モブに転生した




痛いのが、嫌いだ。
それは一部の人を抜けば皆一緒だと思う。実際、今まで私があってきた人で痛いのを好む特殊趣向の方はいなかった。そしてそんな私も無論痛いのは断固拒否である、何なら私は痛いという事に人一倍敏感な自信さえある。

と、前置きはここまでにして一番私が今!この場で!思いっ切り叫びたい事を一つ。
さて、何故、どうして、私が痛みに苦しみながら死ななくちゃいけないのだろうか!!そう、私・・・今さっき死んだのだ。何かでめっさ刺しにされて、何かで殴られて痛みに悶えながら死んだ。きっと私の遺体はさぞかし痛々しいであろう。
して、ここで一つ疑問が生まれる。どうして私は今こうして何事もない様に大地に立っていられるのか。
そして、その大地は・・・東京だった。それはそれは、ね。私は元々東京生まれ東京育ちの生粋の都会っ子なのだがどこからどうみても東京。少し違う所といえば・・・某コンビニの名前とか某スーパーの名前が少し違う所だ。あ、あと周りの人たちが時季外れの仮想をしているところとか。ハロウィンはもう終わったぞ。
つまり、私が推測される限り、私は輪廻転生を果たす、もしくはパラレルワールドへ行ってしまったと考えられる。というか、それしか考えられない。それ以外に何かあるのか?誘拐?否、あそこまで刺され殴られたら普通の人間じゃひとたまりもない。死、だ。大量出血でお陀仏だろう。
だから、輪廻転生か、パラレルワールド。まぁ、私はパラレルワールドだと思う。だってここまで似てるんだ、それに私・・・服装も見た感じ変わらない。うん、やっぱり、ここはパラレルワールドだ。

ぶっちゃけ、私の第一基準は痛くなければ、である。なので今この場で一文無しだけども痛くなければまぁいいやと思える、いや、思うしかないのか。












「い、いやぁぁぁぁ!!!!人が、人が死んでる!!!!!」
・・・?事故か、事件?通り魔とかだったらいやだなぁ。私はほんの少しの野次馬精神で騒ぎの方へと顔を向ける。
「な、何が起こってるの!?!?」
「に、逃げろォぉぉ!!!!」
まさに、阿鼻叫喚、地獄絵図。
沢山の人がこちらへと走って行く。そして、間に合わなかったり、遅かった人たちが後ろから順に、潰れ、血だまりになっていく。しかし、そこには全く何もいないかのようにしか感じられない・・・・他の人たちには。

そう、私には。私だけには恐ろしく見にくい化け物がこの場で羽を伸ばしているかのようにしか見えなかった。

あ、終わった、と思った。私は見えるだけで何一つ出来ないのだ。逃げる事しか出来ない、無能。それなのにどうしろと言うんだ。いや、見えるだけマシなのかもしれない。だって避けられるんだから。
そして私、今現在この地獄に見覚えがあった。・・・呪術廻戦。あの某少年漫画雑誌の人気連載漫画、呪術廻戦。私は漫画にそれほど詳しくはない、しかしながら知っている少ない漫画の一つだ。そりゃまぁ色んな雑誌で表紙だったり、色んなテレビ番組で紹介っだったり、と有名だから。だから私が分かるのは精々その化け物が敵で、最強先生って感じのイケメンがいて、私が本当に無力だという事だけだ。

先程言ったように私は痛いのがとてもとても嫌いだ。ぶっちゃけ死より嫌いだ。
この手の漫画はきっとそうだ、主役級の奴ほど悲惨な目に合っていくやつだ。絶対そう。初めてテレビで見た時絵柄で確信した、これは主人公の大切なやつからどんどん死んでいって最終的に主人公病むやつだ、と。
そして、この手の漫画で一番生き残るのは決して、絶対に、主役と関わらない事。それしかない。主人公は流石に分かる。あの、えっと・・・・ピンク頭の男の子?多分それだ。
つまり私は彼に関わらず、誰よりも逃げ足で逃げていくことが生き延びる一番の手立てってわけか。
そうと決まったら、逃げよ。

