12








『──なんでお前がここにいる?』

 "膜"の中でもないのに、彼に刀を向けられたのはその時が初めてだった。

 私は、本来この島にいるべき存在ではなかった。
 船長が長い長い期間、綿密に練り続けた計画。それを船長と離れたくないから、なんて身勝手で台無しにするほど、愚かではないつもりだ。
 ただ、私には私のやるべきことがあるように、彼にも彼の『やるべきこと』があった。いくつもあった。そのうちの、何よりも、一番重要なことが、彼の頭から欠落しているのに気づいてしまった時。たとえ『それ』が彼に対する背反となろうとも、たとえばそのせいで、彼から見限られるようなことになろうとも。絶対に、なんとしても気づかせなければならないと思った。
 彼だけがパンクハザードで下船した後。我らのポーラータング号が海に潜む前に、仲間たちに短く言い残して、必要なものだけを引っ掴んで、船を単身飛び出した。もう一度、彼とここに帰ってくるために。

『忘れ物を、届けに来たんですよ』

 吹きすさぶ雪の中、真っ白な吐息は立ちどころに霧散していく。懐かしいほどに慣れていた、殺人的な冷気の、前後も分からなくなるような白い白い空気の中。私と彼だけが熱を持ち、心臓を打ち鳴らしていた。
 私は、私のこれまでの人生すべてを懸けてでも。たとえこのまま、冷たい刀身を首に当てられたとしても。薄暗い目をする、寝ぼけた彼の胸ぐらを、全身全霊の力を籠めて掴んでやらなければならなかった。









「……かるたはどこだ」

 あたりを二周。ぐるりと見渡しても、人混みの中に己のクルーの姿は見えない。比較的まともに話せそうなロビンに声を掛ければ、彼女は魔女めいた笑みをさらに美しく深めた。

「フフ、探し物が多いのね」
「シーザーはお前らのところの船長(バカ)のせいだがな」
「心配しなくても無事よ。今チョッパーと一緒に子どもの手当てをしているから。終わり次第すぐにこっちに来るわ」
「ガキを……? ……チッ、」

 数ヶ月前、上陸したばかりの頃からずっと、彼女は幽閉された子どもたちを気にしていた。手を出す領分ではないと分かっていながら、簡単には割り切れぬ甘さが彼女らしいといえば彼女らしかったが、それが命取りとならぬよう釘を差しておいたはずだ。
 にも関わらず、切り捨てることができなかったという。海賊には到底向かぬ情。特段子ども好きでもない、誰にでも無差別にやさしいわけでもない人間でありながら、彼女はその理不尽を見過ごせなかった。否、選んだのだろう。かつて、護られなかったたくさんのものを今、護り直すように。それはきっと、己の魂を護ることと限りなく同義だった。

 ──それでも。
 かるたにかるたの目指したいものがあるように、ローにはローの目指すものがあった。それが違(たが)った時、一体どうすれば良かっただろう。
 ローにはもう選択肢がなかった。他のすべて、何もかもを犠牲にしても、叶えたいものがあった。叶えなければならなかった。同時にそれは、かるたにとっても、その身勝手で瓦解させることは、魂の死に等しいものだろうと、どうしたって彼は分かっていた。

「……“麦わら屋の一味”! 早く乗れ! お前の吹き飛ばしたシーザーに逃げられたら作戦はここで失敗だぞ!」

 スモーカーと共にR棟まで引いてきた、規格外に大きなトロッコ。薬の作用で巨人族と見紛うほどに巨大化した子どもたちすら、何人も容易に乗せられるほどの代物だ。しかし麦わらの一味はルフィを筆頭に、頑なに乗り込まずにいた。ルフィは普段明朗な表情をしかめて叫ぶ。

「何言ってんだ! まだ仲間が全員来てねェ! それにカルビだってまだ来てねーだろ!」
「作戦の成功が最優先だ! どのみちその扉はもう閉まる。そうなりゃ待つ意味も無くなる! 一秒も早く出発できるように乗れ!」
「お前、仲間置いてくつもりか!?」
「そうせざるを得ない状況になれば、あるいはな……自分のせいで計画が瓦解するなんざ、アイツだって望んじゃいない!」

