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◎誰かの犠牲で誰かが祈る。
2012-2-7 21:19
誰かの犠牲で誰かが祈る。
王に裏切られた騎士様と、反乱軍の弓使いの話。
誰かの犠牲で、誰かが祈る。
―この国を幸せのものにしよう。そう笑った人々。王は人々の前でいった。
誰もが血を流さない、平和な国にしよう、と。
皆その言葉に喝采し、いきりたった。
流石は我が王。国の王。
それに、私もうなずき、王への忠誠を誓った。
私にとって、国は宝であり、王は守るべき命であった。
私にとって、王は全てであった。
王を守ることが、私の使命。
騎士として、そして、この国に生きるものとして。
王は、私の命をかけても守るべき君主であった。
何も知らなかった、私。知らずにただ己の強さで全てをねじ伏せてきた、私。
私は、王の命により、王へ対する反乱物質を全て潰してきた。
沢山殺し、平和の為、と暴挙にでた。
聖騎士と呼ばれた私の手が、真っ赤に染まるほど。私は戦いに明け暮れた。
ただ、王の為に。
弟が、得体のしれない化け物に犠牲になるまで…。
「誰かの犠牲によって、誰かの幸せは成り立つのです。それが、自然の事柄。ですが…ですが、あに様。それでも、僕は…、兄様の、ことを、」
今でも、忘れられない。
弟の涙。苦しんだ、顔。
弟が、あいつが、化け物に食われるところを。全ての原因が、王であったことを。
私は、一生。
忘れることが、できない。
「騎士様、また、ここにいたのですか」
私を探しにきたのか。ソレイユは、コップを片手に私に笑いかける。ふんわり、としたその笑顔に、薄暗かった思考が少し晴れる。
ソレイユは、今、私が共にしている仲間の一人だ。
不思議なもので、私は今、私が敵対していた相手・ランス・シグルデを筆頭とした国の反乱軍とともに行動している。ソレイユはそこの一人だ。
子供っぽい顔をしているソレイユはこう見えて、弓の達人であり、戦いではいつも後方から私たちをサポートしてくれる。
くりくりとした大きな、まるで猫のような黒い瞳。無邪気、といっていいような、微笑み。
弟に似た、その笑顔。
ソレイユをみていると、弟の事を思い出す。言い知れぬ後悔とともに。
「騎士様、泣いておられます…また、弟君のことを?」
「ああ…。すまない…」
泣いていたのか…はっと、顔に手を伸ばせば、確かにそこは濡れていた。
未だに、涙が尽きることはない。後悔が、消えることがない。
どんなに泣いたって、弟は戻ってこないのに。
私がしたことは、消えてなくならないのに。
「泣いたって、意味、ないのに…な。私は、王の命により多くの民を殺し、犠牲にしてきたというのに。今更泣いたって…、」
「…騎士様、」
ソレイユは、私の隣に腰を下ろし、無造作に置かれた私の手にそっと自分の手を重ねる。
「ソレイユ…、」
ソレイユの瞳が揺らぐ。この子は、どうして、私の傍にいてくれるのだろう…。
どうして、辛いときはこうやって、傍にいてくれるのだろう…。
「泣くという行為は…、」
「ん…?」
「祈り、に似ているのかもしれません。」
ぽつり、と呟いた、ソレイユ。
「…人は、どうしようもない事柄から、逃げるようにもしかしたら泣くのかもしれません。泣いて、祈っているのかもしれません。どうしようもない、悲しみに。泣いて、祈っているのかもしれません」
「…ソレイユ、」
「苦しいから、悲しいから。泣いて祈っているのです。悲しみを、苦しみを。言葉に出来ないから、泣いて祈っているのです。
騎士様、僕も貴方と泣いてもいいでしょうか。貴方の弟の冥福を、祈ってもよろしいでしょうか…」
「…ああ…」
ありがとう、ございます。小さな声で、ソレイユは呟いて、空に浮かぶ月を見上げた。
揺れる、月。息を飲むくらい、美しいソレイユの横顔。
私は…、
「ソレイユ…、」
「騎士様、」
自然に顔を見合わせ、どちらともなく、顔を近づけ口づけを交わした。
それは、自然な口づけで、祈りにも似ていた。
途方もない、祈り、に。
******
騎士×弓使いですが、成長したら弓使い×騎士になりそうな。
弟くんは、王様が飼っている?化け物というか紛い物に食べられちゃいました。
その化け物は、国一つを簡単に滅ぼせる化け物で、人の魂をくらい大きくなります。
騎士様は、弟を殺された憎しみで王に一矢報おうとするのですが、歯が立たなく。
死ぬ寸前だったところを、ソレイユや反乱軍君主に助けられます。
元敵対とか萌えますよね!
某半漁人ゲーム「大切な人を失う時に泣くの は、失いたくないから神に祈る行為そのもの」という名言に感銘を受けたため、この作品はできました。

