ポラリスを戴く
中学2年生響河×大学3年生村正
「俺、村正のことが好きなんだ」
突然吐き出された響河の言葉に村正は目を丸くする。村正は何も答えず、手に持ったアイスをしゃりしゃりと咀嚼する音だけが聞こえて、響河は床に視線を落とした。何度も遊びに来た見慣れた村正の部屋のはずが、何処か落ち着かない気がして響河は今すぐにでも帰りたい気持ちになる。溶けかかったアイスを全部食べた村正は棒をゴミ箱に投げ入れた。喧しいほど鳴いていた蝉の声は最早響河の耳には届かず、からん、と棒がゴミ箱に当たる音だけを拾う。
「私も響河が好きだ」
村正の返答に響河は顔を勢いよく上げた。柔らかく微笑む村正と視線が合って、心臓がどきりと跳ねる。髪をくしゃくしゃと掻き混ぜるように撫でられ、子供扱いに唇を噛んだ。──そうじゃないのに。響河は村正の胸倉を掴んで顔を突き合わせた。
「……子供扱いするなよ」
「そんなに震えているのにか?」
胸倉を掴んでいる手がかたかたと震えているのを揶揄されて、響河の頬が赤く染まる。村正は小さく笑うと響河の額にキスを落とした。柔らかな唇の感触に響河の肩が微かに揺れる。
「村正……っ」
「私も好きだと言っただろう」
「じゃあ……!」
言い募ろうとする響河の唇に指を当てて村正は言葉を遮った。
「これから先、響河は中学高校と色んな人に出会うことになる。誰かに告白されたり、もしかしたら好きな子が出来たりするかもしれない。それはいいことだし、むしろそうなって欲しいと思う。……何故か分かるか?」
村正の質問に響河は首を横に振った。ぶんぶんと元気良く首を振る響河に困ったような笑みを浮かべる。
「響河に、イイ男になって欲しいからだ」
「今でも俺はいい男だろ……!」
強がってそう言い張る響河に村正は思わず吹き出す。
「そうだな。このまま私だけを見て、私だけでいっぱいな響河も可愛くて捨てがたい。でも、それでは響河がつまらない人間になってしまう。色んな出会いを経験して、恋をして、それでも私のことが好きだとそう思うまで、私は響河のことを待っている」
「……分かった」
不服そうな表情を浮かべつつ頷く響河に村正はほっとして肩の力を抜いた。身体を離そうとする村正の腕を響河はぐっと掴む。思いのほか強いその力に村正は息を呑んだ。
「約束しろよ。俺が高校卒業した後、それでも村正のことが好きだったら、その時は」
「ああ、勿論約束しよう。その時はちゃんと付き合うと」
村正の言葉に胸を撫で下ろした響河は満足げな笑みを滲ませると小指を立てた手を突き出す。幼けない仕草に村正は目を瞬かせた。まだまだ子供だな、と心の中で漏らすと響河の手を包み込む。怪訝な視線を向ける響河に村正は顔を寄せた。
「指切りよりも、」
突然距離を詰められ息を呑む響河の唇にそっと自分の唇を触れ合わせる。
「誓いのキスの方がいいと思わないか?」
そう言って村正は目を細めて見せた。響河は口付けを落とされた唇に手の甲を当てて目を白黒させている。林檎のように赤く染まった頬にもキスをすると村正は耳許で口を開いた。
「……今のが私のはじめてだぞ」
「う、そだ……!」
響河はかぶりを振って村正の言葉を否定する。信じようとしない響河に胸がちくりと痛んだ。
「どうして? 私の全ては響河に取っておいてあるのに」
「俺に……?」
首を傾げる響河の手を取って、その指に自分の指を絡ませる。
「ずっと響河が好きだったから」
「っ、村正……!」
堪えきれなくなった響河は村正の唇に齧り付いた。押し当てるだけのキスを何度かされ、村正は待ち焦がれたキスに目蓋を閉じる。浅ましい期待を抱いて村正は薄く唇を開いた。途端に咥内に侵入する響河の舌に村正は肩を震わせる。まさか舌を入れてくるとは、とぎこちない動きで咥内を這う舌に自分のそれを絡ませながら村正は脳内でひとりごちた。知らない内に大人になっていく響河に喜びと寂しさが綯い交ぜになった感情を抱いて村正は感傷に浸る。
「ん、ン……、は、ぁ……」
「っ、むら、まさ……っ」
息継ぎの合間に希うように名前を呼ばれ、村正の胸は愛おしさで締め付けられるようだった。二人分の唾液を零さないように飲み下して、村正は目蓋を開ける。目を閉じ夢中でキスをしている響河の整った顔立ちを眺めながら、響河の太腿に手を伸ばした。ハーフパンツ越しに兆し始めた陰茎を掴まれ、響河は驚きで目を見開く。真っ直ぐ自分を見ていた薄水色の瞳と視線が合って、身体を跳ねさせた。村正の肩を押して顔を離すと響河は腕を掴む。
「村正……! 待っ……!」
「このままでは帰れないんじゃないか」
「そ、うだけど……!」
言葉を詰まらせる響河に村正は口の端を吊り上げると隙を突いてハーフパンツの中に手を差し入れた。
「じゃあ何も気にするな」
村正は鼠蹊部に指を這わせてトランクスのゴムの下に指を潜らせる。カウパーを滲ませ勃ち上がった陰茎に指を絡ませた。ただそれだけで響河は顔を赤く染め、息を震わせる。村正は再び口付けをしながら、絡ませた指を上下に動かした。滲んだカウパーがくちゅ、といやらしい音を立てて、響河の理性を溶かしていく。
「ん、ぅ…、む、らまさ、ぁ……」
「ふ……、こうが……」