 先ほどから、耳をつんざくような警告音が鳴り続けていた。このR棟を、奥から迫る毒ガスから守るために扉が閉まろうとしているのだ。分厚く堅牢な扉はその分動作も遅いが、刻一刻と人の通れる幅が削られていく。そこをくぐり抜けることができなければ、それはつまり、殺戮ガスから逃げられなくなることを意味していた。
 先ほど島一つを包み込むほどの能力を発動した。寿命も削れただろう。体力が回復するまで、もうしばらくはROOMを展開できない。もうほんの少しでも温存できていれば──そんなたらればを、心の中で踏み潰す。

「トラ男」

 出し抜けに低い声で呼ばれた。先ほどまでの騒々しさは鳴りを潜め、別人のように静かな顔だとローは思った。

「それ、ホントに本心か?」

 ルフィの眼差しは、澄んだ水底を覗いているようだった。自分の知らない自分まで、鮮明に映し出されるような心地だった。ローはその目をまっすぐ見ていることができず、わずかに視線をそらした。

「……ああ、そうだ」
「はあ〜〜!? 最っ低ね! 外道! 鬼畜! カルビ、全身ボロボロでも必死で頑張ってたのよ! アンタは見てないから知らないかもしれないけどねェ……!」
「……いいや……よく知ってるよ」

 喚くナミから顔を背け、ローは己の左胸に無意識に手を寄せた。かるたにずっと『護られて』いた心臓は、今もしっかりと脈打っている。
 心臓を奪い返した直後、ローはそれを胸の穴に戻すことをしなかった。否、できなかったのだ。かるたの『護り』が及んでいる状態では、嵌め込むことが叶わなかった。何者も寄せ付けない強固な『護り』は、本来あるべき場所すらも拒んだ。
 それが今、当たり前の形として胸に収まっている。かるたの能力が解かれたということ。つまり、遠方からずっとローを護り続けていた彼女の力が、断絶されたということ。その理由は、何か。考えたくもない想像までした。ローはロビンから現況を聞き、かるたの安否が分かるまでの間ずっと、戦闘時と遜色ないほどに神経を尖らせていたのだ。

「いいからお前、ちょっとはおれの仲間も、自分の仲間も信じてみろよ。あいつらは絶対に間に合う! 間に合わせる! ガスなんかにゃ負けねェ!」
「……バカは楽観的で困る」

 ローは合理的な現実主義者だった。己の心を勘定に入れずに切り捨てていけるような男だった。
 ──「絶対」などないのだと、麦わら帽子の下で無敵に笑う彼が、分からないはずがないのだ。
 マリンフォードの件は、未だにローの記憶の中でも色濃く居座っている。それでもルフィは「絶対」と豪語する。かるたとの付き合いは自分のほうがずっと長く、ルフィが彼女のことを分かる道理などないというのに。ローが目的のために、何もかもを捨てる覚悟で固めた堅強な心を、いとも容易く傾けて見せる。

 ふいに遠くから、わずかな物音がこだました。それは次第に大きくなり、地を小刻みに揺らし、その圧倒的な数を感じさせる。
 大嵐の中の航海のような、滅茶苦茶で先の見えなかった航路に、光が差す。

「間に合ったァ!!」

 閉じかかったゲートの隙間を、彼らの残りの仲間たちが勢いよく潜り抜ける。その中にあった、見飽きるほどに長い刻を共に生きてきた女の顔を、ローはしかと見つめていた。







「……はい、おしまい。痛くなかったでしょう」

 かるたが告げれば、大きな瞳がきらきらと輝く。されるがままに、体を文字通りバラバラにされていた子どもたちは、綺麗に癒着した自分たちの体を眺めて、それからどっと湧き出した。

