人々の頭上に謎のパーセンテージが乗っかってるのだが



ある日、私に謎の数字が見えるようになった。

その数字、というのは人々の樹上に乗っており、人によって違う。
例えば、知り合いの頭上は46%、35%、14%・・・
数字が何を表しているのか私にはさっぱり分からなかった。その上私以外にはその数字は認識できないらしい。
けれど、驚いていたのは最初のうち。半日すれば他人に見えない物を気にしても何ら意味はないと私は気にする事をやめたのだ。が、



そう。友人の謎のパーセンテージが日に日に上がっているのだ。
最初は65%だった。でも日が上がるごとに69%、75%、80%、86%、91%・・・
いや、全く理解できないんだが。でも、もし・・・100%になってしまったらどうなってしまうのだろうか。
もし、死亡確率だったら・・・?いや、死んじゃうじゃん。
そんな不安は日に日に募っていき、耐えきれなかった私は彼に尋ねてしまったのだ。
「・・・ねぇ、一虎さ。アンタ、最近・・・なんか、あった?」
「・・・は、は?別に・・・何も、ないし・・・。」
だよねぇ。じゃあ、この数字は何なのだろうか。

その日、私は数字の事実を知る事になるのだが。























「何の数字なんだろう・・・え?、え??」
帰り道だった、河辺の石ころを蹴りながら帰路について疑問を深め思考を巡らせていた時だった。
そう、100%がいたのだ。頭上に100%を乗せた男が私と逆方向へと歩いていた。
男は酷くやつれており、目に隈を浮かべてはうわ言を呟いていた。
これ・・・本当に死亡確率説が濃厚なのでは・・・???
私はそんな考えを消し去るように夕食の事を考えながら自宅へと帰った。

「ただいまー!」
玄関で声を出せば無言が帰ってくる。親は基本共働きで遅くまで家にいない。少し暗く誰も居ない静寂な空間は慣れた光景だった。
帰ったら、手洗いうがい。きつく言われてきた言葉を守り、洗面台へと駆け込む。
この数字の対象者に私は含まれてないらしく、鏡を覗いても私自身の頭上には見えない。
それを考えると益々謎が深まった。
リビングへと入って私はまずテレビのリモコンを手に取り電源ボタンを押す。この時間帯なんてニュースぐらいしかやってないのだが、これも習慣の一つだ。
私はいつも通り今日も電源ボタンを押した。
「・・・え?」




覇気のない言葉が出てしまった。
なぜなら、

『妻子を包丁で刺殺。40代男性。現在逃亡中。』
そんなテロップと共に、先程私が見た男がテレビ画面に表示されていたのだ。




私は思わずリモコンを床へと落としてしまった。




男はその日の夜、無事に警察のお縄に着いたらしい。
しかし私はずっと眠れずにいた。
なぜなら前に言っただろう、日に日に友人のパーセンテージが上がっているのだ。
つまりは・・・
マジかよ。友人はもしや、犯罪を犯そうとしてるのか?
そう思っただけで私の頭はぐるぐると混乱するだけだった。
どうすればいいのだろうか。当り前だが友人に法を犯すような真似はして欲しくない。でも、どうすればいいのか。
布団を被って私はただ、黙々と思考を巡らせた。


「・・・止めなくちゃ。」
もっと考えることがあるはずなのに、ただそれにしか思いつかなかったのだ。









それから朝になって一時間半。死に物狂いで考えた私は、
友人を尾行することに決めた。
友人は少しばかり・・・いや、大分イカれているが馬鹿なはずではないので何かしら計画は立ててるはずだ。
友人の動きに合わせて私も動く。学校サボってまで尾行してるんだ。何かしら結果があって欲しい。
コンビニにいた友人が動き出す、行き先は・・・商店街?ぶつぶつと何かを言ってる彼に合わせて私は耳を澄ませた。
「マイキー、喜ぶだろうな・・・」
「場・・・・も誘わなきゃ・・・そ・・・」
「マイキーのためなんだから、盗みくらいやっても大丈夫だよな。」
うっわ、どうしよ〜〜〜〜〜。
話はなんとなく分かった。友人の友人である佐野君は凄い不良だ。異常に強い。彼は人外だもんな。
そんな彼の誕生日は確かに近かったよな、うん。
まぁ、話を纏めると。友人は佐野君の誕生日プレゼントにバイクを渡したいらしい。しかし学生にそんな金はない。だから・・・盗みに入る。
あ〜〜〜〜〜、そういう事ね〜、うん。
いや、倫理観どうなってんのよ!?
アイツは頭可笑しいのは知ってたよ?まぁ、8年の付き合いだし。
でも普通そこまでするか??
てか、見た感じアイツが行こうとしてる店って・・・





