ユウうゆ�D
学生の頃なんてたかだか数百円の運動後のシーブリーズでもいい香りだと喜んで最後の一滴まで使っていたのに。今や一滴換算でいくらするんだろう、こんなに上品なアップルブロッサムの香りを身にまとってるんだから随分大人になったなぁとしみじみ思う。貰い物なんだけど。
そういえば、あの頃もずっと愛用してたのはグリーンアップルの香りだったなぁ…と青緑のボトルが懐かしくなって検索してみたらとっくの昔に廃盤になっていて、なんだかショックを受けた。シーブリーズ、もう知ってる香りはないのかもしれんねって話したらそらもう十年近く経っとるからな、と当たり前なことを言われてしまった。
「ほんで今度はりんごの酎ハイ飲んどるんか?」
「ん、ほんとだ!私ってもしかしてりんご好き?」
「好きなんとちゃうん、前は駅前でよーアップルパイ買っとったやろ」
あの頃のユウくんになら「知るか」「お前が分からんでなんで俺がわかんねん」とか言われてたんだろうなぁと思ったらまた感慨深くなってきた。俺そんなキツかった?って言うけど、ほんまにキツかったよ!可愛かったけど!
「ユウくん何使ってたっけ」
「覚えてへんわ…胡桃がリンゴのやつ使ってたんは覚えとるけど」
「えっ……どき……!」
「口に出すな」
お前エナメルの中に半分以上こぼした!って笑いながら見せてきたやんか、タオルも練習着ももうめっちゃリンゴやったで、とときめきの欠片もないエピソードに「えっそんなことあったっけ?」と笑ってしまった。そりゃ最後の一滴まで大事に使うよ。
「香水もやろ」
「あたり!これ、今までで一番好きなにおいだよ」
どうぞ嗅いでみてと手を差し出したらその手は無視して首に鼻を寄せられた。「あま」と言って肩に頭を預けたまま動かなくなってしまったユウくん、もう酔ってる?
「この香り好き?」
「んーなんもつけんくてええよ」
「貰ったばっかりだからまだまだ使いたいんだけど」
「は?誰にもろたんや言うてみ!」
急に目の前にちょっと赤くなった可愛い顔が出てきたから、思わずちゅーしちゃった。コラ誤魔化されへんぞ吐け!って言ってるけど自分もさっきから何回もしてるやん。しほからの誕プレだよって語尾にハートマークついてそうな精一杯可愛い声出したのに、返ってきたのは大きな大きな舌打ちだった。もう8月やろあいつどんだけ時差ボケしとんねんって、時差ボケってそういう意味じゃないからね。