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思いが通じ合って、キスをして…、盛り上がった僕らは当然それだけでは終わるはずがなくて。
夏目くんにあれよあれよと誘導されて、気づいたら僕はベッドの上で、何もまとわぬ状態になっていた。
夏目くんと呑んだ時、酔っ払った僕は夏目くんと…その、抜き合いっこみたいなことをしていたそうなんだけど、あまり覚えてなくて…。
素面ではこれが初めてのセックスだった。

近頃は、めっきりその手のお店にも行ってないから、好きな人とエッチなんて僕にとっては凄く勇気のいることで…ー。
それこそ、僕からすれば寺水寺から飛び込むような覚悟がいる。
やる気満々の夏目くんを前に、さぁ、やろう!と同じような気持ちにはなることはなくて。
モゾモゾと布団に隠れてミノムシになってしまうのも致しかたのないことだとおもう。
両思いです、さぁ思いが通じたから身体を合わせましょう…なんて僕の平凡な脳みそは、すぐに切り替えることができなかった。



布団に隠れている僕に夏目くんは、
「ダメですよ、宮沢さん。ようやく両思いなんですから…」
諭すような声でそう嗜まれると、隠れていた布団を奪った。
せめてもの抵抗に手で陰茎を隠すと夏目くんは、「どうせ見せることになるのに…」と苦笑する。


「涙目になっちゃって…可愛い人ですね。
俺を煽っているんですか?」
「煽って…?」
「そうです。それとも、無自覚ですかね?いけない人ですね…」

ちゅ、っと僕の唇を啄む夏目くん。
うっとりと反射的に、夏目くんのキスに瞳を閉じる僕だったけど、ハタッとあることに気づいて、夏目くんの口づけを手で受け止める。


「あの…ここって椎名先生の家ですよね…」
「ええ、そうですね。」
「あの…こんなところでやっては…その、ご迷惑なのでは…」

「ここは俺に与えられている部屋ですから…。
ちゃんと、ぐちゃぐちゃになったらシーツも変えますし。
何も心配はありませんよ」
「で、でも…」
「大丈夫です。優しくしますから…」

そういう問題でもなくて…!
あのね…と言いかけたとき、きゅっと乳首を摘まれた。
刹那、ぞくり…と甘い痺れが駆け巡り身体の力が抜ける。
なに…これ…ー。
触れられただけなのに、乳首の先がビリビリする…。

「それに、俺の方が、もう我慢できそうにありません。ずっと、おあづけけされてたんですから」
「ん…っ…や…。お、おあ…ずけ…」
「そうですよ。初めてあったときから、ずっと…」
「はじめ…んぁぁ…」

口から溢れた喘ぎ声に、咄嗟に口元を塞いだ。
鼻にかかった艶めいた喘ぎ声に、かぁ…と全身が赤らむ。
今のは、僕の声?

ただ、乳首を触られただけなのに…、こんな声が漏れてしまうなんて。喘がないように意識すればするほど、口から溢れ降ちる淫靡な喘ぎ声は止まらなくて。
直接ペニスに刺激を与えられたわけでもないのに、身体はほてり、疼いていく。

「宮沢さんって、もしかして、ここ弱いんですか?」

くにくにと指の腹でこね回される。
柔らかかった乳頭は夏目くんの愛撫に次第に芯を持ち始めていく。
尖りきった乳首を夏目くんは、押しつぶしたり爪をたてたり、玩具で遊ぶ子供のようにそこばかり弄っている。
声を聞かれたくなくて、口元を抑えた手を夏目くんは「駄目ですよ」といって、抵抗する僕の手を頭上にまとめた。


「身体ビクビクしちゃってますね…。感じてるんですか?」
「い…いや…。見ないで…ください…」

熱っぽい夏目くんの視線から、逃げるように身をよじる。

「どうして、ですか…?俺が嫌?」
「違…。そんなこと、なくて…」

嫌なんじゃない。
ただ、不安なだけ。
好きだから。
ずっと見ているだけで満足してしまうくらい、好きだったから。
だから、突然のことに戸惑っている。
幻滅されたくない。
期待はずれって思われたくなくて。
これ以上進むのが怖くて。


「僕は先生と違って綺麗じゃないし…。
夏目くんは先生と…その…したことあるんでしょう?」


凄い情けないことだけど…、貧相な身体を見られたくなかった。
セックスだって不慣れだし、夏目くんを満足させられるとは思えない。人並みに経験はあるけれど、いつも受け身で自分から動いたことなどなかった。
もし、夏目くんが先生とセックスしたことがあるのなら…
あんな綺麗な人と抱き合ったことがあるのなら、僕の身体を見たら興ざめするんじゃないか。
好きなんて言葉は、貧相な身体を前に消え失せてしまうんじゃないだろうか。

恐る恐る尋ねれば、夏目くんは愛撫していた手を止めた。


「相良先生はただの初恋の人です。
そりゃ、この歳になったので経験がないわけではないですけど…。
先生とはこういう関係になったことはありませんよ。
俺のただの片思いでしたから。
それに、俺もいつまでたっても初恋を引きずっている男ではないですし…」

そうなんだ…。
先生とはこういう関係になったこと、なかったんだ。
ひとまずそれには、ほっとする。

「でも…」
「まだ、不安ですか?」
「う…うん…ごめんね。こんな僕で…」
「いえ。
では、宮沢さんが不安におもうことがないくらい、今日はここに刻みつけますから。そうしたら、俺の本気、少しはわかってくれますよね?俺があなたに夢中だって。
毎日、俺のもので汚してしまえばわかってもらえますよね?」

ここ、といいながら夏目くんが触れたのは僕の後孔。
硬く閉ざされたそこを、夏目くんは円を描くように、なぞった。


「刻み…」
「ここがぐっちゃぐちゃに泡立つまで、俺のを注ぎ込みますから」
「あ、あの…夏目くん…」
「今日は、覚悟してくださいね…」


夏目くんの有無を言わせぬ爽やかスマイルを前に、反論など到底することはできず…。
僕は「はい」というしかなかった。

百万回の愛してるを君に