モーニングスターラヴァーズ
部屋に差し込む朗らかな日差しと鳥の囀りで眠っていた意識が浮上し、響河は目蓋を瞬かせる。布団から腕を出し、枕元に置いてあるはずのスマートフォンを探した。指先に当たった充電コードを手繰り寄せ、画面を点ける。ロック画面に表示された時刻は日曜の九時を迎える頃だった。隣にいる村正は穏やかな寝息を立てている。折角の休みに早く起き過ぎたな、と響河は手に持ったスマホを放って布団を被り直した。二度寝しようと目蓋を閉じるが、何だか勿体ないような気がして響河は目を開ける。とはいえ、起きたところで布団から出るつもりはなく、手持無沙汰な響河は目の前で眠りこける村正に視線を向けた。頬に掛かった髪を除けてやり、そのままなだらかな稜線を描く頬骨に指を滑らせる。顎の先まで辿ると、柔らかく結ばれた唇を親指でなぞった。唇の柔らかさを確かめるようにふにふにと指で突いていると突然村正の口が開き、油断していた響河は思いっきり親指を噛まれる。
「い゛っ!?」
響河は驚きと痛みで形容しがたい声を上げた。慌てて指を引っ込めると村正が目蓋を開ける。
「人が寝ているのを邪魔するからだ」
「……ごめん」
ふん、と鼻を慣らして、村正は口を開いた。
「……今何時だ?」
「大体九時」
響河の返答に村正はそうか、とだけ返すと身体を伸ばす。起きてベッドを出ようとする村正の腕を響河は掴んで、村正を腕の中に閉じ込めた。
「響河、起きられないんだが」
「んー……」
村正は身体に巻き付いた腕を軽く叩いて放すよう催促する。しかし、響河は不明瞭な声を発するだけで腕の力を緩めるどころか、ますます強く村正を抱き締めた。子供じみた響河の行動に村正は仕方ないなと身体の力を抜いて身を委ねる。背中に伝わる体温と響河の鼓動が心地よく、村正はおさまっていたはずの眠気を思い出した。このまま二度寝するべく、うつらうつらしていると突然うなじを噛まれ、肩が跳ねる。
「っ、響河……!」
「……昨日の続き、シないか?」
耳許でそう囁かれ、村正の背中にぞくぞくとした痺れが走った。耳に歯を立てられ、軟骨を齧られる。
「いいだろ? 村正」
耳朶の縁を舐られ、村正は熱の籠った息を吐き出すと小さく頷いた。肩越しに村正は屈託のない嬉しそうな笑顔を浮かべる響河を見上げる。現金なやつ、とは思ったものの、それはおくびにも出さずに村正は響河の腕の中で身体を反転させてキスを強請った。響河は触れるだけのキスをひとつ落とすと村正を抱き寄せ、仰向けになる。響河を跨ぐ形になった村正は体重が掛からないようにベッドに膝をついて響河の胸板に身体を乗せた。二人はどちらともなく顔を寄せると互いの唇を求め合う。唇をなぞり、村正の口内に舌を侵入させると待っていたと言うように村正の舌が絡みついた。
「ん…、ぅ……」
村正の甘やかな声を聞きながら響河は胸元に手を伸ばすとその意図に気が付いた村正は身体を浮かせる。響河は空いたスペースに手を差し入れるとパジャマのボタンをひとつずつ外していった。ボタンを全て外すとパジャマを肌蹴させ、肌に直接指で触れる。肉付きの薄い胸板に浮いたあばら骨を形を確かめるようになぞった。こそばゆさから不満げな声を漏らす村正の上顎を響河は宥めるように舌で擽る。
「ん、ぁ……、は……」
途端に蕩けた響きに代わる村正の声を飲み込んで、響河は親指で乳首を転がした。ささやかなそれをぐにぐにと捏ねられ、指の動きに合わせて走る快感に村正は肩を震わせる。それでもなお響河の唇に吸い付いていた村正だったが、齎される快感にキスをしている余裕を奪われてしまった。顔を離すと響河の頭を掻き抱いて、響河から与えられる快感に感じ入る。
「ぅ、あ……、あ……っ」
耳許で囁くように喘がれ、響河は思わず生唾を飲み込んだ。
「村正、身体起こせるか?」
響河はずりずりと身体を上にずらしてヘッドボードに肩を凭れ掛けると上半身を起こした村正の腰を掴んで引き寄せる。そうして目の前に差し出されたつんと立ち上がった乳首に響河は唇を寄せた。
「んっ……、ん……」
ぬるりと唾液を纏った舌で乳首を舐られ、村正は色めいた声を上げる。ふと下を見下ろすとぎらぎらした響河の瞳と目が合って、村正は思わず頬を紅潮させた。みっともない顔を見られてしまう前に村正は響河の頭に腕を回す。頭を抱きかかえられ、動きの取れない響河はじゅるじゅると音を立てて乳首に吸い付いた。
