太刀川慶と年下同期の後日談 その1
いわゆる恋人関係になったわけだが、大きく何かが変わった訳では無い。太刀川がなまえの家に泊まるようになったのとなまえの家の冷蔵庫に太刀川の餅と酒が増えたくらいで、表面上は2人とも変化がない。
もともと付き合っているという噂が流れていたくらいの距離感だったのと、なまえが恋愛に疎いのと、太刀川が戦闘以外はまるでだめなので、変わりがないように見えるのも自明の理と言える……のかもしれない。
なまえは加古などの仲のいい一部の隊員と、養父に報告はした。太刀川は特に報告とかはしないと言っていたが、話の流れで言うことはあるかも程度だった。別にもう今更隠しても感があるので、なまえは特にそれに関してはなんとも思わなかった。
余談だが、太刀川が麻雀の時に東・冬島・諏訪からなまえとの関係の変化が話題になったので話した時に、「みょうじ以外にお前に色んな意味で付き合える奴いないから、絶対大事にしろ」と三者三様の言葉で言われた。三人……というか、ボーダー全体に、太刀川が主に学業面でなまえにおんぶにだっこというのは知れ渡っていることだった。ので、当然ともいえる反応だ。
そして、報告前から予知で把握していたらしい迅の「やっとかー」と言った時のニヤニヤした顔を見て、なまえは普通にちょっとイラッときた。迅も分かっててやっているのだから、なまえの反応を楽しんでいるのだろう。
周囲の反応は、だいたいそんな感じだった。
「今週末、おでん食いたいな」
「食べに行くんですか?それとも、作れと?」
「お前のおでんが食いたい。餅巾着いれてくれ」
いつものように、なまえの家である。
防衛任務終わりの太刀川が家に来て、そのまま泊まる日だった。……別に約束した訳では無いのだが、防衛任務が終わる時間帯によっては泊まりに来るというのが多いので、なまえももう慣れたものだ。
なまえが養父から貰ったみかんを2人で食べながら、なんとはなしにおでんの話になった。
寒い時期は鍋が楽だから、という話から、唐突に太刀川がおでんが食いたいと言い出したのだ。
みかんをぱくぱくとすぐに食べ終え、太刀川は2個目のみかんに手を伸ばした。たくさんあるので、こうやってどんどん食べて貰えるのは一人暮らしのなまえには嬉しいことだった。
「するにしても日曜日ですよ。土曜日夜に仕込みするから」
どうせするなら、味が染みてる方がいい。それなら前の日からおでんの仕込みをしておくに限る。太刀川のリクエストの餅巾着も、味が染みてる方が美味しい。
「じゃあ土曜日から泊まるか。ここに置いてる酒もそろそろなくなりそうだし、買い足しておく」
なまえは未成年なので当然まだ飲まない。今は太刀川が1人で飲んでいる。来年は一緒に飲めると思いながら、なまえは咀嚼していたみかんを飲み込む。
「お酒買ってくるなら、ついでに買い足したいものもあるんで、一緒にスーパー行きますけど」
なまえも2個目のみかんに手を伸ばす。さすがに食後なので、2個でやめておこうと考えた。
太刀川はふと、思い出したかのように言った。
「ゴムもなくなりそうだからな。コンビニにも行くぞ」
「そういうのは太刀川さん一人で買いに行ってください……!」
必要なものだと分かっていても、不慣れで免疫のないなまえからしたらしれっと言わないで欲しいことだった。太刀川は悪びれもせず……どころか、楽しそうにニヤニヤしてるのだ。付き合っていてもセクハラで訴えられるだろうかと、楽しんでる太刀川に少し恨みがましくそう考えたなまえ。
「お前に使うんだから、意見聞くぞ?匂い付きのがいい、とか」
「匂いつきとかあるんですか」
「ある。あとは、菓子のパッケージをパロったゴムとかもな」
「……意外となんでもありなんですね」
「見に行ってみるか?」
「いえ、いいです」
そんなものを冷やかしてもと答えながら、なまえはきれいに剥いたみかんを食べる。太刀川はなまえの返答を気にした様子もなく、話を続ける。
「真面目な話、お前がいやだとかあれば種類変えるから、言い難いことかもしれないが言ってくれ」
本心の気遣いだと、さすがに分かる。
