朝が来た、といっても窓の外では夜の終わりを告げるように、細かな雨が降り続いていた。厚い雲が空一面を覆い、いつもなら容赦無く差し込む朝日も今日は姿を見せない。薄墨を流したような淡い光だけがカーテンの隙間から滲み込み静かな部屋を、ぼんやりと照らしていた。
先に目を覚ましたのはホークスだった。いや、正確には目が覚めたというより、眠れなかった。二時間ほど前には意識が戻っていたのにそのまま身じろぎ一つせず腕の中で穏やかな寝息を立てる彼女を眺め続けていたのだ。
安らかな寝顔だ。その穏やかな表情を見ているだけで不思議と胸の奥が満たされていく。そんな彼女を起こさないようにホークスは、息だけで、そっと笑う。
「……まつげ、長かね」
誰に聞かせるでもない独り言。額へ落ちてきた前髪を指先でそっと払い、その仕草だけでまた、頬が緩む。すると不意に枕元のスマートフォンが震えた。反射的に眉がぴくりと動く。画面を睨みつけると『加瀬さん』の文字が表示されていた。時刻は午前七時ちょうど。思わず「最悪……」と小さく漏らしたあと、ホークスは、彼女の眠りの妨げにならないように慎重に腕を抜こうとする。だが、そこで気づく。動けない。視線を落とすと彼女が眠ったまま無意識にTシャツの袖を握っていた。細い指が、きゅっと布を掴んで離さない。思わず困ったように笑い、天井を仰ぐ。
「……可愛すぎでしょ」
言葉の通り、その姿が可愛くて、無理にほどく気には、なれなかった。
そのとき再びスマートフォンが震える。しかも今度は立て続けに二回。加瀬という男は仕事には容赦がない。既読をつけながら放置すればあとが面倒になることを、ホークスはよく知っていた。仕方なく、空いた手だけを動かし、片手で器用に文字を打つ。
送信。数秒もしないうちに既読がつき、返信が返ってきた。『理由を』とだけ短く、相変わらず簡潔すぎる文面に苦笑しながら、ホークスは少しだけ考える。それから、素直に打ち込んだ。
嘘でも間違いでもない。ただ真実を全部書いていないだけだ。
ホークスは、既読を確認することなく送信してスマートフォンを伏せ、再び枕元へ置く。そしてもう一度だけ彼女を見つめると、諦めたように、その隣へ身体を戻した。
「……あと、五分だけ」
誰に言い訳するでもなく呟いて、目を閉じる。けれどその五分はあっという間に十分へ変わり、さらに二十分へと伸びていった。結局ホークスが観念したのは三度目の着信のバイブレーションが鳴り始めたときだった。
「……さすがに行かんと怒られるかぁ」
彼は名残惜しさを引きずったまま静かに身体を起こし床へ落ちていたスウェットを拾い上げる。音を立てないよう寝室を抜け洗面所で顔を洗う。
その瞬間、冷たい水が火照った頭を、少しだけ現実へ引き戻した。歯を磨き、鏡の前でシャツのボタンを留める。そして、ネクタイを結ぶ手が、途中で止まる。自然と視線が、少し開いた寝室の扉へ向いていた。隙間から見える彼女はまだ夢の中だった。穏やかな寝息だけが、静かな部屋へと溶けている。その寝顔に目を細め、ホークスは、ゆっくり寝室へ戻った。ベッドの縁へ腰を下ろし起こさないよう、その額へとそっと唇を寄せる。
「……昼、また来ますね」
囁くように約束を残す。返事はない。それでも彼女の寝顔をもう一度見つめると、それだけで、十分、満たされた。
ホークスは、静かに立ち上がり、ジャケットを羽織る。玄関で靴を履き終えたあと一度だけ振り返る。昨夜二人で過ごした部屋。その景色を目に焼き付けるように眺め、ふっと柔らかく笑った。
「……行ってきます」
誰も聞いていない、小さな挨拶だけを残して、静かに扉を閉めた。
公安本部。朝の廊下には規則正しい靴音だけが響いていた。黒いスーツに身を包み黄土色の髪を整えた男は、いつもの公安委員長の顔へと戻っている。私情は扉の向こう側へ置いてきた。少なくとも、ホークス自身は、そう思っていた。
しかし、執務室の角を曲がった瞬間、加瀬が、書類を抱えたまま、待ち構えていた。ホークスはいつもの調子で肩をすくめる。
「おはようございまぁーす。いやぁ〜、冬の朝は布団が離してくれんですねぇ」
加瀬は小さく咳払いをしたあと、眼鏡の奥から冷静な視線を、ホークスに向けた。自然と背筋が伸びてしまう。
「委員長。本日の午前案件は三件押しています」
淡々と報告を終えた加瀬はホークスに一歩だけ近づき「それと——」と、さらに声を落とした。ホークスは、首を傾げる。
「首元、隠してから出勤してください」
「え……?」
ホークスは、言われるまま、反射的に首へ手を当てた。ネクタイの結び目から、わずかに覗いていた赤い痕が指先へ触れて「あ」と、間の抜けた声が漏れる。すぐに慌てて襟元を整えるが、もう遅かった。
