術式「死亡フラグ回避」の持ち主の女の子が知らず知らずのうちに救済していくお話




何処にでもいそうな少女である私は唯一、人と違う所があった。幼い頃から人とは違うものが見えるのだ。
と、言うのも。霊感があるらしい。
色んな場所に蔓延る異形な化け物。
もしこれが良く映画である可愛いお化けならまだよかったかもしれない、でも奴らは死ぬほど気色が悪く見てると吐き気がする。
また、奴らは私と目が合うと襲い掛かってくる。そういう特性があるのか分からないが毎回襲ってきた。
が、私が命の危機になる事はなかった。怪我は何回かあったが、瀕死も死ぬこともなかったのだ。
理由は分からないが、アイツらが襲ってくると何かしらのアクシデントが起きて私に危機が訪れる事は無いのだ。

その理由が分かったのは最近のことだった。
小学生で施設にいる私にある男の人が訪ねてきた。その人はごつく、サングラスをかけてきた。勿論、私は無視その場で逃げた。だって明らかに不審者なんだもの。
そしたら数週間後に巫女装束を着た女の人がやって来た。
流石に今回は施設内でお話を聞く事にした。本当なら施設に簡単に入ることが出来ないのだけれども、彼女は特別らしい。

話を聞くと、私が見ている化け物は呪霊と言い人間の負のエネルギーから生まれた物らしい。
それで、私はどっかのもう滅んでしまった有名なお家の遠い遠い親戚らしく先祖返りが起きたらしく、そんな私の術式は滅んでしまった御家の直伝。だから希少価値が高い。
そんな理由があって女の人は私に会いに来て、私をスカウトをしたらしい。
呪霊を倒す職業の呪術師の専門高校。呪術高専。
しかも、お金なんてないと伝えれば支援は出るとのこと。
私は二つ返事で高専へと入学することにした。高校からは義務教育じゃないためお金が沢山かかる。そうなると施設から追い出されるのも時間の問題。それにたとえ頑張って稼いで入ってもその先が大変。入らずそのまま就職しても碌な人生が歩めるとは限らない。それなら入った方が良い。
遅かれ早かれここから出る私にとって寮も支援もくれるこの学校には感謝しかなかったのだ。
女の人は嬉しそうだった。そして庵歌姫と名乗った。

それから歌姫さんは一ヶ月に一回のペースで来るようになった。
私に呪術やら基本を教える為らしい。手取り足取り常識を教えて貰った私はある程度戦えるようになった。
あともう一つ。歌姫さんは私をよく可愛がってくれる。本人は毎回照れ隠しをしているつもりらしいがぶっちゃけバレバレだ。でも、彼女が嘘を付いている様子もないので私は黙っておいた。






「歌姫さんが来たわよ。」
本を読んでいると歌姫さんがやってくる。最近回数が多いな、と心の中で思った。
「久し振りね。」
「はい、お久し振りです。」
「・・・何の本読んでるの?」
私は歌姫さんの問いにしおりを挟んだ本を渡した。
そうするとそれを見た歌姫さんは顔を顰めた。
「外国の論文なんてよく読めるわね。」
「・・・頭良くないと誰にも引き取ってもらえないので。」
それを言うと余計顔を顰める。
「小学生なんだから、もう少し小学生らしくしたら?」
「後数ヶ月すれば中学生なんで、大丈夫です。」
「中学生でもそんな本読まないわよ。」
悪態をつく歌姫さんをあしらって見せた本をまた読み直す。
歌姫さんが教えてくれたことは私の希少価値と呪霊や術式について、基礎的な戦い方。沢山の事を教えてくれた。でも、正直私には理解が出来なかった。
特にその上層部と言う奴ら。多分彼らと私は馬が合わないんだと思う。
「・・・歌姫さんはどうして私にそんなに会いに来るの?」
「まぁ、上層部からの命令よね。」
こう言う正直なところは嫌いではない。
寧ろ割と好きだ。
「なら来なくていいですよ。てきとうに報告しとけばいいです。話合わせるんで。」
「・・・アンタの様子見に来てるのもあるわね、」
「そうですか。」
「可愛いのに勿体ないわよね、愛想が無いって。」
歌姫さんがよく言う言葉だ。
「媚ばっかり売る事に生産性を感じてないんです。だから私。上層部に媚売るつもりありませんよ。」
「下手したら暗殺されるわよ・・・、」
「別に。死にぞこないですので。」
「リアリストもここまでくると重症よね。」
私は本から少しだけ歌姫さんへと視線を動かした。
凄く寂しそうな顔をしている。
歌姫さんはいつも愛想が無いやらリアリストやらいう割に私の事を可愛がってくれている。
「あぁ、そうだわ。これから中学生でしょ?で、保護者は私になったわ。ここで住んでもらうけど、自由に外出できるわよ。」
あぁ・・・お金だ。
恐らく衣食住。全てお金を払って私をここに済ませるよう施設へと要求したのだろう。で、金の出どころは上層部とやら。これも命令。
「・・・そうですか。」
「友達作って遊びなさいよ。」
そう言って本に挟まれたのはお金の札束。
・・・どれだけ上層部は私に媚を売るのやら。
「友達に生産性なんてありませんよ。」
「アンタねぇ・・・友達に生産性求めてんじゃないわよ。」
仕方ないじゃないか。これが私の生き方なんだから。
「じゃあ、私は帰るわね。これを伝えに来たの。」
「・・・、歌姫さん。次はいつ会える?」
「・・・さぁ。分かんないわね。」
あぁ、この顔。もう会う気はないんだ。というか会えないんだ。命令?
・・・やっぱ、歌姫さんっておバカさんだよね、

