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◎童話パロ:シンデレラ
2016-8-23 13:22
童話パロ:シンデレラ
シンデレラ、はじめに
シンデレラパロディー。
フォレストノベルで書いたもの。
400文字制限があったので、不完全燃焼でおわったぶつ。
いつか、ちゃんと書きたいです。
・
あるところに、シンデレラ(灰かぶり姫)という綺麗な少年がいました。
とてもはかなく美しい、小さな花のような綺麗な少年。
シンデレラは、父亡き後、毎日のように、継母や義兄達に虐められていました。
けれども、シンデレラは幸せでした。
自分を虐める義理の兄の一人、リアスが好きだったのですから……。
「ふ…にい…さま……やめて…恥ずかし…」
「ふふふ、シンデレラ。ここをこんなにさせて恥ずかしくないのかい?」
「い、言わないで下さい。兄様…」
顔を赤らめ、はしたなく足を広げ、褥[しとね]に身体を投げ出すシンデレラ。
情欲を孕んだ顔は、普段の控えめなシンデレラとは随分印象が変わります。
女よりも美しく妖しい色気を放ち、見るものを虜にするようなオーラを纏い、リアスを物欲しげに見つめるシンデレラ。
「シンデレラ、お前は淫乱だね。…僕は君を虐めているのに…」
「あ…ふ……にい…さま…」
「何故だろうね、君を見ると、僕はいらつくんだ」
リアスは、冷たくそう吐き捨てると、シンデレラの細腰をかきだき、首筋に噛み付くようにキスをしました。
痛いくらい、残るような、激しい痕。
リアスはシンデレラを愛してなどいないでしょう。
だから、こんなに冷たい言葉もはけるし、痛いくらいに傷痕も残すのです。
愛してなど…いないから。
ただ、シンデレラが鼻につくだけだから…
(だから…だから僕を、女のように抱き、嘲笑う…。だからお母様と一緒になって僕を苛む。
兄様は…僕を好いてなどいない…)
シンデレラはその事実に、また何度と経験したかわからない痛みが襲ってきましたが、必死に頭を振りました。
そして、その痛みを紛らすかのように、ぎゅうっとリアスの首に手を回し自分から抱き着きます。
「兄…様…お願いです…兄様」
「なに?」
「僕を…僕に兄様のものを、下さい」
シンデレラは焦らすリアスのモノに、自分から腰を揺らしました。
もう一秒も待てない、というような淫らな性急な仕草。
綺麗な、欲など一切なさそうな顔をしながら気恥ずかしげに、ねだるシンデレラ。
リアスが抱く前は、本当に何も知らない無垢な少年であったのに。
リアスに身体を開かれ、男を知ってしまった今は……
「……随分淫乱になったな。シンデレラ」
リアスはシンデレラの変貌にニヤリと笑い、そのままシンデレラの口に舌を差し込み激しいキス をしながら、シンデレラを押し倒しました。
「やるよ…お前が欲しいものを」
「あ…あん…ん…」
(兄…様)
シンデレラは激しい攻めに目を閉じ、静かに祈りました。
虐められても
苛まれても、
それでも愛しいこの人が
いつまでも自分を抱きしめてくれますように…と。
「シンデ…レラ……ッ」
「兄さま兄さま……にい…」
けして、それが、
叶わぬ思いでも。
ただ、自分を傷つける行為でも。
リアスはシンデレラの事を嫌っていても。
それでも、シンデレラは祈るのです。
リアスが、ずっと自分の側にいますようにと。
抱きしめてくれますように、と
愛などくれない義兄を、ひっそり泣きながら思うのです……
この腕がいつまでも自分を抱きしめてくれますようにと……
*
翌朝。
シンデレラは痛む腰を庇いながら、いつものように皆の朝食を用意しました。
シンデレラの朝は、それはとても早く辛いものです。
どんなに昨夜激しく抱かれ腰がふらついても、朝の仕事をしなくてはいけないのですから。
朝の支度を忘れれば、ご飯抜きはおろか、家から追い出されます。
(追い出されたら…兄様に会えない…。そんなの…)
父が亡くなってから、シンデレラは何度も家を逃げ出そうとしました。
けれど、その度にリアスの事を考えてしまい、結局家から出られないのです。
シンデレラにリアスはいつも辛く当たっていましたが、たった一度、父を失ったばかりの頃に風邪を引いたシンデレラを看病してくれました。
シンデレラがうなされれば、夜ごと汗をふいてくれ。
シンデレラはそのたった一回の看病で、リアスに恋をしてしまったのです
「何ぼーっとしているんだい?」
「あ…」
ふらつきながらも、給仕を行っていたシンデレラの背後から意地悪な声がかかりました。
継母です。
継母は具合の悪そうなシンデレラをギロリと睨みました
「おはようございます、お母様」
「ふん…」
シンデレラは継母の為にイスを引きます。継母は当然のようにその椅子に踏ん反り返りながら座りました
「早く朝食の準備をおし、シンデレラ」
「はい、お母様」
「おはよう母さん」
シンデレラが継母に返事をしたその時、リアスがいつの間にか二人の真後ろにいました。
リアスは継母とシンデレラににっこりと微笑んでいます。
寝起きにも関わらず、リアスの髪や服は一変の乱れもなく、いつも通りきちんとしており、シンデレラはついつい昨夜の情事を思い浮かべます。
涼しげで、爽やかで余裕のある男。
それが他人からみたリアスの大多数を占める第一印象です。
