ごちゃ倉庫
◎狼さんと牧師様
「ん…ぁぅ…」
「ん?どうしたのかな?
もう降参?」
とある小さな教会に、狼さんと牧師様が住んでおりました。
この狼さん…、といっても牧師様と一緒にすんでいる狼さんは半狼なので、人間そっくりな姿をしているのですが。
今その狼さんが何をしているのかと言いますと…
「っ…うるさ…い…!早く…イケ!…
遅漏がぁぁっ」
‘ナニ’やってたりします。
えぇ、それはもう朝っぱらから‘ナニ’をやっていらっしゃるのです。
全く元気がいいものです。
「可愛くないねぇ〜。早漏君」
あぁ、ちなみに今ベッドに狼さんを押し倒している方は…
「うっせぇ。
馬鹿っアホっスケコマシ変態鬼畜牧師っ」
「君今の状況分かっているかな?」
「あぁっ…っやっ…やめ…ああぁっ…」
この町一番の人気ものの牧師様だったりします。
「ほらほら、まだだぜッ…狼…ッ」
「ひゃ…あっ…も…イヤ…だ…ぁ…」
さてさて、半分狼の血をひく半狼と少し性格に難がある牧師様。
少しこの2人の日常を覗いてみましょうか。
<狼さんサイド>
はぁ。
またやっちゃった…。
何回イカされたんだっけ?
三回まではなんとか覚えているんだけどな…。
くそ…あの絶倫鬼畜牧師めっ。
ヤルならヤルで手加減しろっ!て感じだよな。
ネチネチとやりやがって…
俺が気絶するまでやらなくてもいいだろ…。
あんな爽やかな顔で、あんな大きいの…
こっちの負担考えずにガツガツ…
しかも生で中出しまでしやがって…。
ちっとは考えろよな…あの馬鹿牧師がっ…。
俺はムカムカしながらベッドの隅にあった枕を牧師様の代わりに思いっきり数発殴る。
枕は‘ぼふっ’と白い羽を出しながら、みるみるうちにぺしゃんこになり原型をとどめていない形となった。
こんな枕にしか八つ当たり出来ない俺って…ほんとだめなやつ。
俺の名はロウ・アクアイア。
訳あって変態牧師に拾われて以来、ずっと牧師と一緒に教会に暮らしている半狼族の半狼だ。
半狼族…って言うのは簡単に言うと半分人間の血と半分獣の血が混じった種族の事で、こうして半狼族は俺みたいに頭に獣耳が生えたり尾に尻尾が生えたりしている。
動物の獣耳ね。
俺の場合は半狼だから狼(犬)耳だけど。
ちゃんとその獣耳にも、しっぱにも神経が通っているから引っ張られるとかなり痛かったり、いじられると…その…かなり感じたりする。
もちろん耳と尾はちゃんと機能もしていて、耳を塞がれれば何も聞こえないし尾を引っ張られれば方向感覚が掴めなくて転んでしまう。
いわば耳と尾は半狼族の俺の急所であり、チャームポイントでもある。
牧師は俺と違って獣耳も尾もない。
奴は俺と違った種族人間なのだ。
だから…
なのかは知らないが奴はいつも…その…やる時は俺の尻尾をいじったり獣耳に息吹きかけたり、といい玩具を貰った子供のようにいつも俺を苛む。
ねちねちと、俺が弱いそこばっかせめてきて…。
まぁ、やつにしたら俺の存在なんて玩具同然何だろうけど。
さっきだって牧師は俺の乳首をとけるくらいにこねくり回し、それから…それからだなぁ…
ああぁぁっ
もう考えたらまたイライラしてきた。
しかもあんなに喘がされたから喉も乾いたし。
俺は牧師が情事後に用意して置いたであろう枕元のミネラルウォーターに手を伸ばす。
このミネラルウォーターは大抵事が終わったら牧師が用意しているらしく、情事後はいつも俺が失神している間にいつの間にか俺の黄緑色の枕の近くにあった。
別にこういう心配りがあったって牧師には甘やかされている訳じゃないけど、やはり優しくされると少し気分が良くなる。
モテ男の牧師にしてみればこんな事対した事ではないんだろうけど。
俺はミネラルウォーターの蓋を開け、コクリと喉音を立てながら水を飲み干した。
「ふぅ」
のども潤い、満足した俺は軽いため息を零す。
俺と牧師のことを考えながら。
そもそも、俺と牧師の関係は非常に曖昧だ。
接点…という接点はないに等しい。
ただ、協会前に捨てられた俺を牧師が保護した…
たったそれだけの関係なのだから。
牧師が俺を抱いているのだって、面白半分だし…
別に、俺のこと好きな訳じゃないんだし…
そう思うと、何故だかチクリと胸が痛くなる。
こう…なんとなく嫌な感じっていうか…うまく言葉に出来ないんだけれど。
「牧師〜…いないのか?」
俺はミネラルウォーターのペットボトルを持ったまま辺りを見回す。
辺りはシンと静まり返っており物音1つしない。
起きたら牧師がからかい半分、優しくしてくれると期待していた俺は少しショックを受け思わず獣耳を伏せてしまった。
シャワー…なのかな?
