シュクラの罠
今日は響河とデートをしようと約束した日だった。いつもより少しだけお洒落な服を選んで待ち合わせ場所に向かう。響河の大学進学と同時に同棲を開始してから、デートのために待ち合わせをするなんてことは久し振りでつい気が逸ってしまった。待ち合わせ場所に着いたのは約束した時間よりも一時間以上前だ。幸い待ち合わせ場所は駅前のため、暇を潰す手段はいくらでもある。カフェでコーヒーを飲みながら待つか、近くのファッションビルでウィンドウショッピングをするかなどとぼんやり考えながら歩いていると後ろからすいません、と声が聞こえた。よくあるキャッチの類だろうとは思ったものの、暇を持て余していた私はなんとなく話を聞いてみようと足を止め
る。振り向いた先には医療スタッフや整体師がよく着ているような詰め襟の服を着た青年が立っていた。年は響河と同じくらいだろうか。首から顔写真付きの名札を下げた青年は笑顔を浮かべ礼儀正しい口調で話し掛ける。
「今お時間よろしいでしょうか?」
「……内容による」
つっけんどんに返すが青年は笑顔を崩さず手に提げた紙袋からポケットティッシュをひとつ取り出した。それを受け取り挟まれた広告の紙に視線を落とすとエステサロン新装開店、男性も歓迎などという内容が洒落たデザインで描かれている。
「この近くでエステサロンをオープンしてまして。只今体験サービス中ですが、興味はありませんか?」
青年は礼儀正しい口調のままそう続けた。首から下げられた青年の名札をちらりと横目で見やると広告と同じ店名が記載されている。ぞんざいな態度のこちらに逆ギレや舌打ちなどはせず、にこやかな青年の態度に悪質なキャッチではなさそうだと判断した。
「エステは何度かしたことがあるが」
「そうですか、では話は早いですね! うちのサロンは美しさは全身からというのがモットーでして、ボディエステに力を入れているんですよ。本来なら体験コースは有料なんですが、オープンからひと月の間は無料でサービスしております」
エステを受けたことがあり、なおかつ興味ありげな私の態度を読み取った青年は表情を明るく輝かせてそう話した。
「ちょっと気にはなるが、時間はどのくらい掛かるだろうか?」
「この後予定があるとかですか? 体験コースは説明10分、施術20分の計30分になりますが」
30分なら響河と約束している時間に間に合いそうだと考えて、それならと頷く。青年はこちらです、と話して案内を始めた。サロンに着くまでの間、雑談代わりにふと気になった疑問を投げかけてみる。
「その格好、君はエステティシャンだろう? ティッシュ配りはバイトにさせるものかと思っていたが」
私の疑問に青年は苦笑して口を開いた。
「サロンは基本要予約制なんですが、うち開店したばっかで全然予約入ってなくて。それに大手さんと違って個人経営なので、経費はなるべく抑えろって言われてるんです。……あ、今のはお店着いたら内緒にして下さい」
頷くと青年はほっとしたように表情を緩める。ここを曲がった先です、と大通りから少し離れた路地を進んだ。いくつか立ち並んだ雑居ビルの一つに青年は入っていく。エレベーターに乗り、サロンがあるフロアで降りるとオリエンタルな香りとゆったりとした音楽に出迎えられた。開店したばかりというだけあって什器はみな新しく、受付カウンターの上には開店祝いで贈られたのであろう小ぶりの胡蝶蘭が飾られている。先に歩く青年に案内されカーテンで奥を仕切られた個室に入った。手前には大きな鏡とテーブルセットがあり、おそらくカーテンで仕切られた奥が施術スペースなのだろう。椅子に腰掛けると青年は準備して来ますので、と一旦姿を消した。手持ち無沙汰になった私は壁に貼られた施術で使用する薬品や器具のポスターをしげしげと眺める。そうしているうちに準備が出来たようでリーフレットいくつかと茶器の乗ったトレイを手にした青年が戻って来た。
「お待たせ致しました。では説明していきますね」
目の前にリーフレットとティーカップ、お猪口ほどの大きさの茶器が置かれる。青年はまず茶器を手で示した。
