ひとりきりの食卓




『悟飯君〜昨日は夜遅くにごめんね?
お詫びと言ってはなんだけどクッキー持ってき』







「やぁ。」








『』









「やぁではありませんよ?
ビルス様、きちんとご挨拶をなさってください。」
『?』
「別に良いだろ?ウイス、お前が説明すれば。」
『???』
「まぁ、なんてはしたない。
こ〜んな破壊神様がこんな星に居られてなりますか…」
『ごはんくん?このせいぶつはなんじゃらほい?
なんかソフトクリームのお兄さんとねこちゃ』
「ひ、一先ず上がって下さい!
クッキーありがとうございます!」

そうメリアがサラッと破壊されそうな言葉を
口にしそうになったところで悟飯がストップをかけた。


++++++++++++

「改めまして、初めまして。
此方はこの宇宙の破壊神であるビルス様。
私は付き人のウイス、と申します。」
『わあうちゅう』
「ビルスだ、この僕に呼ばれるとは光栄に思うと言い。
なんならわざわざ出向くなんて
こんな滅多なことなんぞ在り得ないからな?」
「ですが最近は地球にちょくちょく
遊びに来られているではないですか。」
「煩い!それはそれ!これはこれだ!!!」
『わあはかいしん』


「…なんだか現状理解出来てなさそうですね?」
「そりゃあそうなりますよ普通。」

そう苦笑いをするビーデルに悟飯も苦笑いを零した。

現在食卓にはウイスとビルスが横に座り、
ウイスの前に悟飯がその隣ビルスの前にメリアが座っていた。
ビーデルは紅茶を入れて皆の前に振舞っていた所だ。

メリアは急にとんでもなくスケールのデカい話に
脳内がぐるんぐるんと回っていた。

いや何故私の所にというかお前達は嘘を言う…奴ではないな。
いや特にそこの輪っか持ったソフトクリームお兄さん絶対違う。
あの人絶対敵に回しちゃ駄目な奴だ。
戦闘系で一番猛威振るうパターン。

それに気付いたのか、ウイスがおおと目を丸くして驚く。

「…おや、良く分かっていらっしゃるではありませんか。
ビルス様や悟空さんよりもずーーーっと賢いですね。」
『わたしのこころをよみやがったぞこれはゆめだな』
「ちょ、メリアさん!戻って来て下さ〜〜い!!」
「(そうだよメリア!!此処は現実だって!!
折角ヒントがこっちから来てくれたっていうのに!!)」
「…ん?」

半泣きの悟飯にメリアは天井を見上げていた。
もう現実逃避するしかないではないか。
だって脳内見たぞこのお兄さん。
あと私失礼な事めっちゃ言いますけど本当に申し訳ないです。
悪気はないんですただ気になって思ってしまうだけで。

「…構いませんよ、貴方はとても良い魂をお持ちですので
といっても、いささか話が進まないのも困ります。」
『あっはいすいません。戻しますね。』
「ええ、戻るものなのそれ……」
『気合でなんとかする!!』

ということで、そう意気込んだメリアが少し前のめりになって話だす。
それに少しシャキッとしたウイスとビルスに、メリアは目を見て話した。


『改めまして、初めまして私メリア・アウゲンと申します。
此方は幼馴染のビーデルとその夫の悟飯君です!
私はただの幼馴染〜〜で〜〜んん〜〜〜〜…やっぱり夢でいい?』
「メリア!!駄目だってダメ!!!」
『はっ!』

「おほほほほ!構いませんよ、
可愛らしいお方とお噂はお聞きしておりましたが
これ程可愛らしい方だとは思っておりませんでした。」


……それに、


「どうやら面白いお客様もお連れしているご様子ですし。」
『お客様?』


とんでもないことを言っている気がするが、
否定する気にすらなれないほどに現状がおかしい。

現在紫色の猫ちゃんみたいな人間らしき者と
ソフトクリームみたいな
髪の毛のでっかい青白い人らしき者が
目の前に座ってうちのクッキーを食べている。

前言撤回

この地球を含めた宇宙の神様がこの幼馴染の食卓に
私の席の目の前でスカウトしにきました的な感じで
ちょこんと座っているというのが如何せん
シュール過ぎてだな。


もう話がぶっ飛び過ぎて、相手の頭がおかしいのか
夢なのかの究極な二択しか思いつかなかった
私の脳内の処理がいけないのだ。


というか待て



『…ウイスさんっておっしゃいましたよね?』
「ええ、なんでしょう?」
『あの幾つかお聞きしたい事が』
「構いませんよ?お話出来る限りは致します。」
『その…先程破壊神と仰られていましたが
いや、無礼ですよね待って流させて』
「いいですよ、そのまま話して貰っても。」

