目が覚めると、なんだか長い夢でも見ていたような、不思議な心持ちだった。 最近、朝が来て目が覚めるたびに感じる不思議な感覚──。 スネイプは広いベットに横たわったまま、いつの間にか空いていたベットのスペースをぼんやりと見つめた。 自分一人が使うベットで、なぜか“誰か”の為に空けてあるようなスペースが出来ているのだろうか。 それも毎日、ただの気のせいだろうか。 いや、気のせいなのだろう。 偶然、そうだっただけだ。 スネイプはそう思いながら、もう一度瞼を閉じた。 ゆっくりと、今まで見ていた夢を思い出そうとしてみる──ぼんやりとした夢は、とても幸せで胸の奥が暖かくなるような感じがした。 誰かが、自分と隣で微笑んでくれているような。 幸せそうに抱き合い、腕の中の温もりに愛おしい気持ちがあふれていた。 なのに、抱え込んだ幸せに突然突き放され、悲しみの底に突き落とされてしまう、そんな夢だった気がする。 涙が一つ零れた。 ひどく、悲しかった。 一筋、二筋と、流れるままに涙を溢しているうちに、何故涙が零れたか思い出せなくなっていた。 涙を拭うと、スネイプはいつも通りの時間にベッドから出た。 夢の事、ともうそれには興味はない。 それに──内容など全く覚えていなかったのだから。 ・・・ 学期末の宴会は寮の中でも続き騒いだ、翌朝には、ホグワーツ特急がホームから出発した。 マリーは、行きと同じくレイナとともにコンパートメントに二人で乗り込んだ。 「一年、あっという間だったね……」 「そうだな」 流れる景色を見ながらぽつりと呟いたレイナに、同じように景色を眺めながらマリーはぼんやりと返した。 「来年は、どんな年になるのかしら?」 学校で楽しみを見つけ恋をし、始めの頃の不安など吹き飛ばしたレイナの表情は明るい。 マリーはそれを見つめ、穏やかに笑いながら、「さぁ?」と出来るだけ軽い声で呟いた。 「もう、ノリが悪いなぁー」 クスクスと困ったようにレイナは笑いながら、また景色へと視線を移す。 マリーはその横顔を、笑みが消えた悲しげな表情で見つめ、それからそれを隠すように右目を左手で覆った。 リミットは着実に迫っているのは、自分の体だ、よくわかっている。 果たして、自分に次があるのかもわからない。 あれから、ダンブルドアとも話を重ね、期限についてはおおよその推測が出来た。 長くてもあと一年、それが二人が出した答えだった。 だけど、少しでも長くハリーをレイナをハーマイオニーを、ロンを──そして、スネイプを見ていたい。 それは、最期の未練のような、小さな願い──。 「終わるな………」 この一年が、という意味でない事に気付いたのか、レイナがこちらを振り返って、ぱちくりとまばたきを一つした。 「夏が、始まる」 誤魔化すようにそう付け加えれば、レイナは笑った。 「そうね、夏が来るわね。 休み中、手紙を送るわ。お返事頂戴ね」 「うん。待ってる、返事も書くよ」 夏休みの間という短い期間の約束を交わす、それは小さな延命行為だ。 まだ、頑張れる気がしてマリーは穏やかに笑い、晴れ渡る夏空を見上げた。 END (アズカバンの囚人編・完結:091225 |再加筆:191103)