加瀬は静かに目を閉じ、小さく、それはそれは深いため息をついた。それから、冷え切った声で告げた。
「元・敵の面会対象との私的接触が週刊誌にでも撮られたら、委員長の政治生命は終わります」
ホークスは首元を押さえたまま、どこか、気の抜けたような、へらりとした笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ。俺、目聡いんで」
「……見つける側じゃなく見られる側の話をしているんですがね」
容赦のない正論にさすがに反論の余地はなく、「はぁい」と、ホークスは素直に肩をすくめる。デスクに付き引き出しから絆創膏を探しながらも頭の片隅ではすでに、昼休みの予定を、組み立て始めていた。午前中の会議をどう切り上げるか。書類の決裁を何件片づければ抜けられるか——。そんな、計算ばかりが浮かぶ自分に、思わず苦笑する。新公安委員長になってから、仕事中にこれほど時計ばかり気にするようになった覚えはなかった。
一方、その頃——。彼女が目を覚ましたのは、ホークスが部屋を出てから、約一時間ほど経った頃だった。雨雲に覆われた朝はまだ薄暗く、カーテン越しの柔らかな光が、寝室を静かに満たしている。隣の空間はもう空いているのにシーツにはまだ、彼の体温がわずかに残っていた。
昨夜の名残を指先で確かめるように布団へ触れてから彼女はゆっくりと身を起こす。リビングへ向かうと、テーブルの上に一枚のメモが置かれていた。走り書きらしい少し崩れた文字。その下には、小さく続きが添えられている。
『お腹空いたら冷蔵庫のもの食べていいですよ』
『昼には行きます。逃げんでくださいね』
思わず口元が緩んでしまう。最後の一文まで、実に彼らしい。しかし、メモを元の場所へ戻したところで不意に誰かの視線を感じた。部屋の中には、もちろん誰もいない。それでも、妙な気配が消えず、彼女は、ゆっくりと室内を見回す。棚、本棚、テレビ台——。
そして本と本の隙間に埋め込まれた小さな黒いレンズを見つけた。赤いランプが規則正しく点滅している。
「……信じらんない」
呆れたように呟く。それは言わずもがな、監視カメラだった。連絡先を知っている相手は、一人しかいない。彼女はスマートフォンを取り出し、その番号へと迷わずに発信した。想像はしていたものの、能天気な第一声に、思わず眉が寄る。
『——あ、はーい。もしもーし』
「もしもーし、じゃないよ。盗撮、されてるようなんですけど?」
『へっ? ああ〜、あれ?さすがだなぁ。やっぱ名前さん、公安で俺と一緒に——』
「話を逸らさないで。どういうこと?」
ぴしゃりと言い切る。受話器の向こうが、一瞬だけ静かになる。それまでの軽い調子が、すっと消えて、仕事中の声へ切り替わった。
『監視です』
短い一言だった。そこには、恋人へ向ける甘さではなく公安の責任者としての色が滲んでいた。
『今朝、設置させてもらいました』
「……」
「朝ご飯は食べました? あと昼には——』
そこで、ぶつり、と通話が切れる。切られたのではない。彼女が切ったのだ。
静まり返った部屋には、壁掛け時計の針だけが規則正しく、時を刻んでいる。時刻は午前九時を回ったところだ。彼女は、ため息をひとつ吐いてから冷蔵庫へと向かった。扉を開けると三個入りのヨーグルトとラップに包まれたサンドイッチがきれいに並んでいる。どちらも、今朝買ってきたばかりなのだろう。まだ冷気が新しい。そして、案の定、小さな付箋が貼られていた。
『アロエ入りが好きって言ってた気がしたので、探しました』
それはずいぶんと几帳面な文字だった。そしてさらに、もう一枚の色違いの付箋。
『スプーンもらい忘れました。すみません。キッチン漁ってくれていいんで』
冷蔵庫の中を見回してみても、たしかに、彼の言う通りスプーンは入っていないようだ。思わず笑みが零れる。無意識に「抜けてるなぁ……」と独り言をこぼしながら彼女は最後に貼られていた三枚目をめくる。
『サンドイッチ、俺の手作りよりうまいかは保証せんけど』
彼女はしばらくその付箋を見つめたあと小さく吹き出した。最後の一言が多いんだよね、と心の中で呟く。ここまで気を回しておきながら、最後だけ、余計な一文を添えてしまう。格好つけきれないところまで含めて、いかにも、ホークスらしかった。
アロエヨーグルトは、よりにもよって一番苦手な味だった。これだけは、どうしてか昔から好まない。けれど、コンビニの棚の前で、真剣な顔をしながら「これやったかなぁ」と首を傾げているホークスの姿を思い浮かべると、不思議と文句を言う気にはなれない。笑ってしまうような、それでいて胸の奥がじんと温かくなるような、そんな朝だった。
