4章

※ここの章のみ、ミクリ目線になります。

「ミクリは何か知っているのかい?」
「ナマエのことを……ってことかな。そうであれば知っているよ。でも、私の口からは言えない」
「そうか……」

 1週間ぶりに私のもとに来たダイゴは、彼女から避けられているようで困っているようだ。心当たりはあるけど、理由がわかっていないために悩んでいるらしい。連絡もなしに来ることは日常茶飯事だけど、私の家に来た時にはすでに御曹司らしからぬ顔をしていた。もしかしてその顔でトクサネから飛んできたのかい?もう少し自分の立場を理解してくれ……と言いたいところだが、そんな余裕がないみたいだ。常に余裕たっぷりなダイゴばかりを見ているから、君もこんなに余裕なくなることあるんだね。
 リビングにあるダイニングテーブルへ向き合って腰を下ろす。落ち着けるように彼にはハーブティーを出すことも忘れずに。

「そこまでわかっているなら、あと一歩ってところかな」
「そのあと一歩が難しいんだよ……」

 重たいため息を吐きつつ眉間にシワを寄せるダイゴを見て、彼女が最近お気に入りの紅茶を口に運ぶ。いつになったらその感情を自覚するのだろうか。彼女に対する想いを自覚していない分、厄介だ。そもそもこれだけ彼女に執着して特別扱いしているのに何故この男は自分の感情に気づかないのか。石に愛おしいとか思うのならば早くこっちにも思ってくれ。そういった感情には鈍すぎる。

「カロス地方から来てくれた取引相手の女性とデボンの正面玄関から出てきたところをナマエが見ていたんだ」
「……それで?」
「とても悲しそうな……いや、涙を我慢していたように見えた。その後、おもむろにモンスターボールからボーマンダを出し彼女は飛び去った」

 程よく相槌を打ちながら、彼が話していることと彼女が話していたことを突き合わせる。彼女の勘違いがこれを引き起こしたんだな……と、この時点でわかる。一呼吸して、再び口を開こうとしているダイゴと向き合う。

「これが原因なのはわかっている。でも、根本的な理由がわからない。だって、ボクと一緒にいたのは……」
「取引相手の女性だから?」

 ああ、やっぱり。ダイゴに縁談の話とか来ているのを聞いていないからそうだと思った。私の言葉に驚いていたけれど、ゆっくりハーブティーを飲み重たいため息を吐き出す。

「……そうなんだよ。もしかして勘違いをしたのか……?」
「もし、君と一緒にいた女性がどこかのご令嬢に見えたとしたら……」
「……ボクはうぬぼれてもいいのか?」

 そう言いながらほぼ確信に近い答えがもう出ていて、この男は……。全く世話のかかる2人だよ。でも、ようやく私が望む形になりそうだ。

「答え合わせをするかい?」
「不本意だけどね」

 不本意って顔しているダイゴに思わず笑ってしまう。こんなにも必死になっている時点で、もうわかりきっていることだろう。それなのにも関わらず彼は私と答え合わせをしようとしている。彼女のことが好きって早く自覚させてあげないとね。

「私もだいぶお人好しだな……」
「それはボクのため……というより、ナマエの為だろう?ミクリ、本当に好きだね……」
「ルチアと歳が近いってこともあるし、それ以上に放っておけないんだ。ふわふわしてて不安定な彼女を」

 そう彼女のことを放っておけないのだ。触れると崩れてしまいそうに不安定、それでいて磨けば磨くほど美しく綺麗になっていく彼女を。だから、どんなに忙しくても彼女が私のもとに来れば時間を作る。

「放っておけない……か」
「何より、彼女の幸せを私は望んでいるのさ」

 ここまで私がフォローしているんだ、ダイゴもそろそろ腹をくくらないと。そうじゃないと、彼女がいつまでも君に恋したまま前に進むことができないんだ。君が彼女を幸せにすることができないなら、いっそのこと私が……と思っているくらいには行為を抱いているんだよダイゴ。まあ、これは絶対に言わないけどね。

「先日の件で心を落ち着けないと君と会っても失礼な態度をとってしまうと思い、君を避けているのさ」
「……自分のためでもあり、ボクのためでもあるのか」
「さあ?私が言えることはここまでだ。あとはダイゴ、君次第さ。検討を祈るよ」

 「ミクリありがとう」と言葉をこぼすと彼は立ち上がり玄関へ向かった。それに続いて私も外に出るとダイゴはエアームドを出して跨り、「良い結果報告するから待っててよ」と言い、飛び立った。いつもよりも速いスピードで飛んでいるようであっという間にダイゴが小さくなっていく。次来る時には2人で来てくれるのといいなー……と思いつつ、建物内に戻る。
 まったく……世話の焼ける2人だよ。でも、これですれ違いが無事解決するだろう。そう思うと私もアドバイスした甲斐があったというものだ。

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