恐らくその疑問は的中します。
そう言って紅茶を飲むウイスに
メリアはまさかと顔を青ざめる。

『ウイスさん本当にソフトクリームお兄さ』
「「ぶっ」」
「ウイスさん!?」
「ちょ、ティッシュティッシュ!!」
「ぷっはははははははは!!!!」

あ〜無理無理無理と笑いだすメルに、
こら叫んだらバレるでしょうがとメリアは脳内でメルに怒る。

そう騒ぐ周りに構いませんよとハンカチで口を拭く彼に
いささか悪いことをしてしまった気分だが、正直楽しい。
申し訳ない、本当に申し訳ないけどそっちは違うのね。

『すいません』
「いえ…予想の斜め上をいかれて少々驚いただけですので。
そんなことよりも、そちらのお客様とも是非ともお話がしたくてですね。」
「ぴ」
『………この子が、み、えるん、です?』

そうメリアはメルの方を指さして言う。
それに、ええ勿論とウイスははっきりと告げる。

「貴方、とんでもない力をお持ちですね?それもかなりの質を持った者。」
「ぴ、ぴ、ぴ、ぴ」
『あの……凄く泣きそうっていうかもう泣いてるんですけど。』
「ほほほほ、泣かせるつもりはなかったんですがねぇ。」
「ウイス!さっきから何処を見て話して」
「嗚呼、皆さんには見えないのも当たり前でしょう。
特別に、私が貴方を皆さんに見えるように、して差し上げます。」

あっそれは要らないと言ったメルだったが、
そう否定を述べながらも、ウイスの杖が彼女の方に向いてしまったのが運の尽きか。

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
『っメル!!!!』
「おや、メルさんと仰るのですねぇ。」
『あっ!しまった!!!!』
「ああ!メリアああああ!!!この人怖い!!!この人すげぇこわい!!!!」
「おやおや、怖がられてしまいましたか。」

ニコニコとするウイスに、メルはメリアの背後でずっとびくびくしていた。
その背後に、気配を察知したメルがバッと横に避ける。

「へぇ、僕の気も察知できるとは、君やるねぇ?」
「!?!??!?!?!?!」
『あの、お二人とも、メルを困らせないで頂けますか。』
「失礼」

口をはくはくとして困って涙目のメルに、
メリアはため息交じりにお願いを二人に告げる。
二人とも気付いて、そっと席に戻る。

メルは怖くて後ろに隠れてとまらないので
股を開いて座ったメルの股の中に腰を下ろして座ることにした。

『それで、何の御用兼でしょうか?』
「此方の用紙を拝見させてもらいました。」

そう言われて差し出された用紙をみてあ!とメルが声を上げた。

「私も描かれてる!わあ可愛い〜〜〜!!!」
「これはメリアさん、貴方が描いたものですか?」
『ええ、間違いありません。』
「此方の方は、ご存知で?」

ウイスが指を指したのは、青緑色の少女の姿をした者。
それにはしめたと思ったメリアがいいえと答える。

「ですがこの子と出会った時くらいから不思議な夢を見るんです。」
「…へぇ?」
「ビルス様、貴方に会った後に、メルと出会ったんです。」

大きな大樹の、木下で。花畑が敷き詰まった、その場所で。
そう言ったメリアに、なに!とビルスが大声を上げる。
それと同時に、ウイスも少し驚いた顔をした。

ただ、ウイスは違う方に驚いたようで…

「どんな樹か描けますか?」
「なんだ、お前行きたいのか?」
「ビルス様は黙っていてください。」
「ぐ」
「…ええ、描けますけど。」
「すいません、描いていてもらっても構いませんか?」

その間に、とちらりウイスがメルの方を向く。
それに気付いたメルが、数秒見つめた後、はっと声を上げて
メリアの背中に身体をぴったり付けた。

なんなら抱き着いて腹元に力が入ったのか、
ぐえっとメリアの悲鳴が上がった。

「メルさんと、お呼びしても?」
「…う、うん。」
「私達が何者か、ご存じでしたか?」
「…ごめんなさい、私。」
『彼女、記憶が全くないんです。何なら彼女と約束したくらいなんですよ。』

