誰も踏み荒らしていない純白にたった一人の足跡をつけていく。 クリスマス休暇で学校を離れる生徒が殆どで、いつもは騒がしい昼下りの中庭もひっそりと静まり返っている。 人より高い鍵鼻が冷たい空気にじんと痺れて、鏡で見れば間抜けに赤くなっている頃だろう。 ローブ越しに肌に滲みる寒さに僅かに苛立ちを感じながら、図書室へと目指す足を早めた。 ボスっ。 不意に、後頭部にぶつかった柔らかい衝撃に足を止める。 ぱらぱらと砕けたそれが、隙間から首筋に入る冷たさにスネイプは眉根を寄せた。 こんな悪戯をする相手にはよく覚えがあり、休暇でいないのではなかったのかと忌々しい心持ちで犯人を振り返る。 予想外にも、そこにあったのは柔らかく笑うグリーンだった。 声もなく笑う笑顔に一瞬呆けた後、取り繕うように咳払いをして不機嫌そうな顔を作る。 「こんな事をして……あの悪いお友達に毒されてきているようだな」 嫌味ったらしくそう言うものの、ぱちりと目をまたたいたマリーに結局勢いを削がれる。 (調子が狂う……) 手袋についた雪を払いながら、ゆっくりと歩み寄ってくるマリーの足跡が、先につけた自分の足跡に寄り添うよう。 一人であることを突き付けてきていた筈の足跡と並んだ小さなそれに、じんわりと胸の奥が暖かくなるような気がした。 すぐ側までやってきた彼女は、ポケットに手を入れると小さな包みを差し出した。 ただそれを見つめたまま動かない自分に焦れたのか、マリーは手をとってそれを押し付けるようにして握らせた。 傍目から見てもクリスマスプレゼントらしいラッピングのされたそれと彼女を思わず見比べていると、愉快そうに笑っていた彼女がそっと顔を寄せた。 頬に、白く曇った彼女の吐息が掠める。 「メリークリスマス、セブルス」 たった一人、自分にだけ聞こえるような声で耳元に囁いた言葉。 すぐに離れた距離で、彼女がゆるりと微笑む。 じんわりと熱を帯びた頬を隠すように俯きながら口を開いた。 「メリー……クリスマス」 嬉しそうに碧眼を細める彼女が、いとおしい。 2021.1.9 (初公開:2013.12.25)