ダイアゴン横丁
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景色がぐるぐるとまわる。

唐突に回転が止まり、私は思いきりしりもちをついた。

「ジュディ!僕のジュディ、大丈夫かい?はじめての煙突飛行おつかれさま」

「もしこんなのが魔法なら、魔法なんてくそくらえだわ」

「Oh,no!!!そんなこと言わないでおくれよ。世の中には素晴らしい魔法がたくさんあるんだからね!そのうち好きになってくれるはずさ」

差し出された手を遠慮なくとって立つ。服に汚れがついていたので、トントンと払う。

「やあ、君がジュディだね?はじめまして、私はアーサー・ウィーズリーだ。ジェレミーから話はよく聞いているよ。彼のいうとおり、とっても可愛らしいお嬢さんだ」

前を向くと、赤髪の男性がにこやかに声をかけてきた。
そうだ、あのひどい体験のせいですっかり忘れていた。

「はじめまして、Mr.ウィーズリー。ジュディ・カーライルです。父がいつもお世話になっています。お会いできて嬉しいです!」

Mr.ウィーズリーはとても優しそうな人だった。ちょっと髪が後退しているけど、彼が前進しているんだということにしておこう。

「あっはっは、そう言われると嬉しいな。それにしてもこんなべっぴんさんが本当にジェレミーの娘さんなのかい??」

「失礼な!!僕がべっぴんな奥さんをつかまえたのさ、まったく」

やれやれ、と父は首をすくめた。

「ちなみに、アーサーは魔法省勤めなんだ」

「魔法省?」

すごくファンシーな名前だ。

「マグルでいう政府さ。魔法界では魔法大臣というのがトップにあたる」

マグル。魔法界。聞いたことのない名前だらけだ。目をパチクリさせていると、それに気づいたMr.ウィーズリーが説明してくれた。

マグルとは、魔法を使えない人たちのこと。魔法界とは、魔法使いたちの世界のこと。

Mr.ウィーズリーが私に嘘をつくメリットはないし、ダイアゴン横丁というこの場所自体、Mr.ダンブルドアが着ていたような服を着た人たちであふれている。

「本当に、本当だったんだ…」

私のお父さんは魔法使いで、私は魔女。
魔法は、存在する。

「信じてくれたか!よかったよかった!」

父は満面の笑みで私の肩をたたいた。

「それにしても、ジュディの目は本当に綺麗な色をしているね。お母さん譲りかな?」

私の目は、薄紫色をしている。黒髪に紫色の瞳といえば、女優のエリザベス・テイラーが有名だけれど……こっちではさすがに知られていないか。

「そうなんだよ。僕は奥さんのこの綺麗な瞳にやられたのさ」

悪戯っぽくウインクする父は優しく私の頭を撫でた。

「君は今までマグルとして生活していたんだよね?」

くわしくその話を聞かせてもらえないだろうか。そういったMr.ウィーズリーの目はとても輝いていた。

「あー、ごめんアーサー。ジュディがびっくりしているから、また今度にしてくれないか」

「おっとすまない!いや、いいんだ、気にしないでくれ。ジュディ、またぜひに」

そう言って彼はにこやかに去っていった。

彼も変人だったなんて。そんな馬鹿な。
もしかしたら、魔法界には変人しかいないのかもしれない。


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