佐野君のお兄さんの店じゃね?
私は恥ずかしながら佐野君の家の道場通っていた時期がある。しかし、大体はサボっていた。
そのサボり相手が佐野君のお兄さんである真一郎君だったのだ。
な、訳で真一郎君とも結構仲が良く月一で食事にも行く仲だ。
そして、佐野君は真一郎君が大好きだ。
態度はつんけんとしてるが懐いていることは明らか。
そんな兄の大切な店から盗んだバイクなんていらないだろ!!
嬉しくねーだろ!!!
でも、多分・・・
アイツそれ知らないんだろうなぁ。
「明日の、夜・・・楽しみだな・・・」
今日の友人のパーセンテージは相変わらず100%に近い。
きっと明日・・・18日の夜、100%になってしまうんだろう。
全てを察してしまった今。私が何もしないわけには居られなかった。








「やっほー、久し振りっすね。」
「んだよ。こんな夜に呼び出して。」
私は今、真一郎君のお店のバックヤードへといた。
「あー、、あと少しで佐野君の誕生日じゃないっすか?だから相談したくて。真一郎君は何あげるの?」
「あ?俺はな、バイク。」
え・・・。ニヤリと笑う真一郎君の言葉を聞いた私は少し、胸が締め付けられるような痛さを感じた。
アイツらの盗もうと知れいるバイクは佐野君への真一郎君への誕プレなのだ。
私は、固く拳を握り締めた。



ガタンッ___
店の表で物音がする。
来た・・・私の心臓が大きく音を立てた。
「・・・、少し、行ってくるな。」
え、今行ったら・・・っ
「ま、待って!私も、行く。」
「は?ドロボーだったらどうすんだよ。アブねーだろ。」
ドロボーなんだよ!!お前がアブないんだよッッッ!!!!
「いい、行く。私も絶対行くもん。」
「はぁ・・・絶対アブねー真似すんなよ。」
きっと友人はイカれサイコ野郎だから真一郎君に向かってアタックくらいはする。
でも、残念ながら私が真一郎君を庇ってあの馬鹿力サイコの攻撃を受けれるほど勇気はないんだ。
痛いのも、苦しいのも嫌い。

結局は私も自分がどうしようもなく可愛くて好きで仕方ない人間なのだ。
なので・・・



















「はぁ〜〜い!!佐野万次郎のお兄様の〜、佐野真一郎君が〜お登場いたしまぁ〜す!!」
「おい!?」
聞こえる声をガン無視した。
「あっ、そこ!!何、無敵のマイキーと名高い佐野君の誕プレに!誰の許可を得て触れてるんですか〜〜???」
友人とばっちり目が合った。
そう、私は。懐中電灯を持つ真一郎君の周りをチラつきながら叫ぶことを選んだのだ。
アイツらが知らないならやる前にアイツらに教えてやればいい。
ついでにバイクに触れてた友人の友人である場地君の事を指差してやった。
「・・・真一郎・・・くん?」
「圭介か?」
よし、来た。これは来ましたね。
「マイキーの兄ちゃん・・・?マイキーの誕プレ・・・?」
目を見開き情報過多でキャパオーバーを起こしてる友人に向かって私は飛び蹴りをかましてやった。
これが、先程まで頭上に100%と浮かべていた彼のパーセンテージが一気に0%へと落ちた瞬間だった。




「ミッション。コンプリートッッ!!」







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