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1話 ーモブ探偵は、巨根美男子に狙われて
ーモブ探偵は、巨根美男子にお仕置きされる。
モブ男。
最近じゃ、ちらほら見かける名詞である。
その名の通り、“モブ”っぽい男のことである。
モブとは、人ごみに紛れてしまいそうな顔のことをいう。
モブ男。
まさに、俺のことだ、と座間光正《ざまみつまさ》は自負している。
座間光正、34歳。職業は、しがない探偵である。
座間探偵事務所の次男で、探偵事務所では主に肉体専門の仕事をこなしている。
室長である長男の隆盛《りゅうせい》が名探偵といわれ、頭脳を使い華々しく事件を解決していくのに反し、光正は兄のような類いまれなる頭脳は持っていないし、頭よりも身体のほうが先にでるタイプである。
兄である隆盛もけして筋肉がないわけではないのだが、中学時代から水泳をやっていた光正の身体はガッチリとしており筋肉隆々である。
ガチマッチョ、と学生時代からあだ名もつけられているくらいで、その名の通り成長しきった光正の身体は男の中ではかなりガタイがいいだろう。
胸囲も100センチほどあり、大胸筋も三角筋もしっかりとついている。
ボディビルダーのように鍛え抜いた身体に加え、顔は髭面に凶悪な顔である。
ここで述べておきたいのが、光正はモブはモブでも、エロゲやAVなんかに出てくるモブであるということだ。一目見て悪人です、というほどに強面であるのだが美形というわけではない。強面であるのだが、柄の悪い人間の中に紛れさせればたちまち印象がなくなってしまうような、そんな強面モブ男だった。
無精髭のせいでモサイ感じも拭えないし、どこか小汚い印象を受ける。
光正の印象を一言でいえば、ヒロインを無理矢理襲いかかるモブ男優。これにつきた。
眼光が鋭くて、人1人平気で殺してそう。
この顔面のせいでいらぬ疑いをかけられたのも、1度や2度じゃなかった。
ひげ面のどこかやぼったい感じがぬけないおっさん。
それが光正だ。
「…昨日の男はイマイチだったなぁ…」
煙草を口にくわえながら、光正は椅子の後ろに重心をかけ足をばたつかせる。
昨日、光正は久しぶりに裏の仕事に精をだしていた。
光正は表向きは探偵であるが、裏では仕置屋もしている。
主に探偵事務所で依頼のきた浮気男の制裁をする役目だ。
2度と浮気できない身体にするのが光正の役目である。
光正自身ゲイであり、バリタチである。
そして、男なんて考えられないどストレートのノンケを尻でしかイケない身体にしたてるのが彼の主な仕事で、強気な男であればあるほど落とすことに生きがいを感じる悪趣味な一面も持っていた。
巨根でテクニックもあると自負している光正は、もう5年以上裏の仕事をしているが、ほぼ9割の確率で仕置きを成功させている。
光正が自身をモブだと感じるのは、ひとえにこの顔のせいである。
強面であるのだが、イマイチモテない。インパクトがない。
兄である隆盛は美青年で、男にも女にもモテるのだが、光正は生まれてこのかた、モテた試しがなかった。
仕置屋で光正が抱いた男に言い寄られることはあっても、それ以外で好きだと言われたことはほぼ皆無である。
若い頃は、なかなか自分好みの男が引っ掛けられず悶々としていたのだが、最近は裏の仕事も軌道にのっており、わざわざ探しにいかなくても仕置きをしてほしいと獲物を差し出してくれるのだ。
探偵に仕置きをしてほしいと依頼されるほどの浮気男はなかなかのクズ男が多くて、光正としては好みドンピシャな男をわざわざ見繕いお金までくれるこの仕事を天職だと思っていた。
室長である隆盛《りゅうせい》は溺愛している恋人がいるので、仕置きはしていないが、光正の他にも仕置き屋で働いているスタッフはいる。その裏の仕事の中で一番成績がいいのは光正であった。
光正の顔が強面であるので、こんな男に自分を裏切った男を犯させ後悔させたい!と思う女は多いんだそうだ。
なので、名探偵には程遠いのだが、光正はいち探偵として、また仕置き人として座間探偵事務所副室長を務めるのだった。
「速攻であんあん鳴いちゃって…、もう少し強がってくれなきゃ…なぁ…」
誰ともなしに呟いて、注文していた珈琲に口をつける。
探偵事務所のビルの下に喫茶店。ここには兄がメロメロの恋人・千歳が切り盛りする喫茶店で、弟である光正もよく利用していた。
千歳が入れてくれる珈琲は、ここいらじゃ1番美味しく、味にうるさい光正をも唸らせるほどだった。
しかし、ここ数日。千歳がいれる珈琲の味が変わっている。また店内もいつもよりも少し込み合っていた。
(…ん?また、違う…??)