「うちはアーユルヴェーダの思想を取り入れておりまして、こちらエステの効果を高める目的の当店でブレンドしたハーブティーになります。具体的には発汗と代謝を上げるものですね。ちょっと効果が出るのに時間が掛かるので施術の前に飲んで頂くことにしているんです」
アレルギーお持ちでなければどうぞ、と言われ、随分本格的なんだなと思いながらそれを飲む。漢方のような複雑な味に思わず顔をしかめた。
「なんとも……独特な味がするんだな……」
「初めて飲まれた方は皆さんそう言います」
青年は小さく笑って続きを説明する。
「こちらはマテ茶です。お口直しに」
舌の上に残る味を流すようにマテ茶を口に含んで飲み下した。それから青年はサロンで行うエステの内容や料金体系などをリーフレットを使いながら話し始める。粗方説明が終わるとカーテンの奥に案内された。タオルの敷かれたベッドの上にはラップタオルと紙製の使い捨て下着が置かれている。荷物は壁のロッカーにしまうようになっていた。
「今日はオイルを使ったマッサージをしていきますので、そちらに着替えて下さい。ラップタオルのボタンは背中に来るようにして、うつ伏せになってお待ち下さい」
青年はそう言うとカーテンをきちんと閉め直して外に出る。私が着替えている間、カーテンの外からはかちゃかちゃと瓶が触れ合うような音が聞こえた。恐らくこれから使うオイルの準備をしているのだろう。ベッドにうつ伏せになると一呼吸置いて青年がカーテンの中に入ってきた。
「身体の方はどうですか? そろそろ効いてくると思うんですが」
「汗がじんわり出てきたな」
「そうですか。では始めていきますね」
失礼します、と青年の手が肩に触れ、ぴくりと身体が揺れる。まずは筋肉の付き方やコリの具合を見ていきます、と説明しながら青年は首から腰に掛けて指圧していった。ちょうどいい強さで筋肉や筋を圧されるのは心地よく感じられる。何度か往復して指圧すると青年は一旦手を身体から離した。
「次はハーブを染み込ませたオイルを使っていきます。首から背中に垂らしていくので少しくすぐったく感じられるかもしれません」
青年はそう言ってラップタオルのスナップを外していく。肌が外気に触れ鳥肌が立った。下半身にバスタオルを掛けると青年は手にした瓶を傾ける。不意に温かいオイルが背中を伝って呻き声が上がった。
「んっ……」
「もう少しオイルを流しますからね」
背筋にとろとろと垂らされるオイルはまるで指でなぞられているような錯覚を齎す。唇を噛んで上がりそうになる声をなんとか押さえ込んだ。腰のあたりまでオイルを流すと青年は自分の手にもオイルを馴染ませる。
「まずオイルを肌に浸透させていきます」
青年は垂らされたオイルを背中全体に塗り広げていった。先程の指圧と違ってオイルを纏った指がぬるぬると肌の上を這い回る。何とも言えない感覚に肌が粟立つようだった。わき腹に手を添えながら親指で背筋を撫で上げられ、背中がしなる。
「ぅあ……」
「皆さんくすぐったいと仰るんですが、背骨は身体を支える上で重要な骨なので少し我慢して下さいね」
青年の手が背骨の上を滑る度にびくびくと身体が波打ち、噛み締めた唇の間から情けない声が漏れた。肩と首を解しますね、という青年の声にようやく耐えなくて良くなったのだとほっと一息をつく。呼吸を整えようとするのだが、中々上手くいかずむしろどんどん上がっていくようにすら感じた。ぼんやりと逆上せた思考で施術の前に受けた説明を思い返す。代謝を上げるハーブティーのせいか、と気が付いて確かにこれなら効果が出そうだと思った。普段デスクワークで酷使している首と肩をマッサージされるのは気持ち良い。大分楽になったところで、下半身のマッサージに移りますねと声を掛けられた。上半身と同じように全体にオイルを馴染ませた後にマッサージをされる。リンパや血管に合わせて心地よい強さで揉まれ、日頃溜まった疲れが抜けていくようだった。こんなに気持ちいいなら通ってもいいかもしれないな、と考えていると太腿を圧迫していた指が下着の中に入り、際どいところを掠めていく。
「そこは……」
「足の老廃物を流すのにリンパまで運ばないといけませんから」
「そ…うか……」