しかし昨日のリアスは…シンデレラの痴態に目を輝かせ、非常に意地悪でした
「リアス、おはよう。私のリアス」
継母はいいながらリアスの顔中にキスをふらせます。
継母はリアスの美しい端正な顔が好きだったし、また自慢の息子でした。
継母だけじゃありません。
この街の若い娘は大体美丈夫なリアスに惚れているらしいのです。
ついこの間、この国で盛大なパーティーがあった訳ですが、大抵の若い娘の視線はリアスにあったと聞きます。
みんなが皆、リアスに夢中になるのです。
「母さん、ほら、ご飯が冷めてしまうよ。せっかくシンデレラが用意してくれたのに。ほら、食べよう」
「えぇ、そうね…」
リアスに促され、継母はようやく出された食事に手をつけました。
「シンデレラ、僕の分も頼む」
「兄様…はい。」
リアスに言われ、シンデレラは急いでリアスの分の食事も用意します。
(兄様…)
リアスはシンデレラが継母に絡まれ困った時はいつも助けてくれます。
あんなに、シンデレラが嫌いだとベッドの中ではいうのに。
二人っきりにならない限りは、リアスはいつも優しい顔をしています。
シンデレラと二人になった時だけ、獰猛な獣になるのです。
「それにしてもリアス、そろそろお姫様に婚約しないのかね?」
継母が、パンを頬張りながら何気なくリアスに言いました。
その言葉にズキリ、とシンデレラの胸も痛みます。
この間盛大なパーティー…舞踏会があり、リアスはこの国のお姫様の目に止まったのです。
背が高く、顔もよく、周りとは違うオーラを纏ったリアスならば当然といえば当然だったのですが。
シンデレラはパーティーに参加出来ずにいましたが、それでもパーティーに興味のないシンデレラにとっては何の苦もない事でした。
リアスが、お姫様の告白を受けるまでは。
「婚約だなんて…母さん気の早い…」
「なにを言っているんだね、お姫様はあんたにめろめろさ。早くベールを渡すんだよ」
継母は朗らかに笑いながら、ぽん、っとリアスの肩を叩き、席を立ちました。
継母は食べるのが非常に早いのです。
リアスの皿には未だに半分ほど朝食が残っていました。
(ベール…)
「シンデレラ」
「は、はい!兄様」
不意に、リアスがシンデレラを呼びました。
継母がいなくなったので、先程とは違い、堅く冷たい声です。
「シンデレラ、ベールはもう出来たか?」
「…はい…。昨夜…」
シンデレラは、震える声で何とか答えました。
ベール。
それはこの国では婚約する時、愛を囁く時に使うのです。
婚約する相手がベールを受けとってくれたら、結婚でき受け取られない場合は破談、と昔から決まっているものでした。
簡単にいえば結婚する為の道具、です。
シンデレラは無情にも、そのベールを数日前から作るようにリアスに命じられていました。
愛している人の、未来の奥さんのベール。
シンデレラはベールを作っている間、何度となく泣きました。このベールを作ってしまえば、リアスは別の人を妻にしてしまうから。
出来る事ならシンデレラは一生、ベールなんか作りたくありませんでした。
ベールさえなければ、リアスは誰のものにもならないから。
思いが通じないのならば、せめて誰のものにもなって欲しくなかったのです
「傷…ついているな」
「あ…」
リアスがシンデレラのきずだらけの手を掬い、目を細めます。
普段器用なシンデレラでしたが、そういった思いから手先は鈍り、何度も手先に針を刺してしまい傷になったのです。
「大丈夫で…兄様!?」
シンデレラは目の前の状況に目を丸めます。
何故って?
リアスが、シンデレラの傷だらけの手に口づけをしているからです。
普段抱かれたりもっと恥ずかしい事を沢山されているにも関わらず、シンデレラの頬はカッと赤らみました。
「兄様」
「お前は僕のベールなど作っても何も思わないのだろうな…お前はいつだって飄々としている。そこが憎いよ」
「あっ…」
揺れるリアスの瞳。
リアスはシンデレラの頬を包むと、静かに口づけを落としました
「兄さ…」
「僕は、今日、このベールで姫と婚約する」
「あ…」
婚約。
ついに、リアスが他の人のものになる。
シンデレラはその事に頭が真っ白になりました。
リアスが、誰かのものに。誰かをシンデレラと同じように抱く。
考えただけで気が狂いそうです
「やっぱりお前はなにも言わないんだな…」
リアスは何も言わないシンデレラに悲しげな声色で呟き…
そして静かにそこから去っていきました。
ほろほろと、涙を零しているシンデレラに振り返らずに。
*
その夜、いつもより盛大な夕食がテーブルに並びました。
リアスが今夜、お姫様に結婚を申し込む事を決めたのでそのお祝いだそうです。
ついに今夜、リアスはお姫様に愛を告げる……。
シンデレラは泣きたいのを我慢し、必死に給仕を果たしました。
リアスの前では気丈な振りをし続けたのです。
「兄様…兄さま…」
「あのさー、シンデレラ!泣くんじゃないよ。もー」
リアスが姫に告白すると家を出て。
シンデレラはやはり悲しくてしくしく泣いてしまいました。
やはり悲しくて辛くてどうしても涙が止まらないのです。
そんなシンデレラを、唯一家族の中で虐めない三番目の兄ファンは、なんとかして涙を止めようと延々とシンデレラに語りかけました。
ファンはシンデレラもリアスも大好きだったから
「シンデレラ、お前は魔法でも待っているのかい?
