剛さんは、礼儀正しい。それから、凛々しい顔しているし、真面目。
日本男子、という言葉がよく似合う。

しつけが厳しい家に生まれたといっていたし、家は茶道の家元で、剛さんは昔から道≠ェつく事を習わされていたらしい。

華道に茶道。弓道に剣道。
そんな剛さんは、家にいるときは、いつも簡単な浴衣を羽織っている。
洋服よりも、浴衣や着物の方が落ち着くらしい。俺の家にもいくつか剛さんようの浴衣や襦袢を用意している。


はんなり、とした着崩した浴衣の着方。
これぞ、日本男児、の剛さんだけど、出身は九州だ。
会社から帰った後、剛さんは、必ず浴衣に着替えている。
それも様になっているから、ずるい。
剛さんのスーツ姿も好きだけれど、浴衣姿は、ついついぽぉっとしてしまう。


朝なんかは、いつもはだけているから、俺の心臓は爆発寸前だ。
綺麗な首筋だとか骨張った鎖骨を見るたびに、「かっこいい」と叫びたくなる。

ほんと、セクシーなんだよね。剛さんって。
男の色気っていうのかな…。

真面目過ぎるから、そんなにモテたことがないって言っていたけど、それは違うと思う。
きっと、その剛さんの真面目な空気だとか、なんでも出来るオーラに気負っちゃうんだと思う。
剛さんはふられっぱなしだって、笑っていたけど。
こんな人がもてなかったなんて、世界七不思議に入ると思う。


 今日も剛さんは、スーツから浴衣へと着替え、茶の間で足を延ばしていた。
疲れているんだよね。剛さん、出世頭らしいから。
今はびっしりと固めた髪を崩し、リラックスした面持ちだ。


剛さんは多忙な人。
なのに、会える日があれば、いつも俺の家へよってくれる。
ゆきの料理が一番だから、と、外食よりも俺と家にいることを望んでくれる。
俺を甘やかしてくれる。


「剛さん、ビール、開けますか?」
「ああ、頼む」
「はい、」

剛さんの返事を聞き、冷蔵庫を開ける。
冷蔵庫には、俺が飲まないビール瓶が数本入っている。

いつ剛さんが来てもいいように、とビールだけはいつも冷蔵庫に常備している。
俺の家にきたときくらいは、美味しいものや好きなビールを飲んでゆっくりしてもらいたい。
ご飯だって、剛さんと付き合ってから大分上達したと思う。
今までの彼氏は俺が料理にかける時間よりもさっさと抱き合いたいって人間が多かったし。
バランスを考えた俺の料理じゃ、毎日飽きると言って外食に連れ出す彼氏が多かった。俺の料理は和食で脂っこいのが少ないから、ジャンクフードを好んでいた彼氏たちには俺の料理が受け付けなかったようだ。

 ちなみに俺の得意料理は、剛さんが好きな肉じゃがだ。

なんか、俺って奥さんみたい…?新婚さんみたい、かも。


すぐに、机に夕食をセッティングして、コップにビールを注ぐ。
剛さんは、それに毎回礼をいい、「いただきます、」と手を合わせて俺が作った夕食を口へ運ぶ。
俺も同じように「いただきます」といって、おかずに口をつけた。


  ーー剛さんは、俺を抱きたくないのかな。
付き合って3か月。
こんなに、身体を求められなかったことはない。
なんせ、俺は子悪魔でゲイの人間から見れば、やりまくっているようにも見えるそうだから。