足首から膝裏を通って内腿までを何度も指で圧され、その度際どいところを指がなぞっていった。犬のように上がった息をみっともないと思ったものの、どうにかする気力もなく青年にされるがまま身体を震わせる。
「今度は身体の前面を施術するので仰向けになれますか?」
青年の声に従って力が抜けそうになる身体を何とか仰向けにしようとして、足元に視線を向けると下着をはしたなく持ち上げる陰茎が目に入った。仰向けになるのを躊躇していると青年は兆し始めた下半身を隠すようにバスタオルを被せる。
「反応してしまうお客様もおりますから。疲れが溜まっている時などは特に。同性同士私もそれは分かるので恥ずかしがらなくても大丈夫です」
それもそうか、と思い直して今度はちゃんと仰向けになった。青年はオイルを手に取ると上半身全体に伸ばしていく。薄い胸板の肉を集めるように揉みしだかれ、喘ぎ声が鼻から抜けた。……喘ぎ声? 違う、これはエステではないと気が付いた時には身体に力は入らず、呂律の回らない口で抵抗するしかなくなっていた。
「ぃ、やだ……、やめて、くれ……っ」
「どうされました? ーー気持ちいいでしょう?」
「ひっ、やだ、ぁ……、あ…!」
指を広げた掌が胸の上を滑る。ツンと立ち上がった乳首を引っ掛けながら指が上下に何度も往復して、その度身体が
跳ねた。
「オイルが足りませんか?」
すっかり腫れ上がった乳首の上にオイルが注がれる。途端にじくじくと熱を増す感覚に涙が滲んだ。
「や、あつ、い…! も、やめ……っ」
「辛そうですねえ」
腫れた乳首を爪先でかりかりと引っ掻かれ、強烈な快感に目を見開く。
「ひっ、やだ、やだ、や……!」
最早幼子のように嫌だと繰り返して首を振るが、青年は意に介さず乳首を指でぐにぐにと捏ねた。がくがくと身体を痙攣させ、喘ぎ声を上げる私を青年は楽しげに見やって下半身を覆うバスタオルを取り去る。
「こちらも辛そうですのでお手伝いして差し上げます」
うちはエステサロンなんですが、と白々しい台詞を吐いて青年はペーパーパンツを裂いた。すっかり立ち上がったそこを暴かれ、屈辱と羞恥に涙が溢れる。
「やだ、みないで、やだ、あ……っ」
青年は陰茎にもたっぷりオイルを垂らしてそこに指を絡ませた。灼けるような熱さにはしたなく強請りそうになるが、目の前の男にだけは絶対にしたくないと目蓋をぎゅっと閉じる。
「いや、こうが、たすけて、こうが、ぁ……っ」
「こうが? ……なるほど、道理で敏感な身体をお持ちのはずだ」
青年は底意地の悪い笑みを浮かべ、陰茎に絡ませていた指を上下に動かした。視界が白く染まるほどの快感に流されそうになるのをベッドに爪を立てて堪える。しかし青年は無慈悲に敏感な鈴口をぐりぐりと抉った。
「あ、いく、やだ、いや…っ、ーーっ!」
どんなに拒否の言葉を発しても無理矢理高められた身体は与えられる刺激は誰の手であったとしても快感と捉えてしまう。響河ではないのに、そう強く思えば思うほど青年の手で達してしまった事実が心に暗い影を落とした。
「沢山出ましたね。ああ、でもまだ足りませんか」
青年の言葉に血の気が引く。それだけは絶対に嫌だ。酷薄な笑みを浮かべた青年がオイルの瓶を傾け、閉ざされた秘所に手を伸ばしたところで着信音が部屋に響いた。響河だ。響河が助けてくれた。電話が鳴ったただそれだけなのに、私は安堵で嗚咽が漏れる。青年は瓶をワゴンの上に戻すとタオルで手に付いたオイルを拭き取った。
「そう言えば予定があるんでしたね。お帰りはあちらからです。次回も、サービスして差し上げますよ」
青年は出会った時と同じ笑顔を浮かべるとそのまま部屋を出ていく。私はベッドから半ばずり落ちるようにして立ち上がると震える手でオイルを適当に拭って着替える。エレベーターを待つ時間すら嫌で非常階段を何度も転びながら降りて行った。路地を抜け大通りに出る直前で座り込み、響河に電話を掛ける。3コールもしないうちに繋がった。
「もしもし村正? さっき着いたから電話したんだけど、今何処にいる?」
響河の声を聞いた途端に何とか持たせていた気力がぷっつりと切れ、涙がぼたぼたと溢れる。
「村正? どうし……」
「……__にいるから、迎えに来てくれ」
