タイプ:他社愛型
台詞【捨てないで捨てないで捨てないで】
包容若頭×あほの子健気ヤンデレ

 誰かの為に役に立てるのは、とても嬉しい。
自分の存在意義を感じて、自分がいらない存在じゃないと安堵するから。

ありがとう、おまえのおかげだよと言われれば、どんなことでも耐えられた。
たとえどんなに自分を犠牲にしたとしても、僕のおかげだと褒められれば、それだけで自分のことのように喜べた。


 自分がどれだけ傷ついて、自分の利益なんかちっともなくっても、ただ一言、ありがとう役にたったよ…と言われれば、それだけで、もう他のことはどうでもよくなって。

「僕を、使っていただきありがとうございます…」
って、涙を浮かべながらご主人様に仕える喜びに震えてしまうんだ。



周りに馬鹿だ惨めだ、笑われても、誰かに必要とされるのは、僕にとってはとっても幸せなことだった。


 どうやら、僕は病的だと言われるくらい、自己犠牲の塊といえるくらいの忠誠心があった。
自分をどれだけ犠牲にしてでも、他人の…僕が仕えるご主人様の幸せを願い、役にたてるようどんな危険もおかしてしまう。

ご主人様が命令する前に、ご主人様の幸せをねがい、ご主人様の為に行動する。

自分には何も残らないし、ご主人様だって僕のことなんてただの道具にしか思っていないのに、命をかけてご主人様の為に動く。


 悲劇のヒロインを気取る、マゾ。
王子を助けたのに、何も告げず、王子の幸せを願い死んでいく人魚姫。

自分を犠牲にしても、他人の幸せを願って尽くして尽くして、結局何も得られない、都合のいい人間。

結局自分には、なにも残らないっていうのに、ご主人様が変わる度に僕はご主人様を愛し、自分を犠牲にしてまでご主人様の幸せをねがった。



自分でもわかっているんだ。
こんな自分は可笑しいって。
自分のことをちっとも愛してもくれないご主人様のために、毎回どこまでもどこまでも盲目的に、自分を犠牲にしてご主人様の幸せを願うのはおかしいって。

ご主人様たちにとって自分は人間じゃなくてただの、道具だって。
わかっては、いるんだ。


わかっているけど、やめられない。

僕を飼ってくれる御主人様を愛すこと。
必要とされることを、望まずにはいられない。

ありがとう、その一言で身体は喜びに震え。
役立たずと言われるのが、凄く悲しくて辛くて。
胸が、きゅーっと痛んで、息をするのもままならなくなる。

誰かにいらないと言われることが一番、僕にとって怖いことだった。


 仕えたご主人様のために、いきる。ご主人様が第一で、自分のことは二の次だと。

それが僕に求められた生き方で、馬鹿な僕は他の生き方を知らなかった。

僕に求められていたモノは、昔からご主人様の為になる道具であり、そこに自分の感情なんて不要だといわれた。


ただの道具に意志はいらない。
意思があれば裏切ったり、愛するご主人様の愛を疑ったりするから。
ただ、主人の幸せを願う。
盲目的に愛す。
それが、道具の幸せだと教えられた。

ご主人様の役に立てることが、道具の最高の喜びであり、役に立てないことが最高の不幸だと。
他の生き方があるなんて、知ることもなかった。



 僕にとっての幸せは、ご主人様の幸せ。
ご主人様に捨てられるのが、僕の不幸だった。



なんでもするから、捨てないで。
いい子にするから、どうか、愛して。

なんでもしていいから、どんなに酷くしても笑っているから、どうか捨てないで。
悲鳴をあげろというのなら、声が枯れるまであげるから。
ご主人様じゃない人間に抱かれろと言われても、喜んで抱かれるから。

薬でも、手錠でも、蝋燭でも何を使ったってかまわないから。
ずっと命じられたまま、笑っていられるから。
いつまでも、貴方の望みをかなえるから。


だから。だから、
どうかどうかどうかどうか…。

捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで。
捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで。


