レインドロップアンコール
ふと寒さを感じて村正はぶるりと震えた。閉じていた目蓋を開けるとそこはリビングのカーペットの上だった。何をしていたのかぼんやりした頭で思考を巡らす。確か響河が観たかったという映画が地上波初放送とかで酒を飲みながらそれを観ていた。酔いと日頃の疲れもあって舟を漕ぎ始めた村正を見兼ねた響河が少し寝ればいいとカーペットに寝転がり腕を差し出す。村正は響河の腕を枕にしてしばし寝ることにしたのだった。
後ろから響く響河の寝息を聞きながら壁掛け時計に視線を向ける。テレビも照明も消えて薄暗い部屋に蓄光の文字盤が淡く光っていた。時計の針が示していたのは大体日付が変わった頃で、村正は響河の腕の中で伸びをする。このままここで寝るのは身体を痛めそうだと思った村正は腰に回された腕を叩いた。
「響河、寝るならベッドに行こう」
響河はむにゃむにゃと不明瞭な声を発すると、村正をがっちりと抱え込む。巻き付いた腕の力は案外強く、村正の細腕では自力で抜け出すことは叶わなかった。これに焦ったのは村正の方だ。寝る前に飲酒していたせいで尿意を催していたからだった。
「起きろ響河。手を離せ。トイレに行かせろ」
先程よりも強く腕を叩き、身をよじってなんとか抜け出そうとする。しかし抜け出すどころか、益々腕の力が強くなるふばかりだった。腕に力が入ったことで腹をぐっと押され、思わず漏れそうになるのをすんでのところで堪える。意識しないよう努めていた尿意をまざまざと認識させられ、村正は身体を震わせた。
「響河……! 起きているんだろう? 手を離してくれ……っ」
響河は安らかな寝息を立てるだけで何も答えず、村正は尿意を我慢しようと脚をすり合わせる。必死に意識を逸らそうとするが、はっきりと認識してしまった以上我慢は出来そうになかった。三十路近い良い大人が他人の、しかも年下の恋人の前で粗相してしまうなど到底許せず、村正は何とか腕から抜け出そうともがく。
「響河…っ、離せ……、本当に、もう……!」
このままでは本当にここで粗相しかねないところまで村正の尿意は切迫していた。身体が震え、歯がかちかちと鳴る。掌を握り締め、爪を食い込ませて痛みで紛らわせようとするが、そろそろ限界が近かった。堪えていた息を吐き出すと腹に込めていた力が緩む。
「ぁ……、う、ぁ……っ」
僅かに尿が先端から滲み、切望した解放感に鳥肌が立った。慌てて腹に力を込め、それ以上出さないようにする。ほんの一瞬感じた解放感に理性をじくじくと焼かれ、村正の目にじわりと涙が浮かんだ。響河の腕を解こうとその腕を掴むが、最早力の入らない腕では悪足掻きでしかない。響河の腕に爪を立てると村正は悲鳴に似た声を上げた。
「こ、うがぁ……っ、も、無理……っ!」
「──かわいい」
突然耳元でそう囁かれ、村正は目を見開く。村正が言葉を発する前に腰に回された腕が動いて下腹部を押した。それは気力だけで尿意を我慢し続けていた村正にとどめを刺すには十分過ぎるものだった。押されたことで漏れ出たものが呼び水となり尿が迸る。
「ふ、あ…、ああ、ぁ……っ」
我慢の果てにようやく解放された感覚に村正は恍惚とした声を上げた。ぞくぞくとした愉悦が脊髄を這い上って腰が戦慄く。股間に広がる尿の温かさに快感すら感じた。しかし鼻を突くアンモニア臭と尿を吸って肌に貼り付く下着の感覚に粗相してしまった現実を突き付けられる。村正は半狂乱になって服の上から股間を押さえた。
「い、嫌だ…っ、嫌、止まれ……! 止まって……っ」
一度決壊した尿は止まるはずもなく、村正の両手を濡らしていく。その様子を響河は熱の籠もった視線で見つめていた。尿の勢いは弱まり、やっと止まると村正が安心したのも束の間、再度下腹部を押される。膀胱に残っていたものを全て押し出すような動きにまた勢いよく尿が出て、服を濡らした。
「響河…! もうやだ…っ、止めてくれ……っ」
「すごいかわいい……お漏らししちゃった村正……」
粗相を咎めるでもなく、陶然とした声音で囁く響河に村正は羞恥で身体が熱くなる。力なくかぶりを振りながら村正は口を開いた。
「ちが…っ、違う……、嫌、こんな……!」
「何が違うんだ? パンツもズボンもびちゃびちゃにして」
響河はそう言って部屋着のズボンのゴムを掴むと下着ごとずり下ろす。濡れた肌が外気に触れ、ひやりと冷たい感覚がして村正は身体を震わせた。緩く芯を持った陰茎を握り込むと村正は小さく声を漏らす。
