01
(コムイ視点)
黒の教団本部。それはとてもじゃないが正義の味方の本拠地とは言い難いなりをしているが、ボクらにとっては大事なホームだ。
そして今日は新たにエクソシストが一人増える。これは非常に喜ばしいことなんだけど、問題が一つも二つもおまけに三つもくっついてくる。
一つ、新しくやってくる子は中央庁出身。二つ、その子は元鴉。三つ、その子はあろうことかボクの愛するリナリーにトラウマを植えつけた張本人、マルコム・C・ルベリエの娘だということ。
「室長、今日来る新しいエクソシストって…」
「うん…。まぁ、まずは見てみないことには分かんないよね」
リーバーくんがこっそり耳打ちしてくるが、ボクも立場上あまり私情を表に出してはいけないと思い(よく言うよ)平静を装う。
その時、モニターに門の前が映し出された。そこには見覚えの無い女の子が立っていて。
「…あれ?あの子、どうしたんスかね」
「もしかして…」
モニターに映るほとんど無表情に近い表情でぼんやりと門の前に立つ女の子。もしかしてこの子、中央庁の…?だとしたらなんで、水路から来てないの?でも、こっちとしては都合がいい。
ボクはマイクを手に取った。
「やぁ。キミが新しいエクソシストのハナコくんかい?」
ボクがそう聞くと、映像を映しているゴーレムに視線を向けたその子。その子はこてんと首を横たえてこちらを見ている。
"はい"
「そっか。一応門番の身体検査受けてくれるかい?」
何か変なものを持ち込まれても困るからね。内心そう呟きながらモニターを見る。
ぐぉっと顔をあらわにした門番。しかしその子はそれを見ても表情をまったく変えることなく、また反対側に首を傾げた。
"レントゲン検査!変なものを所持していないか判別!!"
門番がじろじろと少女を上から下までぐりぐりと見回す。
"……セーフ…かな…?"
「は?」
門番の言葉に、ボクだけでなくモニターを見ていた科学班全員が声を上げた。
"いや…だってよぅ。変なものは持ってないけど…"
「けど?」
"…変な感じがする。うーん。こいつアウトォオオオ!!"
門番がそうシャウトする。あれ、アウトにしちゃった?それよりも、変な感じって…?
「何なんでしょうね、門番の言う変な感じって」
「んー…。彼女ああ見えて元鴉だからね。何か仕掛けてでもいるのかも」
顎に指を当て、モニターを見る。するとそこに新たに登場したのは、ラビだった。
「ラビか、丁度いい。その子に怪しい点があるかちょっと確認してもらえるかい?」
"りょーかいっと"
するとモニターの向こうでラビが少女の前に降り立った。
"はじめまして!オレはラビっていうの。よろしくな、新入り"
"…はじめまして。わたしはハナコ"
"ハナコって、東洋の島国ら辺の名前だよな?ハナコはアジアンなのか?"
"ううん。おかあさまが日本人だったの。おとうさまはブリティッシュよ"
"ハーフか!どうりで目鼻立ちがきれーだなって思ったんだ"
"そう"
少女の表情は相変わらず変わることなく、抑揚の無い話し方で淡々と会話を進める。まさに"中央庁らしい"子だ。
"ところでさっき門番の検査に引っ掛かってたけど、何か思い当たることとかない?"
"ない"
"変な感じがするって言われてたけど、どういう事かわかる?"
"わかりません。しかしわたしは鴉として訓練を受けてきたため、ひとにこころをよませないところがあるので。おそらくそれが引っ掛かったのかと"
"そっか。おーいコムイー。多分この子大丈夫さー"
暢気なラビの声に、ボクは肩を竦める。
「うん、じゃあ良いかな。門番、門開けてー」
"か、開門ー…"
門がゴゴゴと重い音を立てて開いていく。それからラビに案内させ、少女をボクの元へと連れてきてもらった。