歴代の彼氏たちは、付き合ったその日に俺とセックスしようとしていた…。
俺が拒否すれば、「かまととぶってんじゃねーよ」とか言ってたっけ。

剛さんのように、ただキスとか抱擁だけの付き合いなんて初めてだ。

だから、不安になる。
プラトニックな関係も素敵だと思う。
素敵だと思うんだけど…やっぱり、俺はそれじゃ足りない。

剛さんを求めたいし、求められたい。

俺は抱かれたら抱かれたで、マグロだから困る癖に、求められなければ、俺を欲しくないのかと、縋ってしまいたくなる。

セックスがうまくなりたい。ううん、剛さんを満足させたい。
剛さんに見捨てられずにいたい。
剛さんによかったと言われたい。

その為には…。
どうしたら、いいのかな。練習、でもすればいいの?
練習、したら上手くなるのかな…。
でも、剛さん以外の人ともう抱かれたくない。

俺は…。


「ゆき…、」
「ん…」
「どうした…?」
「え…、」
「浮かない顔しているが…、」

眉を寄せて、心配した顔で俺の顔を覗く剛さん。
浮かない顔なんて、しているのかな。自分じゃわからない。
でも、剛さんが言うならそうなんだろう。


「そんな変な顔、してる…?」
「ああ…まぁ…。思いつめた顔していたぞ」
「そう…、」

疲れた剛さんを不安にさせるなんて、恋人失格だなぁ。
剛さんに、「なんでもない」と言って、残りのご飯を詰め込む。

急いで口に詰め込んだので、味は全くわからなかった。


*********

「そんで…?」
「え…と、以上だよ?」
「つまり、まだ抱かれてないんだ、剛に」
「うん…、」

はぁ、と、わざとらしくため息をつく友人・和泉さん。
彼は、俺の人生の先輩で…元マグロ仲間。
そして、今は童貞狂いのバーテンダーでもある。

剛さんと、俺を引き合わせたのも実は、この和泉さんだったりする。


今日は、久しぶりに会う事になり、俺の家に来てもらっていた。
和泉さんは俺と同じで、当時付き合っていた彼氏にセックスが下手だと言われたらしい。
以来、誰とも比べる事がない童貞君としか寝なくなったんだとか…。

今では、そのテクニックは極上らしく、和泉さんに童貞をささげた男は一生起たなくなるんだとか、ならないんだとか…。
恐ろしい逸話を持つ人だ。


「ほんと、剛って、仙人みたいな人だよね」
「仙人?」
「そうそう。普通だったら、もっと早く抱いている筈なのに」

ぽそり、と呟いた和泉さんの言葉に、どきりと胸が痛む。
やっぱり、そうだよね…。
3か月も、しかも大の大人が抱かれていないのって、可笑しい…よね。

中学生や高校生の恋愛じゃないのに・・・。
最近の高校生なんて、もしかしたら、俺たちよりもっと、進んでいるのかもしれない。
俺たちは実家暮らしってわけでもないし、部屋の壁だって薄くないからもっとできるはずなのに。


「俺って魅力ないのかな…」
「そんなことはないと思うけど…」
「でも、3か月も、だよ?
和泉さん、そんなに抱かれなかった事、ある?」
「まさか…。僕は童貞狂い≠セよ。その日のうちに美味しく頂いちゃうよ」

自信満々に言う和泉さん。流石である。

「だよね…。誘うのは、和泉さんから…?」
「ん〜。気分によるかな。抱いてほしい好みの男がいたら、自分からいくかな」


ふふ、と、魅惑の笑みと言われている笑みを零す和泉さん。
エロス、という言葉がふさわしい和泉さんは…俺と同じマグロであったらしいが…まったくその片鱗が見られない。

自分に自信があり、抱かれるのに臆することがなさそうだから。
 いまは童貞しか抱いていないようだけど、絶対テクニックは玄人並みだろう。


「でも、僕はゆきが羨ましいよ」
「俺が…?」
「そー。剛って、極上な男じゃん?仕事真面目だし、恋人大切にするし…無理やり強要もしてこないんだろ?」
「うん…、」
「そんな男がずっと隣にいるって、羨ましいと思うな。
ま、ゆきもゆきで可愛いから、お似合いって感じだけど」
「和泉さん…、」

和泉さんは、童貞狂い。もうマグロじゃない。
だけど、元マグロ。下手、と言われた言葉はずっと消えていない。

俺と違い、童貞に抱かれて毎日過ごすことで逃げた和泉さんは、なかなか本気の恋愛が出来なくなってしまったらしい。

体だけの恋愛でいいや、と思うようになってしまったようだ。

いつか、俺も剛さんと出会う前、和泉さんのように毎日抱かれればテクが磨けるようになるかな…と言ったら本気で止められた。
僕みたいになるな…と。


「誘惑してみたら?」
「誘惑…?」
「そうそう、したいんだったらさ。言えばいいんだよ。可愛くね」
「可愛く…、」
「そう、ゆきは可愛いんだから」

クス、と笑う和泉さん。
俺を可愛いなんて言うのは、和泉さんと、剛さんくらい。

どちらかといえば、俺は美人顔らしいし、透かしてるとか、クールって言われるから。

和泉さんも俺と同じ系統の顔をしている。
だから、同じように誤解されたりするのもあって、和泉さんは俺によくしてくれる。
兄弟、みたいに思われているのかな。
和泉さんと二人で歩いていると、よく兄弟と間違われる。
下手したら女同士にも見えるかもしれない。

「だけど、俺、つまんないって言われたら…剛さんに言われたら、ショックで…」

「慣れている方が、ドン引きになると思うけど。ああいう潔癖症タイプは…。自分でどうこうしたいってタイプじゃないのかな?淫乱ちゃんより控えめなこの方が好きそうだけど?」

「そう…かな」

「そうそう、今日早速誘惑して見たら?」
「きょ、今日ですか…、」
「善は急げ、だよ」

ふふ、と楽しそうに笑う和泉さん
他人事だと思って…。いや、他人事だけど…!

