キキョウさんは事あるごとに自室へ私を呼んで世話を焼いてくれた。一度など、誕生日はいつかと聞かれて知りませんと答えたら、それなら私が決めてあげるわと日付をくださったことがある。後で聞いたところによるとキキョウさんも生まれた月日を知らないままこの家に嫁いできたのだという。
「イルミの様子はどう?」
「……今朝は、いつも通りのようでした」
「まあ、そんなことでは今に捨てられるわよ。かすかな変化にも気づけないようなぼんくらはこの家に要らないのよ」
「はい」
「カルトちゃん、今日のナマエさんにはどちらのリボンが似合うかしら?」
「右」
赤いリボンがほっそりした長い指によって私の髪に結わえられていく。昨日も今日もドレス。一昨日は和服。今夜イルミさんにほどかれるため結ぶリボン、紐、帯、色柄、手ざわりの組み合わせは果てしない。つくりのいい美しい下着まで選ぶのはキキョウさん。裸の私が一枚ずつ選ばれた布きれを身につけていくだけの、つまらない見せ物を大人しく見つめるカルトさんと執事。一日だけ着る服を選ぶ時間は長すぎて、私を疲れさせた。
「母さんはお前のこと気に入ってるみたいだね」
母親によって丁寧に包装された私の体を開き、お茶の時間のお菓子のように、ためらいなく当たり前に、いわば夫らしく味わったあと、裸でベッドに横たわったイルミさんが言った。
「どうしてですか」
「お前がまだ生きてるから。モノでも執事でも気に入らないと壊すから、あの人」
「そうですね。そういう方かもしれません」
「このまま殺されないといいね」
私は黙ってほほえんだ。本当の世界を知ってしまった今、異物によって箱を開かれ肉を犯されている今。いったい何のために生きているのか、わからない。教えてくれるパパはもういない。殺されたって別に構わない。務めを果たせなかった私をあなたが殺してくれたらいいのに。言い出しかねて唇を噛んだ。
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