「ひ、ぁ……っ」
「もう固くなってる。お漏らしで興奮したのか?」
「違う……、そんな訳ない……っ」
「へえ?」
首を振って否定する村正を響河は軽く流して握った陰茎を上下に扱いた。途端に弾ける快感に村正は肩が揺れる。身体が動いたことでぴちゃ、とカーペットから濡れた音が響いて、村正は泣きそうになった。そんなことなど知る由もない響河は完全に勃ち上った陰茎をゆるく握って村正を責め立てる。単純で乱雑な触り方は少し乱暴に扱われる方が興奮を覚える村正の性癖に合わせてのものだった。目論見通り、響河の愛撫に村正は意味を持たない母音を発することしか出来なくなる。
「あ、あ……っ、んァ……!」
びくびくと震える腰に兆し始めた自分の陰茎を押し当てると村正は大袈裟なほど肩を跳ねさせた。思わず小さく笑い声を上げると目の前のうなじに唇を押し当てる。このまま挿入してぐちゃぐちゃにするのも愉しそうだが、今は陰茎の方を虐めたい気分だった。皮膚の下で尖る棘突起に歯を立てながら、つるつるとした亀頭を親指で円を描くように撫で回す。先端に滲むカウパーを掬って裏筋を指でくすぐれば、村正は婀娜めいた声を上げて響河の腕に指を絡ませた。
「ヒ……っ、や、も、無理……っ」
村正としては抵抗するために指を絡ませたのだったが、響河からして見ればまるでもっとと強請っているようにすら感じられる。強過ぎる快感から何とか逃れようと腕に爪を立てる村正の行動に響河は興奮を抑えきれず、うなじに噛み付くと鈴口を抉った。村正は息を飲んで、身体を硬直させる。
「っ、ア…! 出る、も、出て、しま……っ!」
視界に白い閃光が瞬いて、村正は響河の掌に吐精した。がくがくと身体を痙攣させる村正を抱き締めてやりながら、響河は陰茎を扱いて尿道に残った精液を搾り取る。射精を終え、息を吐き出したのも束の間、再び亀頭を撫で擦られ村正は悲鳴を漏らした。
「い、嫌、離せ…っ、こうが、ぁ……! 出した、ばかり、なのに……っ!」
響河は手に出された精液を潤滑剤代わりにして、掌全体で亀頭を撫で回す。絶頂を迎えた直後の敏感な粘膜を容赦なく弄ばれ、村正は最早何も考えることなど出来ずに悲鳴じみた声を上げた。
「こ、うが……っ! もう、許して、くれ……っ、響河……!」
しゃっくり上げながら響河の手を振り払おうと腰を引くが、後ろにいる響河に尻が当たって逃げることなど叶わない。逆に響河の屹立した陰茎に押し付ける格好になってしまい、腹の中にじわりと熱が込み上げてますます村正を追い詰めていった。
「嫌だ…っ、止め……! やだ、こうが……っ、無理、ぃ……っ!」
「もう少し頑張れ」
響河はそう言うと村正の尻に陰茎をぐりぐりと押し当てながら、亀頭を掌で包み込む。磨くように手を動かされ、村正の腰が痙攣した。吐精感とも違う何か大きな波がそこまで迫っている気がして、村正は必死になって腰を逃がそうとする。
「ぅ、あ゛…! いやだ、嫌……! 何か、来る……! こうがぁ…っ!」
ひたひたと近寄る恐怖と紙一重の快楽に村正は恐慌をきたし、響河の腕に縋り付いた。響河は震える村正の細い身体をしっかり抱き締めると先端を撫で回す。響河の腕に抱き止められ、村正は僅かに安堵した。許容量を上回った快感がその隙を突いて出口を求め荒れ狂う。
「あ、あぁ……! い、やだ…っ、おねが…、こうが、見る、な……っ!」
ぷしゃ、と勢いよく水が迸る音を立てて透明な液体が鈴口から噴き出した。それは響河の手の動きに合わせて何度も止まることなく流れ出る。その度に村正は神経に雷撃を流されたかのような快感を感じた。
「すごいな……、潮噴くなんて」
「も、やだ……っ、許して……!」
半泣きでかぶりを振る村正の耳許に顔を寄せると真っ赤に染まった耳朶に舌を這わせる。
「一人だけ気持ちよくなって終わりなんて、そんなことはないよな? なぁ……、村正?」
熱っぽい声音で囁かれ、村正の顔から血の気が引いた。抵抗は意味を成さず、村正は響河の気が済むまで抱き潰されたのだった。
その後、リビングの惨状と無理無体に怒った村正に響河が三日三晩無視されたのは言うまでもなかった。
4番目に書いたやつ
ここまでずっといちゃいちゃしてるの書き続けて大分落ち着いてきたので性癖が爆発した
いやだ、って言う村正がマイブームでした
気が向いたら抱き潰されるところも書きたい