貴方の知りたい記憶を、私が探してあげる。

そう言ったメリアに、ウイスは項垂れるように答える。

「…そうでしたか。」
「……ウイス様?」
「ウイスでもよろしいですよ?メルさん。」
「う゛っそれは流石に…申し訳ない気がして。」
「なんでしょうか?」
「えっと…その、どうして、私に気付いて?
というか幾つかなんちゃらとか
言ってた気がするんですけど、何の話でしょうか。」
「…貴方が気付いているかどうかわかりませんが、
貴方の中には多くの魂が存在しています。
その数、貴方を含めて12もの数が。」
「じゅっ!?!?!?」
『…待って下さい。それは流石におかしい。』

おや、何故ですか?そうウイスが言うのに、
描いていた手を止めてメリアが言う。

『私はメルから見せて貰ったんです。
記憶があやふやなのは全部で10しかなかったはず。
私のを含めても、2つはおかしい。』
「それが魂と一致しているとでも?」
『そのうちの一つが、この青緑色の子なら、
知っているのならば、教えて下さい。』

きっと、メルが一番知りたいだろうから。
そう言ったメリアがメルの方を向く。
少し俯いて、いいよ、と項垂れる。

「話してもいいことなさそうだし…」
『メル…!諦めないでよ!!
私を選んでくれたんだから、
私だってきっちり全うしたいもん!!』
「彼女の仰る通りですよ、
メルさん。見た処貴方は非常にお優しい。
メリアさんがこれ以上傷付かないようにと
踏みとどまってくれているんでしょう?」
『え?』
「…う」
「ですが、それは彼女を傷つけることでもあるのですよ。」

ちらりと見たウイスに、ご、ごめんね?とメルは謝る。
そんなの、いいのにとメリアは思った。
綺麗に描かれた樹木に、やはりとウイスは睨む。

「知っているのか」
「ええ…ですが、これが本当であれば…まずいですねぇ。」

非常に。そう言ったウイスに、メルは肩をすぼめる。
大丈夫と言う様に、メリアはメルの手を握ってやる。
前を見ていたメリアの目を見て、メルは少しだけ目を丸くしてみていた。

その目が、何処までも前を見ていた感じがしたから。

「それはなんですか?」
「…その昔、この世界で、まだ破壊神や界王神どころか、天使すら産まれていなかった時のことです。」
「そんな時代があったのか。」
「ええ、その時代、神になる者達が少なく、作っても飽和して消えており、非常に管轄が厳しく、難しい現状でした。」

そんな時、一つの制度を取り入れたのです。

「想いを胸に抱き、その想いを願いに変換し、力に変えた神々が居ました。」
「想いを、胸に…」
「その力は、願いが華に変わり、神をも超える様な力を持つ者。
当時神々は彼女達のことをこう呼びました。」


華の神、華神


その言葉に、メルの目が見開いて、口を少し開けて固まる。
まるで、その答えを待っていたかのように。


「力を使えば髪色が白に変わると聞いています。
…ですが、居ない処か、こうしてお目にかかれないはず。」
「なんでだ」
「華神らは全員消滅しているはずなのです。」
「…っ」
「詳しい話は知りませんが、こっそり聞いた話ですよ。」

私も当時そこで生きていることではないですし。
もし知っているとすれば、お兄様方や、大神官様辺りでしょうか。
そう言ったウイスに、その人って会える?とメリアが言う。

「メリア、いいよ、」
『駄目だよ!メルのことを知っている人達なら、
貴方の知りたい記憶の子達に会えるかもしれないでしょ!?』
「でも、華神って人達が咲かせた樹じゃないんですか?この樹って。」
「…ええ、実際に生えている場所も保管されています。」
『なら!!』
「ですが、その場所は現在閉ざされた場所です。
そうそう聞いておいそれと入れる場所ではありません。」

それに、その場所は私ですら入ったことがないのです。
すいませんと謝られて、いえ、とメリアが顔を下げる。

「…まぁ、それはただの天使や人間ならの話。」
「え」
「本来天使は下界の人間に介入するべきではありません。
そう、思っていました。そう、貴方に出会うまでは。」

メルの方を向いて言うウイスに、メルは首を傾げたままだ。
こてんと左に曲げて目をぱちくりとしている。

「メリアさん、メルさん。お二人が良ければ、是非我々と共に来てみませんか?」
「っウイスさん!!!!」
「すいませんビーデルさん。ですがことがことですので。」
「そのメルって子だけでも駄目なんですか?」
『駄目だよ、ビーデル。』

