IFストーリーで、 もし助手が10月31日の呪い発動からすぐに目覚める事が出来て、 伯母家族に預けるくらいなら、と自分がハリーの面倒を引き受けた場合こうなる──というお話。 教授が助手一筋なので、教授→(友情)→リリー。 つまりはジェームズの憎しみあんまし拗らせてないのと、助手のフォローもあると思うのでハリーへの対応は、柔らかいものになっております。 * * * * * 普段起きる時間になっても、深く眠ったままの育ての親を見下ろして、ハリーは「もうそんな時期か」と思う。 育ての親には【眠りの呪い】というものがかけられているらしく。 時たま、どんな事があってもどんな方法を使って起こそうとしても起きない事がある。 そんな時、どうしたらいいのか。 一緒に暮らすようになって6年も経つハリーには慣れたものだ。 「待っててね、直ぐに呼んでくるから」 顔を覗き込むため上がっていたベッドからぴょんと飛び降りると、ハリーは部屋を出て一階へと向かった。 ハリーは玄関ドアの前までくると、ドアノブの上についたダイヤルに手を伸ばした。 「え〜っと……」 ダイヤルを捻るとチリン、と音を立てて示す表示が白から赤に変わる。 ハリーは目的の黒に変わるまで、ダイヤルをゆっくりと回していく。 二人が暮らす小さな二階建ての家は、少し変わったら立地にあるため玄関ドアには便利な魔法がかけてある。 5つのダイヤルの切り替えで、玄関は様々な所へ繋がるようになっているのだ。 白は、そのまま外に繋がるドアに。 赤は、買い物に便利なダイアゴン横丁に繋がるドアに。 黄は、アルバスおじいちゃんやハグリッドがいる“魔法学校”に繋がるドアに。 青は、リーマスおじさんのお家と繋がるドアに。 そして黒は── チリンと音をたてて、ダイヤルは黒へと切り替わった。 ハリーはドアを二回ノックして、ドアの向こう側に大きな声で呼び掛ける。 「セブルスさん!僕です、ハリーです!」 呼び掛けて直ぐに、ドアはゆっくりと開かれた。 ハリーはドアの向こうから現れた、ダイヤルの色と同じ黒い男をまっすぐに見上げ、育ての親の言いつけ通りきちんと「おはようございます」と挨拶をした。 「あぁ……おはよう、ハリー」 寝起きらしい男は低く掠れた声でそう返すと、ハリーの癖の強い髪を混ぜるように撫ぜた。 「それで……今日はどうしたのだ?」 「マリーさんが起きないの。 セブルスさん、お薬をください」 「そうか。わかった、すぐに準備をしよう」 待っていなさい、と言って部屋に戻っていく男を開けっ放しのドアの前で見送っていると、不意に立ち止まった男が振り返った。 「ところで、ハリー。朝食はどうした?」 「まだ食べてないよ」 「そうか、私もだ。一緒に食べよう。 お湯を沸かしておいてくれないか?」 「わかった!」 元気よく返事をすれば男は微かに笑ったようだった。 男は時たま不器用に笑うのをハリーは知っている、リーマスおじさんにその事を話したらすごく変な顔をされた。 男の名前は、セブルス・スネイプ──ハリーの両親やリーマスおじさん達とは友人で、育ての親の“恋人”だ。 セブルスは“魔法学校”で先生をしているらしく、黒いダイヤルはそのセブルスの私室に繋がっている。 部屋の奥に消えたセブルスを見送ってから、ハリーはお湯を沸かすためにキッチンへと向かう。 お湯が沸くまでの間に、セブルスが薬を持って部屋にやってくるだろう。 そしたら、間も無くマリーも目を覚ますはずだ。 「なら、三人分沸かしておかないとね」 水を入れてコンロに火をかける。 普段は暖炉で沸かすのだが、ハリー一人ではまだ暖炉に火をいれる事が出来ないのでしかたがない。 少しして、薬が入ったゴブレットと大きな籠を手にセブルスが家にやってきた。 キッチンにいるハリーを見て、火をきちんと使えている事を確認すると、籠をハリーへと渡す。 大きなそれを両手で受け止めると、セブルスは「朝食だ」と端的に伝えると足早に二階の寝室へと上がっていく。 ハリーはその足音を聞きながら、籠をテーブルに置き上にかけられた布を捲って中身を覗き込んだ。 中には豪勢でまだほかほかな朝食が三人分入っている──これは“屋敷しもべ”が作ってくれるらしい。 ハリーはそれを溢さないように気を付けながら配膳していく。一番量が少ないのは彼女の分だ。 それから食器棚の引き出しからフォークなどを出しているて、ヤカンがピーッ!と甲高い音を立てた。 慌てて火を止めると、二階から二人分の足音が聞こえ出す。 「ハリー、沸いたようだな」 「うん」 「お茶を淹れよう」 先に二階から降りて来たセブルスがそう言って杖を振ると、食器棚からカップとポットが勝手に飛び出してくる。 「ふぁああ……」 紅茶を作る魔法のポットに視線を奪われていると、大きな欠伸をしながらマリーが階段を降りて来た。 「おはよう、ハリー」 「おはよう、マリーさん!」 ハリーの元気な挨拶に、ハリーと同じ色をしたマリーの碧眼がゆるりと細まった。 階段の下で待っていたセブルスは、降りてくる彼女に手を差し出しエスコートする。 階段を下りきると、セブルスがおはようの挨拶に彼女の頬にキスをした。 「冷める前に朝食を頂こう」 セブルスのその言葉にはっとして、ハリーはマリーの定位置である椅子を引く。 彼女はハリーの紳士らしい行動に、くすくすと喉を震わせ笑いながら、ありがとうと言った。 ハリーはそれににっこり笑って返すと、彼女の隣の椅子へと座る。セブルスの席は彼女の正面だ。 「さぁ、いただきましょう」 ハリーは「いただきます」と言ってフォークとナイフに手を伸ばす。 「今日はきちんと食べるんだ」 「寝起きすぐにはちょっと……」 「デザートにブドウを貰ってきているが?」 少食の彼女は、サラダを口にしながらのセブルスの言葉に動きを止めた。 「……スネイプ教授、どれくらい食べたら合格点だろうか」 「その皿のものは片付けて頂きたいものですな」 にやりと笑ったセブルスの表情に何とも情けない顔で呻いた後、マリーはフォークを手に取った。 それを満足そうに見詰めた後、セブルスも食事を続ける。 「朝食、どれも美味しいよ?」 「うん……がんばる」 「一緒にブドウ、食べようね?」 「……うん」 このやり取りに小さく吹き出したセブルスを、彼女はちらりと睨みつけてから、自棄だと言わんばかりに大きく口を開けて朝食を放り込んだ。 どうだ、と言わんばかりの顔にハリーとセブルスは思わず声を上げて笑う。 三人揃っての食事は久しぶりでハリーは嬉しくなって来た。 「ね、美味しいでしょ?」 ハリーの問いかけに、マリーはゆるりと微笑んだ。 (例えばこんな、幸せ家族計画) 2021.1.9 (初公開2015.2.27)