青空から福音







「…よし」

そう意気込んだ私は、荷物を準備する。
昨日一人でご飯を食べた時、
いや、本当はもっと前から決意していた。

ずっと前から、夢を見ていた。
朝の涼しげな風を浴びながら、前を歩く。
家の鍵は渡す予定だし、大事な物は持って行っている。

金色のペンダントに、
家にあった小さな瓶の中に入っている幾つかの綺麗な宝石。
きっとこれも役に立つと思って持ってきたのだ。
勿論衣服とか諸々を入れると少し旅行気分で笑ったが。

「いってきます、私。」

後ろを振り返って笑って手を振った。
目には見えないけど、確かに笑って居る気がした。

ガチャンと音を立てて靴を履いて歩く。
後ろというか、隣には


『えと…』


メル、私の、大事なお友達。

「ほら、行くよ。」
『うう、でも。』
「私は貴方に付いていくって決めたんだもの。」

そう言う彼女に、メルはそれでもと言う。
胸のもやもやが取れない。
そんなメルに、大丈夫とメリアは言う。

「貴方が居れば、私はそれだけでいい。」
『メリア…』
「ほら、ウイスさん達待ってるよ!!」

走るメリアに、まってえとメルは声を上げた。


++++++++++++

「本当に来るんでしょうね?」
「ええ、来ますよ。」
「ウイスさんが其処まで引き抜きたいだなんて
…ひょっとして恋?」
「おほほほほ」

あれ、否定しない。嘘。

そうビルスとブルマが震えて困惑している中、
噂をされていた子が歩いて来た。

「お待ちしておりましたよ、メリアさん。」

そして、メルさん。

そう言ったウイスの言葉に、
コクリと首を縦に振ったメリアと、
背後からひょっこりと出てきた
白い白髪の彼女に視線が注目する。

「あれ?その子は?」
「ウイスさん。お待たせしました。」

いや〜仕事の後始末とかその他諸々ありまして!
次の日予定を合わせて頂いてすいませんと
メリアは勝手にメルの傍から離れて説明をする。

メルはそのまま手を前に持っていくだけで、
その場から歩くことはなく、そっと目を落とし、
肩を落として手を下す。

左手は服を掴み、右手は胸元を掴もうとして、躊躇した後、そっと握り締めた。

まるでそこに、何かがあったかのように。
彼女のことを、追いかけすらしない。
まるでその場所にしか居れないように。

それをウイスは一通り見た後、
ええとメリアの方を向いて笑って言う。

「よいお返事を下さってありがとうございます。
それにしても良いのですか?メリアさん。」
「いいんですよ。ねぇメル!早くこっちおいでよ!」
「メル?」
「彼女の名前ですよ。」

そうウイスはブルマが首を傾げながら聞く言葉に答える。
メルは未だに、怖いのかじっとそこで立ち尽くしたままだった。

「…まだ躊躇してるんだ。いいって言っても言う事一つききゃしない。」
「なら連れてくりゃ良い話じゃねぇか!お〜い!メルっつたか?」
「あっ悟空さん流石にそれ…わあ……」

手を挙げて近づいた悟空に驚いたメルが身体を飛び跳ねた後、
ばっと近くの木々に身体を隠すために走り出した。
それに気付いた悟空が、ぱっとメルの目の前に出てきた。

『わわわわ』
「おやおや、悟空さん?初対面の方に失礼ですよ?」
「いや〜わりぃわりぃ、メリアのことだから
てっきり喋ってくれてるかと思っててよ!」
「私最初に忠告したハズなんですけどねぇ……」

驚いたメルが泣きそうな顔でウイスの背後に急いで隠れたのだ。
この場で一番背も高い上に礼儀正しい姿をしていたのもあるが。

『(この人、何処かで見たことある気がするんだけど…)』

一体何処だったか、忘れてしまった。

でも、この中で一番落ち着いたから、後ろに隠れてしまったのは確かだ。

「メルさん」
『…?』
「悟空さんは悪い人ではありませんよ。
とって食ったりしません。」
『それは、わかって、るんだけど……』
「…おめえ、つえぇな?」

そう目が変わる悟空に、メルは驚き、そっと身体を隠した。
ウイスの背中で服を掴み、背中に頬を当ててじっと耐えているのを見かねたウイスがため息を吐いて正面を向いた。

「悟空さん?」
「うっ」
「確かに、貴方の見解通り、メルさんはお強いでしょう。」
「っなら!」
「ですが、仮にも女性ですよ。加えて初対面の方に失礼です。」
「メル、大丈夫?」
『あう……めりあああああ』