「そっか。ばいばい。」
「・・・えぇ。」


それから数ヶ月経っても歌姫さんがここへ来ることはなくなった。






「・・・負けるくらいなら挑まない方が良いよ。生産性無いから。」
絡んできた不良を倒して、山積みにしたらその上に乗ってポケットから取ったお金を数える。
「う・・・ふざけ・・・、!!」
「ねぇ、なんでこんなお金ないの?十人もいるのにたかが3万。・・・使えないやつら。」
本当は歌姫さんからのお金が沢山あった。でも私はそのお金を使わず喧嘩を売ってきたやつらからお金をとる事でお金を増やしていた。
正直使い道なんて歩いてた時にお腹が空いてコンビニを寄るとかそういう事しかない。
友達も居ないし。
中学に上がって何かが足りなくなって売られた喧嘩売ってたらいつの間にか周りに人が寄り付かなくなった。
こんな姿見たら笑われるかな。
「・・・帰ろ。」
施設へと帰る。施設の人も私を遠巻きにしてる。
私に場所なんてない。
それでも、帰らなくちゃいけないから。

「なぁ、お前が血塗れ天使?」
私は後ろを向いた。
・・・金髪の飴を舐めたガキ。何も移してない目がとても魅力的だった。
「誰・・・?」
「俺、佐野万次郎。マイキーって呼べよな。・・・聞いた事ねぇ?」
・・・聞いた事・・・ある、ような。ない、ような・・・・
「覚えてない。」
「・・・ふぅん。で、お前がその血塗れ天使?」
血塗れ天使・・・?
「知らない。」
「じゃあ、これお前がやったの?」
積み重なってる不良を指差したマイキー。
「うん。絡んできたから。なんか、仲間がやられたとか何とかで・・・だから、倒した。」
「すげぇじゃん。お前、名前何?」
名前・・・?



「一年ひととせ歌乃。」
「変な苗字だな。」
「私が考えた。・・・私、親とかいないから。苗字無いの。名前は・・・恩人が付けてくれた。」
「ふーん、じゃ。大切な名前なんだな!」
ニカッと笑う彼。
大切な・・・名前・・・たいせつ・・・、
「うん、私の大切な名前なの。」
「あー!やった笑ったな!?」
「・・・?」
「な、ひとせ。・・・俺んちいこーぜ!・・・って、俺!シンイチローにお使い頼まれてたんだわ!ひとせもいこーぜ?」