「おもしろかったー!」
「ヘンだったね!」
「こわかったー! なに今のおもしれー!」
「おれこんなんはじめて! ねーフカフカのお兄ちゃんもっかいバラバラやってー!」
「……」

 最初はローの眼光に萎縮していた子どもたちも、すっかり慣れたのか、いまやローの長い脚に無邪気にしがみついている。ほとほと困り果てたように黙り込むローを、かるたは隣でうっすら楽しげに見つめていた。
 トロッコで研究所を脱出した一行は、予期せぬ敵──ドンキホーテ・ドフラミンゴの配下であるベビー5とバッファローの襲撃を食らったものの、無事彼らを下し、ルフィによって外に殴り飛ばされていたシーザーを捕らえることに成功した。
 体力が回復し、能力の制約も解けていたローは、敵から奪ったタンカー内の一室を使って、件の子どもたちを治療していた。長らく薬漬けにされていた体を、一瞬で根本から治すことはできない。だがローの能力は、体を生きたまま切り刻み、現存する医療の限界を超えた治療を痛みなく施すことができた。

「ねえねえわたしももういっかいー!」
「やらねェよ。じゃあな」
「えー! まってよお兄ちゃん!」

 ついてこようとする少女の頭を押さえる手は、そう乱暴なものではなく、撫でつけるようでもあった。その顔は帽子で翳って窺えないが、かるたには普段よりさらに無口に思えた。
 お兄ちゃんと、まだ成長途中のあどけない幼子にそう呼ばれて。思い出しているのだろうか、家族のことを。

「ねー、白いお姉ちゃんも行っちゃうのー?」
「……ええ、できる処置は終わりました。これ以上はもう、我々の領分ではないので」
「りょーぶんってなにー?」
「さよなら。ごはんとおやつをたくさん食べるんですよ」
「うん! またあとでねー!」

 無垢な笑みで手を振る子どもらは、興味が逸れたのか、子どもたちだけで輪を作って和気藹々としている。中心には、体を張って彼らを守った少女モチャがいた。今はまだ眠っているが、じきに目を覚ますだろうと、言葉少ななローに代わってかるたから伝えていた。
 子どもたちに背を向け、ローとかるたは部屋を後にする。先ほど子どもたちの治療を行うと、これまたローに代わって伝えておいたチョッパーが、足早に部屋へ駆けていった。中から楽しげな声が響いてくるのを聞き届け、ローとかるたはひとけのない甲板の端に身を寄せた。
 ──ようやく終わった。立て続けに起こる火急の事態を乗り越え、できる限りの薬の「後始末」も終え、ようやく二人には、二人だけで落ち着く時間がもたらされた。
 雪降る甲板の中心では、フランキーを筆頭にしてタンカーの修理が行われていた。トン、カンと釘を打つような音が鳴り続け、彼らの会話を外界から切り離す。

「……また性懲りもなく無茶をして」

 白い息を吐いて、先に口火を切ったのはかるただった。心臓を敵方に握られ、なおも大暴れしたのは想像に難くない。その上、先刻の戦いの中で、かるたは自分の身をライトブルーの膜が一瞬通過するのを見逃さなかった。恐らく、このパンクハザードを丸ごとローの能力の支配下にしたのだろう。
 彼の能力は、過度な使い方をするとその寿命まで削るのだと、かつて聞かされていた。彼から共有された作戦の中に、その無茶な手段が含まれていなかったのは、かるたに止められることが読めていたからに違いなかった。

「そりゃお前だろ」

 小さく返したローを見ずに、かるたは自身の頭に巻かれた包帯にそっと触れる。
 過酷な豪雪の中、地の利がある雪女モネと戦い、さらには比べものにならないほど格上のヴェルゴに瀕死に追い込まれた。そんな中でローの心臓を護るために「種」をまき、気絶してもなお全ての力を以て持続させた。その状態で、その後も子どもを護るために奔走し、かるたの体は常に怪我を負ったまま酷使され続けていた。
 チョッパーの応急処置や、再会してからのローの処置によってようやく安定はしたが、彼女はトロッコで研究所外へ脱出してもしばらくは、その場から立ち上がることすらできなかった。実際、チョッパーとともにモチャの治療を終えた彼女を、R棟まで抱きかかえて運んだのもまた、居合わせた海兵の一人だった。