ちらりと様子を見に来たメリアがひょっこりメルを見に来る。
気付いたメルが、漸くウイスから離れてメリアに抱き着いた。

人見知りなのかなぁと思っていたメリアだったが
メルの記憶なのか、色んな人達が彼女から離れていくのが見えた。

「……これは」
「…メルさん、余り考えない方がよろしいかと。」
『…?』
「気付いてない、なら別に構いませんが。」

そう忠告したウイスにメルは首を傾げた後、メリアの方を向いた。
落ち着いて来たのか、身体をそっと離し、ちゃんと地に立つ。

「紹介します。此方は私の身体にいつの間にか居たメル。」
「いつの間にかって…」
『ねぇメリア、それってまずい説明じゃないの?』
「だって夢の中で話しかけてくれたのがきっかけじゃない。」
『いやそうなんだけどさぁ…
私こんな大勢の前に入るって聞いてないんだけど。』
「夢の中みたいに堂々としてりゃあいいんだよ!!」
『誰が出来るか!!誰が!!!!』
「嫌がってるように、みえ・・・」

ううん、と言う誰かに、誰かは苦笑いを零す。

『私だけ行くっていう話でも
いいのにってウイス様言ってるのに。』
「だ〜〜からいいんだって!
それに何となくだけど、貴方と私は
ある一定以上の距離を離れるとなんか駄目な気がする。」
「へぇ、それくらいは分かるんだねぇ。」
「ビルス様!どーこいってたんだ!?」
「ちょっと美味しい食べ物を見つけてね。」

ほらと出したビルスが口に頬張るのは
ナッツの入ったチョコレートだった。
それ美味しいですよねぇとメリアが言う。

「マカダミアナッツですか、いいですねえ。」
『マカダミアナッツ?』
「うん。ナッツの王様って呼ばれていて、
花言葉は「希望」って意味があるんだよ。」
「ほぉ?物知りだねぇ、君。」
「一時期花が好きで花言葉を漁ってたので。」
「…花言葉、ねぇ。」

そう含みのある言い方で呟いたウイスに、ちらりとメルと目が合った。
黄金色の目と、紫色の目が、ぱちくりと合った後、
ウイスの方がニコリと笑い、メルは瞬きを数回した後、首を傾げた。

「それにしてもかっっわいいわねぇ。私には劣るけど。」
「ブルマ、お前……」
『は、はじ、め、まして?』
「ええ、私はブルマ。こっちが夫のベジータよ。」
『メルです。』
「ふん」
「気にしないで。あいつあんなんだから。」
『いいえ、とても優しい方ですね。』

そう言ったメルに、今度はベジータやブルマが目を丸めて驚く。

『ブルマさん?って人を
とても信頼している感じがします。
悪い人には見えません。』
「でも元々わるーい奴だったのよ!?」
『ううん。きっと皆は分からなくて、
ただ一人だっただけでしょう?
そうでなければ天使さんに見つけて貰えない。』
「天使さん?」
「メルさん、ブルマさんの仰る通り彼は悪事を働いていましたよ。」

嗚呼ウイスさんのことね!と言うブルマに、
メルはこくこくと縦に勢いよく振ってイエスと答える。

「まぁ修行は成り行き、という形ではありますが、ね?」
「っ、ふん!!それならこいつはいい奴だと思わないのか?」
『…分からない。』
「おお?」
『貴方は、分からない。』

よくわからない。そう言い続けるメルに、不思議ですねぇとウイスは続ける。

『ウイスさん?と、同じ様な感じがして、少しこわい。』
「おやおやおや」
「…神の気が読めるのか。」
『かみ?悟空さんって人は神様かなにかなの?』
「まぁ神の力を手にした、といえばそうでしょうねぇ?」
『わあ神様沢山だあ。』
「…意外と幼い?」

そうクリリンが言った言葉に、一同が首を傾げつつもそうかもなぁと答える。
見た目は白いワンピース姿で、肩周りはレースの少し落ち着いたフリル。
下の丈は膝上くらいの短さで…。

