く早く起きんかこの馬鹿垂れ!!!!』
「そんなこと言われても困るだろうねぇ……」

寝ている子に口なんて聞かせや出来ない。

「貴方の中に直接入るということは出来ないのですか?」
『…おすすめはせんぞ。』
「出来るかどうかを聞いているんです。」
「もしかして、お兄様…まさか直接たたき起こしに行くおつもりで?」
「起きなくてご迷惑をお掛けするならそれでもいいかと。」
「大雑把な処はメルに似なくてもよかったのでは…」
「これはクスちゃんのほうじゃない?」

さらっと昔の呼び方になっている原初を無視し、こほんとカランコエが言う。

『ま、とりあえず此処座れ、な?ビーデルさんや。』
「え、ええ…」

そうカランコエが退いて椅子を叩くのに対し、
ウイスの方をちらりとみたビーデルに、ウイスがこくりと頷きそっと背中を軽く押す。

そっと座ったビーデルを見てからすっと空に上がり、
円卓の中央上にふわふわとあがって軽く足を組んだ。
左手は腰元に、右手は顎と口を触りながら悩む。


『…さて。』
「あの」
『ん?どうした。』
「私、ひょっとしてとんでもない時に来たのでは…」

臆病になる彼女にあ〜いいいいと否定したのはアルトだった。

「この人どうでも良いことに話が長いだけだから」
『お主!!』
「だってそうでしょ?やろうと思えばメルの事を覚ますことだってできるし、3人に分裂だってお茶の子さいさいな癖に。」
「なっ!?」
『…デメリットがでかすぎるんじゃ。
第一ソレをしてじゃ、選ばれたのは我ではなくメルの方。
華樹神の気は莫大な量を一日に消費する。』

まぁ簡単に言えば、地球の水を一日一回飲み干すくらいの量を飲まないといけないものが、
コップ一杯くらいのカップと量しか持てないとなればどうなるか。
圧倒的に足りない状態で、瀕死になり死ぬのがおちである。

補給をしたくても、コップ一杯程の器。
それ以上は注げないし、日が暮れる。

器は別にあるが、それの継承ですら拒絶する状態。
今外に出したって、無理な話なのだ。

『ま、確かに我が交代すれば話は別じゃが、そうなればメルはすぐに消えて泡となりいなくなる。』
「…え」
『現在精神内にはこうして眠っておるが、それは記憶での状態に過ぎぬ。』

彼女はもう、トラウマという状態から克服しつつ状態になりつつあるのだ。
深い記憶が綺麗に浄化された後がどうなるか。もうわかるはず。

『この状態なら綺麗さっぱり跡形もなく泡となり記憶からもいなくなる。』
「…待って下さい。それは貴方の中の話では?」
『華樹神と言ったじゃろう。樹に生えた幹の先までの話。』

お主らも幹の外に居ても、近くにいる。
同じ様に、その記憶から綺麗さっぱりいなくなる。

『メルが元々考えていた緊急用の措置。その名も人魚姫。』
「にんぎょ…」
「なんだそれは」
「おとぎ話の話しです。足の無い種族が足を持つ代わりに声を無くすもの。」

その最後は、泡になって消えてなくなるというもの。

『お主ら全員の記憶を集結させて消えてなくなる。
そうすれば誰もが悲しむことなんてなくなる。
何故なら悲しむ記憶すらその中に無くなるのだから。』
「…恐ろしいことを。」
『極力人に近づかんとしておったのはそこじゃ。』

お前も記憶にあるのでは?そうカランコエがビーデルを見る。

『お主もかなり距離を置かれておったじゃろう?』
「…そうですね、メルはいつも、遠くからみていました。」
『自分がいつかお主の記憶からも居なくなったらば。
同じ様にされるのは辛いから。だから極力距離を取った。』

その中に入れたくなんて無かった。
栄養素なんて、増やしたくなかった。
だから人里離れた処にずっと身を潜めていた。

『12全て、元々人の居ない場所を好みその身をなるべく置いておったからのぉ。』
「…」
『話が大いに逸れたが、メルは一応生きておるし、目覚めさせたいのは事実。』



さて、一体


『どうやってその身から目覚めさせようか』