深呼吸して路地の場所を伝える。只ならぬ雰囲気を感じ取ったのか響河は真剣な声で返事をした。
「分かった。急いで行くから絶対に電話切るなよ」
「うん……分かっている……」
おそらく走ってこちらに向かっている響河の乱れた息を黙って聞く。私はこれ以上響河に心配させないように必死で嗚咽を上げそうになる自分と戦っていた。
「村正……っ」
「こ、うが……」
息を切らして現れた響河は私の姿を一目見るなり顔を歪めて私を抱き締めた。響河が来るまでの間にようやく収まったはずの涙がまた溢れて頬を伝う。震える私の背中を摩りながら響河は無理矢理落ち着かせた声で何があったのか尋ねた。
「どうしたんだよ、その格好」
響河に訊かれて初めて自分の姿を見ると何度か転んだせいで服はあちこち汚れ、膝などは破れて血が滲んでいる。
「いや、言わなくていい」
響河は上着を脱いでそれで私を包むと抱え上げた。人目を避けるように路地を進んで、寂れたラブホテルに入る。私は響河が部屋を借りるのをぼんやりした頭で見ていた。部屋に着くなり消毒液とか買って来るから、と外に行こうとする響河の腕を掴む。響河はすぐ帰って来るって、と私を安心させようと頭を撫でた。違う。不安な訳ではなくて、サロンで飲まされたハーブティーとオイルのせいで身体が疼いて仕方ないのだ。
「響河、待って、お願いだ……」
「村正……、無理、しない方が……」
「違うんだ……っ」
エステサロンでの出来事を話すと響河は黙ってバスルームに私を連れて行った。服を脱ぎ捨てて全裸になると指が震えるせいで上手く脱げない私の服も脱がせる。響河は私を椅子に座らせるとボディーソープを手に取った。ぬるりと這う感覚は先程と似たようなものの筈なのに、響河の指であるだけで触れた場所が火傷したかのように熱を持つ。
「ん……っ、響河……、私はもう大丈夫だから……そんな顔するな……」
「……どんな顔だ?」
「そうだな……、死神だった頃の仇なした奴らを斬り捨てる時みたいな顔だ」
その答えを聞いた響河は長い溜め息を吐いて私を抱き締めた。
「そんなに俺殺意丸出しだった?」
「丸出しだったな」
また溜め息を吐いて響河はボディーソープをスポンジで泡だてる。
「俺以外の奴が村正をそういう風に触るの、絶対許せないだろ」
「だから早く響河で上書きしてくれ」
泡がたっぷり乗ったスポンジが肌の上を滑る些細な刺激さえ今の身体は愛撫のひとつのように感じた。身体を念入りに洗ってから響河は私を抱えてベッドに戻る。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だと言っているだろう……っ、全身響河に触れられてもう我慢出来そうにない……!」
身を捩り目を潤ませる私の唇を荒々しく奪って、響河は肌に手を滑らせた。先程までの何の意図も感じない洗うだけの動きと違って、これは明確な愛撫だ。響河の指が微かに動くだけで大袈裟なほどに身体が跳ねた。
「あ、あっ……、響河……っ」
「……すごいな」
あばらの凹凸をなぞるだけで絶頂しているようにがくがくと身体を震わせる私の姿に響河は生唾を飲み込む。忙しなく上下する胸郭に指を乗せられ、次に触れられる場所が何処なのか否が応でも理解させられた。悲鳴に似た息が漏れるのと響河が乳首を柔らかく押し潰したのは同時だった。
「ひ、ああ……っ! んっ、あ…っ、ああ……!」
何度もオイルを馴染ませられ腫れたまま敏感になった乳首を優しく触られるだけで鮮烈な快感が弾ける。指だけでも気持ちいいのにぷっくり腫れた乳首に吸い付かれ、背骨が撓った。
「響河っ、それだめっ、やだ……っ」
「気持ち良すぎるってことか?」
響河の問いに必死に頷いてみせるが、響河はにやりと唇を吊り上げる。
「止める理由にならないな」
「は……、こ、響河っ、待っ……!」
再び乳首を舐めしゃぶられ、与えられる快感に最早制止の言葉すら喋れなかった。それでもなんとか抵抗しようと響河の髪をくしゃりと掴むと響河は愉しげに目を細めて乳首に吸い付く。
「ひっ…、こ、うがっ、だめ、も、イく……っ、イっ、***っ**」