彼女は用意された朝食をゆっくりと食べ終え、そのまま、部屋で時間を過ごした。監視カメラのある部屋で——。
部屋は驚くほど静かで窓の外を飛行機が横切る低い音だけが、ときおり、遠くから流れてくる。テレビを点ける気にも本を探す気にもなれない。ただ時計の針だけが律儀に時を刻み続けていた。
待つ時間というものは、こんなにも、長かっただろうか。けれど、不思議と退屈ではない。昼になれば戻ってくると言った男は、きっと、本当に戻ってくる。そう思えるだけの信用が、いつの間にか、彼女の胸の中に根を張っていた。
*
午後一時を少し回った頃。玄関の鍵が開く音が静かな部屋へ響く。続いて革靴を脱ぐ音。そして廊下を軽快に進んでくる足音は聞き間違えようがなかった。リビングの扉が開く。案の定、そこに立っていたのはホークスだった。片手には紙袋、もう片方には、分厚い書類を挟んだファイルが。ネクタイは少し緩み肩でわずかに息をしている。きっと、走ってきたのだろう。
「おはようございまーす、名前さん……あ、もう昼でしたね」
午前中の仕事を、相当急いで、片付けてきたのだろう。加瀬に呆れられながらも抜け出してきた姿まで容易に想像できる。ホークスは部屋へ入るなり周囲を見渡し、何事もなかったような顔で、監視カメラの電源を落とした。赤いランプが音もなく、静かに消える。
「——あ、冷蔵庫のやつ。食べてくれました?」
彼女の答えも待たずにテーブルの上に並ぶ空の容器を見つけた途端、その表情が、ぱっと明るくなった。
「お、ちゃんと食べてくれとる。どうでした?」
彼女は、返事の代わりに、じとりとした視線を向けた。彼には聞きたいことは山ほどある。だが当の本人も、その視線の意味に、気づいていないはずがないのに、あえて受け流すように、紙袋を持ち上げた。
「あ、そうそう。これ、差し入れでーす」
中から取り出したのは、タグが付いたままの、新品の冬仕様のパーカーとスウェット。昨日から自分の服を貸したままになっていたことが、どうにも気になっていたのだろう。ホークスは、少し照れくさそうに後頭部を掻いた。
「……前も、こんなことありましたよね。ほら、収容施設に服、持ってったとき」
「……」
「あのとき看守さんにめちゃくちゃ怒られましたもん。『面会以外の物品の持ち込みは禁止です』って……まあ、結局は通しましたけど」
悪びれもせず笑う。言われてみれば、この男は昔からそうだった。規則を守るべき立場にいながら、彼女のためとなれば、平然と抜け道を探す。本人に悪気はなくても公私の境界線だけは昔から少し曖昧だった。
とりあえず彼女は紙袋の中からパーカーを取り出して広げる。そして数秒後、固まった。袖も、身幅も、どう見ても小さい。しかしホークスは、その事実に気づかないままソファのクッションを端へ寄せると、ごく自然な顔をして、彼女の隣へ腰を下ろした。彼女は、隣に座ったホークスを、横目で見た。
「ねえ」
「はーい?」
「監視カメラ」
それだけで説明は十分だった。ホークスの肩が目に見えて、ぴくりと揺れる。視線が一瞬泳ぎ、それから何事もなかったように咳払いをひとつ。彼女は思う。ここはもう、逃がさない——と。
ホークスは「あー......」と視線だけが天井へと逃げていく。彼女は、そんな彼のことをじっとを見上げて睨んだ。
「やっぱ、見つけたんだ。ほんとに」
「見つけたんだ、じゃないよ。説明して」
その声音には、「言い逃れは聞かない」という意思がきちんと滲んでいる。ホークスは、小さく息を吐き、観念したように頭を掻いた。
「……公安の決まりです」
「嘘」
「いや、半分ほんとですよ」
「半分?」
「委員長権限で付けました」
「もっと悪いじゃない……」
居心地悪そうに彼女は眉尻を下げる。反して、間髪入れず返されたホークスは、思わず肩をすくめた。
「だって、心配だったんですもん」
「だからって、無断で監視する?」
「違います」
その否定だけは迷いがなかった。さっきまでの言い訳めいた調子が消え、声だけが静かになる。彼女は何も言わず、その続きを待つ。
「監視したかったんやなくて、守りたかっただけです」
「……」
「まだ保護観察中やったでしょう。この間の件もありますし、何かあったら俺がすぐ動けるようにしたかったんです」
「……だから、カメラを?」
「まあ。昼間まで俺、ここに来られんですし」
「……」
「何か起きてからじゃ遅いでしょ。侵入でも体調不良でも、異常があれば公安へ通知が飛ぶように設定してあります」