すんすん…と珈琲の香りを嗅いで、光正は首を傾げる。
(しかも、美味いし…)
香りといいコクといい、今までの珈琲より格段に光正好みの珈琲になっている。
(千歳ちゃん、豆でも変えたのか…?ほんと、呑みやすいし、マイルドでいい味だな、おい)
光正は珈琲を飲み干して、勘定を取る。
千歳に挨拶を…と思い店内を見回したが、あいにく千歳の姿は店内には見えなかった。
(兄貴のとこか?それとも買い物か…。はたまた迷子にでもなっているか…)
度がつくほどの天然な兄の恋人を脳裏に思い浮かべ光正は苦笑する。超がつくほどの名探偵の兄に対し、その恋人の千歳は頭は悪くはないのだが天然でおひとよしで人の言葉を疑わない、嘘もつかないという聖人である。ひねくれた名探偵もこの恋人には頭も上がらない様子で、千歳を前にすると独占欲丸出しになったりところかまわずいちゃつくなど普段クールな名探偵はどこへいったんだ?と突っ込みたくなるほど人が変わる。ただ、千歳はド天然なので、そんな名探偵の気持ちの10分の1も気持ちは伝わっていないようではあるが。まるで中学生か…!と突っ込みたくなるような二人のやりとりは、はたからみると面白い。けして当事者にはなりたくないが。
「お客様…」
千歳のことを考えてぼんやりとしていた光正に、甘いハスキーな声がかかった。
うお…っと思わず声をたててしまうくらいの美声である。
これがまた、聞いているだけで背中がゾワゾワとしてしまうくらいの、いい声なのだ。
顔をあげて、声がしたほうをみれば、これまた美声の声にピッタリなイケメンが立っていた。
「お会計ですか?」
「あ、おう…」
にっこり、と微笑みかける彼は、喫茶店の黒いベストの制服をきていた。
どうやら、従業員のようである。
(最近はいってきたのか?
こんな美形、俺と違って一度あったら忘れねぇはず…)
目の前の男は、モブとはかけ離れた美形であった。
サラサラとした茶髪に甘いマスク。王子様が絵本から出てきたらこんな感じ、というのが具現化したような、イケメンがそこに存在していたのだ。
兄にも負けず劣らないイケメンである。
(日本人…なのか?えらい美形だな、おい)
身長は光正と同じくらいだろうか。
さすがにガタイは光正のほうがいいが、目の前の男も高身長で、それでいて華奢というわけでもなかった。
(そういや、最近女が多くなったのはこいつのせいか…。くそ…落ち着く喫茶店を奪いやがって)
ついつい恨みがましい視線を送ってしまう。
光正はゲイであり、恋愛対象は男だ。
女はどれだけいようが目の保養にもならないし、うるさい女は苦手なのである。特に女子高生は大敵といっていい。
光正の眼光に、男は一瞬、息をのむ。
(やべ…、従業員怖がらせちゃ、千歳ちゃんに怒られちまうな)
光正は小銭をだしレジにおくと、そそくさと立ち去ろうとする。
が、
「…お客様」
男に呼び止められ足を止めた。
男はジロジロと、光正を見つめている。
「な、なにか…?」
「いえ、すみません。僕の気のせいでした。探している人間に似ていまして。
およびだてしまって、申し訳ありません」
「は、はぁ…」
(探してるって、まさかこいつも探偵か?