一層激しくじゅるじゅると音を立てて吸われ、腰がかくかくと跳ねた。響河は乳首から顔を離すと興奮を隠せない面持ちで口を開く。
「乳首だけでイっちゃった?」
荒い息を吐きながらこくりと頷くと響河は俺の方が我慢出来なさそうだと小さく呟いた。響河は枕元のローションのボトル掴むと中身を掌に出して温める。温まったローションを指先に纏わせて後孔を指でなぞった。何度か表面を指が往復すると徐々に緩んだ窄まりが指先に吸い付く。そのタイミングを見計らって響河は指を中に埋めていった。
「さっき一回イったから、中もうとろとろになってる」
「っ、こうが、ぁ……!」
中の状態を説明され、恥ずかしくて詰るような声が出てしまう。響河は触れるだけのキスをひとつ落とすと耳元で囁いた。
「俺の手でいっぱい気持ちよくなってるところ見せて?」
熱く泥濘んだそこは簡単に響河の指を二本飲み込む。中に差し込まれた二本の指は何度も抽送を繰り返しながら前立腺をなぞり上げた。その度に与えられた快楽がちかちかと星となって目蓋の裏に瞬く。
「こうが……っ、こ、うが……っ」
「ん、なに?」
縋るように名を呼ぶと指の動きは止めないまま響河は首を傾げた。相変わらず指は前立腺をぐりぐりと圧迫して快感を切れ間なく送ってくる。蕩けた内壁は響河の指をきゅうきゅうと食んで、もっと奥へと強請っているようだった。は、と湿り気を帯びた息を吐き出して、もう一度響河の名前を呼ぶ。
「こうが……」
「ダメ。ちゃんと慣らすから」
響河は私が何を言いたいのか察した上でそれを却下しすると指を引き抜いてローションを継ぎ足した。挿入される指が三本になり、増えた圧迫感に息が漏れ出た。指の節のところで入り口をにゅくにゅくと拡げられる。私の身体に負担が掛かってはいけないと思う響河の気持ちも普段であれば労られていると嬉しく感じるのだが、今の私にはもどかしいばかりだった。入り口を拡げていた指が締まる肉を掻き分けながら奥まで入り込む。そのまま何度か指を抜き差しして、張り出た前立腺を押し潰した。
「ぅあっ、ああ、いや……っ、こうが……!」
「嫌? イきそうだろ? イっていいよ」
子供染みていると思うが形振り構っていられず、ぶんぶんと首を振る。響河の腕を掴んで息も絶え絶えに口を開いた。
「イくなら響河のでイきたい……っ」
「……分かった」
響河は何か言いたげな顔をしていたが、最後には頷いて指を引き抜く。枕元の入れ物からコンドームを取ろうとする響河の腕を掴むと不思議そうな顔をしてこちらに視線を向けた。
「付けなくて、いい……」
「いや、でも……」
「響河の熱を直接感じたいんだ……!」
私の言葉に響河は小さく溜め息を吐くと汗で額に貼り付いた私の前髪を払ってそこに唇を寄せる。眦、頬とキスを落として最後に唇を啄んだ。
「……優しくしたいんだけど」
「もう十分優しくしてくれているだろう?」
だから早く、と浅ましいとは思いつつ腰をくねらせて強請る。響河は唾を飲み下すと長く息を吐いた。
「無理そうだったらちゃんと言えよ」
「ん……」
後孔に切っ先を押し当てられ、粘膜で直接感じる熱にぞわりと震えが走る。期待で上がりそうになる息を何とか堪えて細く吐き出すと呼吸に合わせてゆっくりと響河が侵入してきた。
「ふ、あぁ…っ、あっ……、あ……!」
内壁を余すところなく擦られ、堪らず陰茎を締め付ける。狭まった肉壁を陰茎でごりごりと掻き分けられ、奥まで暴かれる、そう思っただけで熱が込み上げた。腹の内側から身を灼く熱が大きく膨れ上がって爆ぜる。
「ひっ、や、イく……っ、こうが……っ」
「は……っ、キツ……」
私が絶頂を迎えている間、響河はぐっと息を詰めて堪えていた。痙攣が収まって、乱れた呼吸を整えようと息を長く吐き出すと頬にそっと手が添えられる。
「ゆっくり動くから、」
小さく頷くのを見届けると響河はその言葉通りゆっくり腰を揺らし始めた。過敏すぎる反応を示す私の状態を気遣っての提案なのだろうが、緩慢とした動きは細胞のひとつひとつにまで快感を刻み付けるようで肌が粟立つ。
「ア、あ……っ! ん…、う、あ……!」
「鳥肌すごいな……。そんなに気持ちいい?」
太腿を爪でなぞられて、口からひ、と悲鳴じみた吐息が漏れた。響河の指先は内腿、鼠蹊部と這い上がって腰骨を掴む。