「ぁ、あ……っ、響、河……っ」
鮮やかに弾ける快感に村正は響河の御髪をくしゃりと掴む。ちゅ、ちゅ、と何度も啄むように吸い付かれ、その度に村正の腰が戦慄いた。腰を掴んでいた響河の腕が動いて、村正のズボンのゴムに指を掛けると下にずり下ろす。村正は響河が脱がせやすいように体勢をずらしながら、ヘッドボードに備え付けてある棚に手を伸ばした。ローションのボトルとコンドームの個包装を掴むとベッドに放り投げる。膝まで下ろされたズボンと下着から脚を抜いて、脱いだそれらを床に落した。パジャマの上だけを引っ掛けた姿になった村正は、響河のスウェットの裾を引っ張る。
「お前、も脱がないか」
「俺も?」
「私だけ裸にさせておくつもりか? ほら、万歳して」
村正の言う通りに響河は腕を上げると村正は響河のスウェットを脱がせて床に放った。
「……また子供扱いか」
唇を尖らせ、そう呟く響河に村正は小さく笑う。
「実際まだまだ子供だからな」
「そうかよ」
「そうだ」
楽しげに笑う村正を響河は苦虫を噛み潰したような顔で見つめていたが、溜め息をひとつ吐くとローションのボトルを手に取り中身を掌に出した。掌の温度をローションに馴染ませ、十分に温まった頃を見計らって指に纏わせる。
「……こっちにも集中しろよ」
「ン……っ」
ローションでぬめった指で後孔を触れられ、村正はぴくりと腰を揺らした。固く窄まったそこを何度も撫で擦られ、次第にふっくらと盛り上がり綻び始める。響河は村正を見上げると村正は首に腕を回し、響河の唇に自分のそれを重ねた。唇を啄みながら、響河は柔らかくなった後孔に指を差し入れる。
「ん、ぁ……、う……」
肉を掻き分け侵入する指の感覚に村正は身体を震わせ、喘ぎ声を零した。ローションを馴染ませつつ、中を拡げる動きに必要最低限の意味しかないことを村正は知りつつも幾度となく響河に抱かれた身体は敏感に快楽を拾う。
「あ……っ、あ、ぁ……っ」
挿入する指を増やされ、増した圧迫感に嬌声が反射的に漏れ出た。異物を排斥しようと指を引き絞る肉壁を宥めるように擽って、響河は中で指を広げる。響河が指を動かす度にぐちゅぐちゅと響く卑猥な水音に村正は耳を塞ぎたくなった。軋んでいた中はすっかり柔らかく解れ、もっとと言うように響河の指に吸い付き、離れようとしない。慣らすために抜き差しを繰り返していた指が不意に前立腺を突き上げ、村正は突然弾けた快感に息を飲んだ。
「ヒ、ぁ……っ!?」
ノックをするように前立腺を指で叩かれ、背中を走る快感に肌が粟立つ。
「響、河……っ、待っ……!」
制止も空しく、前立腺を押され村正の視界に白い光が閃いた。村正は容赦なく与えられる快感から逃れようと腰を揺らめかせるが、響河に腰を押さえられ有り余る快感を受け止めることしか出来ない。
「や…っ、あ、ぁ……! ん、ああ……っ」
くにくにと指の腹で膨らんだ前立腺を揉まれ、村正は啜り泣きにも似た嬌声を上げた。
「も、駄目……っ、こ、うが……!」
「ん、もうイきそうか? ……イっていいぞ」
響河は耳許でそう囁くと前立腺を強く抉る。
「ァ、あ…っ、こう、が…! イく…っ、イ、っちゃ……っ!」
電撃のような快感が背中を貫いて村正は快楽に押し流されてしまわないように響河の首に縋り付いた。絶頂を迎え痙攣する村正の背中を摩ってやりながら、響河は指を引き抜く。傍らに放り投げられたコンドームの個包装を手に取り、封を開けた。慣れた手付きでポリウレタン製のそれを着けると切っ先を宛がう。
「……挿れられそうか?」
「っ、平気、だ……っ」
強がる村正の腰を響河は支え、村正はゆっくりと腰を沈めていった。一度達したせいで敏感になった内壁を陰茎が擦れる感覚に村正は身体を震わせる。乱れそうになる呼吸を意識して整えながら腰を落とすと、響河の下生えが肌を擽って全て中に収めたことを知った。内臓を押し上げる圧迫感に少しだけ違和感を覚えるが、それを上回る充足感に村正は熱の籠った息を吐き出す。
「ぅ……、は、ぁ……っ」
村正の呼吸が落ち着くまで響河はあちこちにキスを落としながら待っていた。唇を寄せられる度に村正は身体を小さく揺らし、濡れた瞳で響河を見やる。響河は村正の唇にひとつキスをすると腰を揺らした。
「ン……!」
「動けるか?」
響河の問いに村正は小さく頷くと腰を動かし始める。小刻みに腰をグラインドさせ、前立腺に当たるポイントを探した。