なんか…
なんかさ、最近あいつが隣にいないと不安つーか寂しいっていうか…
そのなんていうかさ、なんか変なんだよな。最近。
俺。
この前まで俺、一匹狼してたのに…、さ。
そもそも牧師とこんな事になったのはただのやつの気まぐれなのに…。
『君いつも俺を見てるね、狼君』
『退屈していた事だしいいよ。
付き合っても。』
そう言って俺を保護した牧師。
退屈してた事だし付き合ってもいいとか。
じゃあ、俺はただの退屈しのぎかよ。やつのていのいい玩具かよ。
なんて文句色々あるんだけどさ…
俺はヤツからは離れられないんだよな。
いつかは切られてしまうかもしれない関係。
それに俺は必死になって縋りついている(と思う)
このままじゃ駄目だよな。
あいつに依存している毎日じゃ…。
一人に戻れなくなっちまう。
だから俺はあいつにはけして言わないんだ。
『スキ』って言葉を。
それが俺の最後の逃げ道。
あいつを縛らない為の。
多分俺の態度でそんなの言わなくても牧師には分かっているだろうけどな。
百戦錬磨のあいつには…。
いつかあいつは、とりまきの子と真剣に付き合うかもしれない日がきっと来ると思うんだ。
だって俺狼だし…男だし素直じゃないし。
普通、人間の女の子の方がいいよなぁ…。牧師はただでさえ女の子好きだから。
巨乳、が好き、らしいし。
俺胸ないし。
もうお前なんかいらないって言われたとき。
その時は…俺黙って消えれるかなぁ…。
もしかしたら今この瞬間だってやつは今俺を抱いた数時間後に他のやつとベットでゴロニゃン♪しているかもしれない…。
イタイなぁ…。
だけどこの関係を続けるためにはそれは見てみぬフリをしなくてはいけない。
ホント楽じゃない。
こんな、気持ち。
辛くて、怖い。
「なぁに耳伏せてしょんぼりしてんだよ」
ふと、背後から声がかけられる。
…牧師だ…
バスローブにぬれた髪…
シャワー浴びてたんだな…。
濡れた髪にバスローブから覗く、胸板…。
なんかすっごいセクシーでえろ…
「な…、なんでもない…」
「なんでもないねぇ…?
お前の嘘は身体にでるからな。
さっきも…」
「いうないうなっ」
俺はやつの口を塞ごうと手を伸ばす。
とそれを実行する前にやつの手にガッシリ掴まれたりして。
掴んだまま、俺を牧師は見つめた。
「な、なに…」
真剣な牧師の表情。
黒い、真っ直ぐな視線。
「な、なんだよ」
牧師の今までになく真剣な表情に俺はうろたえる。
こういう表情普段からしないから心臓に悪いんだって!
普段はへらへらしている牧師だから…。
「ん、好きだぜ…?」
牧師は極上の笑みと甘いハスキーボイスで言ってくる。
「どうせ…」
どうせ誰にでも言ってるクセに…。
俺は信じないからな…。
絶対に。
俺は…
「キス…するぜ?」
やつのスキって言葉信じない…。
信じないけど…、
だけど
今この瞬間はこの腕を信じてもいいかな?。
牧師は目をつむりキスを待つ俺にそっと唇にキスを落とした。