まし ろ?
街灯が照らしきれないほどの長い道路を歩き続ければ周りにはほとんど家もなくなり、ぽつりと建っている小さな一軒家が見える。2階の窓から漏れる光を見て遠慮なくドアを引くと簡単に開くので、また当たり前のように施錠はしていないらしい。玄関から見える急な段差の階段と暗い廊下はまさに「おまえんちお化け屋敷」と叫ばれても仕方ないよう雰囲気があって、この家で一人にはなりたくないと毎度思う。
「おじゃまします」
「はーい!」と2階から返事が聞こえたのと同時にトントンと階段を降りてくる軽い音。
「にゃあ」
「ぱわこ!お出迎えありがとうねえ」
2階から降りてきたぱわこを撫でて、スニーカーを脱ごうと座り込んだ。
その瞬間スマホの画面が光り、床に置かれたせいか大きな振動音が軽やかな着信音なんかかき消す程のボリュームで家中に鳴り響く。咄嗟に驚いて声を上げてしまったために飛び退いて離れたぱわこに「ごめんね!」と恥ずかしさを誤魔化すように慌てて謝る。飛び出るんじゃないかと思うほど早く動く心臓を抑えつつ、表示された名前を見てなんのイタズラかとムッとしてしまった。
「あ、胡桃?」
通りのいいはずのましろの声は踏切や電車の音にかき消されて辛うじて聞こえる。無音の家にスピーカーから漏れる騒音だけが響いた。