「ガブリエル・マリー・カウンシル」 マクゴナガルによって読み上げられた新入生の名前に、ざわりと大広間に声が広がる。 人ごみの中から抜け出した小柄な少女が、ヒソヒソとした声を背に組分けの椅子へと向かって歩いて行く。 その時になってスネイプはその少女の姿をようやく目にすることが出来た。 (まるで、人形のようだ) そう思ってしまうのも無理がない。 白磁の肌を隠すような長い前髪の隙間から、前を真っ直ぐに見据える碧眼はガラス玉のようで。 引き結ばれた唇には、感情が乗せられてはいなかった。 姿勢を正したまま彼女が椅子に腰を降ろすと、俯いた頭にマクゴナガルが組分け帽子を乗せた。 先に呼ばれていた少女の姉を含め、カウンシル家の人間はスリザリン寮であった。 ちらりと視線を向けたスリザリンのテーブルでは、優越に染まった顔で少女を見る顔が並んでいる。 (それもそうか……“ガブリエル”はそれだけの名だ) 視線を正面に戻せば、組分け帽子はそれは答えを決めかねているように、まだ答えを出していない。 (──あ) ぶかぶかの組分け帽子を鼻の辺りまで被った少女の口の端が、帽子のつばの下で弧を描いたのをスネイプは見た。 どくりと乱れた心音を隠すように、胸に手を当てる。 (僕だけ……? あれに気付いけたのか) 回りに走らせた視線、自分と同じ新入生達は新しい友達と話すのに夢中だ。 もう一度、少女を見上げる。 「グリフィンドール!」 読み上げられた組分けに、落胆と歓喜の声が響いた。 スネイプも鉛のような落胆を心に落す──自分の行く寮はすでに理解していた。 スリザリン、少女が向かう寮とは正反対の寮だ。 (ガブリエル……マリー・カウンシル……) 音もなく呟いた少女の名前は、じわりと胸に根を張った。 マクゴナガルに取り払われた帽子の下、少女の表情はまた人形のように足元を見下ろしていた。 椅子から立ち上がった少女は、しっかりとした足取りでグリフィンドール寮のテーブルに向かう。 (──僕のような人間とは、関わり合うことはないんだろうな) つきりと痛んだ胸を無視して、芽吹いた感情と共に奪われていた視線を切る。 「セブルス・スネイプ」 読み上げられた自分の名前に足を踏み出す──それを追っていた碧色の瞳を、ついぞ彼が気付くことはなかった。 end