それから、俺と和泉さんは『剛さんをその気にしよう』作戦を立てた。
ネットで『その気にならない彼の落とし方』なんか調べて二人して笑い合っていた。

う〜ん…。
俺たち男なんだけど…。なんだか、話の内容が女の子がするような内容だった。
俺と和泉さんって、もしかしたら、前世姉妹だったのかもしれない。

**
次の週の金曜日。
今日も、剛さんは、仕事で疲れた体のまま、俺の家にきてくれた。
ご飯を美味しそうに食べて、おかわりまでしてくれたし、今度公開される映画を一緒に見る約束もしてくれた。

 ご飯が終わって、リビングでくつろいでいる時に沢山、ちゅーもしてくれたし…。
大好きだって何度も言葉をくれた…。
一見無口で、ストイックな剛さんなのに…。

布団の中では甘々なんだよ…。
恥ずかしくなるくらい…。

後は…。そう、後は、誘惑するだけだ。
和泉さんと散々昼間話していた『抱かれ作戦』それを決行するだけ。

お風呂あがりの何も身に着けていない、身体。
きょ、今日こそ。今日こそ、抱かれたい。
抱かれるんだ。

俺は、ぎゅっと拳を握り、意を決する。
気分は…、突撃隊、かな…うん。

俺は意を決し、裸のまま、寝室でくつろいでいる剛さんの元へと向かった。


「…剛さん…、」
「ゆ、ゆき…?」

裸の俺に、え…、と目を見開く剛さん。
丁度本を読んでいたらしい。
本を持ったまま、あんぐりしている。

驚く…よね。いきなり、こんな裸、で。
今俺何も身に着けてないし。
電気もつけたままだから、裸ばっちり見られているし。


「あ、あのね…俺、」
「風邪、ひくだろ…服なかったのか?」

剛さんはそういって、真剣なまなざしで、俺に掛ふとんを渡す。
焦っても動揺もしていないソレに、抱かれたいと息巻いていた気持ちが萎んでいく。
俺が、裸で出てきても、子供の様に嗜めるだけだった。
剛さんは、俺を、そういう目で見ていないのかな…。

子供、だと思ってる?
子供じゃないよ、俺。
恋人同士なんだよ。

恋人同士で裸だったら・・・やることはひとつしか、ないよね・・・?


「俺、魅力、ない?」
「ゆき…?っ…、」

剛さんにぶつかるように体当たりして、布団に押し倒す。
驚愕に目を見開く剛さんに、俺は勢いのまま、口づけた。
少し厚い、剛さんの唇。それを何度も、甘噛みしながら、舌を侵入させる。
剛さんは、俺の行動に、ぽかんとしていた。


「ゆき…、」
「抱きたくないの…?抱いて、くれないの…?俺…駄目…?剛さん、抱く価値、ない…?」
「ゆき…、」
「つよしさん…好きだから、俺抱かれたいのに、俺…んっ…、」

唐突に、キスされた。
少し、強引で、荒っぽい、キス。
後ろ髪を掴まれ、より深く口づけされる。

侵入してきた舌は、荒々しく絡められ、唾液をも交換させられる。
いつもの剛さんらしくない、ちょっと荒いキスに、ぞくぞくする。

ようやく、長いキスが終わるころ、俺はふにゃふにゃになって力がぬけていた。
剛さんは俺の手をひきベッドに転がす。
そしてそのまま胸に手を這わせていた。


「いいの…か…、」

掠れた、どこか切羽詰った声で尋ねられる。

「いい…」
「抱くんだぞ。」
「うん…、」
「そう…か…、」

剛さんは、俺に確認を取ると、着ていた浴衣をはだけさせた。
途端、剛さんの鍛え抜かれた胸板が、視界に入る。

「ゆき…、」
「んっ…、んっ…ふ…、」

剛さんは口づけながら、俺の身体に手を滑らせた。





「ゆきの・・・、ここ、ピンクで可愛いな・・・」
「んっ、」

乳首をつんつんと指の腹でつつかれる。
剛さんの長い指。爪先で引っかかれると、キュンと乳首が疼く。
その指で、ぎゅっと摘んで欲しい。
つつかれるだけじゃもどかしい。

