血と肉と骨が構成する器に、魂が入って人となる。 それを全て、皮膚という袋の下につめこんで我々は生きている。 個を形成するその中に、血族でもない他人が入り込むというのは、なんと甘美なことだろうかとスネイプは思う。 彼女が飲み干す薬に己の一部──魂の断片を入れ、内側から彼女を包み込み守る──最上の愛し方だ。 「自分の命を僅かずつでも削っている事を、忘れてはいけないよセブルス」 それを彼女は、認めてくれない。 悲しい顔をして、受け入れてくれはしても、心のどこかで魂の提供を拒んでほしいと思っているのだ。 「共に逝けるなら本望だ、マリー」 「ばか」 「愛した女のためなら男は皆、愚かな馬鹿にもなれる」 「──君が死ぬのを、私は望んじゃいない」 澄んだ隻眼が歪に細められる。 「それは我輩とて、同じこと」 どうしてわかってくれぬ。 「お前がいない、この世界に我輩はなんの価値も見出だせやしない」 伸ばした手が白い頬に触れた。 その皮膚下に、自分が微かにでも存在している。 「マリー。私を生かしたくば、生き続けることだ」 包み込んだ両頬、彼女は困ったように笑った。 「スリザリンは、どうしてこうも狡猾なんだ」 重なりかけた唇の隙間に、お褒めの言葉をどうもと、囁いた。 反論は、口内に迎え入れ飲み下した。 2021.1.9 (初公開:2012.2.9)