「って貴方裸足じゃないの!!」
「それが、メルってば靴下すら拒絶しちゃって。」
「拒絶って、どういう生活していたらそうなんのよ……」
『足は洗えば何とかなる。』
「まぁ、それの説明も向こうに行ってからします。」
「わかりました。」
『ねぇメリア、髪飾り貸して貰ってもいい?』
「いいけど、髪の毛鬱陶しいの?」

遊んでて疲れたというメルに、
はいはいとメリアは手渡しする。

メルは髪の毛を一房掴んで触り、
胸元迄ある髪の毛を上に括り付け
ポニーテールのように髪を束ねた。

髪飾りはお気に入りの白いパールと
薄い青の宝石が埋め込まれたものだ。

左右に飾られた宝石の周りを、
放物線を描くように金色の金属が
三つ程回っている可愛らしいもの。

この髪飾りは、
月と地球を表しているのではないかと
今更ながら思って持ってきてしまったのだ。


きっと心残りなのだろう。


決意はしても、
長くこの地に居れば
愛着だって湧いてしまう。


「すいません、折角の機会を無駄にしてしまって。」
「いえいえ、いいのよ。
うちの会社でずっと真面目に働ていてくれてて
別に渡したくないって惜しまれちゃってたわねぇ。」
「えっそっちまで来たんですか。」
「勿論。一社員だったんだから。」

そう言ったブルマに、お世話になりましたとお辞儀をするメリアに、
メルも見かねたのかブルマにぺこりとお辞儀をした。

「ま、本当はウイスさんに渡したくないくらいの良い人材だったんだけど〜〜〜?」
「おやおや、大事なご決断の邪魔をなさるとは、ブルマさんも悪い方ですねぇ?」

ニコリと笑うウイスにそんな事言ってないわよとブルマが即刻否定した。

「ただメリアちゃん可愛らしいから、
知り合いだとしても連れていかれるのが寂しくて。」
「地球時間でも、半時間程で向こうから
此方にお戻りになられますし、そこら辺は
何時でも会えると思えば大丈夫かと。」
「あっそんなに近いんですね?
荷物まとめなくて良かったか。」
「いえいえ、そのご決断は素晴らしいですよ。」


そう褒めてくれるウイスに、褒められ慣れておらず
メリアはえへへと笑い誤魔化した。
メリアが悟空達と別れの話をし始めた処で、
メルはまたぽつりと一人で立ち尽くしていた。


「行かれないんですか?」
『ウイス様…』
「おや、さん付けはお嫌です?」
『逆に様付けの方がいいんですか?』
「いえいえ、無理になさらなくてもいいですよ。
これから長い付き合いになるのでしょうし。」
『じゃあ、えっと…うい、す。さん?』
「…ええ。メルさん、緊張なされてます?」
『と言うよりかは、なんか夢かなぁって。』
「まだ夢だと思われておられるんですか?
まぁ無理もありませんか。」
「それにしても、ウイスさん。神様ってどっちがどっち?」


そう聞いたのはメリアとの別れを惜しんだ後のブルマだ。
メリアはビーデルたちと話をしている。

「メルさんの方ですよ。」
『えっ!?!?そうなの!?!?!』
「ええ、メリアさんは身体の中に
メルさんがぱっと現れたと申されていました。
恐らく、依り代に近い状態だったのでしょうね。」

私が作った依り代に収まっていますし。
そういうウイスに、メルは身体を見渡す。

「メルちゃんって何の神様なの?」
「僕みたいな破壊神よりもずっとず〜っと昔に生きていた神様さ。」
「ビルス様の!?」
「今現在は絶滅しています。と言うか、世代交代と言うべきでしょうか?
華を持ち、人で在り続けた、願いを叶えられる神様。」

その名も

「華神」

花を持つ神様だそうで、ある一定の力が解放されたら
花を身体の何処かに咲かせて力を使い攻撃をする者達。


「華神は破壊神と界王神のようで
私達天使と似たような者達のことです。
宇宙その者を司る者、」
「…え、」
「身体の何処かに蕾を咲かせることで
条件を果たし、神の資格を得られます。」