きっとこれまで一番の全速力の私。火事場の馬鹿力とでもいえる気がする。













「本当に、本当になんだんだ、日本はどうな、」
目の前の低い声が途切れた。
逃げて逃げて逃げていた。勿論東京は凄く広い。なので見えている私以外にも見えなくて化け物がいないルートを進むやつもいる。
そして、私の前で、今、肉塊になった彼も、その一人だ。いやまぁ、私よりに前にいた人、全員死んだ。
思わず頬が引き攣り、血が引いていく感覚に襲われる。可笑しい、可笑しい。今のでパッと50人くらい死んでいった。なにこの地獄のデスゲーム・・・。呪術廻戦ってデスゲームだったの・・・??なにそれテレビ全然言ってること違うじゃん!!!!少年が自分の信念を貫きながら化け物を倒していくダークファンタジーだっつってたじゃん!!!!!!!!ダークファンタジーゆうに超えてデスファンタジーだわ!!!!

「ど、どうなってるんだまっ、」
嫌な予感がしてパッと後ろを振り向く。今度はそっちだったか・・・私より後ろの奴が全員またもや肉塊となっていた。運よく生き残ってるのは私の隣ら辺にいた数人と、私。
死んでまたすぐに死ぬとか何・・・??リアル鬼ごっこかよ、ここで死んだら次はどんなデスファンタジーなのかな!?!?

「い、いやだ、いやだよ、し、死にたくない!死にたくない!!死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、」

もう既に私より限界を超えちゃってる人はいるらしい。頭を押さえ狂ったように呟きだす人、

「うっ・・・もういやだよ・・・いえにっ、かえりたいよっ・・・・」
泣き狂う人。人って言うのは自分より取り乱してる人を客観的に見ると冷静になるらしい。私達は彼らを見て、一気に頭が冷えた。デスファンタジーってなんだ、デスファンタジーって。

「ふぅ・・・っ、」
あ、死んだっと思った。背中に現れるヤバい、気配。これはダメだ。死ぬ、もう死んだ。圧倒的強者に出会った感覚、どこかでそんな感覚があると聞いてその時そんな事は中々ないだろうと思っていた私。なんて馬鹿なんだ。手を振るえ、足も震え、後ろを振り向きたく、ない。でも動いたら絶対に殺される。
まるで、蛇に睨まれた蛙だ。どうすれば、いいんだろう。考えろ、考えろ、泣くな・・・泣いたら思考が鈍る。絶対に、生きないと。
「い、いや・・・ひっ、」
あ、一人死んだ。ボト、何かが落ちる音、そして生臭くて嗅げば噎せ返りそうな気持ち悪い匂い。人間が、死んだ。そう考えるにはほんの少し時間がかかった。溢れてしまいそうな声と涙を無理矢理抑える。ダメだ、絶対に泣いちゃいけない。泣いたら、死ぬ。
「も、もういや!!!!!いやだよかえ、」
また一人、死んだ。やだ、死ぬ、私も死んじゃう、嫌だ、どうしよう、死にたくない。動悸が一気に荒くなる。私の番だ、次は私が死ぬそう考えると胸が痛くて、言葉ではとてもじゃないけど表せない恐怖に襲われた。


「ほぉ、貴様・・・呪力量が多いではないか、小娘。」
・・・人の言葉を喋る、ナニカ。そいつが人間なんて生易しい物じゃないのは肌で感じる。
「・・・。」
「この宿儺に無視とは面白い、小娘、名は。」
言わなきゃ殺されると思った。
「坂田天音、です。」












偽名だけどバレてないかな!?!?!?
思わず坂田とか私が学生時代元カレの家で読んだ某下ネタ多すぎてクレーム絶えなかった漫画の主人公とこの前姪っ子の家で読んだ某鬼の漫画で出てきてた名前だけど大丈夫かな!?!?!?!?

「ほぉ、平凡な名だな。」
あーーーー、騙せちゃった!!騙せちゃったよ!!!!!バケモン割とチョロい!?チョロかった感じ!?!?!?








こうして、私のデスファンタジーライフは、幕を開けた。






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