お願いだから、捨てないで。
傍にいて。
どれだけ邪険にしたっていい。
犬扱いでも、奴隷でもいい。
玩具でも、なんでもいい。

愛してほしいなんて、そんな大それたこと、望まない。
ただ、捨てないでほしい。
ずっと、傍にいさせてほしい。


なんだってするから。
なんだってしていいから。
どんなに傷つけられてもいいから。
傷つけられたって裏切らないから。

お願いだから、傍にいて。
迷惑かけないから、ずっと一緒にいて。
一生、僕のご主人様でいて。

どんな酷い命令もきくから、一生僕を繋いでいて。
どんなことだって、耐えてみせるから。
捨てないで。離れていかないで。
一人にしないで。

 もう何度そういって、縋っただろう。
何度、そのたびに、怖がられたり殴られたりしただろう。

両手じゃ数え切れなくて、途中で数えるのをやめた。

 まともじゃない僕を、今までのご主人様は最初は可愛がってくれたり面白がったりしていたものの、そのうち僕の病的な性格を持て余し、最後には捨てられた。


僕の忠義心は、重いんだそうだ。
それに、役にたとうと思って空回りして失敗してしまうことも多かった。

いつだって、役立たずでドジな僕は捨てられる。
不要な物として、寒空の下、放りだされる。


僕がどんなにご主人様を愛したって、今までのご主人様たちは、僕を全然愛してくれることはなかった。


  玩具のように抱き、飽きて、玩具のように捨てる。


捨てられる度に心がズタズタになるのだけれど、新しいご主人様に仕えるうちに、また捨てられたことも忘れ、盲目的に愛してしまう。

ずたずたになって、馬鹿だと罵られ傷だらけになっても、どうしようもなく惹かれてしまった。


きっと、僕は馬鹿なんだろう。
どうしようもない、馬鹿。

馬鹿すぎるから、捨てられる。
何もできない役立たずだから、使えないってぽいされるんだ。



『どんくさくて、何も考えていない、つまんねぇやつ。』
今のご主人様にも、そういわれた。

『おまえみたいな馬鹿な奴、俺は嫌いだね、』って。

 新しいご主人様は、今までのご主人様と少し違った。
今までのご主人様は皆、自らのお金で僕を買うことで僕の新しいご主人様になったんだけど、新しいご主人様は僕を見初めて僕を買ったわけではなかった。

僕は、ご主人様のお父様によって、ご主人様に“無理矢理押しつけられた”

ご主人様のおうちは、ヤクザでご主人様のお父さんは組長さんで、ご主人様は組の若頭だった。
ヤクザの世界は、汚い抗争やら裏切りが多い。


だから、組長さんは絶対に裏切りそうにない相手として、ご主人様に僕を忠実な「犬」として押しつける形で無理矢理プレゼントした。



「いらねぇよこんなもん」

ご主人様は、僕と最初会ったとき、そういって顔をしかめたっけ。


「こんな、なに考えてるかわかんねぇやつ、いらねぇ…」

いらないと冷たく言い捨てるご主人さまに、なんでもします、と縋った。


「は…、じゃあ足に口づけろって命令したら喜んでするのか?」

挑発めいていったご主人様に命令通り足にキスをしようとしたら、「きもちわりぃ」と顔を顰められて、思い切り蹴られた。


多分、初対面は最悪だった。

ご主人様はこんな僕を凄く嫌っていたし、僕も僕を不要とするご主人様が怖くて。

最初の頃は、すっごくギスギスしていた。
側にいるのも硬直しちゃって、それをまたご主人さまが怒って、いつ捨てられるんだろう…と不安になって。


それが、いつからだろう。
ご主人様が捨てないでとすがる僕を抱きしめてくれるようになったのは。

僕を絶対捨てないといって、頭を撫でてくれるようになったのは。

今までのご主人様と違って、もう捨てられたら生きていけないと僕が思うようになったのは…。


いつだったかな…。
いつのことだったっけ…?




(中略)

ご主人様に喜んでもらいたい。
ご主人様に愛して貰いたい。

その気持ちがどんどんどんどん膨らんで。
どんどんどんどん、貪欲になって。
自分の中であふれ、どろどろとこぼれ落ちていく。
溢れた思いはマグマのように燃え上がり、やがて理性をとかし、暴走していく。


僕はご主人様に内緒で、ご主人様の叔父さんである松山さんにどうしたらご主人様に愛されるか相談した。
どうしても、今のご主人様には捨てられたくなかったから。

今までのように次のご主人様なんて見つけられそうになかったから。

犬でも、玩具でもいい。
ずっとご主人様には愛してほしかった。


そう縋った僕に、松山さんはいいことを教えてあげようと笑って…、
そのまま、僕を監禁した。

松山さんは、ずっとご主人様に恨みを持っていたようで、ご主人様が大事にしている僕をずっと前から玩具にしたかったらしい。

ご主人様が悔しがる顔を想像すると、とてもゾクゾクするよ…と狂気はらんだ笑みを浮かべていた。

ご主人さまのお役にたちたかっただけなのに、結局僕は迷惑をかけてばかり…。


監禁されてから、叔父さんに何度も抱かれた。
知らない男に沢山沢山、抱かれた。

ご主人さまにただ、愛されたかっただけなのに、ご主人さまに顔向けできないくらい汚されて。
毎日毎日、抱かれるたびに、自我がなくなっていった。
涙もかれはてて、ただ人形のように抱かれ。


薬も沢山使われて、意識も朦朧になって、ああもう死ぬんだな…っと死を覚悟したとき、

「おい、ーーーー!!」

意識をなくなる寸前、ご主人様の姿が視界に映った。

(中略)




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