そう凛として言うメリアに、ビーデルがたじろいだ。

『私はもう決めたの。メルが、この子がどんな子でもいい。
例え、もうお仲間も人っ子一人居ない、神様だって、いや
寧ろそっちの方がもっと駄目。』

独りぼっちで、行かせるなんて、許せない。

『私はこの子が笑って前を向いて一人で歩けるまで
一緒に歩いて共に記憶を探そうって決めているの。』
「でも仕事は」
『そりゃある程度はするけど辞める!
どうせ元々やめるつもりで相談しにきたんだし。』
「そうだったの…」

そうだ。

『ですが、すぐにはいとは言えません。』
「何故ですか?」
『貴方方がメルを狙った敵かもしれないし。』

力が込められるメリアに、勝てる相手じゃないことくらい、分かるだろうにと言うビルス。
それにはメルがぐっとメリアの身体に自身を押し付ける。

「もし、メリアを傷つけるなら、私が許さないから。」
『メル…』
「こんな優しい、人間を、傷つける神様なら、そんなの要らない。」

私が、直接下すもん。

そう怒りを見せるメルに、可愛らしい威嚇だねぇと言われる。

「僕よりもず〜〜っと弱いくせに。」
「うう」
「ビルス様、余りてがわない方がいいですよ。
なんだか彼女はもっととんでもない者の様な気がしますので。」
「とんでもないってどんなやつだよ」
「いやよくわかりませんが…とにかく、情報をお伝えしますね。」

此方の女性はとウイスが青緑色の子の説明をする。
その間、メルはふとちらりと、ウイスの姿を見ていた。

少し身体を動かし、椅子から降りる。
とてとてと移動し、ウイスの隣ではないものの、
メルと向い合せになる位置に机の下から覗き込むように座った。

きょろりと目だけがウイスの方を見る。
それにクスリと笑ってウイスは会釈をする。
メルは嬉しそうにぱあと華が咲く様に笑って話に入りだした。

どうやら打ち解けたらしい。
ほっと一息つく。


遠い遠い昔、それは三億年も前の昔。
第七宇宙で、ビルスが眠りに入る前のお話。


「メリアさんはファンタジー系のお話は好きでしょうか?」
『え?ええ、割とたしなむ程度には…?悪魔とか天使とか好きですよ?』
「単刀直入に言います。メルさん、貴方は華神と呼ばれる者の
生まれ変わりか、何かだと思われます。」
『め、メルが…う、生まれ変わり…』
「ぱわ」
「此方の女性は、昔ビルス様に懐かれて遊んでいらした者です。」

もう今は、そう目を閉じるウイスに、メルが胸に手を置いた。

「ねぇ、ウイス様」
「なんですか?」
「その人ってどんなお名前だったんですか?」
「君と同じ名だよ。」
「ビルス様」
「メル、彼女はずっと、そう言い聞かせるように言っていた。」

本当の名前は、別にあるんだろうがな。
そう言ったビルスに、メルはメルと続けて言う。

「メル…メル、そう、メル、か。」
『メル…?』
「ううん、なんでもない。」

そう笑って、メルは言う。


++++++++++

「では我々はこれにて。」
『私達も一度帰るね。』
「ごめんね、急に話が変わっちゃって。」
『あはは、ちょっとこの数日で話ぶっ飛んでるから落ち着いてくる。』
「メリア…」
『嗚呼ウイスさんはいこれ。』
「いいんですか?」
『欲しそうにしてた感じがしたので。』

めるもおおおそう言うメルに、
貴方は後で描いてあげるからと言って笑うメリア。
後でお絵描き大会しよう!そう言うメルだったが

ちらりと身体を見渡す。

「嗚呼、そちらの状態がお気に召したようでしたら暫くそのままでも構いませんよ?」
「え!!!いいんですか!」
「ええ、メリアさんも、そちらの方が良さそうですし。」
『…私は別に』
「それとも寂しいって?」
『っな!ち、違います!!』
「メル此処にいるよ?」

そうメルはメリアの服を掴んで首を傾げて言う。
白いワンピース姿は、何処までも可愛らしくて。
そして、儚い印象を、強く見せてくる。

『儚いなあ』
「メリア?」
『…いや、なんでもないよ。』

前に、儚いって意味を持ったものがあった。
でも、その言葉を私は忘れた。
それでいいと、言われている気がして。

今度こそその場を後にした。