いやいや、まさかな…)
探偵だったら、こんな喫茶店で従業員なんてやっているわけないだろう。
光正は喫茶店から出ようと扉に手をかける。
「お客様」
「んだよ、まだなにか用か…」
用かよ…、という言葉は全て言い終わることなく光正はことばが止まる。
男が光正に伸ばした手によって。
「やっぱり、いい形してますね。最高です」
ふにゅ、ふにゅっと男はシャツ越しに光正の胸を揉んでいた。
「…あ…あ…?」
「シャツ越しでもわかりますよ、ここに形のいい乳首があること…」
「は?な…なん…?」
なんで、こんな初対面の男に胸なんて揉まれているんだ?
男はなんで嬉々としたかおで、こんなもさいモブ男の胸なんて揉んでいるんだろうか。
「変態野郎が…」
バリタチの仕置屋である自分のことを棚にあげて男の手をはたき罵れば男は晴れ晴れとした顔でニッコリと「お褒め頂き光栄ですよ」と笑った。
「素敵な乳首がそこにあったので、触らなければ失礼にあたるかと思いまして。こんなエッチな身体しているあなたがいけないんですよ」
「あ?捕まるぞ、おい」
「幸い捕まったことはありませんね」
あいにく、顔はいいもので。
男は悪びれもなく、微笑む。
「千歳ちゃんには手出すんじゃねぇぞ。あと客にも。もし出したら出るとこでるぞ。変態野郎」
「変態野郎とは僕のことでしょうか?」
「お前以外に誰がいるんだ。
ったく、千歳ちゃんもなんでこんな変態採用してんだか…」
じろりと男を睨みつけたが、男は飄々としている。
あとで千歳にちくって首にしてやる。
そう決意し、男に背を向ける。
「ああ、お客様。ひとつ、忠告があります」
「あ?忠告?」
「ええ。上には上がいる…、変な自信は己を滅ぼすだけだと」
「ああ?どういう意味だ、こら」
俺より上?
やっぱりこいつは探偵なのか?
喧嘩腰に光正が問いかければ
「そのままの意味ですよ。ああ、あくまで忠告ですので。気に障ったのならすみません。
聞き流してくださって結構ですよ」
男は不敵に笑うと、ひらひらと手を振った。
ーモブ探偵は、巨根美男子にお仕置きされる。
モブ男。
最近じゃ、ちらほら見かける名詞である。
その名の通り、“モブ”っぽい男のことである。
モブとは、人ごみに紛れてしまいそうな顔のことをいう。
モブ男。
まさに、俺のことだ、と座間光正《ざまみつまさ》は自負している。
座間光正、34歳。職業は、しがない探偵である。
座間探偵事務所の次男で、探偵事務所では主に肉体専門の仕事をこなしている。
室長である長男の隆盛《りゅうせい》が名探偵といわれ、頭脳を使い華々しく事件を解決していくのに反し、光正は兄のような類いまれなる頭脳は持っていないし、頭よりも身体のほうが先にでるタイプである。
兄である隆盛もけして筋肉がないわけではないのだが、中学時代から水泳をやっていた光正の身体はガッチリとしており筋肉隆々である。
ガチマッチョ、と学生時代からあだ名もつけられているくらいで、その名の通り成長しきった光正の身体は男の中ではかなりガタイがいいだろう。
胸囲も100センチほどあり、大胸筋も三角筋もしっかりとついている。
ボディビルダーのように鍛え抜いた身体に加え、顔は髭面に凶悪な顔である。
ここで述べておきたいのが、光正はモブはモブでも、エロゲやAVなんかに出てくるモブであるということだ。一目見て悪人です、というほどに強面であるのだが美形というわけではない。強面であるのだが、柄の悪い人間の中に紛れさせればたちまち印象がなくなってしまうような、そんな強面モブ男だった。
無精髭のせいでモサイ感じも拭えないし、どこか小汚い印象を受ける。
光正の印象を一言でいえば、ヒロインを無理矢理襲いかかるモブ男優。これにつきた。
眼光が鋭くて、人1人平気で殺してそう。
この顔面のせいでいらぬ疑いをかけられたのも、1度や2度じゃなかった。
ひげ面のどこかやぼったい感じがぬけないおっさん。
それが光正だ。
「…昨日の男はイマイチだったなぁ…」
煙草を口にくわえながら、光正は椅子の後ろに重心をかけ足をばたつかせる。
昨日、光正は久しぶりに裏の仕事に精をだしていた。
光正は表向きは探偵であるが、裏では仕置屋もしている。
