「いやぁ・・・退院できてよかったですねぇ。」
あの後無事一命をとりとめ退院した龍宮寺君。
「・・・お前。院長の娘だったんだな。」
「いや?違うよ??・・・なんていうか、おじいちゃんが院長で・・・お父さんは普通に救命専門だし・・・、」
「変わんねぇだろ」
まぁ、確かに。とにかく私の家系を説明すると母方のおじいちゃんが病院の院長で母は弁護士で父は医者。肝心の母会社にならなかったのは理系より文系の方が興味が勝ったから。因みにふたりの出会いは病院だったらしい。ロマンもクソもない。
「最近は少し忙しくてね・・・夏休み明け初めのテストもあるし、勉強ばっか。」
「あ、んならまた場地に勉強教えてやってくんね?」
「あ〜ちょっとそれは無理かなぁ・・・。」
「な、(名前)。俺ここ分んねーんだけど。」
どうしてこうなっちゃったのかなぁ。断ったはずなんだけどなぁ。
「うん、そっかぁ・・・ここはねぇ、かけ算だよ??」
「ふーん、15×5は・・・なんだ?」
「掛け算使ったら???」
彼はほんっとうに勉強が出来ないらしい。
あ、これはちょっと自慢なんだけどね、前回の期末テストは念願の一位!!やっと三ツ谷に勝てたんです!!・・・まぁ、あれやこれやで三ツ谷が勉強の時間取れなかっただけなんだろうけどね。
「おい、(名前)。あってるか!?」
「あ、合ってる!!凄い、多分凄いよ!!!」
そう、多分。だってこれ中一の勉強だし・・・、
「いやぁ、三時間ぶっ通しでやった甲斐があったね!」
「(名前)、東卍は好きか?」
なんだろう、いきなり。
東卍が好きか?そりゃ、まだ認識できてない人沢山居るけど東卍は好きだよ。
「オレはな、一人一人が皆の為に命を張れる東卍が好きだ。」
場地くんは東卍大好きだもんね。
彼の行動は割と不可解でまみれているが直感的な行動を除けば東卍に関わる人のための行動であることが多い。
うん、場地くんを夏休みの自由研究にしようかと参考に入れた結果がこれ。
まぁ、結局著作権もあるし自由研究にはしなかったけど、東卍に対する気持ちが人一倍強いのは確か。
「・・・そっか。私も好き。」
「んで。これはどうやってとくんだ?」
「あれこれさっき解いた奴の類似問題のはずなんだけど・・・、」
まぁ、いっか。忘れないように何回も教えればいいや。
「・・・ここはね、こうやって解くんだよ_____」
◆
「え・・・場地君が、東卍をやめた?」
私がこの事実を知った事の発展は、私が彼に電話をかけた事だった。しかし、何日かけても場地君は電話に出なかった。そして私が龍宮寺君に電話をかけて見れば・・・。私が中間考査で引き籠ってるうちに何が起こったんだ、果たして。
「あぁ、大丈夫だ。場地は、絶対取り戻す。」
「・・・うん。場地君ね、バカだしどうしようもない脳みそ空っぽ野郎だけどね、すっごく良いやつなんだ。」
誰よりも、東卍を愛してるのは、場地君だから、
「ぜったい、取り戻して。・・・佐野君にも言っておいてね。出来なかったら・・・・出来なかったら、怒るよ、総長って。言っておいて。」
頬を伝う何かを抑えて力強く、まるで言い聞かせるように言った。
「あぁ。」
電話が切れ、無機質な音が流れる。
どうして、場地君があの場地君が東卍を抜けたんだ?
内輪もめ?いや、信じられない。内輪もめだとしてもやめてしまうだなんて考えられない。
あの時、場地君がで言った言葉。
オレはな、一人一人が皆の為に命を張れる東卍が好きだ。
今でも覚えてる。アレが嘘な訳が無い。寧ろ嘘だったら私の目は節穴だ。何を見てたんだって話になる。もう人間不信になるわ。
そんな、素敵な言葉を聞かせてくれた場地君。
私はそんな彼の言葉が好きだ。私は東卍が好きだ。信念を通してるあいつらが大好きだ。
だから、
「無事、戻ってきますように。」
未だに、電話からは無機質な音が流れていた。
◇◇
テーブルに置かれたオムライスは冷え切っていた。
「場地君が・・・どうして、ねぇ、どうして言ってくれなかったの!抗争だなんて聞いてない、私なんも聞いてないのに!!そんなの、あんまりだよ・・・。」
「巻き込みたくなかった。」
「・・・分かってるもん、」
わたしだって、分かってる。私一人が何かして場地君が助かる訳じゃなかったくらい分かっている。でも、でもさぁ・・・、
「友達じゃんか、私たち。」
今こうしてただただ君を責めてしまう私を許してくれ、佐野君よ。
「(名前)、、、」
「場地君ね、東卍が好きだって言ってた。私はそんな場地君が素敵だな、って思ったの。そんな場地君の隙がずっと続けばいいなって思ったの。だから、場地君が脱退した時、本当に悲しかったよ。どうしてって思った。だから、だから・・・うっ、」
「ごめん、場地を助けられなくてごめん。」
「あ"や"ま"ん"な"い"で"よ"・・・、分かってる、佐野君が大して強くもない私を巻き込みたくない気持ちも佐野君が一番悲しんでるって事も、分かってるんだよ、私。ごめんなさいぃ・・・・うぅ・・・、」
人間は物事を知れば知る泣くって事を忘れる。少しずつ子供に大人っていう皮を被せていくんだ。でも本質は子供だから、どうしても耐えきれないものだってある。
「・・・佐野君は、居なくなっちゃダメだよ。君が居なくなったら、たくさんの人が悲しんじゃうから。」
私がポツリと吐いた言葉に佐野君はこくりと頷いた。これは、呪いだった。そうやって君を縛っていく呪いだ。仕方ないじゃんか。
「うぅ・・・やっぱり悲しいよぉ・・・悔しいぃ・・・、」
また瞳から水を溢れ出す私を佐野君は何とも言えない気持ちで見つめていた。
「(名前)もさ、居なくなんなよ。」
「・・・佐野君次第だもん・・・、」
こんなズルい女をゆるしてくれ、佐野くんよ。