俺、女の子じゃないのに。
剛さんに触られると、ぞくぞくする。

「ゆき、」

くるくると、乳頭周りを指先で円を描くようになぞられる。
「ん、ぁ・・・、」
「胸で感じるのか・・・?可愛いな」
「・か・・わいくない・・・」
「可愛い」


じわり、と頬が赤らんでいくのがわかる。
ゆるゆると、乳首付近をなぞる指先。

ちがう。もっと、強い刺激がほしい。
もっと、もっと強い決定的な刺激が。
このままじゃ、もどかしくてどうにかなってしまう。


「剛さん」
「ん?」

じわり、と涙腺が滲む。
わかってる、くせに。剛さんは時々意地悪だ。

抱かずに胸ばっか弄るから、俺のおっぱいは女の人のように刺激に敏感になっている。
剛さんの、せいで。

もう・・・

「や・・・、」
「ゆき」
「ギュってして。もどかしいよぉ・・・。んああ・・・」

俺が泣き懇願すると、剛さんは俺の望み通り、胸をぎゅっと摘んでくれた。
欲しかった刺激を受けて、軽く身体が痙攣する。

「んああ・・・、」
「ゆきのここ、胸だけで反応してるな・・・。胸もコリコリして・・・。ここも・・・」
「あ・・・」

ジジ、とズボンのファスナーが下ろされ、ペニスをとられる。
俺のものは既に半泣き状態だった。

「ゆきのここ、いつも少し虐めたら泣いてしまうんだな・・・」
「それは・・・、」

だって。
仕方ないじゃんか。

「剛さんが・・・、俺を、いじめるから・・・」

小さく呟けば。
剛さんは、嬉しそうに俺に微笑み返し、顔にキスを降らせる。

その間、俺のペニスはしっかりと人質?として取られており、剛さんの手腕にただただ喘いでいた。


「あ・・・や・・・、」
「ゆき・・・、」
「こえ、や・・・聞かないで・・・っ、」
「どうして・・・?」
「恥ずか・・・しい・・・」

男のくせに、こんなに喘いで。
女の子じゃないのに、こんな媚びた甘い嬌声が出るなんて。


「いいよ、可愛い。ねぇ、ゆき・・・ここも・・・いいか・・・?」

耳元で囁きながら、剛さんの指が1本俺のアナルに入った。
太くて長い指先。

ゆっくりとそれが、俺の中に侵入してくる。

ようやく、抱いてくれる気になっている。
ようやく…剛さんは、俺を抱いてくれる。

嬉しい。
嬉しい、筈なのに。

俺の身体は、アナルに入れられた指1本で硬直し、剛さんの愛撫に溺れることはできなかった。





繰り返される、愛撫。優しい口づけ。
気遣う、声。


剛さんに、楽しんでもらわなくちゃ、いけない。
また、マグロって言われる。

下手だって、呆れられる。
怖い…。
動かなきゃ、いけないのに…。

俺の身体は、俺の意思とは裏腹に、硬直し動かない。
密かに震えるだけだ。

「ゆき、」
優しく、声をかけられる。
それに、泣きたくなった。

こんなに、こんなに剛さんは優しいのに。
俺は、抱かれることすら、ちゃんとできない。

こんな硬直していたんじゃ、マグロ、どころか冷凍マグロ、だ。

「ゆき…、」
「剛さん…、」
「震えてる…、」

俺の手を取り、静かにつぶやく剛さん。
その手は確かに小さく震えていた。
剛さんは、その手にうやうやしく口づける。

その騎士のような、仕草に、じんわりと涙腺が緩む。

「焦らなくても、いいんだぞ…。ゆき」
「つよし…さん…、」
「怖いんだろ…」

優しく、俺の頭を撫でる剛さん。
それに、こらえていた涙が溢れる。

怖い。抱かれたいのに、怖い。
抱かれなくちゃ、いけないのに、怖い。

抱かれるのなんて、慣れているのに。
初めてでも、ないくせに。


「ごめんな…さい…俺…ほんとは…」

口ごもる俺に、剛さんは、優しく笑いかけ、

「俺は、ずっと、ゆきの傍にいるんだから。まだまだ時間はある、だろ…、」
といってくれる。

「でも…、」
「今日から少しずつ、慣らしていこうか?ゆきは、俺に抱かれてくれるんだろ?ずっとそばにいてくれるんだろう?」
「うん…うん…、」

ずっとそばにいる。
剛さんも、ずっとそばにいてくれるの。
優しく撫でてくれる手に、ぽろぽろと涙が落ちる。


「良かった…。なぁ、ゆき…、」
「ん?」

剛さんは徐に、俺の手をひき、自分の半身へ。
そこはゆるやかに変化しており、熱くなっていた。
まだ浴衣を半分着ている状態だから、正確にどうなっているかわからないけれど。