主に探偵事務所で依頼のきた浮気男の制裁をする役目だ。
2度と浮気できない身体にするのが光正の役目である。
光正自身ゲイであり、バリタチである。
そして、男なんて考えられないどストレートのノンケを尻でしかイケない身体にしたてるのが彼の主な仕事で、強気な男であればあるほど落とすことに生きがいを感じる悪趣味な一面も持っていた。
巨根でテクニックもあると自負している光正は、もう5年以上裏の仕事をしているが、ほぼ9割の確率で仕置きを成功させている。
光正が自身をモブだと感じるのは、ひとえにこの顔のせいである。
強面であるのだが、イマイチモテない。インパクトがない。
兄である隆盛は美青年で、男にも女にもモテるのだが、光正は生まれてこのかた、モテた試しがなかった。
仕置屋で光正が抱いた男に言い寄られることはあっても、それ以外で好きだと言われたことはほぼ皆無である。
若い頃は、なかなか自分好みの男が引っ掛けられず悶々としていたのだが、最近は裏の仕事も軌道にのっており、わざわざ探しにいかなくても仕置きをしてほしいと獲物を差し出してくれるのだ。
探偵に仕置きをしてほしいと依頼されるほどの浮気男はなかなかのクズ男が多くて、光正としては好みドンピシャな男をわざわざ見繕いお金までくれるこの仕事を天職だと思っていた。
室長である隆盛《りゅうせい》は溺愛している恋人がいるので、仕置きはしていないが、光正の他にも仕置き屋で働いているスタッフはいる。その裏の仕事の中で一番成績がいいのは光正であった。
光正の顔が強面であるので、こんな男に自分を裏切った男を犯させ後悔させたい!と思う女は多いんだそうだ。
なので、名探偵には程遠いのだが、光正はいち探偵として、また仕置き人として座間探偵事務所副室長を務めるのだった。
「速攻であんあん鳴いちゃって…、もう少し強がってくれなきゃ…なぁ…」
誰ともなしに呟いて、注文していた珈琲に口をつける。
探偵事務所のビルの下に喫茶店。ここには兄がメロメロの恋人・千歳が切り盛りする喫茶店で、弟である光正もよく利用していた。
千歳が入れてくれる珈琲は、ここいらじゃ1番美味しく、味にうるさい光正をも唸らせるほどだった。
しかし、ここ数日。千歳がいれる珈琲の味が変わっている。また店内もいつもよりも少し込み合っていた。
(…ん?また、違う…??)
すんすん…と珈琲の香りを嗅いで、光正は首を傾げる。
(しかも、美味いし…)
香りといいコクといい、今までの珈琲より格段に光正好みの珈琲になっている。
(千歳ちゃん、豆でも変えたのか…?ほんと、呑みやすいし、マイルドでいい味だな、おい)
光正は珈琲を飲み干して、勘定を取る。
千歳に挨拶を…と思い店内を見回したが、あいにく千歳の姿は店内には見えなかった。
(兄貴のとこか?それとも買い物か…。はたまた迷子にでもなっているか…)
度がつくほどの天然な兄の恋人を脳裏に思い浮かべ光正は苦笑する。超がつくほどの名探偵の兄に対し、その恋人の千歳は頭は悪くはないのだが天然でおひとよしで人の言葉を疑わない、嘘もつかないという聖人である。ひねくれた名探偵もこの恋人には頭も上がらない様子で、千歳を前にすると独占欲丸出しになったりところかまわずいちゃつくなど普段クールな名探偵はどこへいったんだ?と突っ込みたくなるほど人が変わる。ただ、千歳はド天然なので、そんな名探偵の気持ちの10分の1も気持ちは伝わっていないようではあるが。まるで中学生か…!と突っ込みたくなるような二人のやりとりは、はたからみると面白い。けして当事者にはなりたくないが。
「お客様…」
千歳のことを考えてぼんやりとしていた光正に、甘いハスキーな声がかかった。
うお…っと思わず声をたててしまうくらいの美声である。
これがまた、聞いているだけで背中がゾワゾワとしてしまうくらいの、いい声なのだ。
顔をあげて、声がしたほうをみれば、これまた美声の声にピッタリなイケメンが立っていた。
「お会計ですか?」
「あ、おう…」
にっこり、と微笑みかける彼は、喫茶店の黒いベストの制服をきていた。
どうやら、従業員のようである。
(最近はいってきたのか?
