■□11■□




彼が、とても綺麗に笑うから。
だから、壊してみたくなった。
複雑なパズルを壊して、一度壊れたパズルはもう2度と組み上げることができないよと彼の心をぽきりとおりたくなった。
壊れてぐちゃぐちゃになったパズル。複雑に散らばった欠片・
もう2度と戻すことができないと、俺は自暴自棄になり、パズルを捨てた。壊れたパズルは二度ともとには戻らない。
そう思っていたから。
けれど、彼は壊れたパズルを前に、またひとつずつひとつずつ組み立て始めた。
ゆっくりと、ひとつずつ。
壊れたままじゃ嫌だから、絶対に元に戻すんです。
このパズルが戻ったらきっと利弥さんとの仲も戻る気がするから。
何年かかっても、俺はパズルをもとに戻して、利弥さんにいうんです。壊れたって俺が何度でも直すから。だから、またパズルが壊れる前に戻って、今度は二人でちゃんとしたパズルをいちから作りませんかって言いたいから。
そういって、彼は笑った。


『なぁ、総一郎、辛い時は思いっきり泣いてみろよ。
きっとすっきりするからさ』
俺がずっと好きだった幼馴染を一瞬で落としたあいつと同じ笑顔で、彼は笑った。
悔しかった。
俺は、そんな風に笑えないから。
どんなに真似したって、俺はあいつにはなれなかったから。
幼馴染にとって、俺という存在は重みにしかならなかったから。

いつしか幼馴染は、あいつしかみなくなり、俺はあいつの真似をするようになった。
けれど、所詮、レプリカはレプリカでしかなかった。

どれだけ似たように振舞っても、仮面をかぶってみたところで、ただの道化だった。
どれだけ真似したって、それは真似で、俺自身ではない。
今まで2人で築いていたパズルはぐちゃぐちゃに壊れ、幼馴染は俺を置いて消えてしまった。
恋い焦がれる俺のことなんて、気にもせずに。
好きだよも、愛してるも、すべて置き去りにして。
あいつは、いなくなった。
俺の心を残したままに。


*******



  
百万回の愛してるを君に