苦笑いを浮かべてはいたがなんとも淡々とした説明だった。彼女は、少しだけ目を伏せる。そこまで考えていたことは、言葉の端々から伝わってきた。——だが、それでも。
「……だからって、勝手に付ける?」
「怒られるとは、思ってましたんで」
「怒るよ」
「はい」
「すごく怒る」
「……はい」
ホークスは言い訳もせず素直に頷いた。変に、言い返してもこない。神妙に、返事だけするものだから怒っているはずなのに調子が狂う。彼女は仕方なく、長いため息を吐いた。
「じゃあ、私が着替えてるところも?」
「見ません」
「お風呂は?」
「見ません」
「寝顔は?」
「……見ません」
「今、間があったよね?」
「いや、その……映像は自動で一部ぼかし処理が入る設定で——」
「ホークス」
「はい」
「質問に答えて」
あからさまに言葉が詰まった彼の逃げ道を塞ぐのは容易だった。ホークスは耳の先まで赤く染めながら、視線を逸らす。
「……寝顔は、ちょっとだけ」
「最低」
「でも、ほんとに五秒くらいですよ?」
「秒数の問題じゃないから」
ホークスはまた、返す言葉に詰まって、困ったように後頭部に手を添えた。
「……だって、かわいかったんですもん」
「は?」
「かわいかったんです」
「褒めても許さないし、二回言ってもだめ」
ぴしゃりと返される。ホークスは肩を落とし、「ですよねぇ……」と、観念したように、小さく呟いた。部屋には短い沈黙が落ちる。気まずいというより叱られた子どもが反省しながらもどこか納得しているような空気だった。
やがてホークスは、人差し指で頬をぽりぽりと掻き、自嘲するように苦笑した。
「……じゃあ、玄関だけ残していいですか?」
「……」
「すみません……全部外します。今日にでも撤去します」
「ほんと?」
「あなたが嫌なら外しますよ。今すぐ」
今度は言い訳を挟まなかった。その声音には、迷いがない。彼女が嫌だと言うのなら、それ以上優先するものなど、最初からなかった。彼女は、そんな彼の横顔をしばらく見つめる。心配だったという言葉も守りたかったという気持ちもきっと嘘ではない。だからこそ怒りきれなかった。もう一度、小さく息をついてから、彼女は静かに口を開く。
「……非常時だけ作動するような設定とか、できないの?」
ホークスは顔を上げて「できます」とやや食い気味で即答した。今度は、驚きがそのまま表情に出ていた。その顔を一瞥したあと彼女は、ため息まじりに言った。
「じゃあ、それで」
「……ほんとに?」
「うん」
彼女は「その代わり」と、付け加えて、わざとらしく人差し指を一本立てながら続ける。
「今度こういうことするときは、ちゃんと相談」
「……はい」
「公安の委員長なんだからさ」
「委員長は何とかやれとるんですけどねぇ……」
彼はそう言いながら、苦笑いをする。そして、照れ隠しのように肩をすくめて息を吐いた。
「彼氏のほうは、まだまだ新米なんで」
「そこは開き直るんだぁ」
呆れたように笑う彼女につられて、ホークスもようやく頬を緩めた。そして彼女の笑顔を見届けるように彼は胸の奥でそっと息をつく。叱られて譲ってもらって、また一つ、距離を測り直す。
恋人になるというのは、こういうことを何度も繰り返しながら、お互いの当たり前を少しずつ、増やしていくことなのかもしれなかった。
「あ。それより、身体は痛くなかったです?」
何気ない調子を装って、尋ねたつもりだった。けれど、その視線だけは誤魔化しきれない。彼はきっと、昨夜のことを思い返しているのだろう。それでも、向日葵色の瞳の奥には照れよりも先に彼女を気遣う色が、滲んでいた。そんな彼の様子とは対照的に、彼女は、きょとんと首を傾げる。
「ん?」
「ん、じゃなくて。ほら、昨日……」
「昨日、って?」
その一言にホークスはぱちりと目を瞬かせた。一瞬、本当に伝わっていないのかと思う。だが、次の瞬間、彼女の口元にほんのわずか笑みが浮かぶのを見て、すべてを察した。
——絶対に、わかっている。ホークスは耳の先から熱が広がっていくのが、自分でもわかった。
「……わかってて聞いてるでしょうが」
彼は小さく唇を尖らせてぼやいたあと咳払いをひとつした。どうにか平静を装いながら、言葉を続ける。
「あー......その。俺、初めてやったけん。身体に負担とか、かかっとらんかなと思って」
「初めてって?」
追い打ちだった。ホークスは思わずこめかみを押さえ、力なく肩を落とす。
「……名前さん」
「ん?」
あまりにも無垢な返事が返ってくる。もちろん演技だと知っている。そうと、わかっていても、この人には敵わないのだ。ホークスは、観念したように息を吐き、口を開いた。
「だから、セッ——」
