「「カーモンベイビー♪あめりかっ♪」」
「アンタら今度は何にハマってんの〜?」

彩子が、私とリョータくんに呆れ顔で問いかけてきた。今日も平和な湘北高校、体育の時間。

「彩子っ!知らないの?」
「なによ?」
「「U・S・Aッッ!!」」

そう言って、決めポーズをして声をハモらせた私とリョータくんに、溜め息を吐いた彩子。


「なあミッチー」
「あ?」
「名前サンとりょーちん最近ABCにハマってるらしーぞ」
「あ?なんだよソレ」
「A・B・C!って、こないだ踊ってたぞ」
「…ふうん。」

バスケ部のマネージャー、一歳年下の名前は宮城と特別、仲が良かった。そんな彼女に密かに想いを寄せていることは誰も知らない。(…と、思う。)

「オイ、名前」
「はい?どーしたんですか、三井先輩!」
「……ABCに、ハマってんだってな」
「へっ?」

バスケの練習の休憩中、本日、練習前の部室で聞いた後輩からの情報を、いち早く本人に確認しに俺は、名前の元へ向かった。とりあえず、なんかよくわかんねーけど、知ったかかましておけばいーだろと思った。

「俺も好きだぜ、ABC」
「……わたし、英語の授業が一番苦手なんですけど」
「はっ?」
「三井先輩は英語が得意なんですね……」

そう小さく漏らして、パタパタと体育館を出て行った名前を追いかける間もなく、呆然とその場に立ち尽くす俺。

「先輩……」
「!!?……なんだ、彩子か」
「名前がハマってるのはABCじゃなくて」
「あ?……なんだよ」
「こっちです。」
「……なっ!?」

そう言って溜息を零した彩子の指が“グッド”マークを作って上下に振り下ろす。それはいま、世間で話題のあの曲を指す意味だった。

桜木のヤツ……!
A・B・Cじゃねぇ!!





 U・S・Aだ、バカヤロウ!



(三井先輩は英語が得意なんだって…)
(へっ?名前ちゃん?どったの?)
(やっぱ釣り合わないだー!私となんか〜!!)


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