熱に浮かされたような響河の声にじんと身体が熱を持つようだった。その熱を気取られないように誤魔化して、絡めた舌にしゃぶりつく。尖らせた舌先で舌の裏側をくすぐると経験したことのない感覚に響河は思わず声が漏れた。
「ぅあ……、ん……っ」
鼻に抜ける声を聞きながら村正は目を細める。握り込んだ陰茎はすっかり固くなって、次々溢れ出るカウパーが村正の指を濡らした。滑りが良くなったそこを扱くとぐちゅぐちゅと卑猥な音が響く。それに加え、二人の唾液が混ざり合う音が聴覚から響河を責め立てた。手の中でびくびくと跳ね回る陰茎に村正は絶頂が近いことを感じ取る。竿全体を扱いていた動きを止め、親指と人差し指で作った輪でカリを重点的に弄んだ。カリが輪に引っかかる感覚に響河の腰が戦慄く。竿を擦るだけの単純な自慰しか知らない響河に村正の手から与えられる快楽は強過ぎるものだった。
「むらまさ、ぁ…っ、も、いい……! もう、出る…か、ら……っ!」
「そうか、いっぱい出すといい」
村正はそう言うと亀頭全体を掌で包み込んで撫で回す。敏感なそこを容赦なく攻められ、響河はあっという間に射精まで導かれた。
「あ、ああ……っ! は、ァ……!」
村正の掌に響河は勢いよく射精する。何回かに分けてびゅくびゅくと精液を吐き出すと響河は詰めていた息を吐き出した。余韻からぶるりと身体を震わせ、村正の方に視線を向ける。村正はズボンから手を抜くと掌にべったりと出された精液をどこかうっとりした様子で眺めている。
「いっぱい出たな、響河……」
「……ぁ、ごめん! 汚いよな! 今ティッシュ取るから! 拭いて!」
響河は慌てて背後にあるティッシュボックスに手を伸ばした。それを手に取り差し出そうと正面を向いた瞬間、掌に付いた精液を舐め取っている村正を視界に捉える。思いもよらない光景に響河は思わずティッシュボックスを取り落した。薄い唇から覗く赤い舌が指に絡んで精液を舐め取る。煽情的な表情でこちらを見やる村正に射抜かれ、響河は唾を飲み込んだ。
「拭いて捨ててしまうなんて、もったいない」
唇の端を吊り上げてそう言う村正に響河は顔を紅潮させる。響河は立ち上がると足音高く村正の部屋から走って出て行く。階段を駆け下り、お邪魔しました!と叫ぶ響河の声に村正は小さく笑ったのだった。
* * *
その日の夜、シャワーを浴びて部屋に戻ってきた村正は閉めていたカーテンを開けて外を見る。隣家のちょうど真正面に響河の部屋が充てがわれているため、二人は窓からよく話をしていた。今日は部屋の電気は付いているものの、カーテンは閉めっぱなしで響河の姿は確認出来ない。まぁ、昼間あんなことしたばかりだし、と苦笑して村正はカーテンを閉め直した。手元のリモコンで部屋の明かりを消すとハンドクリームを引き出しから取り出す。ベッドに寝そべり、寝間着がわりのハーフパンツをずり下ろした。ハンドクリームを指にまとわせると後孔に手を伸ばす。指に付いたハンドクリームを入り口に馴染ませるとゆっくり指を入れていった。
「ふ…ぁ、ぁ……っ」
内壁を擦る指の感覚に村正はか細く声を上げる。とは言え一人暮らしのアパートとは違ってここは実家だ、とあまり大きな声を出さないように村正はタオルケットを噛んだ。何度も繰り返し指で触っていた後孔は簡単に奥まで指を受け入れる。奥まで挿入した指を抜き差ししてクリームを塗り広げると指の数を増やした。ぐちゅ、と空気が抜ける音が村正の耳に届いて、昼間の記憶がリフレインする。
「こ、うが……っ」
ずっと昔から響河が好きだった。その響河が好きだと告白してきた時、喜びでどうにかなってしまいそうだった。でもまた私が響河を歪めてしまうかもしれない。だから一度突き放した。それでも響河は私のことを求めてくれるだろうか?
そんなことを考えながら村正は指を抽送させた。前立腺を指の腹で押すと快感が閃いて、内壁が指を引き絞る。上がりそうになった嬌声を飲み込んで、前立腺を抉りながら出来る限り奥まで挿入した。
「ん…っ、ふ……、う……!」
びりびりと痺れるような快感が背中を走る。勃ち上がり涎を零す陰茎を握ると昼間響河にした手淫と同じ動きで手を動かした。譫言のように自分の名前を呼び、自分の手の中で震える響河。その温度を、声を思い出しながら村正は自慰に耽る。
「こう、が……っ、すき、すき……!」
縋るように囁いて村正は前立腺をぐりぐりと押し潰すと目蓋の裏に光が弾けた。息が詰まって、身体が自分のものではないように痙攣する。掌に生暖かい感覚がして、自分が達したことを知った。乱れた呼吸を整えるとティッシュで汚れを拭う。服を直してタオルケットを被り直した。
「響河も早く、大きくなればいいのに」
村正の呟きは誰の耳にも届かず、消えていったのだった。
3番目に書いたやつ
村正はもう既に前世の記憶取り戻してて、自分が響河を歪めてしまったことが深層意識下でトラウマになっているから響河をちょっと突き放しちゃう的な
あと普通の人間関係を築いて欲しいっていう親心もありつつ
これからずっとお触り出来ないからディープキスと手コキを餞にする……
村正が性的な意味でリードを握れたのはこの時だけです
勿論その夜は響河も昼間のエロい村正を思い出してひとりでしてる^^