太刀川慶と年下同期の後日談 その2



※猥談





なまえが休みで、太刀川が防衛任務が入っている日だった。太刀川宛の荷物が届いたので、なまえは受け取った。わざわざなぜここに?と思わなくもなかったが、来たものは仕方ないので受け取っておいた。
そして、防衛任務明けになまえのところに直行した太刀川は、お邪魔しますもそこそこに口を開いた。

「俺宛の荷物、届いてたろ?」

来て早々聞かれ、なまえは頷く。
荷物は、ソファにおいてある。最近買い替えたばかりのソファの上に、小さめのダンボールがぽつんとある。太刀川は「受け取ってくれてありがとうな」と言い、嬉々としてダンボールを見ている。が、開ける気配はない。本当になんだったんだろうかと、なまえは不思議に思った。
最初、なまえは、太刀川がこの部屋に置きたい雑貨でもネット通販したのかと思った。だから、なまえの部屋に届くよう手配したのだろう、と。だが……それにしては、太刀川に開ける気配がない。
つまり、ここで使うものではないということだろう。そう判断したが、ならなぜうちに届くようにしたのかと少し不思議だった。いくら今日、なまえが休みで家にいるとわかっていても、なまえの家で使うものではないのなら、送っても無駄な行為になる。

「何買ったんですか?」
「あー…マンネリ防止のやつ、だな」

言葉を選んだ。つまり、──ろくなものじゃない。
そう察したなまえは、もうそれ以上聞くのをやめた。だって深く聞いても、なまえには理解できないものの可能性があるからだ。

「今日は私がいたからよかったですけど、次からうちになにか届くときは事前に言ってくださいね」
「おー、悪かった」

そんな注意だけ軽くして、なまえと太刀川は夕飯をとった。
風呂は先に太刀川に入ってもらい、なまえは皿洗いをしておく。基本的に戦闘以外ポンコツな一面がある太刀川。だからなまえは、あまり太刀川を台所に立たせたくないと思っている。そういったところはまだ信用できないが、太刀川の過去の行いが行いなので仕方ないところがある。

「あがったぞ」
「はーい」

あがってきた太刀川と入れ違いで、風呂に入るため出るなまえ。部屋を出る直前、楽しそうにダンボールのそばに座った太刀川が見えた。

(あんなに届いて嬉しそうなのに、全然開けない)

やはり、見られたら困るものなのだろう。そう判断して、なまえは今日届いた荷物のことを意識の外に追いやったのだが──風呂上がり、なまえは届いたものがなんだったのか知ることになった。

「太刀川さんっ!!」

珍しく大きめの足音をたてながら、風呂場からダイニングへと向かうなまえ。ビールを開け、テレビを見ていた太刀川は、足音がする扉の方を見やる。バンッといつもより激しく開いた扉の向こう、湯上がりで髪がまだ濡れている、バスタオル一枚のなまえが肩を怒らせていた。その格好に、太刀川はこういった。

「なんだ、着てないのか。風邪ひくぞ」
「あ、あれだって布面積そんな変わらないでしょう!」

あれ……風呂上がり、用意していた部屋着と下着がなくなっていて、置かれていたのは……逆バニーのコスプレ衣装だった。
ネットの流行り廃りに疎いなまえは、逆バニーというものすら知らない。知らないが、「なにこれ?」と手にとってみたときに目にした布面積の少なさに、驚いた。

上は意味があるのかどうかすらわからない付け襟と、乳首が隠れる程度の布地(トップスとすら呼べない)、うさみみ、局部ほぼ見えているタイツ(ヒップ部分にうさしっぽつき)。

正直、布面積という意味では、今体を隠しているバスタオルとそう変わらない。と、なまえは思った。どころか、大事なところ隠せるのはバスタオルだから、逆バニーではなくバスタオルで身を隠してきたのは当たり前といえば当たり前だろう。
だが、太刀川は至極残念そうにしていた。

「でも、服は服だろう?」
「ああいうのに詳しくない私でもわかりますよ!あれ、コスプレですよね?!なんてもの用意してんですか!」
「ネットでお前に似合うだろうなって買ったんだ。今日、届いてよかったな」
「よくないし、あの受け取った荷物ですか……!」

受け取り拒否すればよかった。いや、それなら配達の人に迷惑が…などと、思考が飛びそうになる。なまえからしたら、太刀川の行動は理解しがたい行動だった。頭を抱えつつ、怒りを抑えながらなまえは尋ねた。