マイキーの差し出された手を差し返す。
手は、歌姫さんより暖かかったけど、小さかった。

数日後、私はこれまで他人から取ったお金と、歌姫さんからもらった大金を持ち出して、施設から抜けた。








「・・・真一郎君・・・、」
「なんだぁ?またマンジローと喧嘩したのか?」
「・・・うん。」
今回はマイキーが悪い。私のお金と本に触れたんだ。歌姫さんがくれたお金と最後の本。
あれだけ触らないでって言ったのに。
「めんどくせーな、お前ら。」
はぁ・・・とわざとらしく溜め息を付く真一郎君の腹を小突く。
私は施設を飛び出してからはずっと佐野家で暮らしていた。持ってきたお金で何とかやりくりして。今頃呪術界は私が居なくなって大混乱だろう。
「マイキーと、仲直りしたい。」
「おうおう。やっとガキらしくなってきたじゃねーか、歌乃。」
「・・・真一郎君はまだまだ子供ね。」
「可愛さはまだ戻ってこねぇかぁ〜!!」
・・・む、
「真一郎君の前ではお願いされてもかわいい子ぶらないよ。」
「愛想悪いと男出来ねぇぞ?」
「そういう下世話な話を幼女にするのはいただけないわね。」
「幼女じゃねぇだろ。」
「うるさ・・・・、」
ガシャンッ___
明らかな破壊音が聞こえる。
その瞬間、私と真一郎君は固まった。
「・・・見てくるな。」
真一郎君が立ってバックヤードを出る。
本当の不良だったらどうするのだろう・・・一応彼は元ヤンだが死ぬほど弱いんだよ?
呪術師紛い・・・だけど女の私よりもだよ?
その場から消えていく真一郎君がいつかの光景と重なった。
私は、手を伸ばす、が。届かない。
あの時立って服の裾でも掴めばよかったと後悔してる。

「・・・、待って・・・!!」
バックヤードから消えてった真一郎君を追いかける。










「・・・え。」



ドスンッ____

嫌な音が響いた。





「い、いったぁ!!なんでこんなところに錆抜きスプレーが落ちてるのよぉ・・・ちゃんと片付けて!!」
なんと、真っ暗な場所で駆けた私は落ちていた錆抜きスプレーに足を取られ尻もちをついてしまったのだ。
「大丈夫か?ご、ごめ・・・」
後ろを見た真一郎君に私は急いで叫んだ。
「馬鹿!!前向け!!!」
真一郎が前を向いた事により懐中電灯の光が照り出された。
羽宮君と場地君だった。
場地君は割とあった事がある。でも、羽宮君は数回。
でも、なんで彼らが盗みに・・・・。
そう思った時には遅かった。
羽宮君の気は動転したらしく真一郎君へと狂気を持って襲い掛かろうとしたのだ。
と、止めなくちゃ・・・!!

「し、しんいちろ・・・!!」



バッゴーン______












しかし、真一郎が刺されることはなかった。
なんと!!彼が真一郎君へと襲い掛かる直前に何処からか盥が落ちてきて思いっ切り羽宮君の頭へとぶつかったのだ。
盥と衝突した羽宮君は気を失ってぶっ倒れた。


「一虎ァァァァァァァァァァァアアア!!!!!!!」
隣で場地君が大きく声を出した。









「・・・ひとせ!!って・・・・場地に一虎・・・。え、は・・・・
か、一虎!ぶっはははは!!!!」
私を探しに来たのだろうか、この場へと来たマイキーは白目を出して気絶する羽宮君を見て大爆笑した。





◆◇◆◇◆


種明かし

〜主人公が転んでからのピタゴラスイッチ解説〜

1,錆抜きスプレー缶が勢いよくゴロゴロする
2,椅子にあたってドライバ二本が両端へと飛んで行く
3,双方のドライバー壁に刺さる
4,衝撃で絵などが落ちる
5A,絵が落ちたところにネズミがいた。
5B,タイヤに刺さりタイヤがパンク
6A,ネズミが驚いて積み重ねられた本たちへとダイブ
7A,本がてこの原理で飛び跳ね上がり棚の上にあった盥へとぶつかる。
6B,タイヤの空気が一機に消えた事により近くのガラクタのブーメランが軽く吹き飛ぶ
7B,(7A)と同時刻風によって吹き飛んだブーメランが本と一緒に盥にぶつかる
8,盥が落ちる。そして、軽く飛んで一虎の頭上へとダイブ

ピタゴラスイッチビッグ!!


prev top next


.