紫煙と共に吐き出されたのは、気色悪ぃという随分な言葉。 「何がだよ」 「テメェがだよ、ヒル魔」 校長に押し付ける予定の完成した新しい部室の工事費の領収書を捲りながら、蛭魔は依頼した工務店の若頭を睨む。 「テメェが人間らしい顔をしてんのは、大抵東原絡みだ」 「ほっとけ、糞ジジィ」 「いい加減、男の甲斐性見せたのか?」 ニヤニヤと笑う老け顔の友人に蛭魔は忌々しげに舌打ちをする。 それに思わず小さく笑ってしまった武蔵は、外から聞こえた「ワーオ」という少し間抜けな声を聞きガラリと扉を開けた。 「あ、武蔵君お早う、久しぶりだね」 突然開いた扉に少し驚いた顔をした後、買い物袋片手にひらりと手を振った噂の女子に武蔵は微かに目を見開いた。 「東原か──あぁお早う。どうした?こんな朝早く」 「いや、部室…カジノ?が完成したって聞いたから、お疲れ様を言いに」 あと休憩の時にでもどうぞと差し出されたのは、携わっていた工務店の人数分の缶コーヒーだった。 一緒に手渡された煙草の箱は「ほとほどに」と言う小言と一緒で武蔵は苦笑をこぼす。 「ありがとな」 「どういたしまして」 細められたブルーの瞳は武蔵に笑いかけた後、テーブルに足を乗せて行儀悪く座る蛭魔を見る。 「ヒル魔、あと忘れ物」 「あぁ?」 「携帯、ベッドに置きっぱなしだったよ」 あぁ、と差し出された携帯を受け取る蛭魔を武蔵が驚いたように見やる。 ポロリと咥えていた煙草が口の端から落ちた。 「なんだ……お前ら二人一緒に住んでんのか──」 唖然としたようすの武蔵に、蛭魔は見せつけるように空の腰に腕を回しながらニヤリと笑う。 「そう言うこった」 何が?と首を傾げる何もわかっちゃいないらしい東原に、武蔵は苦笑しながら落ちた煙草を拾い上げる。 嗚呼、少し床が焦げちまった。 「あぁ、悪かったよ。余計なお世話だったな、ヒル魔」 (旧友達)