ダイアゴン横丁
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Mr.ウィーズリーと別れたあと、私たちは二手に分かれた。父が教科書などをそろえてきてくれるというので、私はマダムマルキンの洋装店に来ていた。

普段着から式服までなんでも売っているらしい。

「お嬢ちゃんいらっしゃい、ホグワーツなの?」

そのずんぐりした魔女を見たとき、マダム・マルキンはきっと紫色が好きなんだな、と思った。全身藤色づくめのファッションだ。

こくこくと頷くと、にっこりと笑って続けた。

「全部ここで揃いますよ。さあ、こっちにいらっしゃい」

店の奥の方にある踏台の上にたつと、マダム・マルキンは頭から長いローブを着せかけ、丈を合わせてピンで留めはじめた。

「お嬢ちゃんの目は綺麗な紫色なのね。とってもうらやましいわ…ほら、私って紫が大好きだから」

マダム・マルキンはせわしくしながらも口を動かすのをやめなかった。

「この時期はね、みなさんホグワーツの服をそろえにこの店にいらっしゃるのよ」

彼女は上機嫌でつぶやいた。

「本当にいろんな方がいらっしゃるわ。さっきはおばあちゃまに連れられたふくよかな男の子だったんだけど、蛙をつれていてね。その蛙がすぐどこかにいっちゃうもんだから、その男の子もそれを追いかけようとして…困っちゃったわ」

「そうなんですか」

としか言えない。私は曖昧に笑ってその場をしのいだ。蛙をペットに飼うのはこっちでは当たり前のことなんだろうか。マグルの間ではかなり少数派なように思えたけど…

「それにしても蛙だなんて、かなり古風な男の子なのねえ」

古風らしい。やっぱり魔法界にも流行りというものはあるのだろう。

「おばあちゃまも鳥の頭のついた帽子をかぶっていたけど…私だったら恥ずかしくってあんなの被れないわね」

私だってかぶれない。相当な変わり者なんだろうか。ちょっと見てみたいような気もする。

「そういえば、今年は生き残った男の子がホグワーツに入学するんじゃなかったかしら」

「生き残った男の子?」

「ええ。知らない?ハリーポッターよ。彼、史上最強の闇の魔法使いを1歳の誕生日のときに倒しちゃったんですって」

口があんぐりあいてしまった。なんて男の子なんだろう。赤ちゃんでそれだなんて、今頃どうなっていることやら。

ハリーポッター。覚えておこう。

「さ、できましたよ。ホグワーツ楽しんでらしてね」

こうして、私の魔法界での買い物第一号はおしゃべりで終わった。


「終わったかい?」

店の外では、すでに父が待機していた。別段教科書などの荷物は増えていないように思える。

不思議に思って尋ねれば、何てことないようにああ、といった。

「この中にしまってあるんだよ」

そう言って彼はポシェットをひらひらさせた。

「拡張魔法がかけられているから、たくさんはいるんだ」

私は目を見開いた。魔法ってすごい!

「じゃあ、次は杖だね。杖といったらオリバンダーだ。さあ行こう!」

魔法の杖。わくわくするのをおさえられない。リストを見たときに、1番心惹かれたのが杖だった。

「杖選びは楽しいよ。身構えないで、気楽にね!」

杖選び。買うだけではダメなのか。

そのことにまたロマンを感じた私は、口の端が上がるのを抑えられなかった。


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