そこまで言ったところで、とうとう茹でダコのように赤面させながら、言葉に止まった。最後の二文字が、どうしても出てこない。ホークスは、そのまま両手で顔を覆い、小さくうめく。
「……もう、勘弁してください」
やはり指の隙間から覗く耳まで真っ赤だった。翼を失った男は、どうやら、言葉の翼まで一緒に置いてきてしまったらしい。手の平の向こうからくぐもった声が漏れる。
「名前さん、絶対楽しんどるでしょ」
「うん、まあね」
迷いのない肯定。ホークスは、ゆっくりと手を下ろし恨めしそうな視線を向ける。けれど、その目尻は、情けないほど下がっていて、怒っているようには少しも見えない。
「……敵やった頃から、そんな感じやったと?」
彼女は答えなかった。その代わりにいたずらがうまくいった子どものような、それでいてどこか晴れやかな笑顔を向ける。その笑顔を見た瞬間、ホークスも堪えきれず、吹き出した。
「敵とスパイだった頃は、こんなふうに笑う人やなかったのに」
苦笑しながらそう零す声には、不思議なくらい安堵が混じっていた。収容施設で過ごした日々も互いを探り合っていた時間も、今では、遠い昔のことのように思える。
目の前で屈託なく笑う彼女を見つめながら彼は胸の内で、静かに思う。こんな表情を引き出せる未来が来るなんて、あの頃の自分はきっと想像もしていなかった。
「もう……敵わんですね」
昔も今も、人の心を振り回す才能だけは誰にも負けない。敵と二重スパイだった頃はその一言や一挙手一投足に翻弄されるたび、胃が痛くなったものだ。けれど、今は違う。同じように振り回されても不思議と嫌ではない。むしろ、その笑顔を引き出せたことが嬉しくて、仕方なかった。
「……昼飯、食べに行きます?」
「話、変えたね」
「変えました」
あっさりと認める。これ以上この話題を続ければ、自分のほうが先に限界を迎える。そんなことくらい、ホークス自身が一番よくわかっていた。彼は力の抜けたように息をつき、背中をソファへ預けた。
「これ以上は、俺のライフがもちません」
彼女は、我慢していた笑いが堰を切ったように零れてしまう。しかしそれにつられてホークスも肩を揺らした。先まで漂っていたはずの、険悪なムードや、照れ臭さは、いつの間にか昼下がりの穏やかな空気へと溶けていた。ひとしきり笑ったあと、ホークスは何気ない調子で口を開く。
「……ねえ。マジで公安、一緒に働きません?」
「絶対に嫌」
「えー、なんでです?」
「向いてないから」
「向いてますって」
「元・ヴィランだよ?」
返事は、迷いなく返ってきた。笑ってはいた。いつものように冗談へ変えて受け流しているようにも見えた。けれど、その言葉だけは彼女の中でずっと変わらない事実として残り続けていた。
元・ヴィラン。その肩書きを、誰より外せずにいたのは世間でも公安でもない。彼女自身だった。ホークスはその横顔を静かに見つめる。否定したいわけではない。過去は消えないし消してはいけないものでもある。だからこそ、別の言葉を選んだ。
「名前さん」
「ん?」
「善人とか悪人とか、俺はもうあんまり興味ないです」
彼女が、ゆっくり視線を向ける。ホークスは、変わらずに穏やかに笑った。
「今日、誰かのために動けたか。その積み重ねのほうが、ずっと大事だって思ってます」
「……」
「昨日まで何者やったかより今日、誰を守ろうとしたか、でしょ」
飾らない口調だった。委員長として誰かに聞かせるための言葉ではない。目の前にいる、たった一人へ向けた本音だった。彼女はその言葉を胸の中でゆっくり反芻するように俯き、それから照れ隠しのように笑った。
「……公安の委員長さんってさ、たまに良いこと言うよね」
ホークスは、彼女の言葉に目を丸くしたあと、苦笑混じりに肩をすくめた。
「ええ? たまに、ですか?」
「うん」
「もっと言っとる気がするんですけどね……」
「やらし〜。自覚あるんだ」
気づけば窓を叩いていた雨音は途絶えていた。互いに顔を見合わせて漏らした小さな笑い声は、雲の切れ間から差し込む午後の柔らかな光の中にどこまでも穏やかに、溶けていく。この何気ない言葉の応酬が、やがて来る未来のどこかで確かな約束へと姿を変えることを今の二人はまだ知る由もない。けれど降り注ぐ陽だまりの温もりだけがこれから訪れるささやかな運命の芽吹きを静かに物語っていた。
弱いまま、強くあるということ。癒えない傷をなかったことにはしないこと。痛みを抱えたままその輪郭を自分の手で確かめること。傷跡を隠したい日があっても、それごと自分なのだと、受け入れながら、生きていくこと。
過去は消えない。罪も消えない。それでも人はその先を生きることができるということを互いの存在が、確かに証明していた。