「そりゃあ、船長が無茶するからですよ」
「堂々巡りだな。第一、おれに安心して無茶しろと言ったのはどこのどいつだ」
「そんな昔のことは忘れました」
「覚えてんじゃねェか」

 軽口を叩けるほどにすっかり回復したかるたは、少しだけ面白くなってきてフ、フ、と笑い声を漏らす。それがどんどん小さく、詰まったような音になった頃には、彼女はタンカーのへりに両手をついて完全に俯いていた。髪が横顔を覆い、その表情を隠す。

「……無事で、よかった」

 喉から出たのは、酷く掠れた、ほとんど消えかけの音だった。ローも「……ああ、」と小さく絞り出す。それは肯定であり、同時にかるたにも同じ言葉を返したのだと、彼女にはわかった。
 会話が途切れ、間を修理の音が繋ぐ。しばらくして、次に口火を切ったのはローだった。

「……おれは……一度お前を見捨てることを考えた」

 それは恐らく、研究所を脱出した時の話だろう。散々釘を差されてなお、かるたが取った勝手な行動が、ローの作戦の邪魔になることを考えなかったわけではない。それでもかるたはあの時、モチャを助けることを選んだ。

「そうしなかった。だが、選択肢にあった。この先も、どうなるか分からない。おれはおれが、どうするか分からない」
「……」
「今のうちだ」
「……」
「今のうちだぞ……」

 何が、だなんて。言われずとも分かる。今さら、そんなことをするものか。随分と見くびられたものだ。

「……馬鹿なことを」
「あ?」
「あなたは自分で思っているほど、冷酷無比にはなり切れてませんよ」
「……、」
「どうせあなたに、私を本当に置いていくような度胸なんてなかった。口では何と言おうと、私が来るまで、待っていた。間に合わないなら、血反吐を吐いてでも意地で能力を行使して、私を助けたんでしょう。あなたはそういう人です」

 ローの次なる目的地に、着いてくるか否か。よもや、その選択肢がかるたにあると思われていることすら、かるたにとっては心外だった。

「その時が来なかったから、自分のことが分かってないだけ。いつか本当にその時が来たら、分かりますよ。これはそう信じてるんじゃなくて、知っているんです。だから安心してください。あなたはあなたの心のままにすればいいんですよ」
「……何が、安心だ」
「フフ……」

 とうとう上手く言い返せなくなったローに、かるたは目を伏せて静かに笑う。それから、不格好に、気難しそうにしかめられた横顔がたまらなく愛おしくなって、かるたはその頬をつついてやろうと指先を伸ばす──

「おぬし!! そこの女!!」

 突如張り叫ぶように飛んできた声に、二人は身を固くした。次いで聞こえたのは、軽い木が木を叩くような軽快な音。かるたはそれにどこか聞き覚えがある気がしたが、何か思い出す前に振り返って、息を呑んだ。

「──!!」

 被服の特徴的な左右の合わせ。独特な形を保つ、まげ頭。腰の佩刀。一つ一つに断定要素はなくとも、いくつも重なることで生まれた確信。

 ──何故、こんなところにいる。

 かるたは咄嗟に帽子を深く被り直そうとして、その頭に何も乗っていなかったことに気がつく。巻かれた包帯だけでは何も隠せず、目元を覆うサングラスも戦闘中に壊れて失っていたことを、今更ながら思い出した。

「研究所で見たおぬしの"かの術"……そして"その顔"……!」

 ──見られた。
 すっかり油断していた。「それどころではない」とも言える事態が立て続けに起こり、そのことに構う余裕もなかった。覆水は盆に返らない。他人の記憶を消すような特殊能力だって持ち合わせていない。ならばできることは一つ。