「挿れてちょっと動いただけなのに、もうぐずぐずになってる。これから村正のイイトコロ触ったらどうなるんだろうな」
「あ……」
響河の言葉に思わずそれを想像してしまい、中がひくりと戦慄いた。ふ、と息だけで笑った響河は中に埋めた陰茎をゆっくり引き抜く。
「想像した? ……今からいっぱい触るから」
心の準備が出来る前に響河は動き始めた。前立腺を抉りながら再び奥まで挿入されると私の口からは最早何の意味も成していない母音のみが溢れる。
「ぅあ、あ、んん……っ」
前立腺をぐりぐりと先端で潰され、その度身体が痙攣した。不意にとろとろと先走りを吐き出している陰茎を掴まれ、爪先がぴんと伸びる。
「ここも、触られたんだよな」
「そ、うだが……っ、今両方したら……!」
「イっていいよ。気持ちよくなってるところ見せてって言っただろ」
溢れた先走りを潤滑剤代わりに扱かれ途端に吐精感が込み上げた。同時に中からも前立腺を陰茎で圧され、堪えることすら出来ずに嬌声を上げる。
「いっ、あ、イく……っ、や、こ、うが……っ!」
響河の手に促されるまま射精に導かれた。腹の上に散った精液を指で掬って舐め取ると響河は最奥をぐり、と抉る。絶頂を迎えたばかりの身体にそれは電流を流されたような衝撃を覚えた。恐怖さえ感じる快楽に必死になってかぶりを振る。
「ヒ…っ、や、ダメ……! イっ、たばかり、だ、から……っ」
「……悪い。俺も限界だ……」
余裕のない表情の響河に見下ろされ、ぎらぎらと獣欲に濡れる瞳に思わず息を飲んだ。響河は荒い息を吐き出して腰骨を掴み直す。がつがつと最奥ばかりを突き上げられ、齎される鮮烈な快楽に涙が滲んだ。最奥に収めたまま更に奥を割り開くように小刻みに動きながら響河は口を開く。
「村正のここ、降りて来てる。結腸の奥、入っちゃいそう」
「やっ、だめだ……、奥、だめ……っ」
「だめ? でも村正の身体は入れて欲しいみたいだけど」
ほら、と響河が腰を突き出すと今まで触れられたことのない場所にぐぽりと先端が嵌った。その瞬間視界が白くスパークして呼吸が止まる。
「すご……、吸い付かれる……っ」
響河の呟きを何処か他人事のように聞いているとそこから陰茎を引き抜かれ、腰が跳ねた。どうやら奥に捻じ込まれた衝撃で意識が飛びかけていたようだった。再び結腸に切っ先を挿入され、今度はまともにその快感を受け止めてしまい、悲鳴が喉から漏れる。
「ひぃ…っ、やだ、そこ、やだ、あ……っ」
「あと少し、付き合えよ……っ」
カリでぬぽぬぽと結腸の襞を擦られ、ちかちかと視界に閃光が瞬いた。
「もう、イってる……っ、ずっとイってる、からあ……っ」
「はは、かわいー……。俺ももう出そう……っ」
そう響河は呟くと膝裏を掴んで腰を持ち上げる。そこに真上から体重を掛けて最奥に陰茎をねじ込んだ。内壁がざわりと蠢いて陰茎を締め付けるとびくりと大きく膨らんで爆ぜる。
「っ、は…っ、出る……ッ」
「ひ、奥、あつ…っ、イっ、あ、あ、****っ**」
結腸に嵌めたまま中に精液を注がれ、身体の奥深くで感じる熱に私も絶頂を迎えた。全て吐き出してなお中に精液を塗り込めるように腰を揺らめかせる響河にこれでは種付けされているようだと下卑た想像をして、その倒錯した考えに身体が震える。
「ん…っ、こうが……」
「ごめん、無理させた」
名前を呼ばれ、何やら勘違いした様子の響河は神妙な顔つきで抱えていた足を下ろした。小さく笑って響河の首に腕を回す。
「まだ足りないみたいだ。……付き合ってくれるか?」
「……望むところだ」
目を閉じ、優しく蕩けるようなキスを堪能しながら再びお互いの身体を気が済むまで貪り合った。
エステで上がってしまった感度が元に戻るまで面倒に巻き込まれることになるのだが、それはまた別の話になる。
エロエステAVっていいよね……
もうちょっと軽いノリにしたかった筈なのに一途な現パロ転生村正で書いてしまったばっかりに途中めちゃくちゃ沈んでしまった……
後日談で電車で痴漢されそうになる話とか会社に出入りしてる業者にしつこく飲みに誘われる話とか響河とのとろとろセックスとかもいつか書きたい