普段が多少アレだし、気遣いがズレていることもあるけれど、太刀川なりに大事にしてくれているのだと言うのはなまえに伝わっていた。……だが、それはそれとして反応をおもちゃにされているなと言うのも、しっかり伝わっていた。前からそうだとはいえ、付き合ってからはそこにセクハラめいたものが入ってしまってるのだからよろしくないとなまえは思っていた。
「あとは、これはされて気持ちよかったとかそういうのも遠慮なく言え」
「絶対言いませんから!」
というか本当は見て分かってるくせにとなまえが赤くなりながら言えば、太刀川は楽しそうに目を細めて笑うのだ。
なまえには太刀川がうまいのか下手なのか判断出来ないが、自分の様子をしっかり見ながら進めてくれていることだけはわかっている。だから余裕などなく声をあげてしまう箇所や刺激も、もう知られ尽くしていると言っても過言ではない……と、なまえは思っている。そう思うと恥ずかしいし、なにやら悔しいのだが。
なまえがそう感じているとわかったうえで、太刀川はこういう態度をするのだから、タチが悪い。
「太刀川さん、ほんとそういことですよ!残念なところ!」
「ちょっと残念なくらいがいいだろ?」
「ちょっとじゃないですよ!もう!」
気にしないどころかこの返しである。
少し怒ったふりをしてみても何処吹く風。楽しそうに笑いながら、太刀川はなまえの隣に移動して2個目のみかんを食べ終えたなまえをなんの前置きもなしに抱えた。高く抱えられたわけではなく、太刀川は自分の膝になまえを乗せただけだった。
ムードも脈絡もない太刀川のこういうスキンシップにも、なまえはまだ少し慣れてない。膝に乗せられて一瞬肩を揺らしたなまえを、太刀川は喉で笑う。遊ばれてると思ったなまえは少しムッとしつつ、あえて自分から太刀川に寄りかかった。
(私だって、いつまでも緊張したりとか、遊ばれてるだけじゃないんですからね!)
と思いながらも、やることはなまえから甘えるように太刀川に擦り寄るくらいだ。なまえ本人からすれば一歩前進した行動なのだが、太刀川から見たその行動は可愛らしいものだった。現に、太刀川は楽しそうにはするが動揺した様子はない。
「なんだ?今日はえらく積極的だな」
と言う割には、太刀川は平素と変わらない。が、流れるようにやわやわとなまえの胸を揉みだした。太刀川の手から少しこぼれるくらいの大きさなので、なまえの胸は大きいサイズだ。柔く、それでいて張りのあるいいおっぱいだと太刀川は初めてなまえの胸をもんだ時に思った。
胸を揉まれるとは想像してなかったらしいなまえは、慌てたように身をよじる。
「ちょ、っと!ま、待ってください!そういうのは、その……お風呂、入ってからで……!」
「揉むだけだったんだが……なんだ、期待してたのか?」
「っ!」
早合点した!という焦りと羞恥が、なまえの耳を赤く染め上げる。自分の膝の上で羞恥やら何やらで体温をあげるなまえを見て、太刀川は面白そうに目を細めながらしれっとなまえの服の下に手を潜り込ませた。なまえのあたたかく柔らかい肌と、ぴくりとなまえが見せた反応に、太刀川もじわじわとそういった気分になってくる。元々ゼロではなかったが、割と本格的に太刀川はムラムラしてきた。
肩口に顔をうずめる。なまえが息を飲むような、声にならない声を上げかけたような反応を見せる。意に介さずに太刀川は、なまえの首筋にそのまま唇を這わせた。角度によっては当たる髭がちくちくすると前から零していたなまえは、唇の感触と首筋に触れた髭の感覚に肩をすくめる。
「た、ちかわ、さん……ほんと、あの……」
お風呂入ってから、ベッドに行きませんか?
もじもじしながらも、なまえははっきりと言った。
なまえは性行為に関しては不慣れだが嫌ではない、程度だった。今までは頃合いを見て太刀川がベッドに行くか聞いていたので、なまえからはっきりとこう言われたのは初めてだった。太刀川は少し目を丸くしたあと、表情を嬉しそうに和らげた。
「俺とするの好きになってきたんだな!……いっ……!」
「だから!そういうとこですよ!」
やはり、太刀川は安定の太刀川だった。