「剛さん…!?」
「あのな…ゆき、俺のをお前に入れたい…入れたいんだが、な…」
「うん…?」

言いづらそうに口ごもる、剛さん。
まさか…剛さんも、マグロ、とか…。童貞、とか…?

仲間、なの?
少し期待していた俺に、剛さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「ゆき、あのな…俺な…かなり、巨根なんだ」
「きょ、巨根…?」
「そう、」

そういって、体制を変え、あぐらになった剛さんは、下半身の布をめくる。
露わになった、剛さんのものは…
その、確かにデカかった。

俺が今まで見ていた中で、一番といっていいくらい。

ビック、マグナムだった。

俺のが可愛く見えちゃうくらい。

「あの…、」
「ゆきに入れたい…だけど、俺のは、その、デカいから…。かなり慣らさないとダメ、みたいなんだ…」
「な、慣らす…」
「ああ、その、痛いらしいから…。だからな…、少しずつ、慣らしていきたいんだ。ゆきを、俺の身体に…」
「俺を…?」
「そう。なぁ、ゆき…」

剛さんは俺の顔に己の顔を近づけて、耳朶を噛む。
そして、少し掠れた甘い声で、

「俺の、触ってくれないか」
と、言う。

「あ、あの…」
「俺のに慣れてほしいんだ…。」
「剛さんの、に…」
「そう。ゆきのも、触っていい?」
「う、うん…」

言われて、そっと、剛さんのを触る。
触った途端、ピクリ、と動くソレ。
なんだか愛おしくて、熱いそれをやんわりと握った。

剛さんも、露わになった俺のをまるで壊れ物のように触り、優しく、俺がパニックにならないように、ゆっくりと愛撫していく。

優しい、初めての行為に、まだ抱かれていないのに、与えられる快感に小さく啼いた。

「つよし…さん…の、熱いし、大きい…、」
「そうか…、」
「俺の手、気持ちいい…?」

べたべたに手を濡らしたまま問うと、剛さんは苦笑し、

「気持ちいいよ、」
と、いってくれる。

俺の手で、喜んでくれている。
その事実に嬉しくなり、俺は、丁寧に剛さんに愛撫をし続けた。


*
初めての戯れは、お互いの性器を触るだけに終わった。
剛さんは、焦らなくていいと言ってくれる。

お互いの欲をだし、俺たちは、またベッドでいちゃいちゃしている。
いちゃいちゃ、といっても、身体を軽く触るくらいで、性的なものじゃないけど。
だけど、今までベッドでいちゃいちゃはあっても、今までは服を着ていたが、今日はあれから服を着ていない。
だから…、その、剛さんのビックマグナムが俺の脚に直接あたる訳で…。

ちょっと、恥ずかしい。

剛さんに、デロデロに甘やかされて、身体が蕩けている時だった。

「ゆきは、初めてなんだろ…」

不意に、剛さんがそういったのは…。

「え…、」
「焦らなくていい。ゆっくりいこう…な」
「あ…」

そういって、頭を撫でて、ゆるく笑みを浮かべる剛さん。
それに、何も言えず、黙る俺。
何も言えなかった。
だって、もしかして、今まで俺を抱かなかったのは、俺が初めてだと思ったからかもしれなかったから…。

初めてじゃない、とすぐに否定できなかった。

初めてだから、大切にしようとしてくれたの?
あんな優しい愛撫をしてくれたのは、俺が初めてで壊れないため?

でも、俺、初めてじゃない。
マグロだけど…、今まで彼氏もいたし、散々抱かれてきた。
俺、剛さんが初めてじゃない。

もし。
もしも、俺が処女じゃないって知ったら、軽蔑する?
処女じゃないからって、抱いて、やっぱり下手だったら…がっかりされちゃうのかな…。

新たに出てきた問題に、俺は頭を抱えた。





百万回の愛してるを君に