ひとがた
「死にたい」と言って君が流した涙は、あまりにも生命力に満ちていた。
瞳を覆う手のひらから零れ落ちる、たくさんの涙。嗚呼、泣くのにはとてもとてもたくさんのエネルギーが必要だ。
死にたいと願ってしまうこの瞬間はきっと君が『生命』から少し外れていってしまっている。だからこそ、死にたい死にたいと泣く君のその身体に、どんな傷跡があったとしても不思議ではない。
流れる血はどんな薔薇よりも赤く。
あふれる涙は恵みの雨よりも君の頬での真中で輝き。
それらはこんなにも生き生きとしているのに。
生き物とはなんともちぐはぐだ。
そんな君を見て、僕は何もしてあげられなくて、かつ何をする気もなくて、僕もまた生命である理由を探している。
流れる血は鮮やかに、流れる涙は美しく。
それが、生きる理由にもなり得るのだろうか。
それでいいと、人々は言うだろうか。
2021/02/25
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