*
数か月後。彼女の保護観察期間は、何事もなく終わりを迎えた。
ある朝、まだ人の少ない街を歩き、自分の足で向かった先で彼女は受付を済ませ静かな面接室へ案内される。向かいに座るのは、加瀬をはじめとした公安上層部の面々だった。そう、ここは——公安委員会の本部である。威圧するような空気はない。けれど向けられる視線だけは静かに鋭く、彼女の言葉ではなく、その奥にある意思を見極めようとしていた。
「公安を志望した理由を聞かせてください」
淡々と問い掛けられて、彼女は膝の上で重ねた指先へと一度だけ視線を落とす。それから小さく息を吸い、ゆっくりと言葉を選んだ。
「償いです」
短い返答。面接室に静寂が落ちる。誰も、口を挟まないまま数秒が過ぎると、加瀬が静かに首を横へ振り、口火を切った。
「そんな綺麗事だけでは、長くは続きません」
責めるような響きではない。経験から導き出された、ひとつの事実を告げる声音だった。彼女はその言葉を受け止めるように目を伏せて、小さく笑う。
「……そう、ですよね。わかっています」
「ヴィランだったあなたが、あえて、こちら側を選んだ理由を聞きたい」
加瀬は、視線を逸らさない。彼女はゆっくりと顔を上げる。今度こそ、迷いはなかった。
「誰かが守ってきたものを今度は私も守りたいと思いました」
その言葉に、面接室はまた静まり返る。元敵とスパイをしていた彼と、今は恋人関係にあるからではない。償いたい、という思いだけでもない。誰かに勧められたからでもない。悪だった過去を抱えたまま、それでも自分の意思で善を選び続けたい。その答えだけが、まっすぐ残った。
その答えに、誰もすぐには口を開かなかった。それ以上、多くを語る必要はなかった。面接室を満たした静かな沈黙だけが、彼女の覚悟を、受け止めていた。自分で選び、自分の足で立つ。その意思だけは、誰の目にも十分伝わっていたから。
過去は変えられない。けれど、その先を、どう歩くかは、自分で選べる。彼女はようやく、その一歩を踏み出したのだった。
そして、数日後——。公安委員会本部、委員長執務室。昼前だというのに、机の上には、書類が山積みになっていた。ホークスはペンを片手に、その山をひとつ崩しては、次へ手を伸ばす。その動きだけは速いがさすがに疲労は隠し切れない。
加瀬はそんな委員長の様子を見下ろしながら、淡々と尋ねた。
「委員長。何日徹夜していますか」
「……三徹ですね」
「そうですか」
そう言いつつも加瀬は労る気配もなく頷くと、一冊のファイルを委員長の座る机へと差し出す。
「新規採用者の資料です」
「あーい」
ホークスは深く考えもせず受け取り、何気なくぱらりと片手間に表紙をめくる。次の瞬間、その動きが、不自然なほど止まった。
「……は?」
執務室に、ひどく間の抜けた声が響いた。彼は採用者の名前一覧を見直す。そして、もう一度、見る。写真と名前を交互に見比べ、それでも信じられず三度目をめくり返した。思わず加瀬を一瞥するも、彼は表情を一切変えない。
「え、ちょ……なんで?」
「本日付で採用です。午後からは、研修も入っています」
「いや、待ってください。聞いてないですって。今朝だって俺、名前さんと普通に電話——」
言いかけたところで彼は、途中で口を閉じた。余計なことを口走ったと気付いたらしい。それを見て見ぬふりをした加瀬は眼鏡を押し上げながら淡々と続けた。
「ご本人から『委員長には当日まで知らせないでください』と、依頼を受けていましたので」
その一言で、ホークスは、すべて腑に落ちた。額へ手を当てそのまま椅子へ深くもたれかかる。それから数秒ほど黙っていたあと、ふっと笑みを漏らした。
「……やられた」
驚かせる役なら慣れている。どちらかといえば驚かせる側だとばかり思っていた。人の裏をかくことも、人よりは少し得意だった。その役目を、まさか、彼女に奪われる日が来るとは、思ってもいなかった。だからこそ、自分がこんなふうに、見事に一本取られたことが情けなくもあり、でもどこか、嬉しかったのだ。
——その日の午後。研修室の扉が静かに開く。新品のスーツに身を包んだ彼女は小さく息を整え一歩ずつ室内へ入っていく。まだ着慣れないジャケットが少しだけ肩を固くしていた。室内にいた職員たちが、一斉に視線を向ける。その奥では、資料に目を通していたホークスがゆっくりと顔を上げた。視線が重なる。彼は椅子から立ち上がると、照れ臭さを隠すように、口元だけを緩めた。
「今日から、よろしくお願いしますね」