素敵な馬車や、綺麗な靴なんでも叶う魔法とか。
だから泣いているのかい?魔法が使えないからって。女じゃないからって」
「違…僕は兄様が…」
「兄さんがなに?好きなら好きだと行動した?ただ泣いているだけじゃないか!魔法がかからないってないているだけ」
ファンは優しく、ゆっくりとした口調でシンデレラに語りかけます。
「ちゃんと前を向いて。魔法をかけるのはいつだって、恋してる人間の思いなんだから」
「でも…」
「当たって砕けろ!だ」
ファンは勇気づけるようにシンデレラの背中を押します。
ぽんぽんと軽く叩くように。
「ファン兄様…」
少し勇気づけられたシンデレラは、泣くのを辞め前を向きました。
泣いていたって何も変わらない。
そう思ったからです。
「僕、いってくる。兄様に本当の気持ち。いって、ちゃんと言う」
「そのいきそのい…ってもういない」
シンデレラはファンの言葉を待たずに駆け出しました。
自分の思いを伝える為に。
時として、リアスは一人王宮に近い森の中にあるベンチに腰掛け、月を見上げていました。
周りには誰もいません。
月の仄かな明かりだけが、そこをてらしていました。
「…シンデレラ……」
ぽつん、と零れる言葉。
リアスはついつい出てしまった声に苦笑します。
実は。
リアスもまた、シンデレラの事が好きだったのです。
リアスがシンデレラに度々強くあたったのは、思いが通じなかったから。
しかもシンデレラがリアスと同じく男だったから。
いきばのない感情が暴走し、いつも強く当たってしまったのです。
「シンデレラ…僕は…」
「兄…様」
ふと、リアスの耳に入ってきた声。
「っ!シンデレラ!?お前どうして…」
そこには、ついいましがた考えていたシンデレラの姿。走ってやってきたのか、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返しています。
リアスは突然目の前にやってきたシンデレラに目を丸めました。
「シンデレラ、どうしてここに…」
「兄様にお伝えしたい事があって」
「僕に?」
「はい」
シンデレラは何度か息を吸い呼吸を整え、リアスの顔をじっと見つめます。
二人の瞳が、静かにゆれあいました。
訪れる一瞬の静寂。
そして、意を決してシンデレラはそっと唇を開きました。
「兄様が僕を嫌いなのは知っています。
でも僕は…
僕は兄様の事が好きなんです」
「シンデレラ…」
「好きで、ごめんなさい。僕を嫌いなあなたを好きで、ごめんなさい…」
「シンデレラ」
シンデレラはまたぽろぽろと瞳から涙を零しました。
「シンデレラ、」
「…兄様…」
リアスはシンデレラの告白に答えるかのように、きつくリアスを抱きしめました。そして、優しく、指先でシンデレラの涙を拭います。
「…ずっと…、辛く当たってすまなかった…」
リアスは初めて、シンデレラに謝罪しました。
「ずっとずっと、いきばのない思いをしていた」
「兄様」
「僕も、ずっとお前に惹かれていた。惹かれて止まなかった。狂おしいくらい…」
優しくシンデレラの頬を包むリアス。
「お前を愛している」
「えっ…」
シンデレラはリアスの言葉に、幻でも見ているのかと目をしばたたかせました。
嫌っている、とは言われても愛しているなんて初めて言われたのですから。
「信じられない?」
「…はい…」
「…姫とは、婚約しない。ベールは、お前のもの、だ」
「あ………」
リアスはシンデレラを抱きしめていた腕を解き、ベンチにあるベールを取りました。
「シンデレラ、僕とずっと、一緒にいて欲しい」
「兄さま…」
「誰よりも大事にするから」
「兄さま……」
「お前に永遠を誓う。だからお前も永遠を僕にくれ」
「…兄さま」
「お返事は?」
「…はいっ…はい…」
シンデレラは感極まってリアスに抱き着きます。
リアスはシンデレラの頭にベールを載せ、それからまた大切なものを抱きしめるかのように、優しくシンデレラを抱きしめ返しました。
ーねぇ、魔法ってあると思います?
素敵な素敵な恋の魔法。
かけられるなんてお思いですか?
誰かにかけられるのを待っているんですか?
実は魔法なんて、誰でも本当はかけられる力を持っているんです。
「シンデレラ、」
「兄様」
そう、
「「愛してる」」
叶えようとする力があれば。