「ん…っ、う……、ん……」
快楽を得ようと腰を揺らめかせる村正の扇情的な動きに響河は釘付けになる。そうして村正の痴態を見て愉しんでいた響河だったが、突然内壁を引き絞られ息が詰まった。
「……っ!」
「そんなに、見るな……っ」
顔を赤く染めた村正に詰られ、響河はごめんと呟いて赤くなった眦にキスをする。
「村正が可愛いから」
「減らず口を叩いている暇があったらさっさと動け……っ」
歯の浮きそうな言葉に村正は響河の胸板を弱々しく叩くと肩口に頭を寄せた。これ以上村正の機嫌を損ねる訳にはいかないな、と響河は脳内で呟いて律動を開始する。
「あ……! あ、あ……っ!」
下から突き上げる陰茎で前立腺をぐりぐりと押し潰され、村正は待ち望んだ快感に婀娜めいた声を上げた。途端にざわりと蠢く内壁の気持ちよさに響河は小さく呻く。響河は村正の腰骨を掴むと最奥を穿った。指では届かなかった箇所を強引に抉られ、村正の目蓋の裏には火花がちかちかと瞬く。
「こ、うが……っ、あ、んん…っ!」
自力で動くこともままならない身体を蹂躙され、村正はただ喘ぐ他なかった。力の入らない身体は重力も相まって、いつもより深い場所まで貫かれる。嵐のように吹き荒ぶ快楽に村正は怯え、響河の肩に爪を立てた。響河は村正の背中に腕を回すと震える身体を抱き締める。触れ合った素肌の温かさと伝わる鼓動に村正は安堵の息を吐いた。緩やかに腰を突き上げられ、村正は小さく喘ぐ。
「ぁ、あ……っ、こうが……」
「村正……」
吐息交じりに名前を囁かれ、村正の背筋にぞくぞくとした愉悦が走った。中の陰茎を締め付けられ、響河は込み上げる吐精感を歯を食いしばって耐える。
「そろそろ限界だ……」
響河はそう言うと背中に回していた腕を前に回して、勃ち上がり先走りを溢している村正の陰茎に手を伸ばした。裏筋をなぞられ、村正は艶めいた声を漏らす。
「ン、ぁ……! あ……!」
奥まで懸命に咥え込む肉壁を掻き分け、響河は抽送を繰り返した。前立腺をずるずると擦られるだけでも絶頂を迎えそうなほどの快感なのに、陰茎を握り込まれ先端をくじられる。飽和状態になった快感はじわじわと村正の理性を焦がしていった。
「こ、うが……っ、もう……!」
「あぁ、一緒にな」
限界を訴える村正に響河は頷くと奥を突き上げる。あまりの気持ちよさに村正の視界は白く染まった。首に回した腕に力を込めると村正はか細い声で囁く。
「もっと……名前を呼んでくれ……響河……」
いじらしい村正のお願いに響河は一瞬目を丸くするが、すぐに相好を崩して村正の耳許に顔を寄せた。──村正。低く掠れた艶のある声で名前を呼ばれ、村正の胸には分類しがたい様々な感情が去来する。鼻の奥がツンと痛んで涙が滲んだ。響河に気取られないように肩に額を押し付けると打ち付けられる腰の動きに合わせて嬌声を上げる。ゴム一枚に隔てられていても分かるその熱さに村正は身震いした。
「ふ、あ……っ、あ、ぁ……!」
「力、抜け……っ、村正……っ」
きゅうきゅうと中の陰茎を締め付ける村正に響河はそう言うが、村正は無理だと言うようにかぶりを振る。響河はやれやれといった表情を浮かべると最奥を穿った。神経をびりびりと伝っていく快感が脳内で白くスパークする。一突きごとに強烈な快感が弾けて村正は声を上げることも出来なかった。
「ぅ、ア…! も、無理……っ! イく…っ」
「俺も、もう出そう、だ……ッ」
村正、と耳元で囁かれ、最奥に陰茎を突き立てられる。それらがトリガーになって村正は絶頂を迎えた。がくがくと身体を戦慄かせながら、村正は響河の手の中に吐精する。
「ヒ、あ……っ、ア、あ、──っ!」
「ぅ……、は、ぁっ……」
陰茎を引き絞る内壁に響河は呻き声を上げた。締め付けた陰茎がゴム越しにびくびくと跳ねる感覚が伝わって、響河も射精したのだと気付いた村正は充足感に打ち震える。コンドームの中に精液を出した響河は詰めていた息を吐くと絶頂の余韻で身体を震わせる村正の背中を摩った。村正は顔を上げると響河の唇にキスを落とす。柔らかく唇を食まれる感覚に村正はこれ以上ない幸福感を覚えて目蓋を閉じたのだった。
はじめて書いたやつ
原作厨だから本当は一番最初は原作軸で書きたかったんだけど、なにも考えなくていいハッピーでラブラブなやつが欲しかったんだ……
響河がパジャマのボタンを外すのに村正が身体を浮かせるところがお気に入りです