その声に彼女は目を丸くしたまま立ち尽くす。ここへ来ることを秘密にしていたのは、自分だ。驚くのは彼のはずだった。それなのにそんな彼が何事もなかったような顔で、出迎えている。その意味がわからず、彼女はしばらく、言葉を失っていた。
「……なん、で?」
戸惑いが、そのまま声になった。彼女の反応を見て、ホークスは肩を小さくすくめる。それでもその口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。「え?なんでって」と、ほんの少しだけ、悪戯がうまくいった子どものような顔になる。
「サプライズ返しです」
「……え?」
「名前さんの研修、俺が責任者になりました」
思いも寄らない返答だった。彼女が自分を驚かせたように彼もまた最後まで何も知らせず、この瞬間を迎えていたらしい。
してやられた。そう思うのに不思議と悔しさはない。彼女は、呆れたように小さく笑った。その笑顔を見たホークスも、どこか満足そうに、目を細めた。
そうして研修が始まった。慣れない書類に目を通し、公安という組織の仕組みを学び、各部署を回りながら仕事の流れを覚えていく。ホークスは委員長として、決して手を抜かなかった。教えるべきことは厳しく教え、判断に迷えば、理由まで丁寧に説明する。その一方で彼女の肩に力が入りすぎていることに気付けば、他の職員には聞こえない声で「そんな固くならんで大丈夫ですよ」と囁き、自然と緊張を解いてしまう。
公私を混同しない。それでも、誰よりも彼女を気に掛けている事だけは隠しきれていなかった。
研修初日も終わりに近づき廊下から人の気配が少しずつ消えていく。窓の外では西日が高層ビルの窓ガラスを赤く染め、柔らかな夕暮れの光が、静かな廊下へ長い影を落としていた。
ホークスは窓枠へ軽く寄り掛かりながら彼女へ視線を向ける。
「……どうして、急に心変わりしたんです?」
穏やかな問いだった。そこに、責める気持ちは微塵もない。ただ、本当に知りたかっただけだ。彼女はすぐには答えず、夕焼けに染まる街並みをしばらく見つめていた。やがて小さく息を吐く。
「悪だった人間が善になるなんて……やっぱり、そんな簡単なことじゃないと思う」
その言葉には過去を否定できない自分と、それでも前へ進みたい自分とが、今も、胸の中で寄り添っているような痛みが滲んでいた。
少しの沈黙を挟み、彼女はもう一度ゆっくりと「……でも」と、口を開いた。夕日に照らされたその横顔は不思議なくらい綺麗で穏やかだった。
「悪だった人間だからこそ、守れる人もいるんだってこと……あるヒーローを見て、思ったから」
その言葉に彼は、何も返さなかった。いや——返せなかった、というほうが近い。公安の命令で悪の中へ潜り込み悪を演じながら善を守り続けてきた男。そして彼女は、悪として、生きた過去を抱えたまま自らの意思で善を選ぼうとしている。
歩いてきた道は正反対だった。けれどその道の途中で抱え続けてきた孤独や痛みは、どこか驚くほど、よく似ていた。まるで鏡の向こうに立つ、もう一人の自分を見ているようだった。
ホークスは細く息を吐き、口元を緩める。それから、穏やかに笑った。
「ねえ、知ってました?」
ホークスは少し照れくさそうに後頭部を掻き、ゆっくりと彼女へ視線を向けた。向日葵色の瞳が柔らかく細まる。
「俺らってさ。最初っから、似た者同士だったんですよ」
その言葉に、彼女は一瞬だけ、目を見開いた。否定も肯定もできず、そのまま彼を見つめる。
——悪と善。立っていた場所は違っても誰かを守るために嘘を抱え自分を責めながら歩いてきたことだけは、驚くほど似ていた。彼女は、小さく息をつき、肩の力を抜くように笑う。
窓の向こうでは西日が少しずつ街並みの輪郭を溶かし始めている。昼間の喧騒を映していた硝子窓は茜色へと染まり、長く伸びた影が廊下をゆっくりと這っていく。その穏やかな夕暮れは新しい日々の始まりを祝福するように、二人の背中へも降り注いでいた。執務室では、職員たちが書類を閉じ、椅子を引く音があちこちから聞こえ始めていた。一日の終わりを告げるように、人の流れが少しずつ、庁舎の外へ向かっていく。その空気の中で二人も机を整え、書類を重ね、それぞれ帰る支度を始めた。誰かに急かされるでもなく、誰かから隠れるでもなく。そんな当たり前の時間が、少しだけ照れくさいほど、幸せだった。
公安ビルを出る職員たちでエレベーターホールは穏やかな賑わいに包まれていた。一日の仕事を終えた職員たちが、それぞれ帰路へつく。誰かが軽く手を振り、誰かが、明日の予定を話しながら笑う。その人の流れに紛れるように二人も並んでエレベーターの前へ立った。やがて到着を告げる音が鳴り、開いた扉の中へ乗り込む。