まぁ詳しい詳細は分かりませんが、大体はそんな感じです。
そう言ったウイスに今度はブルマが声を上げる。

「ちょ、ちょっと待ってよ!
そんな曖昧な状態で引き抜こうってこと!?
それなら話は別よ!?」
「そもそも、メリアさんは人間ですよね?
貴方達神様が僕達に介入してはいけないんじゃ。」
「悟飯さんの仰る通り、我々神々、特に天使は
下界の人間に介入しません。ですが、華神…いえ
特にメルさんに付きましては、話がかわってくるのです。」

それに、本来神は下界に
長く居座るものではありません。
まぁ今回はかなりの異例でしてね。

「ビルス様!華神っちゅー奴は強いんか?」
「…それがだな、僕も分からないんだ。」

そう言ったビルスに意外と声を上げる悟空。
なんでも知っているとは言えないのだ。
特に前の世代と言えば、そうもなるだろう。

「と言うか、僕も此間初めて知った話なんだよ。」
「ビルス様だけでなく、この私でさえ華の力を秘めた
華神様をお目にするのは初めてのことです。」
「いい!?」
「かつてこの宇宙がまだ破壊神と界王神を持たなかった頃の世界。」

その世界の、中心を全王様が、そして大神官様達の下にいた者達。
それが華神、花を持ち力を持つ者。

「破壊と創造を司る元人間の神様です。
…まぁ、数十億年前に絶滅された。と、言われておりますが。」

まぁですが、本人の意思がなければ勿論無かった事にと
言ったウイスに戦えねぇのか?と悟空がまたぼやく。

「嗚呼勿論、戦闘は可能だそうですよ?
なんでしたら破壊神と界王神の大元と呼ばれておりますから…」
「は!?なんだそれは初耳だぞ!!」
「私だって大神官様にご報告させて頂いた時に
書物を調べさせていただいた次第です。
本来であれば下界の方々に話す内容ではありませんし」

なんなら抹消するべき程の超重要情報ではあるのだが、
それはもし、華神としての力が発揮されるようならば
正直今するには早すぎると思ったウイスが話を逸らす。


「それをしては地球のこーんな
美味しい食べ物も食べれませんし!」
「ええ…」
『じゃあ、私まだ神様じゃないってことですか?』
「ええ。本来私達神々、ましてや天使は中立であらねばなりませんが、
今回のような件は全宇宙で異例でして、少々介入させて頂きました。」
『介入どころかご招待いただきましたが。』
「お受け頂き誠に助かりますよ〜メルさん!」

あはは、そう苦笑いを零すメル。

新しい神様の誕生ともなれば、
宇宙としても均衡を保つ者としても黙ってはいられない。
ということか、成る程そりゃあそうなるか。

そう何処か他人事のようにメルは頷く。

「勿論メルさん、貴方の意志でのご決断です。
自信が無くて流れに身を任せていらしたのであれば
この話は無かったことに。」
『待って下さい!』

確かに、私は毎度人に話しを流す。
そうやって今まで生きて来た。
善悪も分からなくて、周りも分からなくて。
世界が暗くて、怖くて、
目を閉じて夢の中だけで生きて居られたら
どれ程良いのだろう、と思うくらいには弱い。

でも、それでも、変えたくないことがある。

『…私、見たんです。』
「何をでしょう」
『あの子と出会った。髪の毛、こうやって編んでたあの子に。』

それこそ、昨日。会ったのだ。

嬉しそうに、目を輝かせて抱きしめてくれた。
やっとお話が出来た。
嬉しいと心の底から笑ってくれて。

その笑顔をずっと見たかったのだと、胸の痛みが綺麗に取れた。


じわじわとウイスの目が丸くなる。

沢山お話をしたのだ。
神様のこと、この花のこと。

その子のことを、好きなことを聞きたくて
手を伸ばした。その手を見てなのか
嬉しそうに、でも何処か寂しそうに笑って消えた。

『ずっと、ずっと夢に見ておかしいとも思いました。
誰もが否定する、空想でしか会えない人に、神様に。
人前では否定しました。今だって口では否定する、でも。』

心の中ではずっと変わらない。かえたくない。
手放すことなど到底不可能なのだ。
此処に居ること、その存在全てを。

私は、ずっと寄り添って居続けたい。

願わくば、あの子が、夢で出会えたあの子のことを忘れずに。
私の記憶の中だけでも生きられる方法がこれしかないのであれば。


『記憶が消されるとなれば話は別です。』
「…記憶を消されても尚思い出すとは?」
『勿論思いましたが、それよりも叱られちゃいました。』


“貴方の力なんだから、貴方が決めなさい!”


