ハリーが暮らす暗い物置には、時計もない。 だから、どれくらい時間がたったのかわからないし、ダーズリー一家が眠ってしまったかどうかもわからない。 ダーズリー一家と暮らしてほぼ10年が──思い出す限り惨めな10年が過ぎた。 赤ん坊の時から、両親が自動車事故で死んでからずっとた。 それに、ダドリーの誕生日を散々なものにしたと言いかがりをつけられて食事抜きにされた惨めな一日が追加されただけだ。 両親が死んだ時。 ハリーは一歳になったばかりで、自分がその車の中にいたかどうかさえ思い出せない。 正直、今の生活ではどうして両親と一緒に死ねなかったのかとさえ思う。 ハリーは深い溜め息を吐いた。 時々、物置で長い時間を過ごしながら、一生懸命思い出をたぐっていりと、不思議な光景が見えてくることがあった。 目も眩むような緑の閃光と焼けつくような額の痛み──それと、自分を見下ろす一つの碧眼。 自分と同じ緑でも、それが母親だろうとはハリーには思えなかった。 緑の閃光が自動車事故だとして、あの碧い目は自分を助けてくれた人だろうか? 赤ん坊の頃に死んでしまった、両親の事はまったく思い出すことができない。 それに叔父と叔母は話どころか写真さえハリーの目の届かないところに隠してしまい、もちろん両親に関しての質問も禁じられていた。 今よりもっと小さかった頃、ハリーは誰か見知らぬ親戚が自分を迎えにやってくることを何度も何度も夢に見た。 しかし、そんな事は一度も起こらなかった。 ダーズリー一家しか、ハリーに“家族”はいなかった。 そして、あの碧眼の持ち主が会いに来てくれる事もなかった。 10年も経ち、その夢は叶う事はないのはわかってる。 でも、諦められないのは子供じみた、何か。 ハリーは眠気に重くなってきた瞼をゆっくり閉じた。 ハリーの夢が、現実になるのはその数日後──あの碧眼が再びハリーを見つめる事も、そして“見知らぬ親戚”ではなかったが、名付け親という男と出会うのは、その3年後だった。 ハリーはもう、一人ではない。 END