呼吸を掠め取られるような感覚に、眠っていた意識が覚醒していく。障子越しに差し込む月明かりに、白い包帯の色だけが浮いて見える。開いた視界に、自分に馬乗りになる男の姿があった。 にたり。 普段は口布と包帯に覆われている焼けただれた膚が裂けるように笑った。 「随分と気が緩んでるんじゃないの?」 男のいう通り、ここまでの接近を許した事は今までなかった。 眠っていたからとは言え、命取りだなと覚醒しきれていない思考のままぼんやりと考える。 「まだ、寝惚けてるのかな〜」 余裕だね──そう囁いてくつりくつりと喉を震わせて笑う男は身を屈め、そのかさついた唇を這わせる。 柔らかくない男のその唇が触れる感触に肌が泡立った。 無骨な手が体の輪郭をなぞり、寝間着を乱していく。 肌に触れる空気の冷たさに喉の奥で小さく息を飲み、夜の空気を吸った男の忍装束に思わずすがった。 「──……抵抗しないの?」 不意に動きを止め、唇を僅かに話して囁く吐息に身を捩る。 目を細めて見上げた男の顔は、露になっているせいかいつもより表情が読み取りやすいように思えた。 「──雑渡」 寝起きの情けなくも掠れた声で男の名を呼ぶ。 うん、と小さく男が頷いた。 今の今まで一度も拘束されなかった手を伸ばして、男の顔に触れた。 かさついた唇と同じように、焼けた肌はひきつり痂のように固い。 それを指先で撫ぜながら。不意に、眠りから覚めた理由を理解する。 「お前の唇はこそばゆいな。」 かさついた唇を指でなぞりながら呟けば、目を真ん丸に見開いた男の顔が面白くて思わず忍び笑いが溢れた。 不意に、闇色の腕が無遠慮に抱き寄せた。 「私を──受け入れているととって、いいんだよね」 耳を掠める男の声は僅かに震えていた。 男の背に腕を回しながら、さぁてと惚けてみせる。 「なにそれ」 笑う男の唇に、自分の唇を押し付けた。 「蓐にお前を入れた事自体、それが答えだろうよ」 敵同士でありながら少しずつ距離をつめ、感化されてしまった自分を笑いながら荒々しい接吻を受け入れた。