そう言われた言葉に、
ウイスの目が少しだけ開いた気がした。


『神様がどういうことをするのか分かりません。
でも分からないまま放置するつもりはないのです。』
「メルちゃん…」
『私が居る事で、本来の天秤が戻るのであれば。』

あの子が言ってくれた意味を、私は知りたい。

『私は神様にだってなります。』
「…だ、そうです。」



全王様、大神官様。


そう言ったウイスに、ビルスや
様子を見に来ていた界王神が驚き跪く。


「へ〜君が新しい華神?」
「華神?なにそれ〜」
「破壊と創造を止めることの出来る神の一人です。」
「お父様…!」
『おとうさま?』

首を傾げたメルはチラリとお父様と呼ばれた人を見た。
ペコリと下げた頭に驚き、思わずウイスの背中からぺこりと頭を下げた。

「無礼をお許し下さい」
「いえいえ。初めましてですね。お二人とも。」
『はじめ、まして?んん?』
「っちょ、おい!」
「メル!?」

メル、と大神官がつぶやいた言葉に、メルはうんと唸る。
じろじろと周りを見て、何かと聞いた大神官に、えっととつぶやく。

『どこかで、会った気がするんです。
…ううん、すいません、きっと、人違いですよね。』
「…いや、何処かでお会いしたかもしれませんね。」
『え?』
「……いえ、気にしないで下さい。」

寂しそうな目をした大神官に、じゃあとメルは言う。

『お久しぶりですって、いいます、ね?』
「…っ!、ええ。お久しぶり、ですね……メルさん。」
『…うん!なんかそっちの方がしっくりきますね!!』

なんでかさっっっっっぱりわかりませんが!!!
そう笑うメルに、意外とメリアはぼやく。

「私以外でさっと近づいて話すなんて…
ひょっとして本当にあったことあるのでは?」
「在り得なくもない話ですよ。
大神官様はとても長くこの世界を管理しておりますので。」
「へぇ」


「…私のことは夢で見えましたか?」
『…白い髪の長い人なら、あ、でも大分うろ覚えですが。』
「ほお、それはそれは。」
『私、神様でも良いのですか?』
「メルお前!!」

チラリと見た大神官に声を上げたビルスが
すぐに頭ごと地面にめり込ませて下げた。

「良いのです、ウイスさん。」
「はい。」
「…この方を貴方に預けます。よろしいですね?」
「…かしこまりました。」
「メル?メルっていうのね?」
『えっ?あっ、はいそうですメルですメルですよ?』

お兄さん何方様で?全王様です。わぁ偉い絶対偉いねぇ。
そう呑気な声で言うメルに、全王様である二人がくるくると回る。
かえってきたねぇ、お帰り、お帰りと言う二人に、メルは首を傾げた。

「全王様、今はまだお帰りになられていませんよ。」
「どうして?」
「どうしてどうして?」
「まだ、旅の途中だそうです。」
「そっかぁ、なら仕方がないね。」
「そうだね、仕方がないね。」
『旅の途中?』

気になさらないでください。そう微笑む大神官にメルは更に首を傾げた。

全王が手を取る。
その手に、ほんの一瞬だけ前が見えた。

嬉しそうに、優しそうに。
そうする姿に、メルも同じようにする。
二人いた全王の、片方の手を取って。

「っ!!!」
『…よしよし、大丈夫だよ。』


ー寂しくなんて、なぁんにもないんだよ。


そう言って頭を撫でて、
ぎゅっと抱きしめたメルに
全王が目を丸くして
ほけっとして固まっていた。


「っメルお前何を!!」
「いーの、いー‥あれ?どうしたの?僕」
「…ねぇ、メル。」
『ん?』
「はやく思い出して、こっちにきてよ。」



そして、僕と遊んで。


そう言った全王に、夢で言った人と
同じように答えて笑ってみた。



『も〜仕方がないなぁ。寂しがり屋だもんね?』



いいよ。



そう言ったメルに、

やったーと嬉しそうに全王が笑った。