こんな美形、俺と違って一度あったら忘れねぇはず…)
目の前の男は、モブとはかけ離れた美形であった。
サラサラとした茶髪に甘いマスク。王子様が絵本から出てきたらこんな感じ、というのが具現化したような、イケメンがそこに存在していたのだ。
兄にも負けず劣らないイケメンである。
(日本人…なのか?えらい美形だな、おい)
身長は光正と同じくらいだろうか。
さすがにガタイは光正のほうがいいが、目の前の男も高身長で、それでいて華奢というわけでもなかった。
(そういや、最近女が多くなったのはこいつのせいか…。くそ…落ち着く喫茶店を奪いやがって)
ついつい恨みがましい視線を送ってしまう。
光正はゲイであり、恋愛対象は男だ。
女はどれだけいようが目の保養にもならないし、うるさい女は苦手なのである。特に女子高生は大敵といっていい。
光正の眼光に、男は一瞬、息をのむ。
(やべ…、従業員怖がらせちゃ、千歳ちゃんに怒られちまうな)
光正は小銭をだしレジにおくと、そそくさと立ち去ろうとする。
が、
「…お客様」
男に呼び止められ足を止めた。
男はジロジロと、光正を見つめている。
「な、なにか…?」
「いえ、すみません。僕の気のせいでした。探している人間に似ていまして。
およびだてしまって、申し訳ありません」
「は、はぁ…」
(探してるって、まさかこいつも探偵か?
いやいや、まさかな…)
探偵だったら、こんな喫茶店で従業員なんてやっているわけないだろう。
光正は喫茶店から出ようと扉に手をかける。
「お客様」
「んだよ、まだなにか用か…」
用かよ…、という言葉は全て言い終わることなく光正はことばが止まる。
男が光正に伸ばした手によって。
「やっぱり、いい形してますね。最高です」
ふにゅ、ふにゅっと男はシャツ越しに光正の胸を揉んでいた。
「…あ…あ…?」
「シャツ越しでもわかりますよ、ここに形のいい乳首があること…」
「は?な…なん…?」
なんで、こんな初対面の男に胸なんて揉まれているんだ?
男はなんで嬉々としたかおで、こんなもさいモブ男の胸なんて揉んでいるんだろうか。
「変態野郎が…」
バリタチの仕置屋である自分のことを棚にあげて男の手をはたき罵れば男は晴れ晴れとした顔でニッコリと「お褒め頂き光栄ですよ」と笑った。
「素敵な乳首がそこにあったので、触らなければ失礼にあたるかと思いまして。こんなエッチな身体しているあなたがいけないんですよ」
「あ?捕まるぞ、おい」
「幸い捕まったことはありませんね」
あいにく、顔はいいもので。
男は悪びれもなく、微笑む。
「千歳ちゃんには手出すんじゃねぇぞ。あと客にも。もし出したら出るとこでるぞ。変態野郎」
「変態野郎とは僕のことでしょうか?」
「お前以外に誰がいるんだ。
ったく、千歳ちゃんもなんでこんな変態採用してんだか…」
じろりと男を睨みつけたが、男は飄々としている。
あとで千歳にちくって首にしてやる。
そう決意し、男に背を向ける。
「ああ、お客様。ひとつ、忠告があります」
「あ?忠告?」
「ええ。上には上がいる…、変な自信は己を滅ぼすだけだと」
「ああ?どういう意味だ、こら」
俺より上?
やっぱりこいつは探偵なのか?
喧嘩腰に光正が問いかければ
「そのままの意味ですよ。ああ、あくまで忠告ですので。気に障ったのならすみません。
聞き流してくださって結構ですよ」
男は不敵に笑うと、ひらひらと手を振った。