途中の階で、人が一人、また一人と降りていき一階へ着く頃には、箱の中には二人だけが残っていた。静けさに包まれた空間で、ホークスは隣へ視線を向ける。そして、ごく自然な仕草で片手を差し出した。
「帰りましょ」
彼女はその手を、静かに見つめた。少し前までなら、きっとためらっていた。人目を気にして、自分の立場を気にして、「そんな資格はない」と自分自身へ言い聞かせるように笑って誤魔化していたはずだ。けれど、もう違う。何も言わずその手へ自分の手を重ねる。指先が触れ、ゆっくりと絡まる。その小さな温もりだけで、ホークスは、嬉しそうに目を細めた。
「今度は、堂々とね」
エレベーターの扉が開く。夕焼けが街をやわらかな橙色に染めていた。ビルの壁面モニターには新しい時代を支える若きプロヒーローたちの姿が次々と映し出されている。歓声が流れ人々は足を止め、未来へ向かうその姿を見上げていた。その景色を背に、二人は肩を並べ、人混みの中を歩き出す。
もう隠れる必要はない。誰かの視線から逃げるためでもなく過去を覆い隠すためでもなく。ただ自分たちが選んだ道を、自分たちの歩幅で歩いていけばいい。
「今日は、どっちでご飯食べます?」
「どっちでもいいよ。今日は久しぶりにゆっくりできるんでしょ?」
「正解です。いやぁ、公安の簡易ベッド、ほんと腰にくるんですよ」
「お疲れさま、委員長さん」
その耳慣れた呼び声が空気を揺らしただけで、ホークスの口元からすっと緊張が抜け、柔らかい緩みが広がっていった。
「早く名前さんに秘書になってもらいたか〜」
「まずは、コネに頼らないところから頑張るね」
「……あーあ、ほんとさぁ」
そこまで言ってホークスは、わざとらしく肩を落としてみせる。けれど、その横顔には、笑みが浮かんだままだった。そして繋いだ手を少しだけ握り直し、前を向いたまま呟く。
「そういうとこですよ、俺が好きなんは」
彼女は、一瞬だけ足を止めそうになり、それをごまかすように小さく笑い、繋いだ手を軽く揺らした。
「そんなこと、人前で言う?」
「言いますよ? これからは堂々と、ですね」
悪びれもせず言い切るその横顔に彼女は困ったように苦笑しながら、わずかに肩を寄せた。
夕暮れの街に、二人の影がゆっくりと重なって伸びていく。その歩幅はもうどちらかが追い掛けるものでも追い付こうとするものでもなかった。同じ未来へ向かって歩く者同士の、それだけで、十分な距離だった。
「ねえ、ホークス」
「はい?」
「幸せ?」
不意を突くような問いに、ホークスは少しだけ目を瞬かせ、それから繋いだ手を離さないまま、夕焼けの空をゆっくりと見上げる。街の喧騒も、人々の笑い声も、その瞬間だけは、どこか遠くへ退いていくようだった。
「今までで、一番」
「そっか」
「名前さんは?」
繋いだ手に、ほんの少しだけ力がこもる。指先から伝わる温もりが、その答えを、急かすことはなく、ただ静かに寄り添っていた。
「……うん」
罪は消えない。過去も失われたものも何ひとつなかったことにはならない。
善だけで人は生きられず、悪だけでも未来へは辿り着けない。だからこそ、人は迷い、傷つき、それでも選び続ける。誰かを傷つけた過去があるからこそ、誰かを守る今日を選ぶこともできる。誰かを愛したその日から人は、昨日までとは違う明日を歩き始められる。悪と善の境界線は世界のどこかに、引かれているものではない。きっと、それは、一人ひとりの心の中にある。踏み越えるのも、立ち止まるのも、引き返すのも自分自身の意思だ。
彼女は、その境界線を越えた。彼もまた、善のために悪を演じ続けた人生の果てでその境界線を何度も越えてきた。正反対の場所から歩き始めた二人は、ようやく同じ場所へ辿り着く。
並んで歩くその背中は、もう、ヒーローと元敵ではなかった。罪を知り愛を知りそれでも未来を選び続ける、ただ二人の人間だった。その歩幅も重ねた手も、もう二度と離れることなく、二人は同じ歩幅のまま夕暮れの街を歩いていく。誰かに証明するためではなく、自分たちが選んだ今日という一日を、そのまま明日へ繋いでいくように。
この関係、公安には
内緒でお願いします
(そう言えば公安って、職場恋愛OKなの?)
(さあ?今からOKにします)
(あー、公私混同してるぅー)
(いやいや公私両方です。委員長が許可します)
(職権乱用って言うんじゃない?委員長、失格)
(彼氏としては合格もらえます?)
(それは、勤務態度を見て決めまぁ〜す)
(いやそれ、評価する人逆じゃないです?)
※image song『 no more words/浜崎あゆみ 』
※inspired by『 YES/LiSA 』