セバスチャンは優雅にほくそ笑む

※セバス視点です


【セバスチャンは優雅にほくそ笑む】


私のご主人様。
美しく聡明で、けれど愚かなご主人様。
とても、愛らしくそして無垢で可愛いご主人様。
可愛い可愛いご主人、ハウル様。


さぁ、今日もその愛らしい唇で何を私に命令されますか?
どんなふうに私を魅了してくださるのでしょう。
愛しの私のご主人様。




 太陽の木漏れ日が零れ落ち、そよ風が頬を叩く。
麗らかな天気を感じながら、 一つ息を吐いた。

長い時間をかけて、磨いた廊下の窓ガラスは汚れ一つなく輝いていた。
綺麗に磨かれた窓ガラスにこれぞこの屋敷本来の姿と満足しつつ、前の執事はあんなに汚れたままにしていたなんて…と顔も知らぬ前の執事に怒りを覚える。

前の執事は旦那様の話を聞く限り、そこまで仕事熱心な人間ではなかったらしい。
わたしと比べ、仕事ができなかったようで、旦那様はことあるごとに私を前任者と比べ褒めてくださった。

ご主人様以外に褒められても嬉しくはないし、ただ私の自己満足でやっているだけなのだが、旦那様は私を執事の中の執事だ、とえらく私を気に入っていた。

私の目的はご主人様だというのに、その入れ込みはえらいものだった。
まぁ、成人していないご主人様の親である旦那様がこの屋敷の主ではあるので、嫌われないようにはしているが、ここまで私を気に入ってくださるのも予想外であった。
まぁ、どれだけ気に入ってくださっても、私はご主人様以外の好意など、どうでもいいんですがね。


今日、徹底的に掃除したのも、ご主人様の為だった。
いい素材を使っているのに窓ガラスは本来の輝きをしていなかったため、屋敷の美しさを損なわせていた。
完ぺきなご主人様の城が、完璧でないのは我慢ならない。

 私は、掃除婦にやらせるからという旦那様の申し出を断り自ら掃除係を志願した。

私が長い時間、端正こめて磨いた結果、窓ガラスは新品同様太陽の光を取り入れキラキラと輝いていた。
窓ひとつで、屋敷の中まで明るくなったかのようである。

窓ガラスのように、埃まみれてこの屋敷に相応しくない最高級の素材はまだまだ沢山ある。
名だたる画家に描いて貰った名画、名人と名高い職人からもらったツボ。
この屋敷にある絵画や骨とう品など、値段にすると、とんでもない金額になる。


旦那様はけして、ボンクラ人間というわけではないが、金に関しては、ことルーズだ。
自分がほしいと思ったものは、何も考えず、ぽんと買ってしまう。
だから、この屋敷には芸術品で溢れかえっているのだ。
金が有り余っているのだから、美術品も買いあさりたくなるのだろう。
この屋敷においてあるものは、どれも素晴らしいものばかりだ。


そんな屋敷の中でも、一番美しく最高傑作といっていいものはやはりハウル様≠セ。
この屋敷なかでも最高品の一級品。

美しく、聡明で気高い、名画のように誇り高く人を魅了するハウル様。
まるで天上の天使のような御姿で、気品ある素晴らしい方である。


今日も今日とて、ハウル様は物陰から私をじっと伺っていた。
その姿が窓ガラスに写っているともしらずに。

おそる恐る私を見ているようだった。
その様子はまるで小動物のようだ。
私が怖いならば、逃げればいいのに。

逃げることなく、私を伺うご主人様。

嗚呼、可愛いそして間抜けなご主人様。
最近まで、その可愛い顔で私を威嚇していたというのに。
今は私がしでかしたことに怯え、怖がっている。


きっと私が今振り返れば、ハウル様は脱兎のごとく逃げてしまうだろう。
いや、それとも私に「なにをしているんだ」と傲慢に言い放つだろうか。

私を怖がりながらも、気丈に振る舞い噛み付いてくるだろうか。ビクビクと震えながら。
さて、今日のハウル様はどちらだろう。

そんなことを考えながら、ハウル様の方を振りむいた。



「ハウル様?」
「…っ!」


ハウル様は私が振り返ると、体をぴくりと跳ねさせ、すぐに私に背を向け逃げてしまった。
一度もこちらを振り返らずに。
ああ、そんなに逃げて。
また捕まえてほしいのですね。
困ったご主人様だ。

怖がり逃げる獲物なんて、飢えた獣の絶好の獲物だというのに。

戯れに行った濃厚なセックスが、あの猫には強すぎたのか。
あの強気なシャム猫も、快楽を前にしたら、威嚇も忘れてしまうのか。
昨日のハウル様の痴態を思い出し、クスリと笑みが浮かんだ。




「お前と、SEXしにきた」

私にそう言い放ったハウル様。
その手は震え、身体は強張り目は潤んでいた。


ーなにを、考えている?

ハウル様は、私のことを好いてはいなかった。

むしろ、私に反発し、壁を作り遠ざけようとしていたほどだ。
なにか、ある。


チラリと視線をハウル様に移しても、ハウル様は俯いたまま、言葉を撤回なさらない。

白い艶かしい肌に、偶然覗いたピンクの乳首。
男なのに、ぞくぞくするほど色気を帯びた華奢なその肢体。


誘っている・・?
体で陥落でもしようとしている・・・?




