「あっ!これまだ持ってたんだ!」
「名前……全然はかどらねーじゃねーかよ」
「……あっ、ゴメン。」

休日の昼下がり。外は快晴。

本当なら二人でお出かけでもしたいところだけれど、今日は同棲してから溜まりに溜まった物を整理する断捨離デーにしようと先週から二人で決めていた。

「名前、後片付けとかできねーもんな」
「出来ないんじゃなくて苦手なの!」
「どっちも変わんねーよ」

寿は意外と見掛けによらず綺麗好きな方で。
そう言えば実家の彼の部屋も、昔から散らかってると思ったことは無かったな。

引っ越しが終わる頃にはバスケ部の県予選が始まる。寿には顧問のバスケ部の練習や試合で忙しくなるからさっさと整理しようと言われていたのに、私がダラダラとしていたせいで結局こうして後回しになってしまった。

「寿、私のことだらしないって思ってる?」
「あ? なんだよ急に」

あぐらを掻いて自身の荷物を整理している寿に問いかけると、動かしていたその手を止めて正座をしたままの私の方を振り返った。

「片付けできないし、怠け者だし」

私の不安そうな声に反応したのか、クスクスと笑い声が聞こえてきたのでチラッ、と視線を送ると手の甲を口に当てて笑いを堪える寿の姿。

「……なによ」
「いや、可愛いなーと思ってよ」

そう言った寿にグシャグシャと頭を撫でられた。その大きな手の温もりの愛を感じて、私も自然と頬が緩む。

「さて、続きやるぞ」
「うん!」
「あっ!寿!見てみて〜懐かしいこの写真!」
「てっめーは本当に……、おっ?」

興奮して寿を叩きながら写真を翳す私に怪訝そうな顔を向けた彼も、その手に持たれた写真に視線を落とした瞬間に、食い気味に身を乗り出して来る。

「いつだよ、これ」
「中学の学校祭じゃないかな〜」
「おっ!こっちのも懐かしいな」
「どれどれ?あ、これは寿が小二のとき!」
「ちゃんとアルバムでも作って入れるか!」
「だねっ!」

私の彼氏は、私を喜ばせることが大好き。
昔も今も、いつも私を楽しませてくれる。
笑顔にしてくれる。

そんな彼の証がちゃんと写真にも鮮明に刻まれている。

彼と出会ってからもう、何年目かな。


今年の秋、
私たち、結婚します——。










 とは、色褪せないもの。



(可愛い〜この寿!)
(結婚式の名前の写真はこれだな)
(いや、それ真っ裸!)
(可愛い〜名前)
(今日……晩ご飯抜きね)
(スンマセン。)

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