剣涼


成人式の次の日くらいバイト休めばいいのに、と思ったけど言うと私に会いたくないって?とかめんどくさい捉えられ方をしかねないから口を噤む。こういうのには自分から関わらないのが一番って言うのはとっくに理解してる。
当たり前だけど今日の涼華さんは振袖じゃなくてバイト先の何の変哲もない制服を着ているし、髪はただの一つ結び。

「剣持に私の振袖見せたっけ?まぁ見なよこんな機会滅多にないから」
「見てないし普通そんな自分の振袖写真押し付けてきます?」

こういうのって他の人に聞かれて嫌々見せるみたいなのが通説じゃないんですか、とかべらべら口は回るけど本当のことは全然言えない。

「へぇ…馬子にも衣装って感じですね」
「うわっ言うと思ったけど……お世辞でもいいから綺麗とか可愛いとか言うべきじゃない?私先輩だけど?」
「大学生にして既にパワハラの才能ありません?」

誰でもなく僕から聞きたい欲しいって、その一言があればいくらでも…までは言わなくとも気の利く一言くらい言ってやらんこともないのに。ああもう女々しいな、この思考!
本当は涼華さんに見せられたこの写真は昨日も見た。
他のバイト先の先輩のストーリーを思わずスクショして見た。仲良さげに隣に並んだツーショット写真を見てどうも思わなかった、こともない。ただでさえ少ないカメラロールにそのスクショが残っていることに罪悪感というか見つかったらどうなることか、とかじわじわそういう感情沸いてきて一度は消そうとした。結局消せなかったけど。

「そういう、褒めるような関係性じゃないじゃないですか」

一瞬口を開いて固まった涼華さんはすぐに「お堅いな〜」とか腹を抱えて笑い始めた。
あーほんっと…うぜぇ〜!!