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※1話未満、ボツ供養。気が向いたら続くかも

19, 01, 09

アバッキオ

叶わない恋をした。

彼は私のことを一度も見てはくれない。髪型を変えてみたり、メイクを変えてみたり、服装だっていつもと違う大人っぽいものにしてみても、なにひとつ気付かないふりをする。チームのみんなが気付いて、ここが良いと、こうしたらもっと良いと言ってくれるのに、彼はじっと椅子に座ったまま平然と雑誌を読んでみせるのだ。

more → 想いを知る人たち

「大変だよなァ〜毎日全部違う服に髪型に化粧なんて俺にはぜってーできねぇ」
「でもよォ……好きな女が自分のためにそうしてるって思ったらなんかクるもんがあんだろ?」

なあフーゴもそう思うだろ?とミスタはニヤニヤとフーゴの肩を叩く。酷く面倒くさそうにしながらも、彼は答えた。

「ミスタの言いたいことは分かりませんが、女性がそのように努力している姿は好感が持てますね」
「だろ?まあアイツの場合、当の本人から何もねぇからな。可哀想ったらありゃしねえ」

ちらりと横目でヘッドホンを付けている男を見る。音に聞き入っているのか瞳を閉じており、今の会話が一切聞こえていないことを証明していた。

「いい加減気付いてくんねぇとこっちも見てらんねぇっての」
「あえて何も言わない可能性もありますよ」
「相手がやきもきするのを見て楽しんでるってか?」
「いえ、そうではなく……」

フーゴは居心地が悪そうに目線を落とした。それだけで伝わったのかミスタはあーと声を漏らした。

「まあ、世間一般様からしたらギャングはやばいな。だが珍しいことでもないだろ?」
「いいえ、アバッキオだからこそ、ですよ」
「……分かんねぇなあ」

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