「そもそも、なんであんなもの買ったんですか」
「まだセックスマンネリしてないけど、対策にと思ってな」

太刀川から茶目っ気たっぷりに、殺意を覚えそうな理由を言われ、なまえは太刀川の頬をひっぱたくなった。が、それよりもまず毅然と拒否しなければと思った。ここで拒否しなければ、味をしめた太刀川は絶対に同じことをする、初動が大事だとわかっていた。

「絶対に着ませんから!」
「そうか…残念だ…。じゃあ、俺が着るか」

なまえの頭の中が、クエスチョンマークでいっぱいになり、表情にもそれが出た。いわゆる、宇宙猫顔になってしまっているが、なまえはそんな概念など知らない。

「なん、……なんて……?」
「いや、だから俺が着るしかねーよなって。せっかく買ったのに、着ないのもったいないだろ」
「は…?え?あれきて、どうするんですか?」
「お前とヤる」

真顔だった。本気なのか、狂ってるのか。あ、なんかもう冷えてきたなとか、なまえの思考もまとまらなくなった。まとまらなくなったが、思った。

万が一、太刀川が本気だった場合、あんな服を着た太刀川が今夜自室にいるのだ。

「……地獄すぎる……!」
「似合うかもしれないだろ」

ふざけた言葉が聞こえるが、なまえは湯冷めしつつある身体をさすりつつ、考えた。
ここで断って仮に今夜の太刀川のコスプレをしのいだとして、太刀川はこれきりで諦めるだろうか?──否、諦めない。きっと何度も何度も、なまえが折れるまであの衣装を迫って来るだろう、と。
太刀川の地獄のようなコスプレを強制的に見させられるうえ、そんな事態になるほうが地獄だ。今日あのコスプレ衣装を着て、一晩耐えるだけのほうが利口なのでは?──などと、未だなお混乱している頭でそう結論づけた。

「──……今夜、だけですからね」

渋々といった体のなまえを気にすることなく、太刀川はそれはもう嬉しそうにうなずいた。殴ろう、絶対。と思いながら、なまえは風呂場に戻っていった。

──数分後。
さきほどよりずっとわくわくと待ち望んだ様子で、太刀川はなまえを迎えた。
せめてもの抵抗と、あとやはり布面積が少なくて肌寒く思ったなまえは、未使用のバスタオルを羽織ってやってきた。目は据わっていた。絶対に殴るという強い意思もあったが、やはり羞恥心もあり、タオルで少しでも隠そうとしている。その度、不本意にも胸が腕で寄せられたりしてしまい、視覚的に太刀川を楽しませることに一役買ってしまっていた。

「……タオル、とれよ」
「いやです、寒いから。……ちょ、スマホ!」

パシャリ、と撮られた。ぎょっとしたなまえは駆け寄り、太刀川の手にあるスマートフォンに手を伸ばす。とられまいと、太刀川も手を上にあげ、なまえが少し背伸びした程度では届かぬ位置までスマートフォンを持っていく。

「最悪!消してください!」
「個人で楽しむ用だ」
「免罪符になりませんよそんなの!」

必死に手をのばすも届かないため、なまえはぴょんとその場で少し跳ねる。本来ならもっと飛びたいが、下の階の住人の迷惑になってしまうと思い、あまりはねられない。それでもまぁ、揺れる。乳首しか隠せないような布に覆われている、平均より大きいなまえの胸が。
合わせて、必死になってしまうあまり、バスタオルもはらりとかけていたなまえの肩から落ちた。

太刀川の眼前には、自分に寄り、胸を揺らしている逆バニーがいるという状況だ。

「おー……いい眺めだな」
「は?……ちょ、どこ見てるんですか!」

タオルが落ちていることと太刀川の視線の先に気づき、なまえは慌てて腕で体を隠す。
むにゅっと音がしそうな潰れ方をする胸を見て、太刀川は素早くスマホをおろし、シャッターボタンを押した。長押ししたため、連射モードになった。

「もう!本当にやめてください!最低ですよ!!」
「あー。悪いな、間違えた」
「棒読み!!」

消されまいとするかのように、太刀川は身を翻す。なまえの寝室へと。
あんな恥ずかしい写真、消さなければ!と頭がいっぱいになったなまえは、すぐにその後を追う。

追ったのではなく、誘われたと気づいたのは、部屋に入ってすぐにベッドに押し倒されてからだが、その時にはもう後の祭りになっていた。



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