この誘いにはなにか、ある。
きっと、なにか考えがあってのこと。
けれど、その考えなど、封じるのはたやすいだろう。

なにせ、世間知らずなご主人様相手なのだから。


「来てください、ハウル様・・・」
「う、うん・・・、あ、あの・・・」
「優しくしますから・・・」


有無も言わせずに微笑めば、ハウル様は困ったように眉を顰めた。

そのまま、ベッドに小さな身体を転がし、身体に乗り上げればハウル様は頼りなげな瞳でこちらを見つめた。

今更、怖気づいた?
ベッドを上にして?


誘ったのは、あなたでしょうに。


「やっぱり、あの・・・んっ・・・」

やはり、やめる言葉を紡ごうとしたハウル様の唇を奪った。
ギュッと口を閉じているハウル様の唇を何度も舌でなぞり、こじ開ける。

「ん・・・や・・・、」

口内に舌をいれた途端、ハウル様の震えが大きくなる。
小さく震える吐息。
その吐息さえも、封じ込めるように唇を奪う。

「ん・・・ふ・・・んん・・・」

誘ったのはハウル様の癖に。
ハウル様は私の口づけに、いやいや、と小さく首を振っている。

ハウル様の舌も私の舌の動きに何もできずにガチガチに固まっていた。
そんな抵抗も封じるように、顎先を手で捉え何度もくちづけを合わせた。


 舌を絡め、わざとピチャピチャと音を立たせてやると、ハウル様は顔を赤らめながら震える手で私のシャツを掴んだ。


「も・・・、嫌だ・・・」

気高いシャム猫が、目を潤ませて、震えている。
いつもはツンツンとこちらをないがしろにするシャム猫が。

今は私に縋っている。

ゾクゾクとしたものが、背筋を駆け巡った。

私の中の、隠された嗜虐心。

このまま、めちゃくちゃにしてしまおうか。
そうだ、この猫を私好みに調教してしまおう。

ニヤリと笑いかければ、ハウル様はビクリと身体を震わせてこちらに縋るような視線を向けた。


「セバス、」
「誘ったのは、貴方。ハウル様、ですよ・・・?」

そう、貴方がこれ≠望んだのです。

ハウル様の乳首をそっと摘む。
きゅ、と力を入れてやればハウル様は信じられないというように目を開かれた。


「そこ・・・やめろ・・・、」
「ハウル様、男でもここは感じる方もいるようですよ・・・」
「そんな・・・の・・・」
「ハウル様はどちらでしょう・・・試してみましょうか・・・」


ちゅ、と片方の乳首だけにくちづけをする。
そのまま舌先で転がせば、柔らかだった乳首の先がつんと固くなっていく。


「セバス・・・っ、そんなとこ・・・、やだ・・・」
「どうして嫌なのです?感じなければ、いいことでしょう。笑って、何やってるんだと言えばいいじゃないですか。」

乳首から顔を離して、ハウル様に微笑む。

ハウル様は、きっと怖いのだ。
乳首で感じてしまうのが。
男なのに、そこで感じ女のようになってしまうのが。

ハウル様の身体はとても敏感で、今も乳首を舌で転がしただけで既に肌は赤らみ欲情してしまっている。

綺麗な極上の身体。

こんな極上の身体、ほかの誰かに汚されたりはしていないのだろうか・・・。
もう、ほかの誰かにこの身体を味あわせたことがある・・・?

考えたらフツフツと怒りがこみ上げてくる。

ギュッと乳首を怒りをぶつけるかのように摘めば、ハウル様は涙目になってこちらを睨んだ。


「痛い・・・」
「すみません、ハウル様。ハウル様の乳首があまりにも可愛かったもので・・・」
「ふざけ・・・、」
「ねぇ、ハウル様、この乳首ほかの人間に味あわせたことがあるのですか・・・?」

ゆっくりとハウル様の乳輪を人差し指でなぞってやれば、ハウル様は切なげに吐息を零した。

「この、敏感で可愛らしい乳首を・・・」

指で転がして、先端を叩く。
尖り切なげに立っている乳首を何度も優しく撫でる

「ほかの忌まわしい人間に味あわせたことがあるのでしょうか・・・」

ハウル様の身体がいじるたびに大きく跳ねた。


「ねぇ、お答えください、ハウル様」

顔をあげて、ハウル様を見つめる。ハウル様は、きつく唇を噛み締めていた。
カリッと、歯で乳首を甘噛みすれば、ハウル様は口端から唾液を零しながら、ふるふると頭を振った。


「誰も・・・」
「ハウル様?」
「誰も、ない・・・。これが、初めてだから・・・、だから」


ハウル様は、私のネクタイを引っ張り己に引き寄せると、傲慢に言い放つ。


「やるなら、優しく、しろ・・・」


「仰せのままに。愛しのマイロード」


そう言って胸元に口付ければ、ハウル様はまた一つ熱い吐息を零した。
そのまま、ハウル様の身体を開く。
ハウル様は始終、手で顔を隠しながら、それでも快楽から出た喘ぎ声を零していた。


一言で言ってしまえば、ハウル様の身体は最高だった。
魅惑の身体、といってもいいくらいだ。

いやいや、と言いながら、私を締め付けて離さない。
可愛い喘ぎ声を吐きながら、快楽で目を真っ赤にうるませる。

インキュバスの生まれ変わり、そう言われてもおかしくないくらい、私はハウル様の身体に溺れ、その日は何度もハウル様を求めた。



ーハウル様は、何故私を求めたのだろう。
それは未だにわからない。

だけど、一度味わったハウル様の身体は、もう忘れられそうにない。

私はハウル様の虜だ。


私の姿を見て逃げ去ったハウル様に苦笑し、ゆっくりとハウル様の後を追いかける。

私とハウル様の鬼ごっこは、始まったばかりである。

百万回の愛してるを君に