「やはりおぬし、」
「し」

 唐突に距離を詰めたかるたは、見上げる程に高い男の口元に細い指先を添え、短く吐息を漏らした。揺れた髪がようやくその背に降りた頃、彼女は動揺する彼を見つめて声を潜める。

「"こんなところ"にいるのなら、貴方にも隠しておきたいことがあるんでしょう」
「……!」
「ならお互い様です。少なくとも、今はまだ」

 静かに諭すように囁くかるたに、男は考えを幾らか巡らせているようだったが、寸刻して「……相分かった」と目を伏せた。

「私達は互いに何一つ知り得ません。相手が自ずから開示する以上のことは、何も」
「……全くその通りでござる。拙者、名を錦えもんと申す。向こうにおわす……いる童は息子のモモの助。おぬし、名は何と申す」
「かるたです」
「かるた……そうか、かるた殿か……よい名だ」
「……それは、初めて言われました」

 変な名前だ、不思議な響きだと言われることの多かった名だ。錦えもんと名乗る男は薄く笑んでいたが、そこには何かがゆらゆらと揺蕩うような風合いも混ざっていた。

「おい」

 突然視界が暗くなる。隙間から困惑するような錦えもんの顔が見えた。頭上から降ってきたのはローの低い声で、真後ろから彼の広い手のひらで、顔を掴むように隠されているのだと分かった。外気は冷たいが、彼の手は体温が籠っていた。

「うちのクルーに粉をかけるのはやめてもらおうか、サムライ」
「……いやはや、これは失敬」

 やりとりを見守っていたのか、遠巻きにしていたのか定かではないが、ローは威嚇するように錦えもんに言い放つ。錦えもんもそれ以上は食い下がらず、一歩後ろに退いた。かこん、と下駄の鳴る音がして、先ほど感じた聞き覚えはそれだと、かるたはようやく気がついた。

「船長……わっ、」

 ローの手が離されたと思えば、今度は頭に軽い衝撃。手を伸ばした先にあるふわふわの表面は、雪や戦闘での汚れのためか、所々手触りが悪かった。

「被っておけ。今更だがな」

 被せられた彼の帽子は、かるたには少し大きくて前が見にくかった。片手でつばを押し上げると、視界に光が入り込む。ローは軽くなった黒い短髪を雪風に曝して、かるたを静かに見下ろしていた。

「……船長、知ってましたね、『侍』がいること……」
「初手でバラバラに切り刻んだ。もう会うこともないと思っていたんだが……そういえば、麦わら屋の一味がサムライをくっつけると息巻いてたからな」
「はあ……」

 仕方がない。敵も味方も一挙に集結したこの状況や、麦わらとの同盟を考えても、いずれかのタイミングで顔を合わせる運命だったのだ。牽制はしたし、さほど大きな問題にはならないだろう。

「追っ手が来る前に、とっとと島を出たほうがいいな」
「できますかねえ。麦わら屋殿たち、なんかずっとワイワイ盛り上がってますよ」
「……なんとかする」
「フフフ、歯切れ悪い」

 もはや麦わらの一味が誰にも制御できないことは、ローもかるたも分かっていた。彼らのイレギュラーな行動で、ローの当初の作戦から大きく逸れかけた場面も何度もあったが、それでもなんとか想定する結果に持ち込めたのは、同じく麦わらの一味の規格外さによるところが大きいだろう。
 彼らの意図せずして、外れたラインから何度でも押し戻して軌道に乗せ直す。要するに彼らは「持っている」のだろうと、かるたは漠然と感じていた。
 ハートの海賊団と、麦わら海賊団。予定外のこの同盟が、吉と出るか凶と出るか。目まぐるしく変化が続く現況の中、答えを知るものはない。

「──行くぞ、かるた」
「アイアイキャプテン」

 振り注ぐ雪の中、乾いた唇を動かして、かるたは彼の少し大きな帽子を目深に被り直した。


Raise your heart
Episode of Punk Hazard (fin)



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