不涼



「近くにいるならちょっとだけ会いに行っちゃおうかな」だって。突きつけられたトーク画面を見てひゅう〜とへたくそな口笛を鳴らしたらすごく嫌そうな顔された。ごめんて。私のことは気にしないで会っておいでよ、って言おうとしたけどひとりで歌舞伎町を歩かせるのは怖すぎるからついていくことにする。会わないって選択肢はなし。面白そうだから。それに涼華をお見送りしてもし万が一帰ってこなくても悲しいし私も行く。今夜も明日も私とデートだもんね。まだ着替えてなくてよかったね、可愛いワンピース君てるもんね。私が!プレゼントしたけど!

「あ、ひめ〜……アッこんばんは!」
「あ、こ、こんばんは」
「やめてよこんなラブホの目の前でペコペコし合うの」

そもそも一般論ならこんなところで会うの自体やめてよって感じなんだろうけど。会うのは初めてじゃないけどこの場所で会うのはなんとなく緊張する。連絡があってわりとすぐのはずだけどホテルの目の前にいるし、やっぱりちゃんと歌舞伎町でホストしてるんだなあと改めて実感した。会っちゃっていいのかなこんなとこで。まあ……いっか!

「てかほんとに姫って呼ぶのやめて…なんていうか虫酸が走る……」
「えぇ!?一旦むしさんトコトコしちゃった?」

見てよこの鳥肌…と私に腕を見せた後にすかさず不破さんの背中をバシッと叩くとまあまあいい音が鳴ったけど相変わらず不破さんは「あちゃ〜」とニコニコ笑っている。

「涼華ってちゃんと呼んでほしいんだって」
「はあ?」
「りょかちゃん?そなの?」

不破さんにそう言ったら私の方に寄って来ていた涼華が「信じられない」って顔で離れて行った。「俺もおりょみとか呼んだりしちゃおかな」「おりょみって呼んでいいの私だけなので」「あ、っすか……一旦独占欲強めでやられてるんすね」みたいな会話してたら不破さんが涼華の方を見て「あれ?」と首を傾げた。

「この服もってた?かわい、似合うやん」

今すっ…ごく涼華の顔を見たいけど、八つ当たりされそうな気がするからやめておく。ふわさん見る目あるじゃん。クローゼットの中身把握してらっしゃるの?ふうん、まあこれは私がプレゼントした服なんだけどね。