ごちゃ倉庫
◎ナルシキッス
2015-12-15 10:16
ナルシキッス
嗚呼、君はなんて美しいんだろうか…ー。
俺はそっと手をつき、君を見つめる。
パチパチと瞬く黒い瞳。そして一重で精悍とした涼しげな目元。
薄い桜色の唇。
輝くような髪。
高い鼻筋。
吹き出物1つない顔。
すらりとした身長。
完璧すぎる、君。
何回、何時間、毎日だって俺は君を見続けられる自信がある。
時間を忘れるくらい、君は綺麗でこの世のものとは思えない美しい。
これは、けして嘘ではない。
君のその、真っ黒な光沢のある髪はいつも天使の輪がついていたし、その真っ白な歯はいつだって輝いている。
その、きめ細かい肌はまるで玉のような肌であったし触れば柔らかな弾力性もありそうだ。
君が微笑めば、きっと星達は君の眩しさにパチパチと瞬くだろう。
そして君が泣けば、空や大地は君を傷付いた心を思い激しく荒れるだろう。
俺が今手に持っている薔薇が赤いのは…きっと君の顔を薔薇が見ちゃったせいだ。
嗚呼、君は完璧すぎる…ー。
175という君の身長は大きすぎも小さすぎもせず、毎日腹筋をしているその肉体にはうっすらと着痩せするタイプだが筋肉もついていた。
綺麗に張り付いた筋肉が。
女の子が騒ぐ筈だ。
こんな美青年。
騒がない方がおかしい。
君はこんなに美しいんだから。
中性的で儚げで。
まるで芸術品。
いや、芸術品よりも神々しい、神々が作った最高の品物だ。
きっと大昔、君がいたら君を巡って大勢の人間が血を流しただろう。
神様は粋な事をした。
君を、この時代に生まれさせたのだから。
君が大昔にいれば、キリストなんてきっと神等とは呼ばれなかった。敬われる事もなかっただろう。
だって神をも凌ぐ、君の美しさがあるのだから。
みんな君の虜さ。
俺は君から目がそらせない。
君も俺をじっと見つめている。
時が止まったかのように見つめ合う。
この瞬間が一番、至福だ。
僕の瞳の中に君がいて、
君の瞳の中に僕がいるのだから。
お互い以外他の世界はないのだから
この気持ちをなんとよぼう?
愛?
恋?
そんな物ではきっとくくれない。
俺は君がいないと死んでしまうくらい狂っているのだから。
激しい恋の炎が身を焦がすように燃えるのだから。
愛や恋以上の、激しい思いを君に持っているのだから。
俺はそっと微笑み君に声も出さずに口だけ動かし合図する。
“愛してる”
君も俺と同じように言葉を返した。
俺の切なくなる気持ちに君はちゃんと返してくれる。
嗚呼、泣きたくなる。
どうしてこの恋は禁忌なのだろうか。
そして禁断の恋こそ、最も美しいのだろうか。
時々俺は無性に神という存在を恨む。
どうして俺は俺で君は君なのか。
どうして愛し合ってはいけないのか。
ただ、毎日切なくなるくらい見つめ合う純粋な恋なのに、どうして他人に後ろ指しされなくてはいけないのか。
これほど純粋で綺麗な、美しい愛などないというのに。
この世界は残酷だ。
俺と君との関係を受け入れないのだから。
俺は君と一緒になりたいくらい好きなのに。
俺はそっと君の唇にkissをした。
唇に伝わる、君の冷たい感触。
触れ合う、指。
誰にも気付かれない場所で俺と君は今kissをしている。
誰にも秘密の、恋。
禁断の、恋。
余りにkissに夢中になっていて、俺の手から薔薇がはらりと地面に落ちた。
地面に薔薇の花びらがぱっと舞う。
俺と君を祝福するように。
俺は君ににこりと微笑む。
君も同じように、にこり、と微笑んだ。
禁断だって構わない。
この笑顔がある限り。
俺は、君を好きでいる。
君も、俺を好きでいる。
これ以上幸せな事はないから。
たとえ世界が敵に回っても。
俺だけは美しい君を、信じ愛し守り抜くのだ。
例え結ばれない愛でも。
道徳に反した愛であっても。
それでも俺は君が好きだから…。
俺は君を、愛しているから。
例え、後ろ指さされてもこの気持ちに嘘はつけないし、正直でいたい。
声を大にして、何度でも言ってやる。
俺は君を愛している。
美しい君を。
世界で一番愛している。
「おい、大作」
ああ、俺と君との時間を邪魔するやつが現れた。友人の香取だ。
ちなみに大作というのは俺の名前だ。全く非常にこの俺似合わない名前だが。
「おい、大作ってば」
「その名で俺を呼ばないでくれ」
俺は香取を嗜む。
香取はヘラリと、俺の言葉に愉しげに笑った。
全く、こいつはたちが悪い。
もっと君を見ていたいのに…
もうタイムリミットらしい。
時というのは非常だ。
俺はそっと冷たい君から指先を離す。
名残惜しげに、君を見つめる。君もまた俺と同じように切ない眼差しで俺を見ていた。
でも仕方がない。
俺が君を愛している事は、誰にも内緒にしなくてはいけないのだから。
秘密の、恋なのだから。
「おい、薔薇落ちているぞ」
「あ…ああ。すまない」
俺は地面に落ちていた薔薇を拾ってくれた香取に一応礼をし薔薇を受け取った。
薔薇は相変わらず君の前だからか真っ赤に燃えるように赤かった。
「それにしても、お前くらいだぜ?
女じゃないのにこうやって鏡の前によく行くやつ」
「……」
佐倉大作。
俺は君に恋している。
嗚呼悲しい事に君は本当は俺自身なのだけど。
俺は、本気で俺を愛している。
他の誰でもない、俺自身を。
ナルシストと呼べばいい。
白い目で見ればいい。
きっと誰よりも叫びたいくらい俺は俺を愛している。
それはもう禁忌的に。
世界中の、誰よりも。

